Fate/Another Order   作:出張L

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第22節  新撰組

 新撰組とは人斬り集団であり、刀こそが新撰組最大にして最強の武器であるとイメージする人間は多い。だが京都での治安維持活動ではまだしも、新撰組の活動した時代において戦場の主役は刀ではなく銃や大砲である。

 隊長陣であれば銃や大砲などより疾く動きいかようにも対処出来るが、一般隊士達はそうもいかず、必然的に新撰組が戦場で使ったのは刀より銃の方が多かった。

 刀では銃には勝てない。剣客集団新撰組にある種の浪漫を抱く人間には残酷だが、これが現実というものだ。

 では聖杯戦争においてもそれは正しいか?

 否……否だ。

 確かに現実においてはそうであろう。刀など旧時代の産物に成り果てただろう。

 されど〝現実〟より〝空想〟が力を持つものこそが〝英霊〟であり、聖杯戦争だ。

 新撰組こそ最強の剣客集団。刀を武器にしてこその新撰組。新撰組の刃には銃や大砲も恐れ戦く。

 そういった後世の人々の信仰は〝英霊の座〟にも届き、この紀元前においても確かな力を新撰組に与えていた。

 ましてや対サーヴァント戦においては単純な火力ではなく、神秘の格こそが物を言う。新撰組が人々の信仰に反した大砲や銃を武器として使っても、それではサーヴァントや傀儡兵に大きなダメージを与える事は出来ないだろう。

 長くなったがつまりどういうことかというと、

 

「全軍、抜刀!!」

 

「遮二無二に突っ込め! 目についた奴を片っぱしから斬り伏せろ!」

 

「捕縛無用。とにかく斬れ! 斬れ! 斬れ!」

 

 抜刀突撃こそが〝新撰組〟にとって最強無敵の戦術ということだ。歴代局長の命令が雷のように轟き、狼の群れは嬉々として傀儡兵に突撃していく。

 恐れを知らぬ傀儡兵はそれ故に一般兵よりも強いが、自らの将に心酔し狂奔した兵士は時として信じ難いほどの爆発力を生みだす。

 その爆発力が発揮された時、ただのしがない一兵卒は豪傑となり、一万の軍勢は百万の軍勢に互するようになる。嘗て李信が二十万の軍勢を率いて楚に攻め込んだ際、とある将率いる軍によって完膚無きまでに叩きのめされたように。

 秦軍を率いる李信からすれば生前の自身の負け戦をもう一度見せつけられているようなものだろう。一頭の大狼に率いられた狼の群れは、群がる傀儡兵を次々に斬り伏せていっていた。

 

「おいおい、どうすんだよ大将軍様ぁ~。考えなしの馬鹿な特攻かと思ったが中々どうして敵さんやりますぜ? 傀儡兵なんざ替えが幾らでも効く上に量産可能な駒に過ぎないつっても、全滅ってのは流石に不味くねえですかい。俺は責任とんの御免ですぜ」

 

「責任はとるさ。それが一番上にいる人間の仕事だ。それと宋江、これは考えなしの特攻じゃない。考えあっての特攻だ」

 

「へ?」

 

「一か所に纏まって戦えば、俺が迷宮展開して新撰組一同全員仲良く閉じ込められる危険性がある。だから無謀だろうと敵味方入り乱れる乱戦に持ち込む必要があったってことだよ」

 

「なるへそ。よく考えてることで」

 

 テセウスの『万古不易の大迷宮』は大雑把に発動範囲を設定することは出来ても、細かな対象の選別は出来ない。よってこのように乱戦に持ち込まれてしまえば発動は困難になるのだ。

 土方はそれを見抜いたからこそリスクを度外視して突撃を命じたのだろう。

 

「けどそれじゃ初手は完全に持ってかれちゃったってことじゃねえですか。副将として健気に意見を言わせて貰うと撤退した方がいいんじゃねえですかい?

 燃え盛ってるところを鎮火するのは面倒でしょう。火を消すなら燃え尽きた所の方が楽にやれますよ」

 

「一理ある。だが土方の狙いは時間稼ぎ。こちらが一時でも撤退してしまえば、土方は自分の命を失うことなく目的を達成することになる。よって却下だ」

 

「なら、」

 

「やはり……」

 

 李信の背後に大岩のような体躯の傀儡将が集まりだす。一般の傀儡兵と違って確固たる意志のある彼等は、生前においても李信の配下として武功を重ねた将軍達である。

 その多くは残念ながら名を史書に記される事はなかったが、彼等の武勇は新撰組隊長陣にも引けをとるものではないだろう。

 李信から大将軍としての威厳ある面持ちは失せ、代わりに本能を剥き出しにした戦士の顔が露わになった。

 

「目には目を! 血には血を! 殺しには殺しを! 命令だ、野郎共! 倭人共を殺して殺して殺しまくれ!」

 

『うぉおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!』

 

 もしこの場にいたのが王翦であれば、無駄な出血を抑えつつ確実に土方を殺すような戦術を駆使したことだろう。そういう戦い方で王翦は楚の軍神を破ったのだから。

 だがここにいるのは李信だ。王翦ではない。

 王翦のやり方の合理性は理解しているし、慎重に戦う事の重要性も生前に覚えているが、人間には向き不向きというものがある。王翦のやり方は李信には出来ない。無理にやったところで力の半分も出し切れまい。

 ならば李信は己のやり方をもって新撰組討滅にかかる。

 

「おらぁああああああああああああっ!」

 

 傀儡将を率いた李信は自ら先頭になって乱戦に突っ込んでいった。

 正気ではない。大将軍にして総司令官たる人物が、何が起こるか分からない乱戦に自ら突撃するなど。現代でいえば警視総監が単身で暴徒の群れに突っ込むようなものである。

 けれどテセウスと宋江、そして近藤や土方には感じとれた。暴挙とすらいえる李信の行為は、新撰組に傾きかけた流れを取り戻しつつあるということを。

 李信が大矛を振るう度に隊士は吹っ飛ばされていく。殺せずとも態勢が崩れるだけで十分だ。それだけで殺到する傀儡兵が命を刈り取ってくれるのだから。

 

「ったく、これだから英雄様ってのは嫌になるぜ。突撃一つで簡単に流れを持っていっちまうんだから。狡くて矮小な俺様は雑魚そうな奴と適当に戦って御茶を濁すとしますわ。テセウスの大将はどうするんで?」

 

「聞きたいか?」

 

「ああ、俺も人にバッキャロウなんて言えねえわ。聞くまでもなかったわ」

 

 諦めたように嘆息する。真実に英雄たるのは李信だけではなくテセウスもだ。いや寧ろ英雄性という点においてテセウスは李信よりも遥か高みにある。

 要するにこの英雄らしい英雄が、目の前で繰り広げられている大乱戦(ごちそう)に喰らい付かないなど有り得ないということだ。

 傀儡馬を乗り捨てると、鉄棒を担いだテセウスは獰猛に乱戦へ割って入っていく。

 彼のヘラクレスと並び称される英雄(かいぶつ)の参戦は傾きかけていた天秤を完全に秦側へ落とした。

 李信に匹敵する首級の乱入に新撰組隊士達の狙いが一斉にテセウスへ向かうが、そんな事など関係ないとばかりに大英雄は鉄棒を振り回す。

 テセウスの暴れっぷりは擬人化したサイクロンのようだった。刀による斬撃を目茶苦茶に吹き飛ばしながら、酷い時は味方諸共に敵を粉砕する。

 李信の武が人の頂きたる武なら、さしずめテセウスの武とは人智を超えた神域の武だ。相手が人間であれば強くとも大勢で囲って戦えば勝機はあろう。だが神域の英雄には人間がどれだけ集まろうと勝てはしない。

 もし半神の英雄たるテセウスに勝てる者がいるとすれば、それは人でありながら魔人の領域にまで到達した達人の中の達人だけだろう。

 

「沖田、永倉、斎藤はテセウスを斬れ! 一番隊、二番隊、三番隊は三隊長に近付く傀儡兵を駆逐しろ!」

 

 乱戦下にありながら指示を飛ばしたのは土方――――ではなく近藤勇。

 沖田、永倉、斎藤は剣豪揃いの新撰組にあって、剣技を魔剣の域にまで押し上げた新撰組最強の剣士たち。彼等であれば神域の英雄たるテセウスとも戦える。

 その判断は的確で、この戦況ではこの上なく正しいものだろう。しかしながら驚嘆すべきは、これが乱戦下で出された指示ということだろう。

 近藤は別に一人で後方に下がって、上から戦況をしていた訳ではない。あくまで一人の剣士として自らも乱戦に参加していた。

 だというのに近藤は敵と命懸けの殺し合いをしながら、周囲にも目を配り、的確な指示を出してみせたのだ。

 近代戦における指揮力では土方に劣るが、乱戦下においての指揮力では土方を凌駕する。池田屋事件で活きた右も左も分からぬ乱戦下での名指揮っぷりは、この戦いでも活きた。

 

「原田と平助は俺と一緒に李大将軍の相手だ! 源さんと原田は呼保義(宋江)を抑えろ」

 

『おう!』

 

 呼ばれた四人が力強く返事をする。そこで言い忘れていたことを思い出した近藤は、井上と原田の二人に補足する。

 

「源さんに原田。さっきから天下の大侠者殿はやる気がないようだからな。虎の尻尾は踏まないようにやれ」

 

 土方によって呼び出された新撰組隊士は、土方の持つ一部情報を共有する。だからこそ近藤は初めて見る『宋江』の人柄も知っていたし、彼がこの戦いに積極的な姿勢ではないことも悟る事が出来た。

 そして局長である近藤は隊長達含めた他隊士と違い、しっかりと土方と戦略目的を共有している。だから自分達がただの時間稼ぎの囮に過ぎないことも承知していたし、それ故に宋江を本気にさせるリスクを犯してまで、命を狙う事の無意味さを知っていた。

 

「さーてと。そいじゃ原田、平助。行くとしようか。今宵の虎鉄は血に飢えている。幸いご馳走は腐るほどある! お前達の刀にも存分に血を吸わせてやれ!」

 

「へっ。俺の得物は刀じゃなくて槍だぜ、近藤さん。やっぱ狙うなら大将首ってね。沖田達には悪いが大将は俺の槍が掻っ攫わせてもらうぜ」

 

「先陣はきれませんでしたけど、大将へ一番に斬りかかる御役は譲れません」

 

 命令を出し終えた近藤は威厳ある局長から、腹を空かせた狼の顔付きになる。剣客集団たる新撰組において槍こそを頼りとする原田と、常に先陣をきった藤堂もまた近藤に倣った。

 近藤、原田、藤堂。三人が三人ともセイバーのクラスで召喚されても問題ないほどの技量を誇る剣士である。その三人が蒸せるほどの剣気を漲らせ自分に突っ込んでくる事を、李信は疾風のように認識した。

 

(どうやら狙いは俺の首……いや、ああ言ってはいても討ち取ることは二の次。俺を足止めして、ついでに口も塞ごうってわけか)

 

 この乱戦下にあって李信は近藤と同じように、否、それ以上に正しく戦局を把握していた。ここで李信が三人の対処に手間取り指揮力を発揮する余力を失えば。負けるとは言わないがかなりの出血を強いられることになる。

 新撰組の目的が秦軍の足止めならば、李信の目的はあくまで劉邦の討伐。ここで余計な犠牲と時間をかけるのは得策ではない。

 そこまで頭を回転させていた李信は、次の瞬間には反射的本能でこの戦いを最小の犠牲と時間で終わらせる手段をとっていた。

 

「な、なにぃ!?」

 

 真っ先に驚愕したのは原田。李信が箒星のような勢いで走らせた軍馬は、近藤達に突撃攻撃を仕掛けてくるのかと思いや、その直前で大きく跳躍したのである。

 2mや3mどころではない。下手すれば城壁すら飛び越えてしまうほどの大跳躍。そして馬が行く先には、

 

「ま、不味い! 歳、避けろぉ!!」

 

「――――!」

 

 李信が狙ったのは、傀儡兵を次々に斬り捨てていた土方歳三。

 新撰組の隊士は一人一人が独立したサーヴァントではあるが、彼等を呼びだしているのは土方の『誠の旗』の効果であって聖杯ではない。

 よって土方歳三さえ消えてしまえば、隊士達は存在を維持することが出来ず自然消滅するのが道理である。魔術や宝具についてなどまるで門外漢で無知に等しい李信ではあるが、彼はそのことを将としての直感で見抜いてみせたのだ。

 

「――――――悪いな。大将首をとるのは、俺の矛だぁぁぁあッ!」

 

「くっ」

 

 土方は迫っていた傀儡兵を蹴り飛ばし回避しようとするが、既に李信は直ぐそこまで迫っていた。

 李信の振り落とす大鉾は稲妻である。一撃が地面を抉り、巨岩を砕く。ここに更に軍馬による突進力までもが加われば、その破壊力は長城の一角すら粉々に粉砕するほどだろう。

 避けれないならば防ぐというのは正しい選択ではあるが、そもそもこの破壊力を正面から防ぐ術を土方は持っていなかった。

 

(死ぬ、のか……ここで、こんなところで?)

 

 汗が滲む。瞳孔が開く。

 

(死ぬのは恐くなんてない。だが……――――まだ私は……役割を、果たしきっていない。ここで死ぬわけには――――)

 

 

 

 土方が今正に死を迎えようとしている頃、沖田、永倉、斎藤もまた窮地に追い込まれていた。

 

「どうした? 壬生狼とやらもこんなもんかい」

 

 脂汗が流れる三隊長と違って、テセウスの方は汗一つかかずに平然と鉄棒を背負っている。これには数々の修羅場を切り抜けてきた隊長も厳しい顔つきになった。

 だがそれでも数々の敗北を経験し自然と負け慣れている三隊長は、この程度の窮地で折れはしない。

 口頭で示し合わせるまでもなく、動きを同調させた連携で三方向から完全同時に斬りかかった。

 一の太刀を避けても、二の太刀が。二の太刀を躱しても参の太刀が首を落とす。回避不能、逃げ場なき刀の牢獄。

 

「こんなんじゃ時間が足りないぞぉ!」

 

 されど半神の大英雄を閉じ込めるには、致命的なまでに速さが足りていなかった。牢獄が完成するよりも素早く、鉄棒の一振りが鉄格子を粉々に砕いてしまう。

 

「やっぱり生前のようにはいきませんね」

 

「この連携なら桂どころか宮本武蔵だってやれる自信はあったんだがな……この体が恨めしいぜ」

 

「仕方がない。俺達は所詮は主人(マスター)のいない野良犬(サーヴァント)。野良犬の餌じゃ壬生の狼の腹は膨れんさ」

 

 斎藤が冷静に自分達が追い詰められている原因を指摘する。

 土方の『誠の旗』で呼び出された彼等は、扱いとしてはマスターのいないはぐれサーヴァントに近い。Eランク程度の単独行動スキルがあるので暫くの戦闘行動には問題ないが、それでも肉体のスペックは十分の一程度まで落ち込んでしまっていた。

 三人の剣士としての技量が並はずれていることもあって、それでも並みのサーヴァントなら問題なく戦えるだろう。しかし相手はテセウス。ギリシャ神話の大英雄である。例え三人がかりだろうと落ちたスペックで相手するには厳し過ぎる相手だ。

 

「もう抗いは終わりか? ならこっちからやるぞ!」

 

 大地を砕きながら突進してくるテセウス。さながらそれは大砲の砲弾が自分に差し迫ってくるような絶望感を三人に与えた。

 

「どうしますか? 永倉さんが掻き乱して、私と斎藤さんで三段突きでも叩きこみますか? これなら防げませんし、当たりさえすればどうにかなります」

 

「いや、俺たちの今の速度じゃ当てるのがしんどいだろ。縮地(歩法)で補うってったって限度があるぞ」

 

「けどこのままじゃ半刻も経たずに私達全員死にますよ」

 

「そりゃそうだが」

 

 相談しながらも三人はテセウスの繰り出す暴撃を、足りない速度を足捌きで補いながら回避していく。

 百回斬られようと死なない頑強さを誇るテセウスとは異なり、三人は鉄棒の一撃が掠りさえすれば昇天しまう耐久力しか持たない。それ故に回避も必死だった。

 

「せめて後一人……俺達と並ぶ奴がいれば、殺せないまでも保たせることは出来るんだが」

 

 斎藤がそう零すが、それは無理な相談というものだった。

 新撰組においてこの三人は正しく最強なのである。近藤や土方といった役職として上の人間も、単純な剣技では三人には及ばない。他の隊長達にしてもそれは同じだ。

 この三人に肩を並べるような隊士が、いきなり現れるなんて都合の良い話が、

 

「ああ。そういえばお前がいたな」

 

 斎藤は意地の悪い笑みを浮かべて、雷光のように戦いに割って入った二刀流の剣士に言う。

 現れるや否やテセウスの鉄棒を弾き飛ばすという技量を発揮した剣士は、斎藤の姿を見ると一瞬だけ殺気を向けたが。直ぐに目の前の敵へ向き直った。

 

「――――服部武雄」

 

 佐幕と勤王。相容れぬ思想によって新撰組から袂を分った御陵衛士。その中にあって最強の男がそこにいた。

 

 

 

 服部武雄の乱入とほぼ同時に、土方にも救いの手が差しのべられていた。

 土方がまず聞いたのは鼓膜を破壊するような爆発音。それは大砲によるものだった。横合いから飛んできた不意の砲撃には流石の李信もどうしようもなく、盾で防いで致命こそ免れたが軍馬ごと弾き飛ばされてしまっていた。

 新撰組にあってこれほど正確無比な砲撃を行える者は一人だけ。元新撰組砲術師範にして御陵衛士、阿部十郎である。そして阿部がいるということは、

 

「土方君。私の死後、陛下の軍と悪くない戦いをしたと聞き及んだが、この分だと武勇譚は誇張されたもののようだ」

 

「伊東、甲子太郎……どうしてここにいる?」

 

「まるで幽霊でも見ているような顔だな、土方。私がここにいるのがおかしいか?」

 

「ああ、おかしいとも。君からすれば私……いや、新撰組そのものが許し難い怨敵のはずだ。藤堂はまだしも、どうしてお前が新撰組を助けるような真似をする」

 

 土方の『誠の旗』は新撰組隊士を呼び出す宝具だが、召喚するか否かについては呼びだされる側の意思に委ねられる。だから呼びだす側と不仲な人間は来ることはない。

 新撰組によって卑劣な方法で粛清された伊東と御陵衛士など正にその最たるものだろう。

 

「愚問だな。私がお前達のような道徳のない卑劣漢を助けなどするか。平助ならまだしも、お前などの呼びかけに応える気など更々ない。だがこれはただの聖杯戦争じゃなく人類史の未来がかかった戦いなのだろう? ならば癪だが参上するしかないだろう」

 

 そう言って伊東は強い決意を秘めた瞳で刀を抜き放つ。

 

「人類史が滅びようとしているのに勤王も佐幕もあるものか!」

 

「ふ、はははははははははははははははははははははっ! 確かにそうだ。人類史が焼却されているのに生前のいざこざを持ちだすなんて馬鹿だったよ」

 

 新撰組と御陵衛士。志の違いによって別たれた道は今一つに。

 人類史を護るという普遍的責務のため、ここに陵墓の守護者は狼に立ち戻る。

 

「「行くぞ」」

 

 そして――――

 


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