AKABAKO   作:万年レート1000

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予定が変更になったので百合ハーレムをタグから消しました。
今後の思いつき次第ではまた追加するかも。

追記:サポートパートナーを貰えるの20レベルからというのを忘れていました。
   今更書き直せないので、AKABAKOではサポパは新人でも一人一体貰えるという
   設定に致します。誠に申し訳ございません。


ルイン登場

「それじゃあ! あたしたちの友情に……!」

「か、かんぱーい」

 

 コップとコップが打ちあう音がマイルームに鳴り響く。

 友達記念、そしてレアドロ記念、ということでお祝いを開くことになったのだ。

 

 アークスシップ居住区には、マイルームというアークス一人一人に与えられた部屋がある。

 

 今、シズクとリィンが居るのはリィンのマイルームだ。

 広い三つの部屋と、ベランダからなるアークス標準の部屋だ。

 

 しかし、未だアークスになって二週間の新米だからか、それともリィンの性格からか、部屋のインテリアは殆ど無くてテーブルや椅子が最低限あるだけの閑散とした部屋になっていた。

 

「ホントに何にも無い部屋だねぇ」

「だから言ったじゃない、私の部屋は何も無いって」

「よぉーし、あたしのロックベアレリーフをプレゼントしてあげよう」

「やめて!」

 

 ブラオレットのお返しにね! っとアイテムパックを探り始めたシズクを止める。

 いくら閑散とした部屋でもロックベアの置物が悠々と置いてある部屋は乙女的にアウトである。

 

「あ、そうそう、ブラオレットといえばまだ現物見て無かったなぁ、今出してみてよここで」

「ん? ふふーん、見る? 見ちゃう? あたしのブラオレット、しょーがないなー」

「……随分と嬉しそうね、渡す時はあんなに渋ってたのに」

「そりゃそうだよ、リィンがくれたものだもん!」

 

 皮肉げに言った言葉だったが、シズクは笑顔でそう返した。

 そんなに喜ばれると、やはり無理矢理にでも渡して正解だったとリィンも嬉しくなる。

 

「あたし、ブラオレット(これ)大事にするね、一番大事にするよ!」

「あーはいはい、いいから見せなさいよそれ」

「照れてるー」

「照れてない」

 

 照れなくていいのにーっと言いながらシズクはブラオレットを取り出した。

 リィンは顔を赤くしながらそれを受け取る。

 

「へぇ、結構特徴的な形しているのね」

 

 何と表現するべきだろうか。

 剣モードでは、明るい緑色のフォトン刃が凹凸型に銃身を覆っていて、銃モードではそのフォトン刃が引っ込み黄色が主体のカラーリングである銃が剥き出しになっている。

 

 正直あまりガンスラッシュを使わないリィンからしたら使いづらい形状だなぁと思うのだが、能力値はガンスレイヤーよりかは全然高いので戦力アップと云えるだろう。

 

「ふふーん、これでダガン殲滅任務の効率もうなぎ昇りってもんだよ」

「いや、もう一段上のクエストに行った方がいいと思う」

「む、何ゆえ?」

 

 まだ森林で手に入るレア全部手に入ってないよ? と言った眼でリィンを見るシズク。

 何て説明したものか……とリィンが考えていると、

 

「それは、レベルの低い相手だとレアドロップ率も低くて効率が悪いということですよ糞野郎」

 

と、鈴を鳴らしたような綺麗な声がした。

いや、最後すっごい汚い言葉だったが、声自体はこれ以上ないくらい綺麗だったのだ。

 

「ちょ、『ルイン』……!」

「失礼、天然低能の糞が非常に非効率な苦行をアホな顔して二週間も続けていると聞いて、つい口を出してしまいました」

 

 毒舌すぎる口を引っ提げて隣の部屋からやってきたのは、小さすぎる少女だった。

 

 紫色のミディアムストレートに、紫の口紅で塗られた唇。

 フィーリングローブという露出が少ない服装にも関わらず、暴力的なまでに主張する胸と尻、さらにくびれた腰がその二つの……いや四つの爆弾をさらに強調していた。

 

 ……が、彼女の身長は100cm程しかない。

 それもそのはず、彼女はアークスの支援をする、サポートパートナーという機械人形なのである。

 

 新米だろうと一人一体アークスには支給され、戦闘に連れていったり家事等をやらせたり人によって様々な運用がされる便利なパートナーだ。

 

「ちょっとルイン! その口調はどうにかならないの!?」

「失礼、なりません。決して。」

「なーんーでー!?」

「わ、その子リィンのサポートパートナー?」

 

 シズクの疑問に、ルインはぺこりとお辞儀をして応えた。

 局所局所で礼儀が良いのに、何故か頻繁に毒舌を吐く謎の性質を持つ自分のサポートパートナーにリィンは溜め息を吐いた。

 

「それで、糞女(マスター)、ワタクシが先ほどの件について説明しても?」

「今なんかマスターの言い方変じゃなかった?」

「気のせいです。それより説明しても?」

「…………なるべく毒舌少なめでね」

「了解です、淫売(マスター)

 

 まあ、どうやって説明したらいいか迷っていたところだ。

 不安だが任せてみるのもいいだろう。

 

「では」

 

 と、ルインは一度隣の部屋に戻り、トレイに乗せられた料理を運んできた。

 どうやら当初の目的としては夕食を運びに来ただけだったらしい。

 

 トレイを机の上に置いて、ルインはシズクと向き合う。

 

「お初にお目にかかります、ワタクシ、ルインと申します。よろしくお願いいたします。」

「あ、あたしはシズクだよ。よろしくねルインちゃん」

「はい。では早速ですが、これからシズク様のようなおつむが足りない猿でも分かりやすいように、ダガン殲滅任務の周回を続けるという行為がいかに愚行かを語って差し上げますがよろしいでしょうか?」

「お願いします!」

 

 良い返事です、とルインは満足げに頷いた。

 元気の良い子は好きらしい。

 

「まず、シズク様はクエストに『難易度』が設定されていることはご存じですか?」

「まあ、研修で習ったからね」

「大きく別けてノーマル、ハード、ベリーハード、スーパーハード、エクストラハードの5種類ですね。当然新米のペーペーであるシズク様と糞虫(マスター)はノーマルの……しかもナベリウス森林という敵が最弱の超超初心者向けのクエストに行っていたわけです」

 

 そう、ナベリウスの森林エリアはアークスの修了研修にも用いられる程出現するエネミーが弱い星だ。

 注意するべきなのは前言った通り『ロックベア』と『ファングバンシー』、『ファングバンサー』くらいな上、その三匹の出現率は低く中々出てこない。

 

 それに加え最近までダーカーすら出てこなかったらしい。

 初心者アークスが戦闘の練習をするにはもってこいの星と言えよう。

 

「だけどそれ故に、いつまでもナベリウスで雑魚狩りをしていてもアークスの上層部は実力を認めてくれず、難易度の高いクエストに何時まで経っても進めません」

「成程ね、一理ある」

「いえそれが全てです。アークスは完全なる実力主義……ノーマル難度のナベリウスで無双できても……いえ、それが出来るならすぐにでも次の惑星――アムドゥスキアに進むべきですよこの蛆虫」

「だけど……」

「ナベリウスのレアドロップを全て集めていない、ですか? 本当にお猿さんですね、難易度が高いクエスト程レアドロップ率が上がるというのは既に証明されています」

 

 ですので色んな惑星に行き、力を付けてから高難易度のクエストでナベリウスに行った方が遥かに効率的です。

 と、ルインは容赦なき口調で言った。

 

 完全にシズクの今までの周回が無駄だと言い切った。

 

「さらに言えば貴方が欲しているノーマルで手に入るナベリウスのレアはマイショップで1050メセタで出品されているものばかりです。それは何故かというと高難易度に行けるアークスがボロボロドロップするゴミレアをマイショップに格安で売るからです」

「さらに追い打ち!?」

 

 情け容赦無しここに極まる。

 大丈夫だろうか、これシズク泣いてないだろうか。

 

 と、リィンは心配そうにシズクの顔を覗き込む。

 

 果たしてシズクは――笑っていた。

 

 嬉しそうに、笑っていた。

 

「……何を笑っているのですか? もしかしてマゾ……」

「う、うふふふ、そりゃ笑うよ、嬉しいもの。正直ダガンばっか倒すのも飽きてきたとこだったよ!」

(そりゃそうでしょうね……)

(そりゃそうだ……)

 

 リィンとサポートパートナーの心が一つになった瞬間だった。

 

 しかしまあ、成程、とリィンは頷いた。

 

 来る日も来る日もダガンばっかり倒して倒して倒す日々。

 いくらレア武器が欲しいからってそいつは飽きる。

 

 そんなところにやりがいがありそうで、かつ効率の良い方法を提示されたら。

 そりゃ嬉しい筈だ。

 

間抜(マスター)……この方、聞いていた通り変わった方ですね」

「さっきからマスターの発音が不穏だけど……まあそうね、けど悪い子じゃあないわ」

蛆虫(マスター)とお似合いですね」

「なぁっ!?」

 

 ルインの発言に、カァッと顔を赤くして恥ずかしがるリィン。

 

いやそこは怒るところでしょう? っと言おうとして、ルインは何かを察したように「ああ」と呟いた。

 

「問題ありませんマスター」

「は? え?」

「ワタクシ、そういうのに抵抗無いっていうかもっとやれって感じなので」

「……はぁ?」

 

 リィンはルインの言っている意味が分からないようだ。

 厭らしい笑みを浮かべるサポパを見て、首を傾げる。

 

「どういう……」

「よし! リィン、早速アムドゥスキアに行こう!」

「え? 今から!?」

「善は急げ、時は金なり光陰矢のごとし! 休んでいる暇などあたしたちには存在しない!」

「……とりあえずご飯くらい食べちゃおうよ」

「…………それもそうだね」

 

 ぐー、と間の抜けた音がシズクの腹から鳴った。

 テーブルに料理が並んでいたけれど、話してばかりで全然手を付けて無かったので仕方が無いだろう。

 

「でもご飯食べたら出撃だからねっ」

「はいはい」

 

 言って、フォークを持って料理に手を出す二人。

 サポートパートナーであるルインは食事の必要が無いので見ているだけである。

 

「ところで糞女(マスター)――」

「待ってルイン、食事中アナタは喋っては駄目よ」

「…………チッ」

(舌打ち!?)

 

 口が悪すぎるだろう。

 やはり返品して新しいサポパを要請すべきか、と考える。

 

(でもこの子料理家事全般かなり高性能なのよね……美味い)

「おいしーっ」

 

 足をばたばたさせて喜ぶシズク。

 その姿は完全に子供のそれだ。実年齢はリィンと同じ筈なのだが……。

 

 

 ――二十分後。

 空になった料理を前にして「ご馳走様」とリィンは両手を合わせた。

 

 シズクはまだ食べている。

 食べるのが遅い、というより食べる量が多いのだろう。

 

「あっと、ルインさっき何か言いかけてたわよね。何? まだシズクが食べているから配慮してね」

「ああ――いえ、大したことでは無いのですが」

「?」

 

 ルインがシズクを見る。

 そして端末を何やら操り、グラフや表が立ち並ぶ画面を表示させた。

 

「これは――」

「はい、シズク様のバイタル値です。この中に食事を取れば取る程上がっている数値がありまして……」

「……何が上がっているの?」

「猿でも分かるように簡単に言うと――眠気です」

 

「ごち、そー、さまー」

 

 ばたん、とシズクは倒れるように横になった。

 

 瞳を閉じ、手足をだらしなく伸ばした態勢――ようするにマジで眠っちゃう五秒前というやつだ。

 

「ちょ、ちょっとシズク? 寝るなら自分のマイルームに戻りなさいよ」

「えー、めんどいー無理ー」

「無理って……」

「リィン、泊めてー……ぐぅ」

 

 どうやら眠りに落ちてしまったようだ。

 その証拠に寝息を立てているし、ルインが操る端末にもそう表示されている。

 

(食ったら寝るって……子供か!)

「と、泊めてーって……この部屋ベッド一つしか無いんだけど……」

「マスター、それではワタクシは料理を下げて食器を洗い次第即刻休眠モードに入りますので」

「えっ、ちょ、待って二人きりになっちゃうじゃん」

 

 慌てて止めようとするリィンの手を巧みに避け、食器を片づけて素早く隣の部屋にルインは逃げ込む。

 明らかに何故か気を使われている。それも、何かいやらしい方面の気の使い方だ。

 

「ちょ、ルイン――」

「マスター、無知で鈍重なアナタにさる東方のことわざを一つ教えてあげましょう

 ――据え膳食わぬは、男の恥」

 

 それだけ言って、ぴしゃりと扉を閉じてルインは隣の部屋に行ってしまった。

 

 後に残されたのは、寝息をたてるシズクとリィンの二人だけ。

 

「意味は――分からないけど」

 

 とりあえず私男じゃない、と心の中でツッコミを入れる。

 

「さて、と……」

 

 しょうがない、これはベッドが一つしかないし、友達をいつまでも床に転がしておくのは忍びないからしょうがない、と自分に言い聞かせて立ち上がる。

 

「わ、軽い……」

 

 肩と膝の裏を持って抱き上げ――所謂お姫様だっこでシズクを持ち上げる。

 体格が中身相応の小ささなだけあって、かなり軽い。

 

「仕方ない……これは仕方ない……」

 

 ベッドの上に、起こさないようにそっと乗せた。

 スペース的に、シズクが小柄だからシングルベッドだが二人で寝れそうだ。

 

「ベッドが無いなら……仕方ないよね? いや、そもそも女二人が同じベッドで寝るくらい問題ないはず……」

 

 体温が上昇しているのを感じる。

 顔が熱くなっているのを感じる。

 胸が痛い程早鐘を叩いているのを感じる。

 

「っ――」

 

 ふと、シズクの唇に目が行った。

 紅くて柔らかそうな、瑞々しい果実のように艶やかなそれに、目を奪われた。

 

「ぁっ――」

 

 喉が渇いている。これ以上ないくらいカラカラに乾いている。

 何だこれは? 何だこの感情はと自己に問いかけても答えは出ない。

 

(男女じゃあるまいし……女同士でベッドに寝るなんて普通。普通、普通――なのに……)

 

 これは駄目だ。

 駄目だ。

 

 駄目に、決まっている。

 

 そうはっきりと確信できる何かがある。

 

 でもその何かが分からない。

 

 リィンに――恋を教えてくれる人はいなかったのだ。

 

「…………探せば毛布くらいある筈だし、それを敷いて机の上で寝よう」

 

 呟いて、毛布を探すため動きだす。

 

 隣の部屋から「へたれ」と聞こえた気がしたが、気のせいだということにしておくことにした。

 




長くなってしまった。
百合シーン書いていると指が止まらないんや……

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