……いや、書くのが面倒とかじゃなくてエピソード3への伏線ですので仕方なくです。
いやー! 【巨躯】本体戦書くの楽しみだったのになー!
ダークファルス【巨躯】撃退作戦参加者待機場所。
と、長々しい名前が付いているが、場所は相も変わらず破棄されたアークスシップの上である。
「まだ人は疎らね」
「まあまだファルス・アームの残党狩りしている人らもいるんじゃない?」
そこに、降り立つ影が二つ。
チーム【大日霊貴】のリーダーと副リーダー、
ようするにライトフロウ・アークライトとアズサである。
まだ人の数は少ない。
と、いうより【大日霊貴】の二人を除けば一人しかいない。
その一人は、やってきた二人に気付くと「おっ」と手を振り近づいてきた。
「おーう、やっぱお主らも呼ばれてたか」
「わ、サカモトじゃない。元気にしてた?」
「わっはっは、当然じゃ」
『サカモト』、と呼ばれた男はそう言って快活に笑った。
黒いボサボサの髪に、無精髭。
イナセキナガシ銀という銀色の着流しを着こなすダンディな男性である。
この三人は、研修生時代からの同期なのだ。
「二人も元気しとーたか?」
「まあね」
「う、まあ、うん、まあ……うん」
「なんじゃ、煮え切らん返事じゃなライフロ嬢」
見るからに落ち込んでいくライトフロウ。
どうやら元気はないようだ。
決戦前にこれはいけない、とサカモトは元気づけるために「そういえば」と言葉を続けた。
「妹さんが今年からアークスに入ったらしいのう、もう会えたのか?」
「ごふぅ……!」
「うぉおお!? 吐血した!?」
「やっぱまだ振りきれてはいないか……」
アズサが残念そうに呟く。
パッと見普通に振舞っているが、やはり心に負ったダメージはでかいのだろう。
「一体どうしたんじゃライフロ嬢は……」
「それがかくかくじかじか……」
「まるまるうまうまっと……それはまあなんとも……言い難い」
「うう……」
そんな感じで雑談していると、段々と人がやってきた。
いずれも、アークスの歴史に名を残すような強者ばかりだ。
数多に存在するチームの上位に居るチームのリーダーや、
無所属ながらも孤高に力を付けた者など、様々だ。
数分して、待機場所に十一人の強豪アークスが集まった。
残りは、一人。
「ああ……もう皆集まってるのか」
最後の一人が、待機場所に降り立った。
その瞬間、全員の顔に緊張が走る。
一年前まで、此処に居るような強者たちは総じて同じようなことを考えていた。
『次の六芒均衡に選ばれるのは、自分だ』と。
その考えを、たったの一年で崩した存在。
どうあがいてもコイツだけは越えられないと思い知らされる、絶対的な強者。
キリン・アークダーティ。
通称『リン』。
彼女が、黒い髪を揺らし現れた。
「悪いな、少し遅れた」
ダークファルス【巨躯】撃退作戦、開始である。
*****
「さて」
いよいよこの時が来た。
待ち焦がれた、この瞬間。
赤結晶破壊タイムの時間である!
「全部でひーふーみー……ぐへへ、途中割れたのもあるけど十九個もありやがるぜ……」
「シズク、よだれよだれ」
「おっとっと、……しかしこれだけあれば流石にレアが――」
「シズク、と言ったな?」
突然、シズクは声をかけられた。
「ん?」と振り返ると、そこには黒衣の青年、イリーガル・ハウバーの姿があった。
「見事な指揮だった、またお前とは一緒に戦いたいものだな」
「え? あ、うん、ハウバーさんも、とても強くて頼りになったよ」
「しずくちゃーん」
またも、声を掛ける者が一人。
白髪の幼女、あいかである。
「しずくちゃんとたたかうのたのしかったよ!」
「うん、あたしも楽しかった、また機会があったらよろしくね」
「【コートハイム】シズクよ、その名前憶えておこう」
またも話しかけてきた男が一人。
引き立て役……否、ヒキトゥーテ・ヤクである。
「あたしも引き立て役さんの名前は憶えておくよ」
「ヒキトゥーテ・ヤク! だ!」
「あ、シズクちゃん!」
今度は、【アナザースリー】の三人、マコトとリナとラヴ。
少し、シズクがそわそわし始めた。
「見事な指揮でした」
「す、凄かったですね。アークス始めて何年目ですか?」
「いやぁ、惚れちゃいましたよ、今夜あたり私とセック「それ以上はいけない」」
黒髪のボーイッシュな少女、マコトが真面目系ツッコミ枠。
巨乳なニューマン美女、リナがおどおど巨乳枠。
ピンクキャスト、ラヴが下ネタ枠の愉快な三人組なようだ。
「うばば、照れるなぁ。ちなみにまだアークス一年生だよ」
「うっそ!? 同期!?」
マコトが驚いたように声をあげる。
どうやら同期だったようである。
「てことは、やっぱあっちの美人さんはリィン・アークライト?」
美人さん、と言いながらラヴがリィンを指差す。
リィンはそれに気付く様子もなく、メイやアヤと談笑している。
「そうだよ」
「へぇ、何だか優しげな顔になったね。前は少し怖かったもの」
「おお、一人狼系美人が笑顔を身につけて最強に見える、シズクちゃん、よかったら紹介してくれない?」
桃色の指をわきわきさせながら言うラヴに、シズクは無言で首を振る。
こいつは危険だ、とシズクの第六感が警告を鳴らしたのだろう。
「そ、それよりもほら、さっさと結晶割ろう」
話題変換。
まあそれだけが目的ではなく、いつまでもお預けを喰らうのは嫌だった故の提案でもある。
シズクの言葉を皮きりに、結晶割り作業が始まった。
十九個結晶があるとはいえ、アークスの人数は十二人。
数十秒で結晶は全て割れ、中からアイテムが飛びだした。
様々な色の箱が飛び交って行く。
これだけ分母があっても、出ないのか。
なんて、シズクの笑顔が曇りかけた瞬間。
「あ――――」
きらりと、視界の隅で何かが光った。
それは、十九個目の結晶を割って、ようやく飛び出た。
赤色の、箱。
ついに、一つ。