AKABAKO   作:万年レート1000

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伏線を貼りまくる回。
貼りすぎた感すらある。


Episode2 第1章:舞散光翼
三つの大事件


「何よ……これ」

「こいつは驚いたねぇ……」

 

 惑星ナベリウス・森林エリア。

 

 ――”だったところ”に、ヒューマンの少女とキャストの女性が一人ずつ、立っていた。

 

「シャオ。これも『シズク』って子の仕業なの?」

 

 少女――サラは、耳に手を当てて、通信の向こう側にいる存在に問いかける。

 

 返ってきた答えは、「それを調べるために君たちにお願いしたんじゃないか」という子憎たらしいものだった。

 

「サラ、ここから先はアタシから離れるなよ」

「言われなくても頼りにしてるわよ、マリア……」

 

 キャストの女性――六芒均衡の二、マリアの傍に並び立ちながら、サラは前を向く。

 

 目の前に広がる、極彩色に変わり果てた元ナベリウス森林――『壊世区域』。

 

 本来の歴史ならば、まだ有り得ぬ筈の危険区域が、確かにナベリウスに顕現していた。

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

 A.P.238/5/1。

 【巨躯】との決戦から一ヶ月、そして【コートハイム】が解散してから約半月後。

 

 今、アークスには大きな話題が三つ到来していた。

 

 一つは、惑星ウォパルという新惑星の発見&その惑星から謎の救難信号が発せられたこと。

 一つは、惑星ナベリウスに突如出現した『壊世区域』と呼称される超高難易度エリア。

 

 そして最後に、アイテムラボ店員に新しく可愛い女の子が配属されるということ。

 

 そう。

 言うまでも無いことだが、この中で最も話題になっているのは最後の一つだ。

 

 アイテムラボ店員がドゥドゥだけでは無くなるというだけでもかなり衝撃的な出来事だというのに、女の子である。

 

 可愛い、女の子である。

 

 そんなのもう、わざわざドゥドゥに武器強化をお願いする理由は無くなったも同然だった。

 

「あら? 大分空いてるわね」

「うば、ホントだね」

 

 ショップエリア・アイテムラボ前。

 

 そこに、青髪の少女と赤髪の少女――つまるところリィンとシズクが姿を現した。

 

「ふっふっふ、何用かね」

 

 お客激減中だというのに変わりなく……むしろ心なしか機嫌が良さそうに、ドゥドゥはいつもの笑顔で二人を出迎える。

 

「新しい武器の強化をお願いします」

 

 言って、リィンはアイテムパックからソードを一本取り出した。

 

 アリスティン、と呼ばれる真紅の刃と白金色の刀身を持つ正統派の大剣(クレイモア)である。

 

「ほう、アリスティンか……」

「とりあえず+10まで……十回分よろしくです」

「ふっふっふ、任せたまえ」

 

 アリスティンを渡して、規定のグラインダーとメセタを払う。

 

 ザックスやブラオレットと比べると、レア度が上がっているので一回に支払う額が多い。

 加えて強化成功率も下がっているので、そこそこ時間のかかる戦いになりそうだ。

 

「じゃあ、あたしはその間にサポートパートナー貰ってくるね」

 

 そう言って、シズクはエステの方に駆けていった。

 

 サポートパートナーを、ようやくシズクも持つ気になったらしい。

 

「……サポートパートナーって、エステで貰えるんだ」

 

 正確には、エステにある整形用の仮想人体モデリング装置を利用してサポートパートナーの見た目を設定するのだが……それを知らないとかどうやってルインを手に入れたんだとツッコミが入りそうな呟きをしつつ……。

 

「あ、いたいた」

 

 聞き覚えのある声がする方に、振り返った。

『リン』の声だ。一体、何の用だろうか……。

 

「? 『リン』さ――」

「――よく、来てくれた」

 

 『リン』が声をかけたのは、リィンにではなかった。

 

 中央オブジェクトの前に、一人の女性が立っていた。

 

 纏め上げられた、黒い髪。

 研究者のように見える、白衣と眼鏡。

 

 何よりの特徴として、海色の光が渦巻く手足。

 

(それと――)

(シズクと同じ、海色の、瞳……?)

「素晴らしく運がいいな、君は」

 

 ドゥドゥの声に、ハッとリィンは視線を戻す。

 

 気づけば+9のアリスティンが出来ていた。

 惜しい。

 

「じゃあ続けて強化をお願いします」

「心得た。……ああ、そういえば」

「?」

「戦技大会、二位だったようだね。おめでとう」

 

 アリスティンの+を9から7に落としながら、ドゥドゥは祝辞を述べた。

 

「……は、はぁ、ありがとうございます。見てたんですか?」

「いや、最近ニュース等で結構取り上げられているのでね、ちょっとした有名人だよ君」

「あ、あはは……」

 

 そう。

 戦技大会で二位を勝ち取って以来、某情報屋とかから取材をされたりテレビで戦技大会の映像を繰り返し流されたりでやけに有名になってしまったのだ。

 

(有名になるのは別にいいんだけど……)

(紹介のされ方が『ライトフロウ・アークライトの妹』なのがなぁ)

 

 なんて、本人しか気にしていないことをこんなおっさんに言ってもしょうがないので曖昧に笑うしか無いリィンであった。

 

「おっ、ふっふっふ、成功のようだね」

「ありがとうございます」

 

 無事+10になったアリスティンを受け取って、リィンは振り返る。

 

 『リン』に改めて助けてもらったお礼でも言おうと思ったが、何だかまだ話しているようだ。

 

 さっきの白衣の女性と、『リン』と、”妙な刺青を左目に施した白いスーツの男”の三人で。

 

「…………また今度でいいか」

 

 若干コミュ障入っているリィンに、割り込んで会話に入るなんて真似できるわけもなく。

 

 リィンはシズクがいるであろうエステの方に足を運ぶのであった。

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

「あれが、ルーサー……フォトナーの、長」

 

 ショップエリア・展望台。

 ”妙な刺青を左目に施した白いスーツの男”――『ルーサー』が『リン』とシオンの前から立ち去ったのを見て、クーナは呟く。

 

 その声に、友好的なものは一切無く。

 むしろ、怒りと恨みが籠もっているようだ。

 

「正しくフォトナーと呼べるのはもう彼だけでしょうから。まあ、間違ってはいませんね」

 

 クーナの隣で、相変わらずの胡散臭い笑みを浮かびながらそう言ったのは、いわずもがなカスラである。

 

「他のは全て、フォトナーになりたいと願う研究者が、背伸びしてそう言っているだけにすぎない……巨躯の封印解除に、造龍の離反。目論見のズレが目立って苛立ったかとうとう姿をみせてきましたね……しかし」

 

 カスラは、展望台から丁度見下ろせる場所で立ち尽くす『リン』を見る。

 

 この距離だと、表情は見えない。

 

「最初の接触相手があの人とは……どういう因果なのでしょうね」

「……そんなのどうでもいい。わたしは、わたしとハドレッドの運命を狂わせた相手を討つだけ」

「……クーナさん。『リン』さんが鍵です。わかっていますね」

「わたしはわたしのやり方で、戦います」

 

 諭すように放たれたカスラの言葉を、クーナはドスの効いた声で一蹴する。

 

「貴方と馴れ合うつもりはありませんよ。六芒均衡……いえ、三英雄カスラ」

「…………」

「それより、貴方の方こそわかっているんでしょうね」

 

 始末屋モードの、冷たい視線と鋭い口調でクーナは言い放つ。

 確認のため、というより、釘を刺すように。

 

「ええ、わかっていますよクーナさん。全てが終わったら、この首、この命好きなように扱ってください……そういう契約ですからね。貴方にもそれだけのリスクを背負わせていますし、約束は守ります」

 

 全てが終わったら、命を好きにしても良い契約。

 そんなものを結んでいるにも関わらず、カスラの態度や口調はまるで変わらない。

 

 全てを受けて入れているような、そんな顔。

 

「……気に入らない。全てを受け入れているようなその顔。貴方の目的は、何なんですか」

「今のところは、貴方と同じですよ」

「…………」

 

 何も、見えない。

 クーナには、この男の考えていることが何一つ分からなかった。

 

 なら。

 

「……分かりませんね。貴方の考えていること」

「そんなに警戒することではありませ――」

「なのでシズクを呼びましょうか。サインで釣ればすぐ来るでしょう」

「さて私はここで失礼しますいやぁ忙しい忙しい」

 

 クーナが端末を触りだした瞬間、早口でそう言ってカスラは逃げた。

 

 ダッシュで逃げた。

 

 六芒均衡にあるまじき逃げ足だった。

 

「…………ふふん」

 

 苦手で嫌いな男に、有効すぎる対抗策を得たことを実感して、クーナはにやりと笑う。

 

 これもまた、アイドルにあるまじきゲスな笑顔だった。

 

 

 

 

 




早すぎる壊世区域の出現。
さりげなさすぎるルーサー登場。
シズク神回避。
平然とシオンを視認しているリィン。
さりげなく+9から+7に落とす鬼畜外道。
クーナちゃんのゲス顔prpr。

の、六本立てでお送りしました。

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