魔法先生ネギま! 子供先生と機械兵士   作:残月

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身を賭して守る

 

 

 

「えと、コレはこっちですか?」

『空き缶はアルミとスチールに分けておくとリサイクルの回収業者の方の仕事効率が上がるであります』

 

 

ガチャガチャとアルミとスチールを分けていくヴァルゼルド。愛衣も一緒になって仕分けをしていた。

 

 

「いやぁ、ヴァルゼルド君は素晴らしい!ウチの生徒にも見習って欲しいですな」

「そ、そうですね……」

 

 

新田の中でヴァルゼルドの評価はうなぎ登りの様だ。同意を求められたガンドルフィーニは苦笑いで相槌をうつ。

 

 

「高畑先生……彼、本当に異世界の戦闘用の機械兵士なんですか?」

「私の目には人の良いお手伝いロボットにしか見えないんですが」

 

 

新田達から少し離れた位置で会話をする高畑、高音、刀子。

ヒソヒソと新田には聞こえない様に話す。当然話題はヴァルゼルドだ。

 

 

「彼の話じゃ彼は元々、機械兵士だったらしいけど今の彼の行動理念は彼の尊敬する『教官殿』に沿ってるらしいよ」

「立派な方だったんでしょうね」

 

 

高畑と刀子は既にヴァルゼルドの事を認めている様だったが高音は違っていた。愛衣はヴァルゼルドの事を手伝ってる辺り、認めているのだろう。

高音はガンドルフィーニ寄りの考え方でまだヴァルゼルドが危険な存在だと思っている様でキツい視線を送っている。

 

 

「ヴァルゼルドさんは普段は何処に居るんですか?」

『昨夜はエヴァ殿の所でお世話になりました。茶々丸殿にもお世話になったであります』

 

 

その事を聞いた愛衣は少し引く。

 

 

「え、エヴァンジェリンさんの所ですか?」

『はい、とても良い方であります』

 

 

嬉しそうに話すヴァルゼルドに愛衣は引いたままだ。エヴァは闇の福音と呼ばれる悪の魔法使いだ。

それ故に魔法界での恐怖は凄まじい。

 

 

『愛衣殿はエヴァ殿が苦手でありますか?』  

「苦手というか……その……」

 

 

新田が居るのでまさか「闇の福音が恐いんです」とは言えない愛衣。

 

 

『何故、愛衣殿がエヴァ殿を苦手としているのかわからないでありますが、必要なら話をしてみるべきであります。教官殿も言っていたであります『互いを知り合うにはまず歩み寄って話し合うものだ』と』

「そ、そうなんですか?でも私は……」

 

 

仲良く話をするヴァルゼルドと愛衣は会話だけを見れば年の近い兄妹の様な光景である。

 

 

「なんとも……妙な光景ですね」

「ヴァルゼルドも根が真面目だからね」

 

 

不思議な光景に刀子はタラリと汗を流し、高畑は根が真面目な二人は気が合うのかなと思う。

その時だった。

ヴァルゼルドが突然立ち上がり何処かへ走り始めたのだ。

 

 

「な、どうしたんだねヴァルゼルド君!?」

「ヴァルゼルドさん!?」

 

 

突然のヴァルゼルドの行動に驚愕する新田と愛衣。

ガンドルフィーニや高音は遂に本性を出したかと思い、高畑は何があったのかとヴァルゼルドの先を見る。

 

 

其処には運転中に電話をしてフラフラとしている車が居た。

更にその先には高畑の担当するクラスの生徒『長谷川千雨』がいる。彼女は音楽を聴いてイヤホンをしているのか後ろの車には気付いていない。

 

そして彼女が背後から迫る車に気付いた時には遅かった。

車は既に彼女の1メートルほど前まで来ている。

 

 

『間に合え、であります!』

「んなっ!?」

 

 

そんな彼女と車の間にヴァルゼルドが割り込んだ。

そしてヴァルゼルドは両手を広げると車を受け止めた。

ズズン!と重量物同士がぶつかり合う音が鳴り響く。

 

 

『間に合った……であります』

 

 

受け止めた車をドスンと地面に下ろすヴァルゼルド。

運転手は何が起きたのか理解できず呆然としていた。

 

 

「な、おま……お前、なんなんだ?」

 

 

ヴァルゼルドに指を刺しながら千雨はプルプルと震えている。車に轢かれそうになった為に腰が抜けたのか座り込んだままだ。

 

 

 

『本機は【麻帆良警備兼お手伝いロボット・ヴァルゼルド】であります』

 

 

ヴァルゼルドは振り返りながら千雨に自己紹介する。

表情がある訳では無いがニコッとヴァルゼルドが笑った気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガンドルフィーニ先生。今の行動を見て、彼がまだ危険な存在だと思いますか?」

「…………一応の危険は無いと判断は出来そうですね」

 

 

高畑に肩をポンと叩かれてガンドルフィーニは苦々しそうに呟く。

身をとして生徒を守ったヴァルゼルドにガンドルフィーニも妥協した様だ。


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