この守銭奴に祝福を!   作:駄文帝

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この紅魔族の娘と混浴を

カズマside

 

「こんなに嬉しくない抱擁は初めてだ……」

 

「何を言っているのですか?こんな美少女にヌメヌメの状態で抱きつかれるなんて、本来であれば金を払わなければやってもらえない事ですよ」

 

確かに目の前の女性が美少女を通り越して美幼女だったり、ヌメヌメが非常に生臭かったりしなければ喜べるんだけどな……

俺はそんな事を思いながら深くため息を吐き、カエルの粘液でヌメヌメとなった自分の身体を見つめる。

 

なんでこんなことになっているのかと言うと……マナが銭湯に向かって直ぐ、めぐみんが「そう言えば、あの時カズマは見捨てましたよね」っと言って、復讐として抱きつかれたのだ。

俺はただ、カエルを狙撃するために距離を取ろうと思っただけなのに……

まあ、少しくらいはこのまま面倒な仲間を置き去りにするかとは考えてしまったが、さすがにそこまで非道な事は出来ねぇよ。

 

とにかく屋敷に辿り着いた俺は、玄関の扉をゆっくりと開ける。

するとキャルが出迎えてくれた。どうやらバイトが終わって帰ってきていたみたいだな。

 

「あっ……帰っテ来たんだネ。無事デ何よりだケど……それっテ、カエルの粘液だよネ?めぐみんはともかく、カズマまデ何があったの?」

 

「おい、めぐみんはともかくとはなんですか?説明を要求します」

 

そう言ってキャルに突っかかるめぐみん……

ともかくって言われた理由を知りたいのなら自分の胸に手を当てて今までの行動を思い返してみると良い。初っ端に爆裂魔法を放ってカエルに腹の中に消えた馬鹿は何処のどいつだった?

あれ、ギルドの方じゃ結構有名な話になってるからな……もちろん失敗談としてだが。

本当、なんで俺のパーティにはロクな奴がいないんだろう……唯一と言える常識人はルリくらいだし……

俺って本当に運が良いのだろうか?それとも俺の幸運をアクアが打ち消しているのだろうか……

 

ともかく、もうこの話はやめよう……

いくら文句を言っても現実は変わらないからな。

 

「ちょっと色々あってな……それよりも風呂に入って粘液を洗い流したいから、お風呂沸かしてもらえないか?」

 

「そレなら、もう沸かしテあるよ。カエルの討伐に行ったっテ聞いたから、アクアとめぐみんがまた飲み込まレるんじゃないかと思ってネ」

 

「またとは何ですか、またとは」

 

再びめぐみんが杖を振り回してキャルに突っかかっているが……

身体中カエルの粘液塗れせいで、ただの逆切れにしか見えないからな。

そう言われたくないなら、最低限今日はカエルに飲み込まれないようにしてからにしろ。

 

それにしても、キャルはこれを見越して風呂を沸かしてくれたのか……

本当にありがたい。もしかしたらルリに次ぐくらいの常識人なのかもしれない。

確かに最初は襲われたりギルドの人と交渉するはめになったりと迷惑を掛けられたが、キャルはそれを自覚してるし、それ以来は一切問題を引き起こしてない。

どこぞの、大問題を何回も引き起こして、俺に助けてもらうのが当たり前になっている奴らとは大違いだ。あいつら自覚もないし、反省もしないからな……

マナは少しくらいは自覚し、反省しているみたいだが……

 

まあ、今はそれは良いな……折角風呂が沸いてるんだし、早く入ることにしよう。

そう思った俺が風呂に向かおうとしたときだった。

 

「カズマ?私が先に入って良いですか?ヌメヌメしていて気持ち悪いです」

 

「何を言ってるんだ?俺が最初に入るに決まっているだろ」

 

大体、元を辿ると俺がヌメヌメになったのはめぐみんのせいじゃねぇか。

誰がこいつに譲るか。絶対に譲らない。最初に入るのは俺だ。

しかし、めぐみんは俺の言葉に納得いかないようで、俺を不満げに見つめている。

 

「カズマはレディーファーストと言う言葉を知らないのですか?カズマは男性なのですから、ここは女性の私に譲るべきです」

 

「俺は真の男女平等を願う男だ。都合の良い時だけ女性の権利を主張して、都合が悪くなると男のくせにとか言い出す輩は決して許さない。それにレディーってどこに居るんだ?お前はまだ幼女だろ?そういった事は後五年くらい経ってから言え」

 

「この男、言うに事を欠いて私を幼女扱いしましたね!!私はもうそんな歳じゃありません!カズマとの歳の差だってたったの三つですよ!!」

 

「それがどうした?見た目の評価なんて客観的なものだ。つまり俺はお前が幼女に見えればお前は幼女になるんだ。分かったか幼女」

 

「そ、それは……」

 

俺の言葉に口ごもってしまうめぐみん。

かなりの暴論だったが、納得したのか反論をすることが出来ないようだ。

ちなみに似たような事があった時この理論をマナに言ったら顔面を殴られて気を失っている内に、風呂に入られた。なんでも俺が強盗に見えたので、ぶん殴っておいたらしい。

確かに俺も暴論を言ったけどさ、マナがやったのはそれ以上の暴論じゃないか?

「だって、その理論ですと私が強盗と見えたら強盗になるのですよね」っと清々しい顔で言っていたからな……

まあ、後で泣いて謝るまで復讐してやったが……

 

とにかく今は懐かしんでいる場合じゃないな。

めぐみんは反論はしていないものの、未だに不満げな顔をしている。

このままだと俺よりも先に風呂に入るという強硬手段にでる可能性がある……それをされたら俺は入ったら変態の烙印を押されてしまう。

だったらそれを潰せば良いだけだ。

俺は上着に手を掛けて、それを脱ぎ捨てるとさっさと風呂場の方へと向かう。

 

「この男、女性の目の前で服を脱ぎ捨てましたよ!!」

 

「それがなんだって言うんだ?俺は別に子供に裸を見られた程度、なんとも思わねぇよ」

 

そう俺が吐き捨てるように言うと、めぐみんは俺を恨めしそうな目で睨む。

どうする、めぐみん?これで俺よりも早く入るという手は使えなくなったぞ?

今、めぐみんが風呂に入れば男性が入ってくるのを分かって風呂に入ったただの痴女となる。

これなら流石にめぐみんも風呂に入る事は出来まい……つまり、俺の勝ちだ。

 

「そうですか……カズマはそう思っているのですね。ならば私も一緒にお風呂に入ります。私を女性なんて思ってないのなら、それで問題はないでしょう」

 

「もちろん良いぞ。それじゃあ俺は先に入って待ってるからな」

 

「あれ?」

 

なんでめぐみんは驚いているんだ?

自分が言い出した事だろ……まさか、めぐみんはそこまで言えば俺が諦めるとでも思っていたのか?

まだ、めぐみんは俺を理解してはいないようだな……俺がその程度で諦めるわけがないだろ。

この場に居たのがダクネスやマナだったら土下座して謝ったかもしれないが、今目の前に居るのはめぐみんだ。

俺はこんな幼女を見て欲情する精神など持ち合わせてはいない……例えるなら父親が娘と風呂に入るのと同じようなものだ。

 

「カズマ……そういう時は、『そんな事出来るかっ!!』って渋々順番を渡すものじゃないんですか?」

 

「俺は別に幼女に何かしようと思う変態じゃねぇよ。お前は俺をなんだと思ってるんだよ」

 

「人でなし鬼畜ですが、間違っていますか?」

 

迷いもなく言い切っためぐみんの言葉に少しだけ傷つきました。

いや、だってさ……確かに考えたのは俺だけどそこまで言わなくても良いじゃないか。

マナだって少しは……いや、あいつも迷いなく言い切るな。まあ、マナは俺を超える鬼畜だから、言われても傷つきはしないがな。

 

「それで一緒に入るのか?俺はどっちでも良いぞ」

 

「本当にこの男は……良いでしょう。そこまで言い切るのであれば、私も一緒に入ろうではありませんか。だたしこれだけは覚えておいてくださいね。もしカズマが私を襲うような事があれば……」

 

「天地がひっくり返ってもないから心配するな」

 

「なんですとっ!!ほらっ!だったら早く入りますよ!!腰タオルなんてまかなくても結構です。カズマと同じように私も貴方を男性と意識する事なんてないので」

 

「言ってくれるじゃねぇか……そこまで言うならいいぜ。だが少しでも顔を赤くしようものなら変態って称号を与えてやる」

 

「それで構いませんよ。さぁ、早くお風呂に行きましょう!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…………」

 

「カズマ、おじさん臭いですよ」

 

「仕方ねぇだろ。こっちは問題児四人の後始末で毎日疲れてるんだよ。風呂ぐらいはゆったりとした時間を過ごしたっていいじゃねぇか」

 

「四人って……私も含まれているのですね……まあ、お風呂が気持ちいのは事実ですので、今は良しとしましょう」

 

疲れが洗い流されていく……その言葉を実感したのは、この世界に来てからだった。

前からマナのせいで毎日のように疲れ果てていたが、この世界に来てからは単純計算でそれが四倍になったからな。ルリは俺を助けてくれるがそれでも限界はある。

おじさん臭いと言われようが疲れを取れる時に取っておかないと、とてもじゃないがやっていられない。

ほんと、少しくらいは抑えられないものなんだろうか……たぶん無理だろうけど。

 

「それにしても、あのゆんゆんって子、放っておいて良かったのか?久しぶりに会ったんだろ?」

 

「別に構いませよ。あれはライバルと自称していますが、やってるのは追っかけみたいなことですからね」

 

悪意ある言葉で表現するとストーカーと言った感じか……

でも、名前はともかく性格は普通そうな子なんだけどな……なんで、めぐみんにつきまとっているんだろう?学園で一位て言ったって今のめぐみんは一発しか魔法を使えないポンコツ、勝負する価値なんて……もしかしてめぐみんが爆裂魔法しか使えない事を知らないのか?

だったら今度教えて…………めぐみんが傷つくかもしれないしやめておこう。

 

それにしてもめぐみんとゆんゆんは学園時代の同期なんだよな。

って事は飛び級とか留年とかをしていない限りは年齢も同じくらいだ。

俺はそっと目を閉じてゆんゆんの姿を思い浮かべる。彼女のある部位はとても実っていて豊作だった。

そして俺は目を開けて、目の前の女性を見る……そこには絶望しかなかった。それくらいの格差があった。

 

「はぁ……」

 

「おい、今、私の身体を見て哀れみの視線を向けた事について説明してもらおうか」

 

「いや、神は何を考えて持たざる者と持っている者を分けてるのかなって思って……」

 

アクアとかはあみだくじとかで考えてそうだけどな。

まあ、それは駄女神のアクアだからであって、他の女神は真面目に考えている……と言うかそうであってほしい。他の女神までアクアみたいだったら、世界の行く末が本気で心配になってくる。

 

ともかく、俺の言葉を聞いためぐみんは顔を下げてブツブツ何かを……ってそれは爆裂魔法の呪文じゃねぇか!!

 

「おい、なに唱えてんだよ!魔力不足で打てないって知ってても心臓に悪いだぞ!!」

 

「うるさいです。今度からカズマの部屋の前で毎夜のように唱えてあげます。子守歌代わりになりますよ」

 

「永眠させる気か!!」

 

そんな事をやられたら三日も経たずにストレスで倒れるわ!

誰かさんのせいで、こっちは毎日のように許容量一杯までストレスをため込んでるんだぞ!!

くそ……こうなったら『スティール』で追い払うか?いや……それはダメだ。それを使うと俺が寝ることが出来ないし、幼女のパンツを奪ったと変態の烙印を押されてしまう。

最終手段としてマナの投入を検討しておくか……あいつは金を払えば人殺し以外はなんでもやるからな。

 

「それは冗談として、なんで私だけロリ扱いされなければいけないのですか……背丈とかだったら私以下のルリがいるじゃないですか?カズマはルリを子供扱いをしませんよね。私と何が違うのですか?」

 

「歳と性格」

 

「はっきりと言い切りましたね……」

 

逆に聞くけどそれ以外のなにがあるんだ?

年齢が上なのは勿論のことだが、めぐみんと違って落ち着きもあるし、面倒ごとを一切起こさないし、何かと俺の面倒を見てくれるし、一緒に仲間の尻ぬぐいをしてくれるし……

そんな彼女を幼女扱いなんて無理じゃないか。

 

ちなみに一緒に入ると言い出した時に土下座する相手に含めなかったのは、ルリならそんな問題になる事なんてないからだ。

彼女なら多分俺を先に入れてくれるだろうし、もし彼女が入りたいと言ったらそれを優先させる。

いや、だってルリの気を悪くして手伝ってもらえなくなったら、本当にストレスとかで倒れそうだし……

ともかく、ルリとはそういった問題にならない以上、土下座をする必要はない。

 

ついでにアクアは、そういった対象に入ってないから問題はない。

俺にだって選ぶ権利ってのはある。

 

「先程も言ったと思いますが、歳なんてたったの三つ違いじゃないですか。それに来月には誕生日があるので十四になります。そうなればカズマとの歳の差は二つに縮まりますよ」

 

十四歳になる……

つまりそれは学年で表すと中二だ。そして俺は高一……ギリギリ、本当にギリギリだが俺の許容範囲内だ。つまりそれは……

な、なんだ?急に心臓が高鳴って来た。頭も熱くなってきたし……

先程までは平然と見ていられためぐみんの姿を直視する事ができない。見ようと思っても身体が勝手に明後日の方向を向いてしまう。そしてまた見ようと身体を直して……なんかチラ見になっている。

そして、そんな俺の行動を不審げに見ていためぐみんも徐々に顔が真っ赤になってきている。

 

「なぁ……俺達、なんでこんなことになってるんだ?」

 

「ちょ、必死で考えないようにしてたのに、なんで言ってしまうのですか!?そんな事を言われたら恥ずかしなってくるじゃないですか!!」

 

「いやだって……冷静になってみると、これってすごく不味い状況だよな。女子と一緒に入るなんて許されるのは小学生低学年まで、なんで俺はあんな馬鹿げた事を許可したんだ?売り言葉に買い言葉って言えば良いのか……悪かったなめぐみん。俺が譲るべきだったよ」

 

「なんで今更冷静なって謝ってるのですか!?そこで謝られると私の立つ瀬がないのですが!!」

 

そう叫びながら徐々に距離を離していくめぐみん……俺も同じように彼女と距離を取る。

なんか本当に気まずい……どうすれば良いんだ?さすがに、このまま此処に居座る事も出来ないし……

うん。此処から早く出る事にしよう。カエルの粘液は十分に落とせたし、あとは夜にもう一回入れば十分だろう。

そう思った俺が立ち上がろうとしたところだった。

 

「ただいまーっ!!」

 

「キャル、帰ってきていたのですね」

 

なんでこんな時にあいつらが帰ってくるんだよ!!

ま、まずい……今の状況をあいつらに見られたら……片方は不名誉な烙印を押し付けられ、もう片方は場合によっては人生が破滅する。

 

「か、かかかカズマ!?どうすれば良いのですか!?こんな状況、あの二人に見られたら洒落になりませんよ」

 

本当に洒落にならない。アクアは絶対に俺の事をロリニートやロリマさんなど所かまわず言いふらすだろう。そしてマナは今現在、カメラを持っている。あれに撮られてしまったら、それをネタに最悪人生が破滅するまで金をむしり取られる可能性がある。

 

「お、落ち着け、どっちかがこの場から出てしまえば何も問題はなくなる」

 

「そ、そうですね。では私が最初に出るので……」

 

そう、俺とめぐみんのどちらかが脱衣所の方に出てしまえば何も問題はなくなる。

多少は怪しまれるかもしれないが、そこは入れ違いで入ったと言いとおせばアクアの頭なら納得させることは出来るし、マナも深くは追及したりしないだろう。

 

「キャルは二人がどこに行ったか知らないのですか?」

 

「エっと……カズマは風呂に入っテテ、めぐみんは用事あるっテどっかに行ったよ」

 

「そうなの?カエル売ってお金を貰ったから、今日は外に食べに行こうと思ってたのに……」

 

「カズマはカエルの粘液を落とすだケだから直ぐに上がると思うし、めぐみんも直ぐに帰っテくるっテ言っテたよ」

 

「それでは、カズマが風呂を上がって、めぐみんが戻ってきたから行くとしましょうか」

 

な、ナイスフォロー。

キャルのおかげで助かったよ。そう言えば彼女は俺とめぐみんが一緒に入って良く現場を見ていたもんな。きっと気を利かせてくれたのだろう。

 

「た、助かったのですか?よかったですよ。キャルが気を利かせてくれなかった、下手をすると……」

 

「ああ、アクアなんかに見つかったら、ロリコンだって言われかねなかったからな。後でキャルには……めぐみん?急に立ち上がってどうしたんだ?」

 

「私が一緒に入っているとロリコン認定されるのですか……そこまで言い切るのならいいでしょう。本当に私が幼女かどうか確かめようじゃないですか。確かに今の私は魔法は使えませんが、ステータスなら私が上……」

 

「ちょ、迫ってきて何をする気なんだ!?聞いてるのか?これ以上近づくのなら痴女認定するぞ?良いのか……おい、やめろ……あ、アクアー!マナー!!ロリ、ロリ子に悪戯される!!」

 

「またロリって言いましたね!!」

 

ま、不味い……あれこれ言っている内に、こっち向かって走って来ためぐみんに取り付かれてしまった。ステータスで負けているのは事実なので、取っ組み合いになったら勝てるわけがない。

何時もの手段である『スティール』は使っても今のめぐみんが身に纏っているのはタオル一枚だ。今俺の腰に巻いたタオルを奪い取ろうとしているところを見るに、やっても関係なしに迫ってくるだろう。

くそ……本当にどうすれば……

 

そんな事を思っていた時だった。風呂場の扉は勢い良く解き放たれそこから一人の女性が入って来た。救世主……少しだけそう俺は思ってしまったがそれは間違いだった。

 

「カズマ!!助けを呼んでましたが……」

 

風呂場の中に突入して、目を見開いて固まってしまったマナ……そしてその手には魔道カメラがある。ま、不味い。先ほどとは比にならないくらいの不味さで……考えられる限り最悪の状況だった。

今、床に倒れている俺にめぐみんが腰のタオルを取ろうと伸し掛かっている状態となっている……こんな姿を写真なんかに撮られたら……

 

そう思った俺が固まっているめぐみんを押しのけようした時だった……

突如、風呂場に鳴り響くシャッター音……マナの方を見れば呆然とした表情のまま、写真を撮っていた。まさか身体が勝手に動いたって奴か?こいつなら十分にあり得る。

って感心している場合じゃない。こうなったら早く取り上げるしかないのだが……

 

「カズマとめぐみんがお風呂に一緒に……ってなんで私は写真を……ってこれをネタに脅迫すれば……」

 

そう言ってすぐさまに駆け出して行くマナ……

やばい、高ステータスのマナが全力で走ったら俺が追いつくのは不可能だ。何時もなら見えなくなる前に『バインド』を使って縛っているが、今は手元にロープがない。

かと言って、今のうちに何かしらの手を打たないとマナの奴に一生食い物にされてしまう。

顔を真っ青にしてどうしようってパニクってるめぐみんは使い物にならないし……こうなったら奥の手だ。

 

「『スティール』ッ!!」

 

スキルを使ってマナのカメラを取り上げるしかない。幸いにも俺の幸運は高い、上手く言えば一発で奪い取れるはずだ。

しかし、そんな俺の思いとは裏腹に手から感じるのは柔らかい布のような感触、恐らくだが……パンツだ。

クソッ!!俺の『スティール』女性にはパンツしか剥ぎ取らないのかよ!!

たしかにこれはこれでお宝だが……今欲しいのはマナのパンツなんかじゃない。あいつが手に持っているカメラだ。

早くしないと視界から消え去ってしまうし……こうなったらヤケクソだ。

 

「『スティール』!『スティール』!『スティール』!『スティール』!『スティール』!『スティール』ッッッ!!」

 

数打てば当たると言わんばかりに俺は『スティール』を連発する。

しかし、奪い取りるのは髪留めだったり上着だったりと、肝心のカメラとなる気配は待ってくなかった。俺は幸運じゃなかったのかっと愚痴りたくなる気分だが、そんな暇すらもない。

そして、俺は何回『スティール』を使っただろうか?

自分ですらも分からないが、十数回ではきかない回数の『スティール』を使った末でようやく目的の物がきた。

手に感じるずっしりとした感覚……ゆっくりと目を移せばそこにはマナのカメラがあった。

 

「よっしゃ!!これで人生の破滅は回避できたぞ。喜べ、めぐ……めぐみん?」

 

なんでめぐみんは無言で俺の事を見つめているんだ?

その視線には微妙にだが冷たいものが混じってるし……俺がなにかやったのか?

俺が今やったのは『スティール』を使ってマナのカメラを奪い取っただけだぞ。感謝されるいわれはあっても非難されるような事は……

 

そう思っているとめぐみんは無言で風呂場の一面を指さした。

そこに目を向ければ、俺が『スティール』を使って剥ぎ取ったマナの上着やらパンツやら……あれ?なんかすごく多く奪い取ってないか?って言うかマナが着ている服が一通り落ちているような……

嫌な予感を感じつつ、めぐみんの指に従って、視線を移す。

するとそこには…………生まれたままの姿のマナがしゃがみ込んで、俺を涙目で睨んでいた。

…………訂正、確かに俺は幸運だったようだ。

 

「事情が事情なので仕方がありませんが、泣いてカメラを渡すと言うマナの衣服を容赦なく剥ぎ取るカズマの姿は鬼に見えましたよ」

 

そうだったのか?

カメラが一向に来ない事に焦ってたから、一向に気づかなかった。

でも、これは俺は悪くないだろ。元はと言えばマナが写真を撮ってそれをネタに脅そうなんて考えたのが原因なんだしな。マナの自業自得だ。

そう俺は自分の心の言い聞かせる。だって、そうしないと罪悪感で心が押しつぶされてしまいそうだし……

っと俺が思っているとマナがいつの間にか目の間にいた。

こいつ……何をする気なんだ

 

「か……」

 

「か?」

 

「カズマを……殺して……私も死んでやりますっ!!」

 

「ちょ、なに血迷ってんだ!!」

 

叫び声を上げながら俺に襲い掛かってくるマナ……

彼女は倒れている俺に馬乗りになって、そのまま両手で首を絞め殺そうとしてきた。

勿論俺は抵抗するのだが……ステータスの差があり過ぎて話にならず、徐々に両腕が首元に近づいてくる。

此処までか……っとエリス様かメイの元に行くのを覚悟した時だった。

突然、マナの両腕の力が弱まってきた。よく見ればめぐみんがマナに抱きついて俺から引き離そうとしていた。

 

「めぐみん!邪魔しないでください!私はカズマを……」

 

「なにとち狂っているのですか!?元はと言えばマナがカメラで写真を撮ったのが悪いんですよ!半ば自業自得じゃないですか!!」

 

「それはそうですけど!納得いかない事ってのがあるんですよ!!以前この男のせいで、公衆の面前でパンツを剥ぎ取られた挙句、恥ずかしいところを大勢の人に見せることになったんですよ!!それなのに今度は全裸を……」

 

「あれは悪かったって言ってるだろ。まさかパンツを最初に取るなんて思わなかったんだよ」

 

確かにあれは悪い事をしたと思ってるけど……

でもあの後、特に噂話とかにはなってないだろ。たぶん、守銭奴って噂の方が強すぎるからだと思うが……

ともかく、早くマナを説得しないと……っと思ってる時だった。

 

「皆で騒いで一体何をやってるのよ?もしかして、何か楽しい事をやってるのかしら?だったら私もまぜ……」

 

第三者が風呂場に現れたのは……

 

風呂場にずかずかと入って来たアクアは、俺達の今の姿を見て固まってしまった……そしてアクアが風呂場に入って来たことを知って俺達も動きが固まってしまう。

今の状況を冷静に判断しよう……床に仰向けで倒れている俺に、その俺に馬乗りになっているマナにそれを引きはがそうとマナに抱きついているめぐみん……

ま、不味い……こんな状況を他人に、ましてやアクアなんかに見られたら……

 

そして、そんな俺の嫌な予感が的中したのか、アクアは何も言わずにそっと風呂場を離れていく。

俺は誤解を解くべく、そんなアクアを追いかけたかったのだが……二人が未だに固まってるせいで見動きを取る事が出来ない。

早く……あの駄女神を止めないといけないのに……

俺が必死に身体を動かしていると聞こえてくる声……

 

「……ただい……アクア?……焦ってるけど、何かあった?」

 

「た、大変、大変なのよ!!カ、カズマとマナとめぐみんが禁断の三角関係に!私達の知らない間に昼ドラのような関係になってるんですけど!!私はどうすれば良いのよ!!」

 

「?……良く分からないけど……アクアは取りあえず落ち着いて……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やつれてるけど……大丈夫?」

 

「大丈夫って言えたら良かったんだけどな……」

 

カエル討伐から次の日の朝……色々とあって疲れた俺は朝食を外で食べようとルリと一緒に街へと出ていた。

昨日は本当に大変だった。

あの風呂場での騒ぎの後、直ぐに三人で駆けつけて事情を説明したのだが、ルリは「そう」の一言で信じてくれたのに対してアクアは一向に信じようとせず。最終的に一晩に渡って三人で説明を続けてようやく誤解を解くことに成功した。

しかし、そのせいで説明した側も説明された側も疲れ果て、料理をするのも面倒くさくなったので、朝食は各自で取るって事になった。

 

「なんか最近疲れることばかりでな……少しで良いから癒されたいよ……」

 

「本当に、ごめん……」

 

なんでルリが謝っているんだ?

ルリは何も悪い事をしてないだろ。

もしかして、あいつらの暴走を止められない事に謝ってるのか?

別にそこまで気にする必要はないのに……ただ、一緒にあいつらを止めようとしてくれるだけで十分だ。それ以上は彼女にもとめない。

 

 

それにしても今日は、やけに露店が多いな。

此処にはまだ数か月しかいないわけだが、こんなに多くの露店が並んでいるのは初めて見た。

今日は祭りとかの行事はなかったと思うが……

俺が首を傾げると、それを見つめていたルリが説明をしてくれた。

 

「……露店……何か気になる事あった?」

 

「いや……なんかいつもより多い気がしてな」

 

「……簡単……デストロイヤーの需要……」

 

デストロイヤーの需要……あの物騒な機動要塞に需要なんてあるのか?

いや、たぶんそれじゃない。デストロイヤーが来て変わった事と言えば、あれの莫大な懸賞金が冒険者の元に流れた…………ああ、なるほど。そういう事なのか。

要するに、今此処にいる商人たちは懸賞金によって金回りが良い冒険者を目当てに来たわけか……

確かに良く見れば客の多くが見知った顔……冒険者の人達だからな……

 

俺達も、魔王軍関係者の容疑が掛かっているマナ以外は支払われたんだが、そのほとんどは俺の借金(正確にはアクアの借金)で消えちまったからな。

しかも、今はマナが新たにこしらえた借金で、前以上に増えてるからな……

本当に俺って運があるのか?聞いた話だとエリス様は幸運の女神様らしいし、今度会ったら本当に俺に運があるのかないのか聞いてみよう。

まあ、会う機会はない方が良いのだが……

 

「折角だし、少し遊んでいくか?」

 

「……構わない……けど、なにで?」

 

そうだな……なんか面白そうなものはないのか。

俺が街中を見渡すと人だかりが出来ている場所があった。人が多すぎて此処からじゃ何をやってるか分からないが……あそこに何かあるのか?

取りあえず、人だかりに興味を持った俺はルリと一緒に行ってみることにした。

すると、そこには冒険者の中でも屈強な大男たちばかりがおり、皆ある一点を見つめていた。

視線の集まる先には石があり、その隣には人だかりの中でも一際体格の良い大男がハンマーを構えている。

そして……

 

「だぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

雄叫びと共にそのハンマーを振り下ろした。

そのハンマーは勢いよく石へと振り下ろされ、石から小さな火花が散ると共に耳を塞ぎたくなるような高い金属音が辺りに響いた。

しかしハンマーの落とされた石には傷一つなく、大男はそれを見て落胆している。

 

「クソッ、これでも駄目なのかよ……」

 

「今回のお兄さんも無理でした!さぁ、次の賞金は12万エリス!一回一万エリスだよ!!」

 

なるほど、そういった商売をしていたのか。

道理で体格の良い男が集まるはずだ。皆これを壊すのを目的としてやってきたわけか。

俺も挑戦してみようか、っと思うもののあの大男が無理だったんじゃ俺がどう頑張っても壊すのは不可能だろう。ステータスは低いし、攻撃力の高いスキルなんて持っていないからな……

別の所を回ろう……そう思ってルリを探したのだが何処にもいない。

いったい何処に行ったんだ?

そう思って俺が首を振って探すと……

 

「おおっと!今度の挑戦者は可愛いお嬢ちゃんだ!こんな嬢ちゃんが来てしまうなんて、この街には臆病者しかいないのだろうか!?」

 

きっとサクラだろう。

そうやって冒険者にこんなか弱い少女以下の根性なしだと言い、悔しい思いをさせて新たな挑戦者を得る魂胆なんだ。

俺はそんな事を思いながら、ふと露天商の方に振り向いて、挑戦者を姿を確認する。

すると……そこにはルリが立っていた……

えっと……ルリはやる気なのか?

でもルリが力持ちはいえ、それは流石に無理なんじゃ……

 

そんな俺の不安をよそに、ルリは露天商からハンマーを借りるとそれを真上に掲げた。

そしてそれを勢い良く……

 

「はぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

ハンマーを叩きつけられた石は先ほど以上の音を上げた。

そしてその中には高い金属音とは別に何かが壊れたような破壊音も混じっていた。

俺も、露天商も、そして周りに居る冒険者達もそーっと、ハンマーを叩きつけられた石の方に目を移す。するとそこには真っ二つに割れた石の残骸が……

 

「……割った……」

 

皆が、石を叩き割ったルリを信じられない目で見つめる中、俺はある事を胸に深く刻んだ。

絶対にルリは怒らせないようにしよう……ガチで殺される。

 

 

 

 

 

 

 

 

マナsied

 

「めぐみん!ちょっと待って!それ、私のお金で買ったのよ!!」

 

「露店でどう注文したら良いか変わらず、涙目で困り果てていたところを助けて貰って、よくそんな口がきけますね」

 

「泣いてない!涙目になんてなってないから!!」

 

うん、何というか……仲が良いのでしょうか?

私はどうしたものかと、ゆんゆんから取り上げた串焼きを頬張るめぐみんとそれに食って掛かるゆんゆんの姿を見つめました。

 

なぜこうなっているのかと言うと、昨日あった事件の所為で皆疲れ果ててしまったので、今日の朝食は外で取ることになったんですよね。

それでめぐみんと一緒に取ることにした私は、朝食を無事に終えて帰り道を歩いていたのですが……串焼きの露店の前で突っ立っていたゆんゆんと偶然鉢合わせてしまったんですよね。

彼女はどうやら注文の仕方が分からず困っていたようなんですが、それにめぐみんが助け舟を出して無事に目的の物を買う事が出来たのまでは良かったのですが……

 

ゆんゆんがお礼にと三本あるうち一本をめぐみんに渡そうとしたところ、めぐみんが残り二本の方を強奪。その結果、ゆんゆんが怒り取っ組み合いに発展してしまったんですよね。

 

この場合、私はどうするべきなのでしょうか?

止めても良いのですが、喧嘩するほど仲が良いなんて言葉があるように、これが彼女達なりのコミュニケーションであれば止めるのは野暮ですし……でも徐々に辺りの目を集め始めているのですよね。

何かいい方法は……

 

「マナ、手を貸してください!このボッチを一度痛い目に合わせてやります!!」

 

「ちょっと待ちなさい!卑怯よ、めぐみん!!」

 

「何が卑怯だと言うのですか?冒険者に仲間が居るのは当たり前のこと。ゆんゆんも仲間が居るのなら助けを呼んでも良いのですよ」

 

「そ、それは……」

 

ゆんゆんは納得しかけていますが、普通にこれはおかしいと思いますよ。

まあ、私としては仲間であるめぐみんに勝ってほしいので別に良いのですが。

なんか彼女、悪い男とかに騙されそうで心配ですね。私の近くにはその悪い男の筆頭が居ますし……

ともかく、とっととゆんゆんを捕まえて、終わりにしましょう。

 

「えっと、その、お、お金をあげるので、私についてください!!」

 

「ゆんゆん、なに血迷った事を言っているのですか?マナと私の絆はそんな事で……ん、お金?」

 

めぐみんが何か重要な事を思い返したような顔をしている間にも私は後ろに素早く回り込んで羽交い締めにしました。……めぐみんを。

いや、だってよくよく考えれば、ゆんゆんの串焼きを二本も取っためぐみんが事の発端なんですよね。ならば悪い方に罰を与えるのは当たり前の事。

喧嘩両成敗なんて言葉がありますけど、私としては原因となった人が全ての責任を取るべきだと思います。だから、決してお金に目が眩んでめぐみんを売っているわけではありません。

 

「ま、マナ!?私を売る気なのですか!?あなたの頭の中では、仲間よりもお金の方が重要なのですか!?」

 

「お金が一番大事なのは当たり前の事じゃないですか」

 

「一切の迷いなく言い切りましたね!この守銭奴!!……良いでしょう、ならば、もし私を助けてくれるならゆんゆん以上のお金を支払う事を約束しましょう。さぁ、私を放してゆんゆんを……」

 

「めぐみん……先日の爆裂魔法の一件で、カズマにお仕置きとしてお金のほとんどを取り上げられてる事を、私が知らないとでも思ったのですか?今のめぐみんに支払い能力がほとんどない事は知ってますよ」

 

「な、なんで、そんな事を知ってるのですか!?まだ仮釈放されてからそれほど日にちが経っていなかったはずですよね!?私話した覚えがないのですが!?」

 

べ、別に常に仲間の財布の中身を確認するなんて真似はやってませんよ……

ましてや、仲間がお金のある時に嵌めてお金を奪い取ろうなんて考えたこともありません。

 

そんな事よりも、めぐみんが抑え込まれてる事を知ったゆんゆんは、手をわきわきと動かしながらゆっくりと近づいてきます。

勿論、めぐみんは必死に抵抗して逃れようとしますが、いくらレベルが高いとは言え所詮はアークウィザードの腕力。レベルが低く冒険者であるカズマには勝てるかもしれませんが、前衛職である私の腕力に勝てるはずもありません。

 

「めぐみん……覚悟は良いわよね」

 

「ちょ、その手は何ですか?その手で何をする気なんですか!?ちょ、近づかないで……や、やめろぉぉぉぉぉぉおお!!」

 

その後の事はめぐみんの名誉のために省きますが、一言だけ言うとこの日初めてゆんゆんはめぐみんに白星を挙げたそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く……こんなか弱い少女を二人がかりで追い詰めるなんて、貴方達にはプライドと言うものがないのですか?」

 

「か弱いって……いつもめぐみんは大人扱いされたがってるじゃないですか。都合の良い時だけ少女っと言うのはどうかと思いますよ」

 

「それに最初に仲間を使おうとしたのは、めぐみんのはずよね?」

 

「うっ……まだ会ってそれほど立っていないのに、その私を追い詰めるコンビネーションは何処から来るのですか?」

 

コンビネーションって言うか、めぐみんの言う事が都合が良すぎなので、それに突っ込んでるだけなんですけどね。

それにしても、めぐみんに初めて勝てたのが嬉しかったのか、ゆんゆんからは二十万エリスももらいましたよ。私が新たに作った借金に比べれば焼け石に水状態ですが、思わぬ小遣いと思えば悪い額ではありません。

今後も、彼女とは良い関係でいたいものです。

私が懐に手を伸ばして、増えた財布の重みにほくそ笑んでいると、丁度、道の先にカズマ達が見えてきました。

 

「カズマにルリじゃないですか。こんな所で何をしているのですか?朝食は終わったはずですよね?」

 

「ん?マナとめぐみんに……ゆんゆんだっけか?いや、ちょっと臨時収入があったんで露店を二人で見て回ってたんだよ。そっちはゆんゆんと一緒に何をやってるんだ?」

 

「えっと……帰りに道に出くわしたので、ついでに露店巡りをしてただけですよ」

 

正直、この世界にはまだ来てから間もないので、露店で売っている物、一つ一つがもの珍しいのですよね。正直見て回るだけでもある程度満足できます。

まあ、余りしつこく説明を求めると怪しまれるので、どうしても気になった物だけゆんゆんやめぐみんに聞いているのですけどね。

たぶん、そこら辺はカズマも同じでしょうね。

 

「取りあえず、俺はそろそろ家に帰ろうと思うけど……マナはどうするんだ?」

 

「そうですね……私は一通り見て回って満足したので、一緒に帰りますか。めぐみんもそれで良いですよね」

 

「それで構いませんよ。どうせ買うお金なんて今の私にはありませんからね」

 

ルリを見れば彼女も無言で頷いているので、早く家に帰る事にしましょう。

私達が家の方へ帰ろうとすると、どうしていいか分からずきょろきょろとしているゆんゆんの姿が目に入りました。

えっと……このまま家に一緒に来たいのですかね……

私としては別に構いませんが……それを声に出して表明しないと、このまま置き去りにされると思いますよ。なんだか、めぐみんがボッチっと言っていた理由が分かってきたような気がしましたよ。

そんな事を思いながら見つめていると、カズマがゆんゆんに声を掛けました。

 

「えっと……良かったら家に来るか?お茶ぐらいなら出すけど……」

 

カズマの言葉に、ゆんゆんは一瞬だけ嬉しそうな表情を浮かべた後、すぐにはっと首を振ります。

 

「私は此処に馴れ合い来たんじゃないわ!めぐみんを倒すために来たのよ!!今度は誰の手も借りずにあなたを倒して見せるわ!それまで待ってることね、めぐみん!!」

 

そう言うとゆんゆんは振り返り、私達とは逆の方向に歩いて行きます。

なんか途中でこちらを見ているのですが……本心ではついてきたいのでしょうか?だったら素直に言えば良いと思うのですが。

なんだか、少しめんどくさい娘なのかもしれませんね。

まあ、私は遠慮がなさすぎるとカズマに口煩く言われてますがね。

 

「……放って置いて……良いの?」

 

「大丈夫ですよ。本当に寂しいのなら何かと理由を付けて一緒に居ようとするはずです」

 

「めぐみんは、ゆんゆんとは結構長い付き合いなのですか?」

 

「ええ、彼女は紅魔族の中では変わり者で、いつも一人でいましたからね。見かねた私が構ってあげていたのですよ」

 

「変わり者って……どこが変わってるんだ?見た感じ、お前よりは常識がありそうだったが……」

 

「おい、私よりはとはどういう意味か説明をしてもらおうか……返答次第ではただじゃすみませんよ」

 

「それよりも、どこが変わっているのですか?私も興味があります」

 

「……まぁ、良いでしょう。カズマには後で問い詰めることにします。実はゆんゆんは、先日の様に名乗りを恥ずかしがったり、常識がないと言えば良いのか、たまに変な事で文句を言ってるんですよ」

 

それってもしかして、変人だらけの村で唯一の常識人だったために、逆に変人扱いされてるって事ですか?

ゆ、ゆんゆんが不憫に思えてきましたよ。

私は彼女の後ろ姿を見つめながら、強く生きてもらいたいと願わざるを得ませんでした。




長い間投稿する事が出来ず、すいませんでした。
つい最近まで忙しく、感想を返信することも出来ませんでした。
明日からは三章が終わるまでは、毎日一話投稿したいと思います。

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