この守銭奴に祝福を!   作:駄文帝

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この冷たい時期に三度目の死を

サキュバスが屋敷に侵入してから二日目。

冒険者ギルドで美味しい依頼が張られてないか待機しているカズマ以外は、皆屋敷でごろごろしていました。最近は良い依頼が出ないですよね……

まあ、強いモンスターの蔓延る冬に、簡単な依頼が早々張り出されるはずがないんですがね。この時期でも平然と行動できる、日本から転生したチート持ちはずるいと思いますよ。

 

妬んだところでしょうがないので、近くにあった本を……

 

「あの……カズマがまた外で泊まると言い出したのですが……何かおかしいと思いませんか?」

 

突如、めぐみんはそのような事を言い始めました。

確かに、カズマはサキュバスの件から二日連続で外の宿に泊まってくると言いました。でも、屋敷があるのに外に泊まる必要はあるでしょうか?さらに言うと借金があるというのに、そんな無駄な金を使うでしょうか?

疑問に思ったのは確かですが、個人の自由だと思って黙っていたのですが……めぐみんには気になるようですね。

 

でも、思いつく理由なんて……

 

「アクア、何かカズマにしませんでしたか?それで怒って外に出かけている可能性があります」

 

「マナは一体私を何だと思ってるのよ!!最近は何もやってないわよ!やったのなんて、精々カズマが洗脳された時に、日頃の仕返しにと何十発も殴っただけよ!その後、治療はしてあげたんだし、文句を言われる筋合いはないわ!」

 

やってるんじゃないですか……

治療したんだから良いって、その理屈だと医者は自分の治せる範囲ならいくらでも相手を傷つけても良いって事になると思いますよ。いくらなんでもそれは暴論です。

 

でも、洗脳されたカズマが取り押さえられた後に加えられたリンチ(文字の間違いはない)は悲惨なものでした。特にパンツを剥ぎ取られた、めぐみんや、なぜか非常に殺気だったダクネス、そしてアクア………………私以外全員がカズマに凄まじい暴行を加えていましたね。

ともかく、あれを意識がある時にやられたら、暫くは口がきけない状態になってもおかしくはありません。それほどの惨たらしい光景が繰り広げられてました。

まあ、止めなかった私も同罪なんでしょうけどね。

 

これを踏まえると、カズマは私達が怖くなって外で止まるようになったのでしょうか?でも昨日は皆と平然と話してましたし……

 

「……私が行って話をしてくる……」

 

ルリはそう言って立ち上がって、玄関の方に歩いていきます。

先程まで考えていた理由なら、リンチに参加していないルリが行くのが良いのでしょうが……なんでてしょうか?胡散臭いと言えばいいのか……どこか引っ掛かるですよね。

具体的な証拠はないので、断言する事など出来ないのですが……なんか第六感的なものがルリを信用してはいけないと訴えているんですよね……

 

「……ルリ。私も付いて行ってもいいですか?カズマとは長い付き合いなので説得に力を貸せると思いますよ」

 

「……そ、それは……私、一人で……」

 

所々、言葉を濁らせて話すルリ……

うん、やはり怪しいですね。ルリの事だから犯罪紛いの事はしていないとは思いますが……まさかカズマが外泊している理由を知っているのではないでしょうね。それが。私達に言い難い事だから、カズマと事前に話して誤魔化そうとしているんじゃないでしょうね。

ルリは優しい性格をしているので十分にありえます。実際にルリは、私がギルドに報告が行かないようなちょっとしたトラブルを起こした事をカズマには黙ってくれました。

 

これは、ルリに着いて行くしかないですね。

 

「そんな事をいわないください。それとも……私がついていくと不味いことでもあるのですか?」

 

「………………わかった……一緒に行こう……」

 

こうして私とルリはカズマと話し合いをするべく、冒険者ギルドに向かうことになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……こんな事止めない?……これじゃあ犯罪者……」

 

「これぐらいしないと、カズマが何をやっているのか分からないじゃないですか。それともカズマの事情を知っていて肩を持っているのですか?」

 

「……そんな事……してない……でもストーカー紛いの事をしてる……」

 

ストーカーですか……確かに今の私とルリを言うのは相応しい言葉なのかも知れません。

 

今、私達は日の沈んだ、夜中の街中でカズマの後をつけていました。

普段なら、カズマの敵感知スキルの所為で、追跡しても見破られてしまうため、こんなマネは出来ませんが、ルリが居るのなら話は別です。彼女の隠密スキルを使えばカズマのスキルを持ってしても見破ることはできません。

本当に、このスキルは凄まじい効果を持ったスキルですよね。こういったスキルをポイントが倍増するとはいえ覚えられる冒険者が、少しだけ望ましくなってきました。

 

「……皆が心配する……早く帰った方が……」

 

「それなら心配いりませんよ。アクア達には今日は帰らないかも知らないと伝えてあります」

 

私の答えを聞いた瞬間、ルリはほんの少しだけ動揺しました……これはグルですね。

先程から、何回も止めようとルリは訴えているのですが、最初は純粋にカズマのプライベートを守る為や、犯罪紛いの行為が嫌だからだと思っていました。

でも、それなら断られて動揺までする必要はないんですよね。徐々に切羽詰ってるかのような感じも見受けられますし……もうカズマの秘密を知っているのは確定でしょう。

 

おっと。

私達が話しをしている間にカズマはある宿屋に泊まろうとしていますね。

私達はカズマの直隣まで駆け寄ると、カズマが扉を開いたのと同時に中に入りました。閉まる扉にぶつかりそうになって、焦りましたが何とか成功をしました。

その後は、チェックインしたカズマの後ろを付いて行き、カズマがある部屋の中に入ったのを確認すると、ルリと一緒にその扉の前まで移動します。

 

「どうやら、この部屋みたいですね。では、このまま少しだけ待ちましょうか」

 

「……直には入らないの?」

 

「犯罪者のような人達は、追跡されていた事を考えて、時間を置いてから本題を始める事もあります。そして今回はカズマは念入りに動いているみたいなので、絶対に間を置くと思います」

 

私の言葉を聞いたルリが、なにか諦めたような表情をしていますね。

もうルリが共犯者なのは確定事項なんですが、カズマとルリは一体何を隠しているのでしょう。何だが期待が膨らんできましたね。私の個人的な要望としてはヘソクリ的な何かだと良いのですが……それだと外泊する必要なんてないので、その確立は低いですね。

ともかく、これからはルリが私に襲い掛かってくる事も想定に入れながら動かないといけませんね。

 

私はその場所で待つこと一時間。

この部屋に入ってくる者は誰一人として居らず、扉に耳を当てて中の様子を探っていたのですが、話し声一つ聞こえて来なかったっと言うか、二十分程前からはカズマのものと思われるいびきが聞こえてきました。

私の考えすぎだったのでしょうか?でも折角此処まで来たので、中の様子ぐらいは見ておきましょう。

 

「……マ、マナ!?……何をする気なの……」

 

動揺しているルリは無視して、私はカズマが寝ている扉を開けました。

すると、そこにはベットで布団を被って寝ているカズマの姿と……その上に跨っている先日のサキュバスの姿がありました。

 

「サ、サキュバスが、なぜ此処にいるんですか!?」

 

「えっ!?あ、貴方は先日屋敷にいた……」

 

私の声に驚いたサキュバスは、急いで侵入してきたであろう窓から逃げ出そうとしました。

それを見た私は急いでサキュバスの元に駆け寄り、彼女を取り押さえます。

どうやらサキュバスと言うのは、腕力はあまりないみたいですね。上級職とはいえ、低レベルの私でも簡単に取り押さえることが出来ました。

 

それにしても、まさかサキュバスに襲われていようとは……先日の洗脳が抜け切っていなかったのでしょうね。アクアの居る屋敷ではカズマを襲うのは無理だから、街の宿で襲おうとするとは、なかなかの策士と言えるでしょう。もし、めぐみんが不信に思っていなかったらと考えるとぞっとしますよ。

 

「は、放して下さい!お願いします!もうこの人を襲わないことを約束します!だから、放してください!!」

 

「私は冒険者なんですよ。モンスターを見逃すと思っているのですか。このアクアから貰っていた聖水を使って……」

 

「……マナ、ごめん……『バインド』!」

 

へ?

な、なんでルリは仲間の私に『バインド』仕掛けているのですか!?敵はサキュバスですよ!!

あっ!!そういえば、ルリはさっきから不信な……まるで今の状況を見られたくなかったかのような言動を繰り返してました!まさかルリまで洗脳されていたのですか!?

 

今になって思えば、あの時急にサキュバスの姿が消えたのはルリが隠密スキルを使ったからなのですね。それなら、カズマとの対決に参加しなかったのが納得でますよ。彼女からしてみればカズマが出来るだけ時間を稼いでくれたほうが良いですものね。

まさか、此処に来て詰めの甘さが災いするとは……不覚です。『バインド』を食らってロープでグルグル巻きにされた状態ではないも出来ないですし……

 

「……なんだ……人が折角いい夢を……って、マナにルリ!?なんでお前らがここに居るんだ!?俺はそんな夢を頼んだ覚えは……ってサキュバスも居るし、夢じゃないのか!?」

 

夢?

先程まで寝ていた事を考えると別におかしな発言ではないのですが……なにか引っ掛かりますね。

そういえば、サキュバスと言うのは夢を操って……夢を操る?……そして先程カズマは夢を頼むって……これってまさか……

 

そこまで考えの至った私はロープに巻かれていながらも、何とか立ち上がって言いました。

 

「少しだけ聞きたい事があるのですが……いいですよね」

 

鏡がないので、今の自分の正確な顔を知ることは出来ませんが、きっといい笑顔を浮かべている事でしょう。だって私の顔を見たカズマやルリ、そしてサキュバスまで素直にはいっと言ってくれたどころか、正座までしてくれたのですよ。

とても良い笑顔になっているに決まっています。

 

では、カズマ達に尋問をする事にしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、つまりは、この街にはサキュバス達が経営している、自分の望むがままの夢を見せてくれるサービスをする店があって、カズマはそこで頼んで、そこのサキュバスに自分のリクエストした夢を見させてもらおうとしていたと言うことですね。間違いないですか?」

 

「……はい、その通りです」

 

「で、ルリはその事を知っていて、誰も被害を被らないのだからいいと思い、カズマに協力をしていたと……これで間違いは無いですよね?」

 

「……うん……」

 

はぁぁぁあああ…………

何と言えば言いのでしょうか。とりあえず私の抱いた期待や不安を返してください。

まあ、言いもしないのに勝手に想像をした私が悪いと言われればそうなのですが、正直、肩透かしを食らった気分ですよ。まさか、こんなくだらない事を内緒にしているとは……

 

「あ、あの……私はこれから別の仕事があるのですが……帰ってもいいですか?」

 

「別に良いですよ。街の人を無闇に襲っていないのなら、討伐しても意味がないですしね。帰り道でヤクザよりも怖い駄女神に会わないように気をつけてくださいね」

 

私の返事を聞いたサキュバスは私に一礼をした後、窓から何処かへと消え去っていきました。

 

これで、残る事はこの二人と話し合いをするだけですね。

それにしてサキュバス……モンスターなんかのサービスを使ってでも解消しないといけないなんて、相当溜まっていたのでしょうか。私は男で無いのでそういった気持ちは理解できませんが、聞いた話しによるとかなりの数の冒険者達が使っているみたですし……まあ、ルリの言う通り行動に移されるよりはマシなのですがね。

もしかして、サキュバスの店がこの街の治安向上に貢献しているのではないでしょうか。深く考えると良い店のような気がするので、考えるのはここで止めることにしましょう。

 

今は、カズマ達をどうするかが先ですしね。

 

「あんな店の世話になるだなんて、貴方は男としてのプライドが無いのですか?男なら、こう、なんと言うか、自分でハーレムを作ってやるぜ!……みたいな気概を持てないのですか?呆れてものをいえませんよ」

 

私の言葉を聞いたカズマは、鼻で笑いながら……

 

「ハーレム?お前、俺がそんなものを作れるとでも思ってるのか?考えてみろよ、俺の周りにいる女はどんな奴等だ?莫大な借金を作る役立たずの穀潰しの駄女神に、爆裂魔法を放つことが何よりも優先される爆裂狂、しまいには、モンスターに突っ込んでボコボコにされながら興奮している変態……こんな奴等とパーティを組んでいる俺に出会いなんてあると思っているのか!?そんなの無理じゃねぇか!!だったら、プライド捨ててでも夢に逃避したくなるわ!!」

 

「すいません、カズマ!私が悪かったです!今のは全面的に私の失言でした!!」

 

ううう、耳が痛いとはこの事です。

今、カズマは私の名前を挙げませんでしたが、絶対におかしな女として、アクア達と同類にされていると思います。それほどまでに中学の時に迷惑をかけまくりました。心の底から謝りたい気分です。

 

私のような女性と何人も付き合っていたら、それは夢に逃避もしたくなりますよね。別にカズマの心が弱い訳ではありません。むしろ、とても広い心を持っていると思います。

実際にダストはたった一日で泣き言を言いましからね。彼の反応が普通の人の反応です。それに対してカズマはなんだかんだ言いながらも最後まで付き合ってくれます。

これにだけは心の底から感謝していますよ。

 

「わかってくれたなら、それでいい……」

 

「……カズマ、大丈夫?」

 

なんか、人生に疲れ果てた老人のような目をしてますね……

今度からは少しだけ欲望を抑えて見ることにしましょう……たぶん無理だとは思いますが。

 

「とりあえず、この件は黙っておきますね。アクア……っと言うか女性冒険者に知れたら大変な事になりますよ」

 

モンスターを狩るはずの冒険者が、モンスターのサービスを受けてるなんて前代未聞です。

もしばれたら、ただ事ではすまないというのに……そんなリスクを犯してまでやる価値はあるのですかね?所詮は夢、起きたら現実の虚しさを味わうだけだと思いますよ。

それでもやりたいから多くの男性が利用しているのでしょうが……やっぱり男の気持ちなんて理解できません。

 

私がそう思いながらカズマに呆れた目を送っていると、彼が私の反論をしていました。

 

「マナ、お前は俺の気持ちを理解できないようだから、理解できるように言い換えてやるよ。夢はな、現実では絶対に不可能な事を体感することが出来るんだ。例えば、お前なら億万長者になって純金で出来たバスタブで札束の風呂を……」

 

「それは、素晴らしいサービスですね!!」

 

男性冒険者達が、モンスターと取引してまでこのサービスを受ける理由が分かりましたよ!確かにそんな事が出来るのなら、たとえ他の冒険者に裏切り者と言われたり、女性冒険者に軽蔑の視線を向けれても行く価値があると思います。

私も行きたくなってきました。でも女性の私じゃ精気を奪う事が出来ないですよね。そもそも夢の内容もあれですし…………見逃してあげたお礼や料金を倍にするからなどと言って、交渉してみましょうかね。

 

ともかく、私の理解しやすいように言い換えるとは流石カズマですね。長年私と付き合っているだけの事はあります。

 

「……それでいいんだ……」

 

「何か迷うような事なんてありましたか?人間なんて欲望に率直な生き物、よく考えてみればそれを抑える事なんて不可能に近いんでよね。それを、現実で被害を出さないで解決するなんて、とても良い考えじゃありませんか。ルリもそう思って、皆に黙っていたのでしょう?」

 

「……マナが言うと、凄く説得力がある……」

 

それは、私が欲望を抑えられない、理性の欠片もない人間と言いたいのでしょうか。

うん、言い返す事ができませんね。カズマなんかは「そうだ!!こいつに億万長者になった夢を見せておけば、暴走しなく……無理だ、こいつの欲望がその程度で収まるわけがねぇ」と諦めた様な表情で語っていますし。

私も若干そんな気がします。これじゃあ、欲望を解消して現実には被害を出さない、サービスを利用している男性冒険者以下の存在ですね。

だって、それで満足せずに実害を出すのですし……少しだけ心が傷付きました。

 

「私の事は置いておくとして……二人にちょっとした事を頼みたいのですが、構いせんか?もし、拒絶するのなら、カズマとルリが密会していたと、アクア達に言い触らしてやります。

 

「み、密会!?」

 

「ほら、少しルリは落ち着け……そんな事を言っても、俺とじゃ釣り合わないって皆考えるから、誰も信じねぇよ。それと、頼みごとの件は別にいいが何をやらせる気なんだ?」

 

「簡単な事ですよ。実は…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

カズマの外泊先に突撃してから翌日の昼ごろ。

私とカズマは未だに雪の積もっている平原に来ていました。この場所は少し前までは雪精が多数いたのですが、冬将軍を討伐された事を知った冒険者達が狩り尽してしまったために、今では一匹も見ることが出来ません。

 

こんな場所に私が来ている理由は一言で言ってしまえばレベル上げです。冬は強いモンスターしか討伐依頼はありませんが、経験値を得る事の出来る比較的弱いモンスターは存在しています。

まあ、そんなモンスターは大概、強いモンスターの餌になるため、狩るのは非常に危険な行為となっています。だから、強いモンスターが来た際に身を隠す事の出来る潜伏スキル持ちのカズマを連れて来ました。この場所を選んだのも、白い布を被れば用意に潜伏スキルが発動できるからです。

 

本来はルリに付いて来てもらおうと思ったのですが、彼女は今日だけは外せない用事があるために、一緒に行けないと断られました。明日からなら大丈夫なそうですが……特になにもする事がないので、カズマを連れてレベル上げをすることにしました。

カズマからは不満を言われましたが。

 

「それで、どんなモンスターを倒すんだ?その辺にいるモンスターに片っ端から喧嘩を売るとかだったら帰らせ貰うぞ」

 

「カズマは私を何だと思っているのですか?確かに金に目が眩まない限りは、ちゃんと下調べくらいはしますよ」

 

「お前は目が眩むのが多すぎて、信用にならないんだよ」

 

失礼な。この世界に来てからは、そんなに目が眩んでいないと思い…………眩んでましたね。

デュラハンの時に非道な事を言ったり、魔剣の人に理不尽な要求はしたり、しまいにはダンジョンもどきに二度も引っ掛かりましたからね。カズマが不安になるのは当然の事なのかも知れません。

 

でも今回は討伐してもお金は手に入りませんからね。屋敷にあった本をじっくりと読んで下調べをした上で実行に移しています。

 

「今回は大丈夫ですよ。屋敷の書斎に結構な数の本が置いてあったので、それで調べて目星くらいは付けて来ました。今回、討伐しようと思っているモンスターは、タカイタ貝といってカタツムリの様なモンスター…………すいません。言いたい事は分かりますが、そんな目で見るのは止めてください」

 

モンスターの名前を聞いた瞬間、カズマは私に怪訝な視線を向け始めました。

私を疑ってるようですが、本当にそんな名前なんですよ。私も最初に見た時は自らの目を疑い、めぐみんやダクネスに確認を取り、それでも信用仕切れなかったのでギルドの受付の人にも聞いたんですよ。

それでも、名前は合ってると言われたのです。こうなったら信じるしかないじゃないですか。

 

「名前は本当なので信じてください。ともかく、このモンスターは近くにある物……人や農作物や他のモンスターなどの目に入った物ならどんな物でも、空高く打ち上げる習性があるみたいで、それがこのモンスターの名前の由来になったそうなのです」

 

「その名前を付けた奴、一体どんな頭してんだ……っで、そのモンスターは強くないんだろうな?」

 

「その点は大丈夫ですよ。かなり弱い部類に入るモンスターらしいので……でも、冬の時期にしか現れないので狩る人は非常に少ないみたいですけどね」

 

そう、このモンスターは冬の時期にしか現れないんですよね。冬の時期に活動できる冒険者にとっては、この程度の敵など取るに足らない存在ですし。タカイタ貝自体も高く打ち上げられないように注意さえ払えば農家の人でも倒せるくらいに弱いらしいです。

だから討伐対象として扱われないモンスター、でも経験値はそれなりに取れるみたいなのでこれを討伐する事に決めたんですよね。

 

「なら、いいけどな……油断して足元すくわれるなよ」

 

「大丈夫ですよ。ちゃんと弱点も調べて来ましたし……触覚の間を剣などで突き刺せば数十秒で死に絶えるみたいです。…………あっ!噂をしたら出てきましたね。では私が倒してくるので、カズマは強いモンスターが出たら教えてくださいね」

 

「わかったよ。気をつけろよ」

 

私はカズマに返事を返した後、目の前に居る巨大なカタツムリのようなモンスターの駆け寄って行きます。その大きさは人間と同じくらいあり、身体中にネバネバの粘液を……あまり考えすぎると、目の前のモンスターの気持ち悪さで戦えなくなりそうなので、止めましょう。

ともかく、このモンスターは目の前の物……人間だと三~四メートル上に投げ飛ばすらしいです。打ち所によっては死んでしまう高さですね。

まあ、動作は鈍いらしいので、長時間目の前に居なければ大丈夫らしいのですがね。

 

ともかく、駆け寄った私は素早くカタツムリの頭に剣を刺しました。

なんと言うか、あまり抵抗が無くてびっくりしましたよ。確かにこれなら農家の人でも倒せるかも知れません。それほど弱すぎます。

私は素早く突き刺さった剣を抜こうとして……

 

「あれ?抜けませんね。変な所に突き刺してしまったのでしょうか?くぅぅぅぅぅぅッ!!駄目です……」

 

「おい、マナ!早くソイツから離れろ!まだ息の根を止めてねぇぞ!!」

 

ふぇ?…………ああっ!直には死なないのでした!!

 

私がカズマの声を聞いて刺して直には死なないことを思い出して、この場から離れようとしましたが、その時では遅すぎました。

私は腹の辺りに凄まじい力を感じると共に、空高く打ち上げられました。

 

まさか自分で言っておいて忘れるとは……これからはアクアに馬鹿と呼べなくなってしまうかも知れません。でもそれほど高くは無いみたいですし、頭から落ちても死にはしないでしょう。

私は、ホッとため息を吐きながら下を見ると、そこには凍りついた川が……

 

ま、マズイです!土の地面ならまだしも凍った川なんかに頭から突っ込んだら死んでしまいます!しかも運が悪い事に頭から突っ込みそうですし……もしかし私、死にましたか?

そんなの嫌ですよ!!どうにかならないのですか!?

 

私は必死にもがきますが、空の上で意味があるはずもありません。私は氷の上に頭から突っ込んで……

ツル、ゴチン!…………?

今、凄い衝撃がありましたが……想像していたより痛みが少ないですね。私が想像しすぎていただけなのでしょうか?

とりあえず、恐怖のあまり閉じてしまった目を開けると、そこには……

 

「カズマ?……もしかし、私を受け止めようとしてくれたのですか?その、ありがとうございます助かりましたよ。…………??カズマ?返事をしてくれませんか?あの……」

 

私は返事のしないカズマに返事の催促をしようとして、頭を軽く突こうとした際にあることに気づきました………………よく見ると、カズマの後頭部から赤い…………

 

 

 

 

 

 

 

 

カズマside

 

……また此処に来てしまったか。

一ヶ月も経たないうちに二回も死ぬなんて、正直落ち込んでしまう。しかも今回はモンスターと戦って敵わずに死んだとかではなくて、マナを受け止めようとした結果、足を滑らせて頭を強打……自分で言うのもあれだが、なんと情けない死因なんだろう。

これじゃ、折角俺を生き返らせてくれたエリス様に合わせる顔が……あれ?

確か前にきた時は、神殿の中のような場所だったよな。でも今回はただの光り輝く部屋……アクアと初めて会った部屋に近い場所だ。もしかして今回は担当する女神様が違うかったりするのだろうか?

 

俺は女神を探そうとして、首を回して部屋の中を見渡すと、それらしき人物の姿が見えてきた。

その人物はボロボロのローブに身を包み、その顔には髑髏の仮面を着けた……一言で表すと死神のイメージに近い人物だ。そいつが…………コタツの中に入って湯のみでお茶を飲んでいた。

何だろうこのシュールな光景は……

 

「おっ!?誰か来たのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、悪いな。さっきまでこの地域の神々の会合があってさ。ちょっと疲れたんで休憩していたんだ。この時期に誰かが来ると思わなくてな。本当にすまねぇ」

 

「別に気にする必要はないと思うぞ。って言うか、お茶やみかんまで無料で貰って、こちらの方が謝りたい気分だ」

 

目の前に居る死神のような格好をした女性……名前はメイと言うらしいのだが、今俺は、彼女の入っているコタツに入れて貰い、お茶を飲みながら、みかんの皮を剥いていた。

彼女には、格好が格好だったため、最初こそ恐れを抱いたんだが……少し話してみると意外といい人なんだなっと理解する事が出来た。なんて言うか、言葉使いが荒いだけなんだよな。

ちなみに最初はエリス様のように、敬語を使って話していたが、彼女に普段敬語を使わない人に敬語を使われると気分が悪くなるといわれたので、普段通りの口調で話している。

 

「その、会合なんだがよ。なんかエリスの奴が二度目の蘇生をさせたって事で、一部の馬鹿が荒れるに荒れてよ。面倒になってきたんで、その馬鹿、纏めてボコって来たんだよ。普段はアクアよりも仕事しないくせに、文句を言う時だけは一丁前だからな。他の奴等も、俺の事は恐れていたが、内心はざまあみろって思ってるはずだぜ」

 

「そ、そうですか……」

 

ヤバイ……本当にエリス様に合わせる顔が無くなって来た。

エリス様は俺を生き返らせるのに色々な苦労をしたのだろう。実際に今のメイの話を聞くなら、一部とはいえ批判まで食らったみたいだし。

それだけの事をしてくれたのに、肝心の俺は非常に情けないない死に方で、しかも一ヶ月の満たないうちにまた死亡……どんな人でも、こんな仕打ちを食らったら怒ると思う。っと言うか怒らない人が居たら見てみたい。

 

それだけでなく、今回はアクアが近くに居らず、死んだ俺に蘇生魔法を掛けてくれる人は誰一人としていない。これでは生き返ることは無理だろうな……いや、その前に目の前の神様から承諾を貰わないと無理だったな。あのエリス様ですらアクアがごねる前は蘇生を断ってきたのだ。目の前の神様がそれを許してくれるはずも無いだろう。

どうせ、生き返られないだ……ちょっと気になった事を聞いてみよう。

 

「なあ、さっき誰も来るとは思わなかったって言ってたよな。メイが担当する人物って相当狭い範囲なのか?」

 

「いや、狭いっちゃ狭いが、誰も来ないって程ではねぇな。俺は重大な犯罪を犯した人物……まぁ、言ってしまえば地獄行きがほぼ確定してる奴等を専門に扱ってるだが、この世界の処刑は公開処刑だから時間が掛かるんだよ。だから、クソ寒い冬の時期にやろうと思う奴が居なくてな。この時期は何時も暇なんだよ。そもそも、ただ地獄送りにすればいいだけだから、魔王軍の幹部のような大物でも来ない限りは天使で事足りるんだがな」

 

なるほど……確かにこの世界が地球でいう中世のような処刑をしているのなら、メイが言っている理由もあると思うが、それ以外にも今の時期では人が集まらない。それでは公開にする意味を失ってしまうってのもあるのだろう。

それなりに、考えられてんだな。それにしても地獄……?ちょっと待て?俺がこの人の元に来てるって事は俺も地獄送りって事か!?冗談じゃねぞ!?

 

重大な事実に気づいた俺がコタツから飛び上がると、メイは少しだけ驚いたように言葉を掛けてきた。

 

「おい?いきなり慌ててどうしたんだ?」

 

「いや、俺が此処にいてるって事は、俺は地獄送りになる重罪人って事だよな!!なんで俺がそんな事になってるんだよ!?ちょっと待ってくれ!確かに手酷いことはしてきた自覚はあるが、地獄送りって……そこまでの事はやった覚えはないぞ!!」

 

「ああ、その事か。ほら、説明してやっからお茶を飲んで少し落ち着け。頭に血が上ってちゃ、話になんねぇよ」

 

そう言って、俺に新しいお茶を差し出すメイ。

それを受け取った俺は、飲み干した後に再びゆっくりとコタツに入ることにした。落ち着いて考えてみたら、そんな犯罪者に気を使う女神なんて居るはずがないんだよな。

たぶん、何かしらの事象があるのだろう。それを聞いてから行動を起こしても遅くは無いはずだ。

 

「さっき話題にした事だが、お前がエリスに生き返らせてもらった奴だろ?たぶんだが、本来は無理な、二度目の蘇生をさせたから、魂を管理するシステムがエラーを起こして此処に運び込まれただと思う。まぁ、心配する事はねぇよ。俺がちゃんと転生ぐらいはさせてやるさ」

 

はぁ……

なんだ、そう言うことだったのか。だったら俺はメイに失礼な事をしたのかも知れない。だって俺が天界のルールを破ってしまった事が原因なのに、なにも悪くない彼女の前で騒ぎ立ててしまった。これは本当に申し訳ないことをしたと思う。

……あれ?そういえばなんでエリス様に蘇生させてもらった事を知ってるんだ?俺は彼女に話した覚えが無いぞ。少し気になるから聞いてみる事にしよう。

 

「なあ、俺はエリス様のおかげて生き返られた事があるって、言った覚えは無いんだが……一体どこで知ったんだ?」

 

「ああ……それは、エリスに一度だけ蘇生させた奴の話を聞いた事があってな。それで名前を聞いてたんだよ。彼女、お前の事を面白い人だって言ってたぞ」

 

それは予想外に高評価だな。

エリス様にはまだ一回しか会った事がないし、それも迷惑を掛けたから俺はてっきり面倒な人と思われている可能性が高いと思っていたんだが……お世辞だとしても、エリス様のような神様にそう言ってもらえるとそれはそれで嬉しい。

 

「それで、転生の件なんだが……俺でも出来るんだが、幸運の女神であるエリスの奴にやってもらった方が良いだろ?今、呼んで来るから少しだけ待っててくれねぇかな。そんな時間は取らせないからさ」

 

そう言って、コタツから出て立ち上げると彼女はどこかへと向かい始めた。

なんて言うか、本当にいい人だな。まったく接点のない俺に此処まで親切になってくれるなんて、メイはどれだけ優しい人なんだろう。うちの駄女神とは大違いって言うか……あいつが本当に駄目なだけなのか?女神なら誰でも優しい人なのか?

 

ともかく、これで無事に転生できる…………マナの奴は大丈夫だよな?あいつを受け止めたのが死因のようなもんだし……いや、あいつはこの世の全てはお金だ言っている奴だ。責任を感じて後追い自殺なんかは……しないよな?ヤバイ、マナの事が本当に心配になってきた。

こうなったメイに話を通して、マナと会話くらい……

 

俺が、コタツから立ち上がろうとした時に、不意にこちらを振る向いたメイが俺の焦ったような状態を見てから、とんでもない事を言ってきた。

 

「ん?どうしたんだ、そんなに慌てて……もしかして現世に未練でもあるのか?…………そうだな。それなら俺が特例中の特例として生き返らせてやるよ」

 

今、目の前の女神は何と言った?

俺の耳がおかしくなければ、生き返らせるっていたよな。いや、そんな事って出来るのか?もし出来たにしても、なんでそこまでしてくれるんだ?

何度も言うが俺とメイは今回始めた会った、初対面のはずだ。彼女が俺を優しくする義理なんてないはずだろ?

 

どう考えておかしいとしか思えないメイの提案に俺が困惑していると、メイはそれを解消しようと言葉を掛けてくれた。

 

「困惑してるみたいだな……じゃあ、一応理由を教えてやるよ。お前、アクアを特典として連れて行っただろ?」

 

「確かに、俺はアクアを特典として連れて行ったが……それと今回の事に何か関係あるのか?」

 

「たぶんだが……アクアの奴、お前に迷惑をかけまくっているだろ?実はあの馬鹿、天界でもトラブルを起こしまくっていてな。その際の尻拭いは俺がやっていたんだよ。それで、地上で俺の変わりに尻拭いをやっているお前へのせめてものお礼さ」

 

「でも、大変な事なんじゃないのか?そんな事して大丈夫なのか?」

 

「お前が気にする事じゃねぇよ。大体、俺に文句を言いに来る奴なんてエリスを入れて二人しか存在しないからな……」

 

なんだろう。仮面をしてるから表情が分からないんだが、今は遠い目をしているのが簡単に予想できた。もしかして彼女は少しは怒られたいと思っているのだろうか?

今の彼女を例えるのなら、人の目を集めたくて悪戯をするが全く構ってもらえない子供と言えばいいのだろう。

 

それにしても、一つだけいえる事は、エリス様以外の神様の目はおかしいじゃないかと言う事だ。だって、彼女は俺にこんなに優しくしてくれる人なんだぞ。良い人で無いわけがないだろう。

この世界に来てから、メイと同じくらいの優しさを持っていそうな人なんて、エリス様にルリ、それにウィズくらいなものだろう。

それにも関わらず恐れられているだなんて、不憫でならない。

 

俺がメイに同情の篭った視線を向けていると、彼女がいつの間にか持っていた大きな鎌を一回転させるとそこには光の扉が出来上がった。そしてその穴の中に鎌を入れた後『蘇生せよ』と一言だけ言った後に俺の方に向き直して話しかけてきた。

 

「『蘇生せよ』……これで、たぶん大丈夫だろ。でも俺の回復能力とかはギリギリ女神を名乗れるレベルしかないからな。屋敷にでも帰ったら、アクアに本格的な回復魔法でもかけて貰え。………………それではサトウカズマさん。これから此処に来ない事を祈っていますよ」

 

エリス様にも負けずとも劣らない、そんな優しい声で見送ってくれたメイを尻目に、俺は光の扉をくぐって…………

 

 

 

 

 

 

 

何だろ……すこし、顔の辺りが濡れた感覚がする。なんで濡れてるんだ?

俺はゆっくりと目を開いて行き……声を上げて、瞳から大粒の涙を流して泣いているマナと目があった……ああ、そういえば俺は死んでメイに生き返らせて貰ったんだっけな。

 

「カズマ?……生きているんですか?………死んでないのですよね……生きてるんですよね?」

 

「一度死んだみたいだが……なんとか生き返れてみたいだな」

 

俺が返事をすると、マナが無言で俺に抱きついてきた。

その力はかなり強く……ステータスの差があるためだろうか、かなり痛い。っと言うか、これ以上力を入れられたら骨が折れてしまいそうだ。

 

「おい、マナ!?痛いから少し力を緩めて「いやです……」嫌ってお前どうしたんだよ!?一応、俺はケガ人なんだぞ!?これ以上、怪我を増やすマネは……」

 

「カズマは……ひっぐ……私の金づるなのですよ……だったら……勝手に居なくならないで下さいよ……」

 

「おい、いつ俺がお前の金づるになった。そこの方を詳しく話し合おうじゃないか」

 

「……昔……ぐす……私のパンツを……見たときに決まっています……」

 

「あれは風が原因だろうが!!それに、あれは小学生の事だぞ!何時までお前は根に持って居るんだよ!普通の奴なら忘れるぞ!!」

 

「忘れられないので……ぐす……しょうがないじゃ……ありませんか……ともかく私の前から……あぐっ……勝手に居なくならないでくだ……さい…………」

 

「お前って奴は……俺にどれだけ理不尽な……って寝たのか?」

 

マナは俺に抱きついたまま、すやすやと眠り始めていた……たぶん、俺が生き返ったのを見て安心して気が抜けてしまったんだろう。

それにしても、この守銭奴は俺は金づるにしか思っていない……のは、無いのだろうな。さすがに長い付き合いだ。正面から親友と言うのが恥ずかしくて俺の事を金づると言う癖があるくらいは知っている。すこしは素直になって欲しいだがな……たぶん無理だろう。

 

俺は、ため息を吐くのと共に、眠っている彼女を起こさないように気をつけながら背負い、街の方を目指して歩いていく事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

マナside

 

……えっと……此処は、屋敷の中でしょうか?

なんで私はこんな所にいるのでしょう。たしか、カズマと一緒にモンスターの討伐に出向いて……そこで……死んだ?

 

カズマが死んだ。その事実を思い出した私は慌てて身を起こし、辺りを見渡します。すると、アクアの回復魔法を受けているカズマの姿が目に入りました。

そういえば、生き返ったんでしたね……意識が朦朧としていて、あやふやになってしまいましたよ。

 

「ふぅ……これで治療は終わりね。今回はあまり出血してないみたいだし……たぶん二~三日安静にしてれば元通りよ。でも、それまでは激しい運動は厳禁よ」

 

「分かったよ。ありがとな、アクア」

 

「私に感謝してるのなら、高い酒でも……マナ?貴方、何時から起きてたのよ?」

 

「つい先程起きたばかりですよ。それよりも、カズマはどうしてアクアから回復魔法を掛けてもらっているのですか?」

 

「それは……俺を生き返らしてくれた女神なんだが、蘇生魔法とかは不得意でさ。生き返った後で、アクアに回復魔法を掛けて貰えって言われたんだよ」

 

だから、アクアに魔法を掛けてもらっていたいたのですね。納得は出来ました。

でも、女神が蘇生とかを不得意ってそれでいいのでしょうか?私のイメージでは癒しが得意そうな感じがあるのですが……まあ、神に対するイメージを壊しまくる、駄女神であるアクアと言う存在も居るのですから、居てもおかしくはないのでしょうが。

でも、カズマを蘇生させてくれたのですから、性格はきっと優しい女神様なのでしょうね。

 

「魔法を受けていた理由は理解出来たのですが……結局、その女神様の蘇生の腕はどうだったのですか?」

 

「さあ?俺は詳しく分からんが……どうだったんだアクア?」

 

「そうね。正直、カズマを蘇生させたのが女神だと信じられないくらいヘタクソだったわ。一般的な女神の腕を六十点にすると、カズマを生き返らせた女神の点数は四十点、赤点ぎりぎりの点数しかないわね。ちなみ私は百点満点よ」

 

うん、何か最後の余計な一言で信用性が、がた落ちしましたね。カズマのアクアの言葉を怪しんでますし……

いや、だって駄女神の点数が百点だなんて誰が信じると思いますか?普段から迷惑をかけまくり、肝心な時に役に立たない駄女神ですよ。20~30点なら信用性があるのですが、百点はないと思います。

なんか、私とかの反応を見て、アクアが騒いでいるみたいですが無視をすることにしましょう。

 

「カズマ、そういえば貴方を蘇生させた女神の名前は何と言うのですか?教えてくださいよ」

 

「メイって名前の…………」

 

「メ、メメメメメメ、メイ!?」

 

一体アクアはどうしたのでしょう?いきなり叫び声を上げたかと思ったら、顔を蒼白にして震えています。その震えは今までに見た事もなに程の速さで、アクアがメイと言う女神をどれほど恐れているかが窺い知れました。

でも、カズマを蘇生させてくれた事を考えると、そこまで怖い女神だとは思えないんですよね……たぶんですが、天界でなにかしらをやらかしたアクアに怒って、とてもきついお仕置きなどをされたんじゃないでしょうか?

 

たぶん、これで正解のような気もしますが、一応はアクアの言い分を聞いて見ましょう。

私はアクアに質問しようと声を掛ける前にカズマがアクアに声を掛けました。

 

「アクア?一体どうしたんだ?メイに何かされたのか?」

 

「何かされた……そんなもんじゃすまないわよ。いい彼女は地獄の果てから来た、人を人と思わない、極悪非道、悪逆無道の女神なのよ。私はあれに何度殺されかけた「……人の悪口?」ひぃぃぃぃ!?……なによ、ルリじゃない。驚かせないで欲しいわ……」

 

突如聞こえて来た声に驚いて(勿論、アクアほどではありません)後ろに振り向くと、そこには買い物袋を持ったルリが立っていました。

どこかに、買い物に行ってきたのは確かなのですが……どうして今の時間帯に買い物に行ったのでしょうか?彼女は今日は外せない用事があったらしいのですが、それはお昼ちょっとすぎには終わると聞いていました。買いたい物があるなら、その帰り道にでも寄って行けばいいだけなのですが……急に買いたい物でも出来たのでしょうか?

 

私が首を傾げていると、ルリは事情を話してくれました。

 

「……用事終わるの……遅くなった……今帰って来た……」

 

そう言いながら、ルリは買い物袋から取り出した、お酒を並べますが……アクアの目が輝いていることを考えると、それなりの値段がするお酒のようですね。

まあ、今回はカズマに回復魔法をかけたりと、それなりに役に立っていますからね。ルリと交渉して、少しくらいアクアに分けてもらえないか……

 

『デストロイヤー警報!デストロイヤー警報!冒険者の皆様は、装備を整えて冒険者ギルドに来てください!!』

 

デストロイヤー警報?

一体なんなのでしょうか?冒険者に召集が掛かっていることを考えるとモンスターが関係していると思うのですが……一体どんなモンスターなのでしょうか?


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