そして遅れて申し訳ないです!
「邪魔するぞ。やれやれ、仲の良いようでなによりだ」
俺に対して雪ノ下が下した評価を覆すべく反論を考えていると、やはりノックをせずに平塚先生が入って来た。
「覗き見るなんて性格悪いですよ、平塚先生。それと、これは仲良いんじゃなくて、俺が罵倒を受けていただけです」
「そう否定することもないだろう。側から見てたらかなり楽しげに会話をしていたじゃないか」
覗いていた事は否定しないんだ。
俺はスタンド使いになった話してただけなんだけどね。
「で、どうだ雪ノ下。比企谷は治りそうか?」
「ちょっ、人を物扱いすんのやめてくれません?」
まぁでも確かに俺が届いたら即返品すると思うけどな?
粗悪品の気持ちが少し理解出来たような気がする。
「本人がどれだけ欠陥を抱えているのか認識できていないので、修理には骨が折れそうですね」
なんでノリに乗っちゃってんの?
それと俺が事故で骨折ってるから骨が折れるってか、やかましいわ!
・・・・・・我ながらこれは無い、これは無いわ。
「さて、比企谷の処理はこれで構わないだろうが、やる事がそれだけだと何か味気ないな」
「処理って・・・。でも、他に何かする事あるんですか?」
スタンドに睨まれながら本読むだけじゃないの?
平塚先生は俺の疑問に答えず、一人で話しを進めていく。
「うむ、やはりここは君達二人に戦ってもらおう」
「スタンドで、ですか?一瞬で木っ端微塵に消し飛ばしてみせます」
「ちょっと待て俺完璧に不利じゃねえか!」
俺のパワーのないスタンドで明らかにパワー型な雪ノ下のスタンドと近距離で戦うのは無理がある。
「待て待て待て。誰がスタンドで戦えと言った、そんな事をしては比企谷が粉微塵になってしまうだろう?」
・・・・・・まぁ、その通りだけど。
「ここは奉仕部だろう?ならば、どちらがより多く人の役に立てるか、それで白黒つけようじゃないか」
「ええ・・・・・・」
「この男に人を救えるとは到底思えません。まず自分から改めるべきです」
さっきから好き放題言ってくれるじゃねえかこのアマァ・・・!
流石にカチンと来ちまったぜ!
「よし、そこまで言うなら受けてたとうじゃねぇか!その俺への偏見をギッタギタに打ち砕いてやるぜ!」
「・・・あなた、馬鹿なの?そんな状態で人を助けようと思うことがまず言語道断よ?」
「おやおやァ?もしかしてもしかすると雪ノ下さんはその俺なんかに負けるのが怖いのでいらっしゃいますかァ?」
プッツーン。
今の雪ノ下を的確に表す擬音にこれほど相応しい物はないだろう。
「ふふ、この雪ノ下雪乃も舐められたものね。良いわ、どこから来るのか全くわからないその自信を木っ端微塵に吹き飛ばしてあげる」
わぁ、コイツ煽り耐性ゼロだ!
あんな安っぽい挑発に乗るなよ・・・。
「ふっふっふっ、なかなか私好みの展開になってきたじゃないか。何かね、君達は本当は仲良しかね?」
「違います」
「誰がこんな冷血女とって待て待て『キラークイーン』がなんか構え出したんだが」
怖い怖いやめてってマジで。
「まぁ、もうそろそろ最終下校時刻だ、勝負は明日からになるだろう。では、諸君らも早めに帰りたまえよ」
「そうですね」
そう言い残して平塚先生は去っていった。
本当に何がしたいのかよく分からない。
それに続いて雪ノ下はさっきまで読んでいた本にしおりを挟んで閉じ、丁寧に鞄にしまうとさっさとこの空き教室を後にしてしまう。
「・・・・・・ん?」
あれ?これって俺、鍵とか返さないといけないのかな?
しっかりと戸締りまでして?
確かに、面倒臭いという気持ちはある。
というかめちゃくちゃ面倒臭い。
だが、ここで締めなければこの学校の管理をしている人達の仕事を無駄に増やしてしまう。
それに、もしかするとこの教室はすごく重要な場所かもしれない。
それを考えれば、この教室をしっかりと施錠しておくというのが一番良い選択かもしれない。
だが、断る。
俺は今ものすごく虫の居所が悪いのだ。
それにこんな教室、開いていようが開いていまいが誰も損しないだろうさ。
雪ノ下?知らんな!
俺は教室の扉を施錠せず、ただ閉めただけでその場を後にする。
全く、何がスタンドだ。
普通こういう時は、スタンド使い同士が惹かれあってラブコメでもはじまるんじゃねぇのかよ。
なのになんだ今の状況。
スタンド使いから思いっきり排斥されかけたぞ。
やはりどこまでいっても俺は一人で、分かり合えることなどないのだろう。
俺は空いている窓から周りに誰もいない事を確認して、『ハイエロファント・グリーン』に窓の格子を掴ませた後、窓から飛び降りる。
この使い方を見つけたのは結構前だったが、大抵人がいるため使えないのだ。
これで駐輪場まで相当ショートカットする事が出来る。
ふふふ、パーフェぐぁっ。
ちゃ、着地の威力を殺し損ねた・・・。
くそぉ足が痺れる、おのれ許さん雪ノ下。