魔法先生ネギま! 子供先生と機械兵士   作:残月

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図書館島①

 

 

ヴァルゼルドはエヴァ邸で与えられた部屋で書類とにらめっこをしていた。ネギが麻帆良に来てから数週間が経過したのだがヴァルゼルドは書類に目を通し頭を痛めていた。

 

ネギはHRや授業は問題なく順調といえるのだが、やはり10歳という年齢の為か生徒達に甘く見られているのだ。

つい先日など高校生と2-A生徒の間でスポーツ勝負が行われ、その賭け品はネギだった。勝った方がネギを担任として迎える等の無茶苦茶な話になってらしいのだが、此処まで生徒に振り回されている先生もいないだろう。

更にヴァルゼルドの悩みの種になりつつ有るのがネギが魔法の秘匿に関して迂闊である事だ。

 

曰く、『子供先生の周りに旋風が発生する』『ドッジボールの最中、服が脱げた』etc.

 

この手の報告が学園長宛に来ていたらしく、事情をある程度知っている身としては耳が痛い限りで有る。

 

 

『もう少し、ネギ殿に注意をすべきでありますか……』

 

 

ヴァルゼルドはうーむ、と悩む仕草をしながら書類をテーブルの上に置く。このままではネギがとんでもない事をしでかしてしまうのでは?と思うヴァルゼルド。

 

 

『悩んでいても仕方ないであります。さて、夜の見回りであります』

 

 

ヴァルゼルドは今は悩んでも仕方無しと結論づけると立ち上がり、夜の見回り(表)に向かう事にした。

 

 

「あ、ヴァルゼルドさん」

 

 

部屋から出ると丁度、茶々丸と出くわすヴァルゼルド。

 

 

『茶々丸殿。本機はこれより夜の見回りにいくであります』

「そうでしたか。ヴァルゼルドさん、お気をつけて」

 

 

ビシッと敬礼したヴァルゼルドに茶々丸はペコリと頭を下げてヴァルゼルドを見送る。すっかり良妻が板に付いた茶々丸であった。

 

 

 

エヴァ邸を出発したヴァルゼルドは大通りに出る。いつもヴァルゼルドが通る巡回ルートでヴァルゼルドは常に大きい通りを歩き、センサーで広範囲を探る。そして自身の目で何も無いかチェックする。ヴァルゼルドならではのパトロールの仕方である。すると前方から慌しく走ってくる少女が二人。

 

 

「どうしよう、どうしよう、ハルナ!?」

「高畑先生に知らせるか……いや、でもバレたら大目玉確実だし……」

 

 

どうやらパニックになって走っている様だ。その二人の内、一人はヴァルゼルドも知る人物だった。

 

 

『本屋殿、こんな時間になにやってるでありますか?』

「ヴァルゼルドさん!」

「おお、噂の『麻帆良のガーディアン』!?」

 

 

1人は階段からの落下をネギに救ってもらった宮崎のどか。通称、本屋。

もう1人は触覚のような二本の飛び出た髪が特徴の長い黒髪に眼鏡の少女。早乙女ハルナ。

 

のどかは涙ぐみ、ハルナは初めてヴァルゼルドを見たのか少し興奮気味だ。

こんな時間に出歩くのは当然、NGなのでヴァルゼルドは二人から事情を聞こうとしたのだが、のどかがヴァルゼルドにしがみつく。

 

 

「お願いします!ネギ先生を……ネギ先生を助けて下さい!」

「ち、ちょっと、のどか!?バレたらヤバいよ!?」

 

 

泣きながらヴァルゼルドに縋るのどかにハルナは焦った様子だ。この事態をただ事では無いと判断したヴァルゼルドは、のどかを落ち着かせると事情聴取を開始する。

 

そして二人から聞き出した話はこうだ。

 

ネギのクラスの2-Aが万年最下位であり、急に補習などを行い始めたネギ。だが勉強は捗らず、ネギは途方に暮れる。

そんな中、次に最下位だとクラス解散の上、小学生からやり直しという噂が流れた。そこで焦ったバカレンジャー(赤点常習五人組)は図書館島の地下に眠る『読むだけで頭が良くなる魔法の本』を探しにネギを連れて行ったのだが図書館島は地下に行けば行くほどに危険な罠が増えていく。連絡要員として残って定時連絡を受けていたハルナとのどかだったが、急に音信不通となったため慌てて戻ってくる途中でヴァルゼルドと遭遇したとの事だ。

 

 

『つまり、留年の危機を感じ、テストの不正行為の為にネギ殿を拉致し、夜の図書館島に不法侵入したと?』

「あぅ……」

 

 

ヴァルゼルドは呆れながらにもネギ達一行の罪状を上げる。のどかは自分達が何をしでかしたか思い詰め、再び泣きそうになる。

 

 

『二人は寮に帰還を願うであります。本機はこれよりネギ殿達の捜索に向かうであります』

「ち、ちょっと待った!ネギ君達が行方不明になったのは図書館島地下だよ!?そんな直ぐに探し出せるの!?」

 

 

ヴァルゼルドがネギの捜索に向かうと言うが待ったを掛けたのはハルナだった。ハルナの言う通り、図書館島は地下に行けば複雑な迷路となっている。

 

 

『問題ないであります。本機は幾度も図書館島の迷子を送り届けたであります』 

「う、噂は本当だったんだ……流石、麻帆良のガーディアン」

 

 

ヴァルゼルドの返答にハルナは噂の真意を知って驚く。

先程からハルナが口にしている『麻帆良のガーディアン』とは勿論ヴァルゼルドの事であり、噂とは「困ってる人や迷子の下へどこからともなく現れ助けてくれるロボットがいる」と言われているのだ。

これに関してはヴァルゼルドが見回りの際に高性能センサーで周囲の状況を確認し、迷子や困ってる人を見つけて現場に急行するのが日常茶飯事となっていて、それが次第に噂へと変わっていったのだろう。

 

 

『では本機は図書館島に向かうでありますがお二人にはネギ殿達が行方不明である事を寮生に知られない様にして欲しいであります』

「え、秘密……にするんですか?」

『余計な混乱を避ける処置であります。本機から最低限の連絡はします故に、本屋殿達は事が知られパニックにならぬ様に注意を願うであります』

 

 

余計な混乱を避ける為にのどか達に念を押すヴァルゼルド。

 

 

『本機がネギ殿達を連れて帰ってきたら、本屋殿達もお説教でありますよ』

「うへぇ……」

「は、はい!」

 

 

ヴァルゼルドの言葉にヘコむハルナとお説教にビビりながらもちゃんと返事をしたのどか。

 

 

『では、行くであります』

 

 

二人が寮へ向かったのを確認するとヴァルゼルドは図書館島へと向かうのだった。


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