AKABAKO   作:万年レート1000

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健全でふわふわした百合が好き。
だけど、ちょっとエッチな感じの百合も好き。

ていうか大分エッチな百合も好き。

百合なら全部好き。

だからたまに全年齢向けの範囲でえっちぃことやることもあります。
(ただし作者の描写力ではお察しなあれにしかなりません、許して)


サクラとジュリエット

 夕暮れの教室。

 

 外から聞こえてくる部活動を行う生徒の喧騒以外何も聞こえない、静かな空間で眠る少女が一人。

 

 目元まで伸びた黒髪に、素朴だが何処か小動物を思い浮かべるような顔が特徴的な女の子である。

 

『あ、こんなところにいた』

 

 ウィーン、と音を立てて教室の扉が開き、女性が一人入室してきた。

 

 黄金のように輝く金の髪と、蒼い瞳を持つ美女だ。

 

『もう、こんなところで寝たら風邪引くわよ……』

 

 机に突っ伏して深い眠りに付いている少女を見つけるなり、美女は少女に歩み寄る。

 

 慈しむように髪を撫で、その手をゆっくり少女の耳元へ持っていく。

 

 微かに、少女の耳朶に手が触れた。

 

『ん』

 

 瞬間、少女の身体がビクンと跳ねる。

 

 しかし、まだ少女は起きない。

 余程疲れているのだろうか。

 

『そんなに眠たいなら帰ってから寝なさい、サクラ』

『んー……』

 

 中々起きない少女――サクラに業を煮やした美女は、にやりと笑って彼女の耳に顔を近づける。

 

 起こさないように注意しながら息を吸い、そして。

 

『……ふっ』

『ひゃん!?』

 

 そっと、耳に息を吹きかける。

 

 その効果は絶大だった。

 今までの熟睡が嘘だったかのようにサクラは跳び起きて、笑う美女の姿を発見した。

 

『も、もう! ジュリちゃんやめてよね』

『耳が感じちゃうんだー、可愛いねサ――

 

 

 

 と、そこまで読んだところでリィンはページを捲る手を止めた。

 

 そう、さっきまでの会話は全て漫画の中の物語だったのだ。

 

「耳……?」

 

 ソファに座りながらモニターに目を向けていたリィンは、自分の耳にそっと触れた。

 

「……んー?」

 

 全然、びくりともしないしくすぐったくもない。

 自分で触るんじゃ、駄目なのかなと色々な方法で耳に触れてみるが特に何も感じない。

 

「駄目かー」

 

 まあいいか、とリィンは再び漫画に目を向けた。

 

 ちなみに、この漫画のタイトルは『サクラとジュリエット』。

 パッと見よくある男女の恋愛を描いた少女漫画なのだが、見る人が見れば百合シーンが非常に多く、作者は本当は百合が描きたかったが編集に男を出すことをごり押しされたのではないか、とその筋ではまことしやに噂される作品である。

 

 

 

 

『耳が感じちゃうんだー、可愛いねサクラは』

『べ、別に感じてないし』

『ふぅん?』

 

 にやり、とジュリことジュリエットの美麗な顔が愉しそうに歪んだ。

 

『よいしょっと』

『ちょ、ちょっとジュリちゃん!?』

 

 椅子に座るサクラの足を跨ぐようにして、サクラの膝の上に腰掛けて向かい合う。

 必然、二人の距離はほぼゼロと言えるまで接近することになった。

 

『ち、近いよ……』

『ふふ、サクラったら顔真っ赤』

 

 つつ……とジュリの指先が、静かにサクラの耳に触れた。

 びくっとサクラの身体が震える。

 

『耳まで真っ赤ね』

『んっ……だってこんなに近いと……っ』

『…………』

『ふぁっ……んぅ……』

 

 耳朶を親指で捏ねるように撫でる。

 それだけで、サクラは蕩けるような甘い声を漏らした。

 

『や、やめ……』

『昨日さ』

 

 ジュリの唇と舌が、指で触っている方と逆の耳に触れた。

 

 耳元で喋られて、サクラの身体はより大きく跳ねる。

 

『シノノメくんと一緒に帰ってたでしょ』

『ふぁっ!? み、見てたの?』

『うん』

 

 シノノメくん、とはサクラが片思い中の男子のことである。

 ようするにこの漫画のヒーロー役なのだが……登場回数は大体三話に一回くらいと少ない可哀想な子だ。

 

『楽しそうだったわねぇ』

『だ、だって……く、む……ぅ』

『嫉妬しちゃうわねぇ……』

 

 コロコロと、サクラの耳朶がジュリの口内で踊るように転がされる。

 

 すっかり蕩けた顔をしているサクラに出来る抵抗は、最早指を噛み、漏れ出る声を抑えるくらいだった。

 

『前にも、言ったけど』

『――っ』

 

 ようやく耳から唇を離したジュリは、噛みついている指を引っ張って引き離した。

 

 無防備となった彼女の唇に、自身の唇を近づけていく。

 

『相手が誰であろうと、アナタを渡す気は無いから』

『ジュリちゃ――

「リィンー」

「うひゃぁ!?」

 

 唐突に、リィンの意識は現実へと引き戻された。

 今読んでいるシーンをシズクに見られないように、モニターを閉じる。

 

「お風呂上がったよー」

「え!? あ、そ、そうなの」

「……ん?」

 

 明らかに様子がおかしいリィンに、当然シズクは違和感を覚えた。

 

 しかし、漫画を読んでいたということを知らない以上、流石のシズクも様子がおかしい理由は察せない。

 

 ならば直接訊こう、とシズクはにやりと笑った。

 

「ねーねーリィンー! あたしがお風呂入っている間何してたのー?」

「え!? い、いや別に漫画読んでただけだけど!?」

 

 リィンの隣に、数センチの間も空けずダイナミックなモーションでソファに座るシズク。

 

 近い。

 お風呂上がりだからだろうか、とてもいい匂いがする。

 

 だがまあ、いつものことだ。

 基本的にシズクは人との距離が近いのだ。

 

「ほほう、漫画ということは、えっちなシーンだったのかな?」

「ぐぬっ、相変わらず無駄に鋭い……」

「見せて見せてー」

 

 ぐいぐいとリィンの腕を引っ張るシズク。

 凄く楽しそうだ。ムカつくくらい。

 

(そういえば)

(シズクがこうやって近くに居ても、別にドキドキとかしないなぁ……)

 

 普段から距離が近いからかしら、頻繁に泊まるし。

 

 等と思いながら、見せろ見せろと五月蝿いシズクのほっぺをむにりと摘まむ。

 

 そして一言。

 

「嫌よ」

「えー? どうしてー?」

「どうしてもこうしても……」

 

 むにり、むにりとシズクの頬を弄ぶ。

 滅茶苦茶柔らかい。赤ん坊クラスである。

 

「…………」

「……リィン?」

「…………」

 

 むにむにむにむに。

 むにむにむにむに。

 むにむにむにむにむにむに。

 

「やめんか!」

「えー、いいじゃないほっぺくらい」

 

 びしり、と叩き落とすように両手をはたかれた。

 しかしリィンはこりずに再びその手をシズクの頬へ。

 

 

「うばー」

「やわらかー」

 

 諦めたのか、抵抗をやめたシズクであった。

 

 むにむに地獄……いや、むにむに天国再びである。

 

「もー、リィンはもー」

「だって柔らかいんだもん……ん?」

 

 ふと、何かに気が付いたようにリィンがずいっと顔をシズクの顔に近づけた。

 

 キス寸前まで近づいてきたリィンに思わず赤面してしまうシズクだったが、そんなことにも構わずリィンは言う。

 

「シズクの瞳って……何か不思議な色してるわね」

「え? 何急に喧嘩なら買おうか?」

「いや褒めてるんだけど……」

 

 シズクの瞳は、透明のような青色のような不思議な色。

 海色、という表現が一番しっくりくるだろうか。

 

「そ、そう……」

「…………」

 

 頬を赤くし、照れるように目を逸らすシズク。

 

 それとは対照的に、リィンは真顔だ。

 別に、シズクの頬を触るのに夢中すぎるわけではない。

 

 ただ、一抹の不安がリィンに襲いかかってきたのだ。

 

(私もしかして……)

(別にシズクに恋しているわけじゃないんじゃないか!?)

 

 ルインが聞いたら腰の入ったストレートを鳩尾にぶちこまれそうな思考である。

 

 ただ本人は大真面目。

 真面目に自身の恋心に対して疑問を抱く。

 

 理由としてはこんなに近づいて、触れても漫画のようにドキドキしないからなのだが……。

 

 そのことで不安になる時点で、ねぇ。

 

(うーむ、いやまさか恋じゃなかったなんて……)

(ルインも適当言っちゃってまあ)

 

 等とルインが聞いたら激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム(神)必至なことを考えつつ、

 

 リィンはふと思いついたように、シズクの耳を指でなぞるように撫でた。

 

 瞬間。

 

「んぁっ……」

 

 小さな喘ぎ声が、シズクの口から漏れた。

 

「っ……!」

 

 ぞくりと、何かが、リィンの全身を伝った。

 

「ちょ、ちょっとリィン、耳はくすぐったいかなぁって……ひゃっ」

「…………」

 

 シズクの制止も聞かず、リィンは耳を弄り出した。

 左右の耳を、両手でこねくり回すように撫でる。

 

「んっ……や、やめて……」

「耳、触るくらいいいよね」

 

 まるで、自分に言い聞かせるようにリィンは呟く。

 

 その表情は、楽しそう、というより、愉しそうな、

 

 愉悦の表情(かお)

 

「ま、待って。ふ、普通に考えてあたしが攻めな感じぃっ……! だったのに、なんで、こん、な……っ」

「? 何言ってるのシズク」

 

 指で耳を撫でるたび、面白いようにシズクの身体がびくんと跳ねる。

 

 なんだかそれが可愛くて、なんだかそれが面白くて、

 リィンは蕩けるような笑顔でシズクの耳を弄り続けた。

 

「ぐ、この……! いい加減にしろぉ!」

 

 最早涙目で、すっかり赤くなった顔を歪めながらもシズクは意を決したように動いた。

 

 両の手を前に突き出し、リィンの豊満な胸に向かって掴みかかった!

 

「きゃっ」

「うばばばば! こっから逆転開始だー!」

「うわっ、ちょ、やめなさいシズク!」

 

 もみもみもみもみとリィンの巨乳が揉みしだかれる。

 当然、リィンの抵抗がシズクを襲う。

 

 ずびしずびしとリィンのチョップがシズクの頭に炸裂していく。

 

「痛い痛い。けどやわらかー」

「くっこの……!」

 

 それは反射的に出た手だった。

 押しのけようと、つい突き出したリィンの両手が、

 

 シズクの慎ましい胸を撫でるように揉み上げた。

 

「っひゃあ!?」

 

 びくんっとシズクの身体が大きく跳ねた。

 

 貧乳故に、感度が良いのだろうか。

 しかしそんなことは知らないリィンは、仕返しとばかりにシズクの胸を揉め――無いので滑るように撫でる。

 

「あら、小さいのに柔らかい」

「ふぁ……! や! ま、待って……!」

 

 リィンの愛撫から逃れるようにシズクは後退した。

 リィンに背を向け、ソファにうつ伏せに倒れ込む。

 

「逃がさないわよ!」

「うばー! や、やめて! やばい! やばいから!」

 

 うつ伏せになったシズクの背に乗っかるリィン。

 ソファとシズクの胸の間に手を滑り込ませ、体重をかけることによってシズクが逃げられないように拘束した。

 

「ん……ぁ……」

「ふふふ、もう逃げられないわよ」

「ぁん……! 待ってリィン! 駄目! これ以上は駄目だから!」

 

 胸を撫でるたび、シズクの身体がびくんびくんと跳ねる。

 どうにか抵抗しようと身体に力を込めるが、リィンの指が動くだけで力が抜ける。

 

「駄目……!」

「何で?」

 

 すっかり発情した顔で、小首を傾げるリィン。

 

 彼女の性質悪いとこは、この「何で?」が意地悪でも何でも無く、ただの疑問だということだろう。

 

 何で駄目なのか、なんて。

 シズクくらいの年齢の乙女が説明できるわけもなく。

 

「~~~っ」

 

 ただ羞恥で顔を赤くするのみであった。

 

(あ、耳まで真っ赤)

 

 と、そこでリィンはさっきまで読んでいた漫画の内容を思い出した。

 

 少し躊躇った後、ゆっくりと顔を耳に近付けて……。

 

 ぺろり、と舐めた。

 

「――――っ!?」

 

 シズクの身体が跳ねる。

 

 声をあげなかったのは、指を噛んで声を抑えていたからだ。

 

 シズクにとって今できる、精一杯の抵抗だったのだろう。

 

 だが――。

 

(わ、シズク指噛んでまで声抑えて……)

(可愛い)

 

 逆効果のようだった。

 

 より、リィンの責めは激しくなっていく。

 

 知識は無いが、シズクの反応を見て何が有効で、何が反応悪いのかを見ていく。

 

(シズクの可愛い反応を見てると)

(何だろう、胸がドキドキする。お腹の下あたりが、ずくずくする)

(もっと。もっと、もっと見たい、シズクの可愛いとこ)

 

 胸の愛撫は、最初の全体を撫でるようなものから、先端を集中して責めるような撫で方に、

 耳は、息を吹きかけたり、優しく舐めながら時折甘噛みするのが有効だと学んだ。

 

「――――ふ――ぅ――っ!」

 

 最早シズクは抵抗の色すら見せず、指を噛んで声を出さないようにしてはいるもののリィンにされるがままである。

 

「ちゅっ、ぺろ、はむ」

「ぁ……くぅ――! り、リィン……!」

「ん?」

「あたし、もう――!」

「え? あっ!」

 

 シズクがもう、と言った瞬間。

 

 リィンは今までのやりとりが嘘のような早さでパッとシズクから身体を離した。

 

「――え……?」

「ご、ごめんシズク、やり過ぎた?」

 

 両手を合わせ、ぺこぺこと頭を下げて謝る。

 焦らしてやろう、とか思っているわけではない。

 

 素の行動である。

 

「はぁ――はぁ――」

「本当にごめん、なんかシズクの反応が愉しくて……頭もボーっとしちゃってつい……」

「…………えーっと」

 

 ゆっくりと、シズクは起き上がる。

 まだ荒れる呼吸を整えながら、リィンに向かいあう。

 

「その、怒ってないから……」

「え、ホント?」

「うん……だから、その……」

 

 ――を、とシズクは呟いた。

 

 しかしあまりにも小さい声だったため、リィンには届かない。

 

「ん? 今なんて?」

「だから、……つ、……きを……」

「え? ごめん、聞こえない」

「…………っ……づき……」

「もうちょっと大きい声だしてよ」

 

 どSかよ、とシズクは思うが、分かっている。

 リィンは本当にシズクの声が聞こえていないし、この仕打ちも天然なのだろう。

 

 大きく息を吸って、吐いて。

 深呼吸してから、言葉を発す。

 

「つ……!」

「つ?」

「~~~……っぎは!」

「次は?」

 

 結果的に、シズクは。

 羞恥心に負けることになったのであった。

 

「次は負けないからなー! 憶えとけこんちくしょー!」

「え? あっ、シズク!?」

 

 ソファから降りて、シズクはリィンのマイルームから転がるように出て行ってしまった。

 

 後を追う訳でもなく、ただその後ろ姿を茫然と見送った後、リィンは呟く。

 

「やっぱ怒らせちゃったのかしら……」

 

 明日謝ろう、と決めて、リィンはお風呂に入ろうと立ち上がる。

 

 太ももを伝う妙に粘着質な汗が、気持ち悪かった。

 




ついにリィンの読んでいる少女漫画のタイトルと内容が決定。

ていうかアレ……? 見直してたらリィンが15歳だったり16歳だったり曖昧っていうか適当っていうか色々雑だなぁ作者。

一度全部見直さなきゃいかんかも。

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