AKABAKO   作:万年レート1000

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PSO2復帰して、EP5と6を見て、シズクと会わせてみたいキャラが幾つか出来たので。


意味不明の事態

「やっばいよなー……これはいくらなんでもやっちまったって感じよなー……」

 

 惑星リリーパ、砂漠地帯にて、白いウェディングドレスのような衣装に身を包んだダークファルス――ダークファルス【百合(リリィ)】は、珍しく後悔から来る冷や汗を掻きながら呟いた。

 

 目の前には、ダークファルス【双子(ダブル)】の戦闘形態ことファルス・ダランブルの死体(・・)

 

 【百合】の手元には、血液のような何かが塗れた茜色の剣。

 それと、ダークファルス【双子】を倒したことで周囲に散ったダーカー因子を集めた『塊』。

 

「つい勢い余ってぶっ殺しちゃったぜ。…………協力者を殺しちゃったとか、アプちゃん怒るかなぁ」

 

 何で殺してしまったのか、なんて、ダークファルス【百合】という生き物の特性を考えれば自然と答えは一つに絞られるだろう。

 

 そう、【双子・女】とつい間違えて【双子・男】に声をかけてしまった【百合】は、やっべ男に話しかけちゃった殺さなきゃ、と(彼女の中では)理路整然とした論理的思考の結末として殺してしまったのであった。

 

「うっばー、まあ仕方無いよね……事故よ事故。それはそれとして戦力が減っちゃったよ……どうしよ」

 

 反省タイムはもう終わりを告げたようで、ころっと切り替えて【百合】は考える。

 

 【双子】を殺してしまったことに関する罪悪感など無いに等しく。

 まあ尤も、正確に言えば【双子】はダーカー因子として霧散しただけであり、かき集めて何かしらの『器』に入れれば復活するのだから【百合】でなくとも一般的なダークファルスなら罪悪感なんて無くて当たり前なのだが――。

 

「あ、そうだ♪」

 

 そこで、【百合】は何かを思いついたかのように電球マークを頭上に浮かべた。

 

 いいこと思いついた、と呟いて。

 

 ダークファルス【百合】の視線は遥か遠く、宇宙に浮かぶアークスシップのある方向を見据えていた。

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

「うっっっっばああああああ! 意味わかんねぇええええええ!」

 

 アークスシップ・艦橋にて。

 

 ダークファルス【百合】、【若人(アプレンティス)】、【双子】を目下最大の脅威として、

 その三体の主要活動区域である惑星ハルコタンと惑星リリーパは平時より厳しく監視の目を光らせているのだ。

 

 そんな折に発生した、ダークファルス同士の衝突、そして片方が消滅。

 いや、消滅というのは少し正確ではないかもしれないが――いやまあ、そんなことは今はどうでもいい。

 

「ダークファルスが手を組んでピンチ! ってなってこっちは色々手を回してたのに、何で仲間割れしてんの!? 意味分かんないんだけど! 意味分かんないんだけど! 少しは合理性とか考えて欲しいんだけど! ていうか【百合】の反応がリリーパにもハルコタンにも無いんだけど! 何処行ったのアイツ!」

「シズク、落ち着いて」

「シャオ! 何か演算で分かった!?」

「まだ。あの手の思考回路意味不明系サイコパスの考えを読むとか『僕ら』の苦手分野なんだから、仕方無いだろう?」

 

 ああいう手合いの思考を演算するのは、むしろやめたほうがいい。

 

 そう言いながらも、シャオもまた手を動かす。

 ヒューイやクラリスクレイス、それと『リン』やライトフロウ等の実力があって尚且つ直ぐに動けるアークスたちに、捜索任務を送りつけているようだ。

 

 何にせよ、敵の戦力が減ったので喜ぶべき場面ではないのか?

 

 と、思う人もいるかもしれない。

 

 しかし、そうじゃないのだ。

 敵の戦力は、微塵も減っていない。

 

 何故なら、ダーカー因子を消滅させられるのはアークスの扱うフォトンだけ。

 ダークファルスがダークファルスを倒しても、『喰らう』ことで倒されたダークファルスの力は倒したダークファルスの力に上乗せされる。

 

 あるいは、『喰らわなかった』としてもダークファルス一個分のダーカー因子は、そのまま残る。

 

「あれ以上【百合】が強くなるのも勘弁して欲しいし――そうならなかったとしても、最悪」

 

 誰かが新しいダークファルス【双子】になってしまうだろう。

 

『シズク! シャオ!』

 

 突如、通信が飛んできた。

 

 『リン』だ。

 焦りながら、狼狽しながら、そして何より、大量の血を流しながら。

 

『アフィンが……アフィンがやられた(・・・・)! アフィンの探し物を手伝ってたら、ダークファルス【百合】が、突然……』

「!?」

『なんとか、ギリギリのところで逃げてきて、今はメディカルセンターに運んだところ』

「容態は!? どんな感じ!?」

 

 嫌な汗を掻きながら、シズクは叫ぶ。

 

 早速最悪の展開に、なってしまったのか。

 

『容態は……かなりやばい。正直死ぬ一歩手前だった、五体満足なのが不思議なくらいで――』

「……? なんか、こう、ダークファルス化とかはしていない?」

『? い、いや、そんな感じはしないが……』

「う、うばば……そ、そうなの……?」

 

 何が、どうなってる?

 もしかして、例の偽【百合】にやられただけ――いや、『リン』が一緒に居たならば、偽【百合】に負けて逃走はありえないだろう。

 

『何か、【百合】の様子がおかしかったんだ』

「様子が?」

 

 おかしいのは頭じゃないのか? という言葉を飲み込み、シャオは訊ねる。

 

『怒り狂ってた、というか、明らかに正気じゃなかった。……それと、前より明らかに強かった。とんでもなく』

「…………ちなみに、二人は何処に探索に行ってたの?」

『え? リリーパだけど……』

 

 本当に、わけが分からない。

 

 少し前まで【百合】は【双子】と戦っていて、しかもその後リリーパからの反応はロストしているのだ。

 

 時系列が合わない。

 どう考えてもおかしい。

 

「……分かった、報告、ありがとう」

『ああ』

 

 通信を切る。

 シャオとシズクは互いに視線を合わせて、首を横に振った。

 

「うばー、……意味分かんないことだらけだけど、兎に角調査するしかないよね。ちょっと、惑星リリーパに行って来るよ」

「……仕方無い、か」

 

 戦闘もできて、知識が豊富で、演算能力が秀でている。

 『現地調査』において、シズク以上の適任は存在しない。

 

 ひとまずリィンと合流しなきゃね、と呟いて、シズクは艦橋を出て行った。

 


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