「いやぁ、まいったなぁ」
頭をポリポリと掻きながら歩く高畑。隣を歩くヴァルゼルドが口を開いた。
『明日菜殿には不憫でありましたが、理解頂けたでありますか?ネギ殿がどれだけ未熟かを』
「うーん。まさか、あそこまでとは……早急に指導者を見つけないと……」
歩きながら高畑は誰をネギの指導者とするか悩み始める。
「……と、これからネギ君の歓迎会なんだ。ヴァルゼルドも来るかい?」
『ぜひ、と言いたいでありますが本機はこれから麻帆良大へ行かねばならないのであります』
高畑はヴァルゼルドもネギの歓迎会に招こうと思ったが断られてしまう。
「麻帆良大に?メンテナンスなら超君や葉加瀬君も歓迎会に出るよ?」
『いえ、超殿達ではなく……』
「ああ、明石教授の方かい」
超達も歓迎会に参加するのに大学へ行こうとするヴァルゼルドに疑問を持つ高畑だがヴァルゼルドの発言で得心がいく。
超や葉加瀬は言わば表の科学者側(魔法は知ってはいるが)。対して明石教授は裏の科学者側(魔法先生)なのだ。
とは言っても超も葉加瀬も魔法を知っているしヴァルゼルドのレポートも提出しているなら本来なら必要ないのだがこれでは魔法先生や魔法生徒は納得しない。つまりはヴァルゼルドに対して警戒もしていると伝える為のパフォーマンスなのだ。ヴァルゼルドもそれを理解しているから何も言わずに協力していた。
「そうか、じゃあまた明日」
『高畑殿』
別れようと背を向けた高畑にもう一度声をかけるヴァルゼルド。
『人を助ける為に自分の怪我も顧みず、損得勘定抜きで身体が動く……本当に良い子であります』
「ヴァルゼルド……そうだね」
ヴァルゼルドの中でネギの評価が僅かに上がった事を喜び、高畑はフッと笑うと今度こそヴァルゼルドと別れる。ヴァルゼルドもそれ以上は言わず、大学へ足を向けるのだった。
◇◆◇◆
高畑と別れ、大学へ来たヴァルゼルドは迷う事無く明石教授の下へ来ていた。
それと言うのもこのメンテナンス(仮)は魔法先生方からすればヴァルゼルドの取り調べなのだが実際は雑談程度。
『失礼するであります、明石教授殿』
「やあ、待ってたよヴァルゼルド」
研究室に足を踏み入れたヴァルゼルドを出迎えたのは黒髪で眼鏡を掛けた男性。彼が明石教授であり、ヴァルゼルドのメンテナンス(仮)を請け負う人物だった。
とは言っても先に記した通り、取り調べではなく雑談や表向きに調べられたヴァルゼルドのボディスペックを再確認する程度なのだが。
「スマなかったね。今日はネギ君の歓迎会なんだろ?」
『いえ、本機に必要な事でありますから。それにこれからネギ殿と会う機会は多くなる筈。焦りは禁物であります』
謝る明石教授だかヴァルゼルドはいつもの調子だ。ありがとうと呟くと明石教授は提出されたレポートに目を通す。
「ふむ、今の所問題は無し……だが未確認の箇所が複数有りと」
『本機に元々、備わっていなかったパーツが存在するであります』
レポートを読みながら顎に手を這わせる明石教授。ヴァルゼルドも自身の事なので積極的だ。
因みにヴァルゼルドか言った『本機には備わっていなかったパーツ』とはヴァルゼルド自身の事である。
教官殿と別れた際にヴァルゼルドが装備していたのは【ライフル】と【ドリル】だった筈が何故か【槍】も追加されていた。
右手が変形しドリルの形となる、槍は方の一部のパーツが飛び出して槍になる折りたたみ式。ライフルは常に腰部に装着されている。
更に追加ギミックを報告すると胸や肩に収納スペースが確保されており、胸には小物。肩には麻帆良大学で開発された非致死性グレネードや捕縛武装が装備されている。
更に使用されてはいないが背面には加速用ブースターも設置されているとの事だった。
『随分と追加機能が備わったであります』
「レポートにはヴァルゼルドを作った物は汎用性よりもヴァルゼルドの為になる物を揃えた様な装備と報告が上がってるよ。本当に何者なんだろうね?」
尋問らしい尋問も行われないまま雑談をするヴァルゼルドと明石教授。
結局、この日もヴァルゼルドの装備について話しただけで何も進展は無かった。
帰り際にヴァルゼルドは明石教授から「ネギ君の担当するクラスに僕の娘が居るんだ。よろしく頼むよ」と言われ、ヴァルゼルドは快く『了解であります』と返すのだった。
今回のヴァルゼルドの装備や収納スペース、背面のブースター等はオリジナル設定になります。