この守銭奴に祝福を!   作:駄文帝

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この牢獄に守銭奴を

街の中央に位置する警察署。

 

普通の生活している者なら絶対にお世話になることの無い、そんな施設の奥に存在する牢屋の中に私は佇んでいました。

 

ギルドから強制的に連行された私はこの中にぶち込まれたのですが……

どうしてこんな事になってしまったのでしょうね。コロナタイトが転移された場所が王城でなければ今頃はデストロイヤー討伐の報酬を受け取っていてのですが…………やっぱり、アクアが近くに居たのが悪かったのでしょうか?

 

しかも、アクア達や街の冒険者達にも裏切られましたし……カズマは何か考えている可能性がありますが、此処は貴族などの圧倒的権力者の居る世界です。

考えてみると、彼がどれだけ頑張ったところで、真っ当な手段では無駄になる可能性が高いんですよね。そうなれば脱獄などの手段しかありませんが……そこまで彼に迷惑を掛ける事になるなら、潔く刑を受けますよ。

死刑になる可能性もありますが、それでもカズマを脱獄の手引きをした犯罪者にさせるわけにはいきません……

まあ、私を売ったあの金づる共は共犯に仕立て上げてやりますが……

 

それにしても、暇ですね……取調べは明日にすると言われましたが、どうやって暇を潰せば良いのですか。

まあ、警察が犯罪者にそんな配慮をする必要なんてないのでしょうが……

 

私が諦めて、眠ろうとした時でした……

 

「おう、コラ、抵抗なんてしてねぇだろ!もっと丁寧に扱えや!!」

 

「黙れ、チンピラが!お前のような奴にする配慮なんか無いんだよ!とっとと歩け!!」

 

どうやら、私以外の犯罪者が牢屋に連れてこられたみたいですね。

声からすると男性のようですが……って私の見る限り、此処には牢屋が一つしか無いんですが、新しい犯罪者をこの牢屋に入れるって訳じゃないですよね。

 

いやいや、私は女性ですよ!男女を狭い閉鎖空間に二人きっりにして間違いなんかが起こったらどうするつもりなんですか!?入れる相手は犯罪者なんですよ!!

 

私がこれから起こるかも知れない事に恐れを抱いていると、警官に連れられてきた犯罪者が私の入っている牢屋の中に入って来ました。

 

「たっく、最近の警官はこれだから…………あれ?マナだよな。なんでこんな場所に居るんだ?まさか裕福な家の盗み入って……お前なら本当にやりそうだな」

 

牢に入ってきたのは、先日のパーティ交換の際にカズマの代わりに入ってきた、この街のチンピラ冒険者として有名な男、ダストでした。

なぜ、この男が牢屋に入れられているのか分かりませんが……まあ、この男なら一安心ですね。むしろ知り合いが一緒に居てくれて、少しだけですが心強いです。

でも、聞き捨てなら無いことが一つだけあります。

 

「会って早々、失礼な事を言いますね。そんな事は、絶対にバレないと確証が無い限りはしませんよ。それよりも貴方はどうしてこんな場所に居るのですか?」

 

私が疑問を投げかけると、ダストは黙り込み、気まずそうな顔をしています。

此処では言いにくい事なのでしょうか?でも今は私とダストの二人しかいませんし……私が関係している事なのでしょうか?

でも、私が彼にしたことなんて、有り金を全て巻き上げたり、半年間の報酬の八割を貰ったり……手酷い内容だとは思いますが、警察の厄介になるような事はありませんよね。

 

私が、ダストが黙り込む理由が検討もつかず、首を傾げていると、ダストはようやくその口を開き理由を話してくれました。

 

「デストロイヤーの討伐に参加しただろ?だから、それなりのお金が手に入ると思って、貴族が行くようなお店に行って、ツケで遊びまくったんだよ。………………誰かさんのせいで、報酬の八割を持っていかれるのを忘れてな。それで、店に詐欺の容疑で被害届を出されて……」

 

…………………………

 

わ、私は悪くありませんよね?大事な事を忘れていたダストが悪いんですよね?

なんか、最近これに似たような人に会ったような……あ。

アクアが居ましたね。彼女も同じように報酬を当てにして借金をした挙句、報酬はほとんど入らず、最終的にルリに貸して貰っていましたね。

おそらくですが、アクアと一緒のパーティを組んだため、彼女の不幸によってこのような目に……

 

目の前に居る男の件といい、カズマの借金の件といい、私の王城爆撃事件といい、アクアは本当に疫病神なんじゃないですか?

もう誰の反論できないと思いますよ。

 

その件は一旦置いておくことにして、この空気をどうしましょう?

凄く気まずい雰囲気に満たされているのですが……

 

「そ、そんな事より、お前はどうしてこんな所に居るんだよ。盗みじゃないなら、一体なにを仕出かしたんだ?」

 

「それが……デストロイヤーの際に飛ばした動力炉が王城に転移させられたみたいで……死者は出なかったそうなのですが、国家転覆罪で捕まってしまいました」

 

それを聞いたダストが黙り込み、再び場が凍りついてしまいました。

うん、やっぱり王城に爆発物なんかを送るなんてヤバイですよね。って言うかこのままだと死刑になりますよね。

そうなれば脱獄しかないのでしょうが、私一人で無理ですし、カズマは協力してくれるかもしれませんが、先程思った通りこれ以上彼に迷惑を掛けるわけにはいきません。

私が諦めて居ると彼は励ますようなに言葉を掛けてくれました。

 

「確かに、王城を吹き飛ばしたは不味いが……相手はあのデストロイヤーだぜ。その程度の被害で済んだら御の字だろ。この国の王様は冒険者を重用しているらしいし……お咎めなしは無いとは思うが、死刑にされるなんてまずねぇよ。そんなに心配するなって」

 

そ、そうなのですか?

それが本当の事だとしたら安心出来ますが……この世界に来てからの事を考えるとそううまくいくとは考えられないんですよね。

でも、このダストと言う男は嘘を言っていように思えませんし……これはもしかしたら、大丈夫なのでしょうか。信じてもいいのでしょうか?

ともかく、明日は取り調べあるようですし、今日は早めに寝るとしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の昼頃、私は警察所の一角にある取調室の中にいました。

室内の中央には机が置かれ、その机を挟むように椅子が二つ置いてありました。私はその部屋の入り口から遠い方の椅子に座って取り調べが行なわれるのを待っているのですが……緊張してきました。

 

聞いた話だと今回の取り調べで、裁判が行なわれるかどうか決まるそうです。おそらくですが、裁判になったら勝ち目はないので、実質この取り調べで有罪か無罪か決まると言えるでしょう。

出来るだけ不利にならないような発言をしなければいけませんね。

 

緊張を解きほぐすために深呼吸をしていると、セナが二人の騎士を連れて部屋に入ってきました。

セナは私と向かい合わせの席に座り、騎士の一人は私の背後に立ち、もう一人は入り口の方に用意されていた椅子に座り、机に紙を広げました。

たぶん、一人が私が暴れた際に押さえつける役で、もう一人は調書を取る役割でしょう。

 

これから取り調べが始まるみたいですが……三人とも私に凄い威圧感を放っていますね。日本で自白による冤罪が多い理由が実感できましたよ。こんな中に何日の入れられたら嘘の自白をしてしまいますよね。

気を確かにして、何とかこの取り調べをやり過ごそうと決意していると、セナが小さなベルを机の上に置きました。

 

「これが何か知っているか?これは嘘に反応して音を鳴らす魔道具だ。お前が嘘をついても直にバレる……その事を頭の中に入れておけ。では取り調べは始めるとしよう」

 

そんな魔道具があるのですか……一番簡単な対策として黙秘権を使うと言った方法がありますが、今は私の方が圧倒的に不利です。そんな事をすれば裁判になり、私の有罪がきまるでしょう。

ダストの話を聞く限り死刑にはならない可能性が高いみたいですが……それでもこんな事で罰を受けるのなんてごめんです。

 

私が出来る限り発言に気をつけようと決意していると、セナが声を掛けてきました。

 

「サトウマナ。年齢は16歳で、職業は冒険者。就いてるクラスはソードマスターで、このレベルだと珍しい部類か……では、最初に出身地と冒険者になる前は一体何をしていたのかを聞こうか」

 

「出身地は地球と言う場所です。そこではJKをしていました」

 

…………

 

うん、ベルはなりませんね。どうやら、嘘さえ言わなければかなり大雑把な答えや曖昧な答えでもいいようですね。早速ですが大きな抜け穴を見つけられましたよ。

私の答えにセナは頭を抱えて「……JKって……でもベルは鳴ってない……」たどとブツブツと言っています。私の答えに困惑しているのでしょう。

彼女には昨日手酷い仕打ちを受けましたからね……この調子で答えていくことにしましょう。

 

「……どちらも聞いた事がない単語なんだが……まあ、嘘は言っていないみたいだから良しとしよう。では次に冒険者になった理由を教えてくれ」

 

「お金が欲しかったからです」

 

「そ、そうか……では次にお前の所属するパーティのリーダーの借金についてだが、この国を恨んだりはなかったかのか」

 

「借金を負ったカズマは可哀想だと思いましたね。この国については多少は恨みましたが、この原因となった厄病神への恨みの方が強かったですよ」

 

なにせ、アクアが馬鹿をやらかしさえしなければ、三億と言う大金が手に入ったのですよ。

手の出せない相手よりも、目の前に居る相手を恨みますよ。まあ、復讐をしたり、冷たい態度を取ったりなど行動には移しませんでしたがね。

なんと言うか……慣れの所為か、アクアならしょうがないと言った気持ちが芽生えたんですよね。彼女は普段から迷惑を掛けまくりますからね。

 

ともかく、私の答えを聞いたセナは「……厄病神とは誰なんだ……でもベルは鳴ってないし……」とまた深く悩みこんでいます。調書を書いていた部下もセナの耳元で小さく「このまま出しても良いんですか?絶対に上の人に怒られますよ」っと言っています。声を非常に小さくして言っているのですが、私にはそれで十分に聞き取る事ができます。

お金に関する情報を逃さないように、鍛え上げられた私の耳ならこの程度の事など造作もないことです。

 

私が暫くの間、待っていると何かしらの決心をしたセナが私を見つめながら声を掛けてきました。

 

「あなたは、王城にコロナタイトを転移させたが、それは狙ったものか」

 

「別に狙ったわけではありませんよ。ランダムテレポートをしたら、たまたまそこに転移されただけです。私は王城に爆発物を故意的に送り込めるほど度胸のある人間では有りませんよ。あくまで街の……街を含めた皆の安全を確保するためです」

 

セナがじっとベルを見つめていますがなることは一向にありません。

まあ、当たり前の事でしょう。私は一切嘘を言っていません。最後の方に街の安全と危ない言葉を発言しかけましたがね……いやだって、あの時は自分の安全が第一でしたからね。

でも街を含めた皆(私も含む)と言い直す事で何とかでしましたよ……結構危なかったですね。

 

私がセナの発言を待っていると、彼女は申し訳なさそうに顔を上げて話しかけてきました。

 

「すいません。どうやら私が間違えていたようですね。貴方に関してはとても悪い噂を聞いたもので……申し訳ありません」

 

先程とは打って変わって、丁重な言葉使いで、威圧感も全くないのですが……普段と犯罪者を相手にするときで口調を変えているのでしょうか。

まあ、女だからといって舐められないようにするためにはこうするしかなかったのでしょうが……あまりの変わりように別人だと思いましたよ。

例として出すのには非常に失礼なのですが、カズマの目上の人の態度と下の人の態度と同じくらいの差がありました。

 

でも、今はそんな事よりも私は今後どうなってしまうかが重要です。セナに聞いてみましょう。

 

「あの……このままだと私はどうなるのですか?」

 

「王城が爆破された以上、なにもなしと言う訳には行きませんが……刑務所に送られたり死刑になることはありません。城の修復費の一部負担といった形になると思います」

 

やはり、お咎めなしとはいきませんか。

一部とはいえ、城の修理費ともなれば莫大な金額になると思います。それを払いきれるか心配ではありますが……死刑などにされるよりは、遥かにマシでしょう。

 

たぶん、出来た借金はパーティのリーダーであるカズマに請求が行くんでしょうね。アクアに続き私まで借金を背負わせてしまうなんて、彼には申し訳ない気持ちでいっぱいです。

無事に帰れたら何か一つくらい言う事を聞いてあげましょう。ヘタレのカズマですから、それほど酷い事はされないと思いますしね。

 

ともかく、これで終わりだと思った私は肩の力を抜いて、机に突っ伏しました。

何か悪い事が起きるのではないかと思ったのですが……今回はそれに当てはまらないみたいですね。

そういえば、セナは私の悪い噂と言っていましたがどのような噂なのでしょう。

 

「すいません。私の悪い噂ってどのような噂なのですか?」

 

「そ、それが……値切りを断られた店で悪い噂を立てると脅したり、他にも商品にわざと傷を付けて、それを根拠に値引きをしたり…………これは信じられなかったのですが、仲間を人身売買しようとしたりなど、人間性を疑う様な噂ばかりで…………噂ですよね?」

 

「……う、噂です」

 

チリーン。

 

今まで鳴ることがなかったベルが始めて鳴りました。

そしてそれを聞いたセナは私に疑いが晴れる前と同じ様な冷たい視線を向け、それを向けられた私は顔をうつむかせました。

 

いや……その、私の言い分も聞いてください。

それらは、全てカズマにバレて未遂で終わっています。頭を思いっきり殴られて、被害を被った人に彼と一緒に頭を下げにいきました。そしてその全てで被害者から許されています。

まあ、許された理由は私が頭を下げたからではなく、カズマが必死に……見た人の誰もが同情をするくらいに許しを請うていたからだと思いますが……

 

「被害届は出されていないので、私が言う事はありませんが、貴方はリーダーに少しは感謝したほうが良いのでないですか。貴方のリーダー、不幸のカズマとか言われてるそうですよ」

 

べ、別にカズマに迷惑を掛けようと思ってそんな事をやっているのではありませんよ。

ただ借金でお金が無いから出来るだけ消費を抑えようと思った結果、そのような事になってしまうんですよね。

思い返し見ると、カズマはこの世界に来てから五十回以上はパーティメンバーの所為で頭を下げています。不幸のカズマが納得できる状態ですね。

今度からは少し自重をして見ましょう。

何処まで出来るか分かりませんが……

 

「念のためにもう一度言いますが、貴方は魔法軍の関係者ではないのですね?魔王軍の幹部の知り合いなどもいませんよね」

 

「当たり前です。私にそんなものが……」

 

チリーン。

 

へっ!?

どうして音が鳴るのですか!?私に魔王軍の幹部の知り合いなんて……幹部……そういえばウィズは魔王軍の幹部だったような……

ヤバイです。どうしましょう。ウィズにそんな大層な者の風格がなかったので、すっかり忘れていました。ともかく、これで容疑者に逆戻りです。

な、なんとかうまい言い訳を考えなくては……

 

「もう一つだけ聞きますが……貴方は十億エリスを渡されたら、冒険者達を裏切りますか?」

 

……………………

 

その質問に答えた結果、ベルは今までにないほどの音を上げ、魔道具を破壊するという前代未聞の事態を引き起こしてしまいました。

ついた嘘が大きすぎたみたいですね。

 

ともかく、その結果として私は国家転覆罪の容疑者として裁判を受ける事が決定しました。

どうやら私の感は当たっていたみたいですね。別に当たらなくても良かったに……

 

 

 

 

 

 

 

はぁ……

もう何度目になるか分からないため息を付きながら私は牢屋の中で佇んでいました。

 

後もう少しで無罪とまではいかないものの、牢屋から出ることが出来ると思ったのにどうしてこうなったのでしょう……やっぱり金に関する欲望を少し押さえて方が良いのかもしれません。

あの後、魔道具を破壊してしまって、滅茶苦茶驚かれましたからね……過去に前例のない事態だったみたいです。

私の金に関する欲望が強すぎたと言えば良いのか……あんな大金を積まれたら少しくらいは迷ってしまうのが人の性ってやつじゃないですか……

 

それにしても本当にどうすれば良いのでしょうか?もう裁判を受けることは確定してしまったようですし……聞いた話だとこの国の裁判は知人が弁護人をやらなければいけないのですよね。

私の知人と言えば、悪魔すらも泣かせかねない鬼畜男に駄女神、爆裂魔法愛好家に変態……唯一希望を持てるにはルリくらいですが、彼女は裁判までに回復するか怪しいですし……

もしかして、これって詰みましたかね?

 

まあ、今の私にできる事なんて何もないので、そこで寝ている男のように、私も寝ると……

 

ズドンッ!!

 

な、なんでしょう?遠くの方から爆発音が聞こえてきたのですが……ものすごく心当たりがあるのですよね。

だってそれ……毎日のようにとはいきませんが、かなりの頻度で聞いてますし……

いやいや、流石にそんな事を起こそうとすればルリ……は今は使い物になりませんが、カズマは絶対に止めようとするはずです。きっと私の空耳に決まっています。

そう決めつけた私は毛布を被って眠ろうとして……

 

「……ナ、……マナ、起きて!起きてってば!!」

 

ああっ!!やっぱりそうなんですね!私の空耳じゃなかったんですね!!

もう現実逃避したいですよ……なんでこんな時に問題行動を起こすのですか?ただでさえ不味い私の立場がさらに悪化してしまうじゃないですか。カズマ……保護者ならしっかりと止めてくださいよ。

心の中で文句を言っていても仕方なので、私は牢屋に設けられた格子付きの窓に目をやります……するとそこには予想道理と言えば良いのか……アクアの姿がありました。

 

「アクア……こんな所でどうしたのですか?」

 

「どうしたのか?じゃないわよ!マナを助けに来たに決まってるでしょ。今回、マナを訴えた奴、ダクネスの話だとものすごく陰湿で執念深い奴らしいわよ。わたし達がどんなに弁護しても権力でねじ伏せるに決まってるわ。早いとこ、此処から私達と一緒に逃げましょう」

 

「それで、めぐみんの爆裂魔法を使って署員を引き離したのですか?なんて大胆な事を……カズマには止められなかったのですか?」

 

「本当は昨日決行しよと思ってたんだけど、カズマに『バインド』で縛られちゃったのよ。それで今日は皆でカズマの顔面に拳を叩きこんで気絶させてから来たから何も問題はないわ」

 

それ……明日が恐ろしいと思いますよ。

あの男、怒らせると本当に恐ろしいですからね……

って言うかアクアは毎度のようにカズマを怒らして手痛い報復を受けているのに、本当に凝りませんよね……

まあ、初めて彼の報復を受けるであろうめぐみんとダクネスには冥福を祈っておきましょう。

 

私が目を瞑って二人の無事を祈っていると、アクアからこちらに何かを投げ込みました。

これは何でしょうか?透明な瓶に不思議な色をした液体が入っているのを見ると何かしらのポーションのようですが……

 

「アクア?これは何ですか?」

 

「ここを脱出するための道具に決まってるじゃない」

 

「ポーション一つで脱出できるのですか?」

 

「そんなの簡単よ。それはウィズの店で売っていた衝撃に反応して爆発するポーションだから、壁に叩きつければ一瞬で脱出できるわ」

 

どうよ、完璧な計画でしょ、っと言いたげな顔していますが……その計画の大きな穴には気づいていないみたいですね。

たぶん脱出の計画はアクアに一任されて見たいですね……だって、他の人が聞いたらこの計画が失敗する事に直ぐに気づきますし……

取りあえず、いまだに自慢げな顔をしているアクアに大きな穴について話すことにしましょう。

 

「アクア……私はダクネスじゃないんですよ。こんな閉鎖空間が爆発物なんて使ったら、壁もろとも私が吹き飛びます」

 

私の言われてようやく気がついたのか、どうしようと言った顔をアクアがしています。

やっぱりそこまで考えてなかったのですね……まあ、アクアの頭ならしょうがないとは思いますが……

第一、私にここを出る気がありませんからね……だって、此処を脱出すればカズマに迷惑をかけてしまうじゃないですか。日頃から色々と迷惑をかけてますが国家反逆罪に巻き込むほど私の心は汚れてませんよ。

だから、アクアの計画が完璧だったとしても此処に残るつもりだったんですけでね。

 

「まあ、諦めて明日裁判があるらしいので、それの準備を……」

 

「だ、大丈夫よ。私に考えがあるわ。なんせマナがヒントをくれたじゃない」

 

へぇ?私、アクアにヒントなんてあげましたっけ?

なんかすごく嫌な予感がするのですが気のせいでしょうか?

って私が悩んでる間にアクアがどこかに行ってしまいましたね。一体どこに行ったのでしょうか?

私が首を傾げていると……

 

「……そうなのよ。ダクネスっていう変態が、昨日見知らぬ少年に「なぁ、良い事をしてやるからこっちに……」ってそれは下心満載の視線を向けて……」

 

「それは本当ですか!?分かりました、今すぐにでも私が逮捕に……」

 

アクアはなんてことを言っているのですか!?

これじゃあ、ダクネスに変態疑惑が……ってすでに疑惑なくて変態でしたね。ドMとショタと言う性癖の違いはありますけどね。

あと、一言だけ補足させてもらいますが、ダクネスが捕まったとしても私と一緒の牢屋に入れられるとは限りませんからね。別の牢屋の可能性が高いくらいです。

 

さてと、このポーションをどうしますかね……下手に持っていると脱獄の容疑を掛けられそうですし……かと言って外に投げるのは非常に危険ですし……

どうやって処理したものか困ったものですね。

 

私がポーションの処理の方法に悩んでいるとダストの姿が目に入りました。

そうだ!こうすればいいんですよ!!

良い処理方法を思いついた私は、早速ダストのそばまで近寄ると、私はダストを起こさないように慎重にポーションをダストの懐に入れます。

ふぅ……これで私には容疑はかかりませんね。頼れる男がそばに居て助かりましたよ。

証拠隠滅を無事に終えた私は、再び毛布を被って寝ることにしました。明日は裁判なので身体を休めるために早めに寝るとしましょう。

 

その後、朝方に「違うんだ!これは誰かの陰謀なんだ!!」と喚きながら署員に連れ出される男の姿を目撃しましたが、これはアクアが悪いと心の中に言い聞かせ続け寝たふりをしました。

 




最後の投稿から一年もかかってしまいすいませんでした。
ちょっとスランプに陥ったり、ゲームの方にハマってしまったりと理由は色々とありますが、長い間返信すらできなかった事を許してください。
三章ですが、すでにバニル戦まで書き終わっていて、残りはエピローグのみとなっています。予定では全十話、十二万字となっています。
四章も続けて投稿できるように頑張りたいと思います。

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