某日、ヴァルゼルドは麻帆良大学の工学部に来ていた。
複数の大学教授に葉加瀬や超も居る。
「では、ヴァルゼルド。前々から考えていたプランを実行に移すネ」
『了解であります』
何処かの悪の幹部を思わせるかの様な口ぶりの超に敬礼をしながら答えたヴァルゼルド。
「うむ、その意気やよしネ。では、かかれー!」
「「おう!」」
ヴァルゼルドの返答に満足したのか超は声を張り上げて背後にいた大学生や教授がヴァルゼルドに群がっていく。
手には工具やパーツが握られており、ヴァルゼルドに色々と取り付け作業を行っていた。
「大丈夫なのですかアレ」
「なんか苛められてる様に見えるわ」
「だ、大丈夫なんですか?」
「ああ……ヴァルゼルドさん」
その光景を見て冷や汗を流すのはたまたま見学に来ていた夕映、ハルナ、のどかの三名とオロオロとヴァルゼルドの心配をする茶々丸。
「問題ないネ。前々からヴァルゼルドに外部パーツを取り付けて色々と実験したいと麻帆良大学全体で考えていたプランね。学園長の許可取ったし、ヴァルゼルドも快く引き受けてくれたネ」
「それにヴァルゼルドさんに取り付けて成功したパーツは茶々丸にも反映させる予定なの。だから心配は無いですよ」
心配する四人に超と葉加瀬の追加説明も入る。しかし人垣で見えないからヴァルゼルドが何をさせられているのか不明な為に四人の心配は募るばかりだ。
「取り付け、完了しました!」
「うむ、ではお披露目ネ!」
取り付け作業を終えたのを聞いた、超は心配そうにする四人に現在のヴァルゼルドの姿を見せ付けた。
其処には腰の辺りに鋼鉄製の極太ベルトを巻いたヴァルゼルドの姿が。しかしこの極太ベルトの後ろ側には巨大な赤い翼とロケットのブースターの様な物が装備されていた。
「これぞロボットが大空を舞う為の翼!」
「その名も!」
「「ジェットスクランダーだ!!」」
大学生や教授は大声で叫びながらヴァルゼルドに装備した[ジェットスクランダー]について説明する。叫び終わると同時にヴァルゼルドは両手を空に伸ばすと腕の筋肉を出す仕草のポーズを取る。その光景は背後に稲光が走るか爆発の効果音でも鳴りそうな雰囲気だ。
「いやいや、なんでジェットスクランダー!?」
「最初はただのブースターだけの予定だったんですけど教授達に強く進められてしまったので」
ヴァルゼルドに装備されたジェットスクランダーにツッコミを入れるハルナに葉加瀬が答えた。どうせなら楽しもうとオッサン連中が趣味丸出して作成したらしく。マジンガーZを見ていない世代の学生でも某ゲームをしていれば知識はあるのでノリノリだったらしい。
加えて言うならヴァルゼルドにもポーズ指導をしていたらしく。
「と言うか飛べるのですかコレで」
『それを調べる為の実験がこれから始まるのであります』
夕映は少し疑いの視線を送りながらジェットスクランダーを見るがヴァルゼルドは意気揚々と試験場に向かっていった。なんやかんやでノリノリらしい。
「って言うかもしかして此処に置いてあるパーツ全部使うの?」
「凄い沢山あります」
ハルナが指差したのはジェットスクランダー同様に様々なロボットのパーツと思わしき機械の数々。のどかもその量に驚いている様だ。
「流石に今日コレ、全部は無理ネ。少しずつ試していくヨ」
「だったらさあ……コレとかどう?」
今日全部は無理だと言った超にハルナは目を輝かせて超に即興で書いたイラストを見せ付けた。それを見た超と葉加瀬も目を輝かせる。
「乗ったネ。この発想は素晴らしい」
「早乙女さんにはオブザーバーになってもらいましょうか」
「フッフッフッ……こう言うのはオタクの方が知恵を出せる物なのよ」
ガッシリと熱い握手を交わす超、葉加瀬、ハルナ。
「絶対にろくな事じゃ無いです」
夕映はその光景から悪友が何かを企んでいる事に溜め息を溢すのだった。
因みにヴァルゼルドのジェットスクランダー装備は無事にテイクオフを済ませて大空を舞い上がり、オッサン連中とオタクを大いに盛り上がらせていた。