一頻り叫びを上げ、猫達が離れた後に茶々丸はヴァルゼルドに声を掛ける。
「あの……アナタは」
『おや、お嬢さんはロレイラルの方でありますか?』
茶々丸がこえをかけたことで振り返ったヴァルゼルドは漸く、茶々丸の存在に気付く。
茶々丸はヴァルゼルドが意外にも気さくに話かけて来た事に驚く。ヴァルゼルドは表情がある訳では無いが妙に感情豊かなのだ。
そして茶々丸はヴァルゼルドが口にした『ロレイラル』と言う言葉に首を傾げる。
「あのロレイラルとは?」
『此処はロレイラルでは無いのでありますか?お嬢さんが居るからてっきり機界ロレイラルかと思ったであります』
茶々丸がヴァルゼルドにロレイラルの事を聞き返すがヴァルゼルドは茶々丸の存在からこの場所を機界ロレイラルと勘違いした様だ。
『おっと自己紹介がまだでありました。本機は形式番号VRL731LD、強行突撃射撃機体VAR-Xe-LD。親しみを込めてヴァルゼルドと呼んで欲しいであります』
「これは御丁寧に。私は麻帆良学園中等部2-A、絡繰茶々丸です」
ビシッと敬礼をしながら自己紹介をするヴァルゼルドに丁寧にお辞儀をしながら自己紹介をする茶々丸。
武骨な機械兵士と可愛いガイノイドが頭を下げる不思議な光景が出来上がっていた。
「ヴァルゼルドさんは何故此処に?」
『それが……分からないのであります。本機は島に居た筈なのでありますが気が付けば此処に……それに本機は……』
茶々丸の問いにヴァルゼルドは自分も解らぬもと答え、ライトグリーンの瞳が消えると顔を俯かせてしまう。
「どうされましたか?」
『いえ……それよりも此処は何処でありますか?本機のデータベースの地図には該当無しと出ているであります』
ヴァルゼルドの態度に茶々丸は顔をのぞき込むように見上げるがヴァルゼルドは話題を変える。
「此処は麻帆良学園の敷地です。ヴァルゼルドさんは麻帆良大学工学部ロボット工学研究会関連の方では無いのですか?」
『いえ、本機は【忘れられた島】に居た筈なのでありますが……』
噛み合わない会話に互いに首を傾げる茶々丸とヴァルゼルド。
「私では対処しきれない事態のようです。此処の責任者の所へ御案内状致します」
『よろしいのでありますか?本機は身元も不明な存在……』
茶々丸の対応に驚くヴァルゼルド。しかし茶々丸は首を横に振った。
「ヴァルゼルドさんは悪い方ではないと思いましたので……どうぞ此方へ学園長の下へご案内します」
『茶々丸殿……了解であります!』
茶々丸の言葉に感動したヴァルゼルドは敬礼をした後に先に歩き出した茶々丸の後を追った。
これは余談だが可憐なガイノイドと武骨な機械兵士が並んで歩いている事に周囲の視線が集中されていたりする。