ご注文は捻デレですか?   作:白乃兎

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かなーり、遅れてしまいました。
すいませんm(_ _)m
テストは終わったんですが、筆が勢いづかなくて……

では、どうぞ。


第九羽

『パン作りに招待してくれたお礼に、ウチの喫茶店に招待するわ♫』

 

千夜からそのようなことを言われ、ココア、チノ、リゼ、八幡、ティッピーは千夜の家へ向かっている。

 

「ラビットハウスは大丈夫なのか?今、タカヒロさんしかいないだろ?」

 

八幡から疑問が発された。

だが、もっともな質問である。

 

現在、八幡を入れて四人のアルバイトがラビットハウスで働いている。

 

だが、現在その全員が出払っている。

時刻は昼過ぎ、ラビットハウスを訪れる客は少ないとはいえ最も客足が伸びる時間と言っても過言ではない。

 

それをタカヒロ一人で捌くのは厳しくないかと八幡は疑問に持ったのだ。

 

「大丈夫です。父は元々軍人ですし」

 

「「えっ!?」」

 

反応したのはリゼと八幡。

 

八幡は純粋に驚愕から。リゼはこんな近くに同類がいたのか、という意味での驚愕だった。

 

「いや、軍人関係なーー「それなら大丈夫だな!」えっ」

 

八幡は軍人でも難しいものは難しいのではないかとツッコミを入れようとしたところで、リゼの声が割り飲んだ。

 

いつもツッコミのリゼがボケになると八幡には手に負えなくなる。

 

「軍人は万能だからな、私もタカヒロさん一人じゃあ心配だったが、軍人なら問題無しだ!」

 

「リゼちゃんは軍人ファンなのかな?」

 

「ファンというよりはマニアといった方が正しい気がします」

 

「いや、いっそオタクまである」

 

「父親が軍人だから、その影響かのう」

 

「う、うるさい!なんだっていいだろう!」

 

三人と一匹から指摘を受けて少し恥ずかしくなったリゼが顔を赤くして叫ぶ。

 

「いやいや、別に趣味は人それぞれだからいいんだよ?私だってチノちゃんティッピーと一緒にモフモフするのが趣味なんだから!」

 

「やめてください!………八幡さんは趣味とかあるんですか?」

 

「読書とか、人間観察とかなら」

 

「予想通りじゃ」

 

読書ならともかく、人間観察は大分趣味としては異質なのだが、そこは元ぼっちな八幡だから仕方がないと納得するチノ。

チノとしては、先ほどからちょくちょく喋る頭上のティッピーの方が気になるのだった。

 

「いや、納得なのか!?」

 

またもやリゼが叫ぶ。

だがチノが八幡の考えを理解したことで、チノまでが天然とはいえボケに回ることに八幡は驚いた。

 

「八幡さんのことはなんとなく理解できるようになりました。……最初は意味不明でしたが、今は簡単です」

 

「チノ、………お兄ちゃんって――」

 

「呼びません!何ココアさんみたいなことを言ってるんですか」

 

「ココアに毒されたようじゃな」

 

八幡はチノの言葉に感動し半分無意識にそんなことを口走っていた。

そしてそれに反応する自称姉一名。

 

「八幡くんもライバルなんだね、……チノちゃんの兄姉の座を賭けて勝負だよ!」

 

「ぼっちだからってなめるなよ。たとえ相手がココアでも――」

 

「とりあえず、ウチの前で勝負するのはやめてもらえるかしら」

 

いつの間にやら千夜の家、甘兎庵へと到着していたようで、着物姿の千夜が苦笑いで八幡とココアの勝負を止めた。

 

「ご、ごめんね千夜ちゃん」

 

「悪かった」

 

ココア、八幡共に千夜に頭をさげる。

だが、千夜は怒った様子はなく、いつもの笑顔で二人に声をかける。

 

「許すわ♪だって、見てて面白かったもの」

 

店の邪魔にはなるが、千夜的には面白い事だったのでプラマイゼロということでお咎めなし。

 

「お詫びに、お金落としていくから!」

 

「まあ、喫茶店だしな、なんか食ってくわ」

 

「私も、おじいちゃんがライバル視していた喫茶店の味を確かめてみたいです」

 

「チノ!?ダメじゃ!虫歯にーームグッ」

 

「私も食べてくよ」

 

乗り気な四人と、チノに黙らされた一匹は店内へと入る。

すると、千夜がくるりと体を反転させ、八幡たちに向かって一言。

 

「いらっしゃいませ、ようこそ甘兎庵へ♪」

 

和風な店内。

ラビットハウスとは違い、客もこの時間帯からちらほらと見える。

 

だが、全員の目に止まったのは店内中央にある台。

その上に鎮座する黒うさぎだった。

 

「うさぎの置物?可愛い!」

 

「ココアちゃん、それ、本物よ。うちの看板うさぎ、あんこよ」

 

ココアは真っ先にあんこに触りに行った。

チノも触りたそうにうずうずしている。

 

「チノも行ってきたらどうだ?」

 

「なっ、ワシがおるからいいじゃろ!チノ?なんでそっちにーー」

 

八幡の勧めにより、チノは動く。

頭上のティッピーが騒がしくしているが、チノは完全無視。

 

少し緊張気味にチノはあんこの耳へと手を伸ばす。

 

「なんで、チノはあんな慎重なんだ?」

 

「ああ、八幡は知らないのか。チノのやつ、ティッピー以外の動物に何故だか懐かれないんだよ」

 

「へぇ」

 

「でも、ウチのあんこは大人しいから大丈夫だと思うわ」

 

千夜が言った通り、チノがあんこに触れても、あんこは台座に鎮座している。

 

そして、チノがあんこを抱き上げ、ティッピーの代わりに頭へ乗せようとーー次の瞬間、あんこはティッピーへと体当たりをかました。

 

「ギャーーー」

 

ティッピーはチノの頭から落ち、その後もあんこに追いかけ回されている。

そしてそのまま店の奥へ。

 

「大人しいんじゃなかったのか?」

 

「恋、じゃないかしら。あんこも漸く可愛い兎を見つけられたのね」

 

「え?ティッピーはオスだろ?」

 

「メスですよ」

 

「「「え!?」」」

 

八幡、リゼ、ココアは驚きの表情を浮かべる。

チノの腹話術とやらで話されるティッピーの声はダンディーな声。

ゆえに、全員がティッピーがオスであると勘違いをしていた。

 

「まあ、いっか!千夜ちゃん!メニューはこれ?」

 

「そうよ、でもーー」

 

リゼ、チノ、八幡はメニューを覗き込むと、頭にハテナマークを浮かべる。

 

「なんだよ、このメニュー。必殺技一覧表?」

 

「確かに、何がなんだかわからないな」

 

「……煌めく三宝珠……なんですか?これは」

 

他にも、雪原の赤宝石や、和風らしからぬ横文字のフローズン・エバーグリーンや、トワイライト・オーシャンなど名前からは想像もつかないようなメニュー名になっている。

 

唯一困惑していないココア。

 

「抹茶パフェに、クリーム餡蜜白玉ぜんざいもいいなぁ」

 

「なぜわかる」

 

「わからない俺たちがおかしいのか?」

 

「八幡さん、私たちはいたって正常のはずです」

 

だよなぁ、と、八幡はココアの感性に呆れつつも注文。

リゼ、チノもよく分かっていないながらもフィーリングでメニューを選んでいた。

 

「じゃあ、まずは、抹茶のラテアートからどうぞ♪」

 

「浮世絵!?リゼとはまた違った絵の上手さだな」

 

「和風が全面に押し出されてるな」

 

「それほどでも。私、北斎様に憧れてるの」

 

千夜の出してきた抹茶には富士山など、富嶽三十六景のような風景が描かれている。

 

「千夜ちゃん凄いね!私やチノちゃんより全然うまいよ!」

 

「私を引き合いに出さないでください!」

 

それぞれが感想を述べつつも、ラテアートを崩すのを惜しみながら抹茶に口に付ける。

 

「それで、これが注文の品ね」

 

「海に映る月と星々って白玉ぜんざいだったんだな」

 

「花の都三つ子の宝石はあんみつに団子が刺さってます」

 

「フローズン・エバーグリーン。予想通りの抹茶のかき氷だったな。千夜、練乳をとってくれ」

 

「黄金の鯱スペシャル……すごい豪華だね!」

 

それぞれが自らの注文した品に驚いたり、予想通りだったりと面白い反応をしているのを見て楽しんでいる千夜。

 

「「「「美味しい」」」」

 

全員が注文の品を口に運ぶと同時に同じ言葉をを口にする。

 

「八幡くん、私、それも食べたいなぁー」

 

ココアがちらりと八幡の方を見る。

 

「自分で頼めよ」

 

「………ダメ?」

 

上目づかい。これが意識してやっていたのなら、あざといで済ませていた八幡なのだが、ココアの場合は無意識。

これには八幡も敵わなかったようで。

 

「少しだけな。あと、自分のスプーンをーー」

 

「ありがとう!」

 

八幡が言い切る前に、八幡のスプーンを使ってココアはフローズン・エバーグリーンを口に運ぶ。

 

「んー、おいしい!」

 

「おい、話聞けよ。ていうか、俺がそのスプーン使えなくなっちゃうだろ」

 

「あらー、八幡くん、ごめんなさいね。今、スプーンは全部洗っててそれしかないの。だから、それを使ってね」

 

「おい、止めろよ。棒読みで言っても説得力ねーから」

 

「ココアさん、私も下さい」

 

「うん、いいよー。はい、あーん」

 

「おい、話聞いてる?」

 

八幡の物を八幡のスプーンを使って勝手に食べさせ始めるココア。

チノはすいませんと一度八幡に目配せしてから八幡のスプーンに口をつける。

 

「……美味しいです」

 

「だよね!八幡くんに悪いから、私のもあげるね!はい、あーん」

 

「いや、ちょっ」

 

ズイッと今度はココアのスプーンを突きつけられる八幡。

助けて、という視線をリゼに八幡は送る。

 

だが、フイっと視線を逸らされてしまう。

 

今度は千夜に視線を送る八幡。

だが、にこやかな笑みしか返してくれない。

 

最後にチノ。

察することができないのか頭にハテナマークを浮かべている。

 

南無三!と八幡は意を決してココアのスプーンに口をつける。

 

「どう?美味しい?」

 

「………甘い」

 

そんなこんなで、千夜の喫茶店、甘兎庵を堪能したのだった。

 

 

 

「悪い、千夜のところに忘れ物したわ」

 

甘兎庵からの帰り道、八幡はスマホを忘れたことに気がつき、一人引き返した。

 

すると、甘兎庵の前で掃き掃除をしている千夜がいたので、八幡は声をかけーー、

 

「千夜、俺のスマホを知らなーー」

 

「千夜ー、お風呂貸してくれない?」

 

かける前に、甘兎庵の隣の物置小屋?から出てきたシャロに遮られた。

 

「いいわよ。ついでに八幡くんもどう?」

 

「え!?どうしてここに!?っていうか、今の、見た?」

 

「いや、別にシャロがお嬢様とか、そんなの関係無かったし、お嬢様じゃなくても変わらないから」

 

「ああそう、まあ、勘違いさせたままもアレだったしね。ちょうどよかったわ」

 

「他の人はシャロちゃんをお嬢様だって勘違いするとそこから勘違いが止まらなくて、言い出せなくていつも困ってるのよね」

 

「う、うるさいわね!仕方ないじゃない!」

 

八幡はシャロがお嬢様なんだなーと軽く思っていた程度なので、そこまで驚きはしなかった。

 

「はい、これ、八幡くんのスマホでしょ?」

 

「ああ、サンキュー」

 

「まったく、待ち受けが女の子とのツーショットだなんてやるわね!」

 

実際はそんなことをはなく、普通に初期設定のままの待ち受けなのだが、千夜の発言により、シャロは勘違い。

 

「そ、そうなの?」

 

「違うからな、おいやめろよ。俺がそんな写真をとるような女子なんていねーから」

 

即座に否定する八幡。

だが、千夜の扱いは未だになれないようだ。

 

「じゃあ、今三人で撮りましょう!」

 

「あ、それいいわね」

 

「いや、一人撮影に回らなきゃーー」

 

スッと千夜は懐から自撮り棒を取り出した。

 

「わかったよ」

 

こうして、八幡のスマホの待ち受け画面は男一人に女子二人の、男ならば嫉妬をおぼえるような画像になったのだった。

 

 

 

 




まあ、とりあえずは原作沿いで。
気が向いたらオリジナルを入れたいと思います。

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