銀の狐と幻想の少女たち   作:雨宮雪色

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第15話 「月の小径 ②」

 

 

 

 

 

「い、いいか、絶対に変なことはするなよっ……絶対だぞ!?」

「しないよ。だから静かにしててくれ」

 

 規則的なリズムが、慧音の体を優しく揺さぶる。いつもよりずっと高くなった目線の先には、闇夜に黒髪を流す男の後ろ姿が見える。慧音がしがみつく彼の肩は広く、腿の裏を支えてくれるその手もまた、大きい。

 腰を抜かして歩けなくなった慧音が一刻も早く里へ帰るためには、彼に運んでもらう以外に手がなかった。長く森に留まればそれだけ妖怪に襲われる危険が増すのだから、やむを得ないことだ。

 そう、これはやむを得ないこと。仕方のないこと。だから変に緊張してあれこれ意識する必要はないのだと――そう自分に言い聞かせて冷静になろうとするのは、もう何分も前に諦めた。結局どれだけ心頭滅却しようが、男におぶられているこの状況で落ち着けなどと、慧音には到底無理な話だった。

 

 上白沢慧音は、異性に対してはひどく奥手な性格である。苦手意識こそないものの、ちょっとでも相手を男として意識してしまうだけで、あっと言う間に頭の中が真っ赤になってしまう。

 それは例えば、必要以上に体を触られた時や、お見合いの話を持ち掛けられた時などであり、故に人里で慧音の目が行き届くところでは、度を超えた異性交遊が全面的に御法度だった。

 出会ったばかりの異性に、仕方がないこととはいえおぶられているとなれば、慧音はもう、とてもまともな状態だとは言えなくなってしまっていた。血は熱湯となって体中を駆け巡り、熱くなった体は今にも煙を上げるよう。あまりの熱さに、心臓が一生懸命に胸を叩いて助けを求めている。

 だから慧音は、彼におぶられたあとも体だけは起こしたままだった。彼の背に遠慮なくもたれかかるなんてできるはずもない。やったら最後、荒ぶる心臓の鼓動が体越しであっという間にバレてしまって、更なる笑い者にされてしまう。無様に腰を抜かしておいて、これ以上の醜態を晒すのは御免だった。

 しかし一方で、この状況が慧音にとって苦痛でしかないかと問われれば、あながちそうでもなかった。身長の差故だろうか、彼の足音のリズムは、慧音のものよりもずっとゆったりとしていて穏やかだ。そのリズムに優しく体を揺られながら、一つ、しみじみと感じ入ることがある。

 

(こうやって誰かに守られるのって、何年振りだろう……)

 

 寺子屋の教師や、人里の守護者なんてやっているからだろうか。慧音の記憶は、いつも人々の前に立って、誰かを守ってきた記憶ばかり。だからこうして人の背中で守られるというのが、奇妙なくらいに新鮮だった。

 彼は森を進む中で、周囲に人形(ひとがた)の防衛網を張り巡らせていた。妖怪が近づくと、人形を媒体にして炎の術を発動させ、撃退する仕組みなのだという。少し前に慧音を助けてくれた時も、こうして炎の術を発動させたらしい。身近に陰陽師の友人を持つ慧音だが、人形にこのような使い道があるとは知らなかった。

 

「あ、こんなところに人間だー♪ ねえねえ、あなたたちは食べてもいい人」

「はい、狐火」

「みぎゃー!? あ、あっついよー!?」

 

 そうやって進む帰り道は、行きとは打って変わってのんびりとしていて、ここが人里の外だということを忘れてしまうくらいだった。彼の裾を握りしめて一緒に歩く里の少女は、初めの内こそ不安そうだったけれど、今では炎が上がるたびに「おおー」と手を叩く余裕まで見せている。それだけ、彼の存在というのが頼もしかったのだ。

 

「ちょっと、いきなりなにすんの!? そんなことやってると食べ」

「はいはい、狐火狐火」

「う、うわーん!?」

 

 それは慧音も同じだ。己の脚がろくに動かないという状況にも関わらず、感じるのはただ、彼がいれば大丈夫だという安心ばかり。なにやら聞き覚えのある少女の悲鳴が聞こえたことなんて、ちっとも気にならなかった。

 

(……背中、大きいなあ)

 

 自分の体がすっぽりと収まってしまいそう。男の人の背中とは、みんなこうにも大きなものなのだろうか。こんなにも、人を安心させる、ものなのだろうか。

 彼の肩から伝わる体温を、温かいと思いながら。慧音は彼の耳に少しだけ顔を近づけて、ぽそりと言った。

 

「お礼を、しないとな」

「ん? や、別に構いやしないよ。見返り目当てでやったわけじゃないんだしね」

「そういうわけにもいかないだろう」

 

 彼は少女の恩人であり、慧音の恩人であり、里の恩人だ。もしも彼がいなかったら、少女も、慧音も、無事では済まなかったかもしれない。

 

「お礼を、させてくれ。私にできることならなんでも……」

 

 そこまで言いかけて、慌てて首を横に振った。

 

「いや、その、なんでもっていうのは、あくまで常識の範囲内でだな」

「ッハハハ、言われなくてもわかってるよ」

 

 優しくこぼれた笑みに、彼の背中が心地よく揺れた。彼はしばらく黙って考え、やがてゆっくりと答えた。

 

「そうだね……。それじゃあ今晩、人里で宿を恵んでもらえるように計らってくれないかな。まだこっちには来たばかりでね、家がないんだ」

「……?」

 

 慧音は首を傾げた。気のせいだろうか。今の彼の言葉に、なにか小さな違和感を覚えたような気がする。

 

「……ダメかな?」

「あっ……いや、それくらいならお安いご用だ」

 

 なんだろうかと考えていると、それを否定と誤解した彼が困ったように笑ったので、慧音は咄嗟に我に返って言った。

 

「私の家に泊まっていくといい」

「……慧音の家に?」

 

 彼が、意外そうに眉を上げた気配がした。それから小声で、

 

「……どうにもここの女の子たちは、少し不用心すぎないかな」

「……なんの話だ?」

「いや、こっちの話さ。ともあれいいのか? 私みたいに、どこの馬の骨かもわからないような男を泊めて」

「お前が悪い人間じゃないってことは、わかってるからな」

 

 な? と横の少女を見下ろすと、彼女は「ん!」と笑顔になって、彼の着物の裾を引っ張った。

 

「おじさん、いいひと」

「ちょ」

 

 思わぬ爆弾発言に、慧音は心の中で大慌てした。実際の年齢はわからないが、彼の見た目はどんなに高く見積もっても三十に届かない。なのにそんな、なんの躊躇いもなく笑顔で、“おじさん”だなんて。

 ……しかし当の“おじさん”本人は、特に気分を害した様子もなく、呑気にからからと笑っていた。

 

「ッハハハ。そう言われちゃったら、いい人にならないとダメだねえ」

 

 心が広いんだなあ、と慧音は思う。もしも自分が里の子どもから“おばさん”なんて呼ばれたら、とりあえずお礼に頭突きをかますだろう。

 やはりどんなに厳しい目で見ても、とても悪い人間とは思えなかった。けれど一方で、彼が言うように素性が知れないのも事実だ。外来人なのに、狩衣みたいな大時代な服を着て、更に立派な陰陽術まで使えて。外の世界ではもう、妖怪を見る機会すらほとんどなくなってしまったはずなのに。

 そう、素性が知れないといえば。

 

「名前を聞いていなかったな。……もう知っているようだけど、私は上白沢慧音。人里の、まあ、代表みたいなものをしてる」

「ああ、そういえばそうだね。私は――」

 

 そこで彼は不意に言葉を切った。少しの間、言葉を迷う素振りを見せてから、

 

「――月見。ただのしがない陰陽師だよ」

「月見?」

「そう。月を見る、と書いてね」

 

 月を見る、で、月見。少しおかしな名前だ、と慧音は思った。外来人のものにしては似つかわしくない、どこか不思議な響きがある。まるで妖怪の名前みたいに。

 

「……どうかしたか?」

「いや……」

 

 だがそんな風に尋ねられて、変な名前だな、なんて正直に言えるはずもない。結局慧音は、最近の陰陽師はそうなのかな、と恣意的に解釈することにした。

 

「なんでもないよ」

「そうか? ……ともあれ、ようやく抜けたみたいだね」

 

 森が途切れ、視界が開けた。ほのかに青い月明かりが照らす下、望む人里で提灯の炎が揺らめいている。どうやら里総出で、慧音たちの帰りを待ってくれているらしい。

 幻想郷は月がとても眩しく輝くから、野外で照明などほとんど必要ないのだけど……必要のない物を持ち出してきてしまうくらいに、居ても立ってもいられなかったのだろうか。

 

「随分と、心配をかけちゃったかな」

「だろうね。里に戻ったら、うんと安心させてやるといいさ」

「そうだな。里に戻ったら――」

 

 そこで慧音は、ふと気づいた。里に戻る。――月見におぶられたまま、里に、戻る。

 提灯の火を見て緩んでいた心が、一気に粟立った。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ」

「ん、どうした?」

「も、もう歩けるから。歩けるから、降ろしてくれっ」

 

 今は見ている人が隣の少女一人だけだからまだいいが、このまま里人全員の前に晒されたら、恥ずかしすぎて死んでしまう。

 なので慧音は、月見の背の上でじたばたと暴れた。

 

「ほらっ。もう大丈夫だから、放してくれっ」

「うおおっと、暴れるなって。ちゃんと降ろしてやるから……」

 

 月見がその場にしゃがみこんだので、すぐに飛び降りた。もう大丈夫だというのは完全に出任せだったが、幸いにも慧音の両足はしっかりと大地を踏み締めてくれる。

 はあ、と思わず安堵のため息をついていると、それを眺めていた少女が月見の袖をくいくいと引っ張った。

 

「……けーねせんせえ、なんだかさっきから変」

「ふふ。世間体というのも大事なものだからね」

「せけんてー? よくわかんない……」

「要するに、私におぶられたままは嫌ってことさ」

「う、うるさいなっ。お前におぶられたままじゃ、怪我でもしたんじゃないかって心配されるだろうがっ」

「まあ、そういうことにしておこうか」

 

 くつくつと喉を鳴らす月見の微笑みは、まるですべてを見通しているかのようで。それがあまりに憎たらしかったので、慧音はまた木の枝を投げつけてやろうかと本気で悩んだ。

 すると一体なにを思ったのか、少女が期待に輝く瞳で月見を見上げて言った。

 

「じゃあ、わたしがおんぶ」

「ん?」

「おんぶ」

「おっと」

 

 そのまま、しゃがんだままだった月見の背中によじ登ってしまう。

 

「お、おいっ」

 

 慧音は慌てて少女をたしなめようとしたが、彼の首に両腕を回し、「んー♪」と満足げな表情をしているのを見て、ふっと思い留まった。

 そういえば、彼女の父親が病で亡くなったのは、二年ほど前だったろうか。もしかしたらこの子は、自分を助けてくれた彼の姿に、父の面影を見ているのかもしれない。

 どうしようかと困り顔をしていた月見に向けて、苦笑する。

 

「……悪いけど、付き合ってあげてくれないか?」

 

 果たして月見がどこまで見通していたのかは、慧音にはわからない。けれど彼は、慧音が詳しい説明をするまでもなく、立ち上がっていた。

 父親のように、笑って。

 

「どれ、落ちないように気をつけるんだよ」

「わおー♪」

 

 どうせ里に戻ったら、母親にこっぴどく叱られるのだ。その前に、こんな小さな幸せが一つくらいあっても、いいのではないだろうか。

 

「よし、せっかくだし走ろうか。――よーいドン!」

「きゃー♪」

「あ、ちょ――こら、待てえっ!」

 

 里に向けて駆け出した彼の背を、慧音は慌てて追いかける。転んだらどうするんだと怒鳴り声を上げるのだが、その口には自然と、柔らかい笑顔が浮かんでいた。

 或いは自身もまた、一の母親であるかのような笑顔が。

 

 

 

 

 

 ○

 

 

 歓声が慧音たちを里へと迎え入れる。少女を連れて無事戻ってきた慧音と月見に、里は軽いお祭り状態へと陥った。

 無事でよかったと、涙を忍ばせながら少女の頭を撫でる者。ありがとうございますと、慧音に向かって何度も頭を下げる者。本当によくやってくれたと、月見を賞賛する者。三様に分かれた歓声は、やがて「酒を持ってこい!」という誰かの鶴の一声で、本当に祭りへ向けて盛り上がり始める。

 それをやんわりと制したのは、月見の気の抜けたような苦笑いだった。

 

「悪いんだけど、今日は休ませてくれないかな。ここに来る前も歩き詰めだったから、もう疲れてしまってね。とても酒なんて呑めそうにない」

 

 吐息を交えながらそう言う彼はいかにも疲労困憊といった体で、声にもまったく力がなかった。少女を救うという大仕事を成し遂げたあとで、更に帰り道のほとんどを慧音をおぶりながら歩いたのだ。体への負担も大層大きかったろう。酒の代わりに、喉を潤す水を一杯、もらっていた。

 母親と無事再会した少女は、もちろんその場で大目玉を食らいそうになった。けれども沸き立つ周囲に「無事だったんだからいいじゃねえか」などと丸め込まれ、結局うやむやになったようで、今は母親が、月見に向けてしきりに頭を下げ続けていた。

 それを遠巻きで微笑ましく眺めながら、

 

「いやあ……助かったな、慧音先生。誰かはわからねえけど、本当に感謝ってもんだ」

「……そうだな」

 

 傍らで噛み締めるように頷いた男に、慧音もまたそうした。もし月見がいなかったら、慧音は少女を助けられなかったかもしれない――いや、助けることなんてできなかった。それどころか里の男たちまで巻き込んでしまって、もっと悪い事態になっていた可能性もあっただろう。

 

「あのあんちゃん、何者なんで?」

「外来人みたいだけど、詳しくはわからない。……だから今晩は私のところに泊めて、話を聞いてみるよ」

「慧音先生のとこにですか?」

 

 男が意外そうに眉を上げた。月見の方をつと見遣って、それからすっかり戸惑った様子で声をひそめた。

 

「いいんですかい? 独り暮らしなのに男なんて」

「いいんだ。話を聞くなら私がやった方がいいだろうし――」

 

 独り暮らしで余所の男を招き入れる危険性なら、慧音も充分に理解している。けれど同時に、彼がそれで妙な真似をするような不届き者ではないことだって、また。

 

「それは、お前だってわかってるだろう?」

 

 月見の方に目をやる。彼は何事か言って袖を引っ張ってくる少女の頭を、ぽふぽふと優しく叩いてやっていた。二人の浮かべる笑顔が、周囲を取り囲む里人たちに次々と伝染していく。

 それを見て、男が観念したように両手を挙げた。

 

「……まあ、ああいう風に笑えるやつが、悪人なわきゃねえですわな」

 

 そういうことだ、と慧音は頷いた。

 

「だから大丈夫だよ」

「わかりやした、信じますよ。……それに」

 

 言葉を切り、男は不意に含み笑いをした。わざとこちらから目を逸らし、昔を懐かしむような抑揚をつけて、

 

「先生は異性にゃめっきり奥手だからなあ。なんか妙なことしたって、返ってくるのは頭突きだけさあ」

 

 もちろん慧音は、笑顔で頭突きを返した。

 

 

 

 

 

 ○

 

 

 結局、慧音が月見を家に招く頃には、すっかり夜も深まってしまっていた。どうぞ楽にしてくれと慧音が言うなり、彼は座敷の上に崩れるように座り込む。あー、なんて間抜けな声を上げるあたり、やはり相当疲れていたらしい。

 

「すまないな、こんなに遅くなってしまって……」

「いやいや、こうして休ませてもらえるんだから感謝だよ。……ああ、脚が棒のようだ」

 

 お茶を出してやった方がいいだろうか、と慧音は悩む。それとも、先に寝る準備を整えてやった方がいいのだろうか。……できることなら、もう少し話をしてみたいのだけれど。

 というか、そもそも彼、夕食は済ませたのだろうか。外来人だし、ここで食事にありつけたとは到底思えない。

 

「これからどうする? もう休むならお風呂を沸かすけど、お前、夕ご飯は食べたのか? 私の料理でよければ、なにか作るけど」

 

 問うと、月見は何事か思い出したように、ああ、と頭を掻いた。

 

「……そういえば今日は、夕飯どころか昼もなにも食べてなかったっけ」

「そ、そうなのかっ?」

 

 まさか朝以外になにも食べていないとは思ってもいなかったので、思わず声が大きくなってしまう。それではお腹が空いていないわけなどないし、第一、健康にだって非常によくない。寺子屋の教師なんてやっているからだろうか、実に聞き逃せない発言だった。

 慧音は月見の目の前に腰を下ろして、体を前のめりにして言う。

 

「私でよければなにか作るぞっ。なにが食べたいっ?」

 

 いきなり詰め寄ったからか、月見は少し目を丸くして頭を引いたけれど、すぐに苦笑して、

 

「……今日はもういいよ。それ以上に疲れたから、もうこのまま寝」

「それはダメだっ!」

 

 言い切られる前に、慧音は叫んでいた。月見の肩をガシッとホールドし、困惑した様子の彼の瞳をまっすぐに見つめ返した。

 

「食事は一日三食! 子どもだって知ってることだ。どうしても食べられない理由があるならまだしも、そんなの不健康的すぎる!」

「ちょ、慧」

「とにかく、夕飯の余りもあるし、なにか簡単なのを作ってやるから! 私が見てるところでふしだらな生活はさせないからなっ!」

「わかった、わかったから慧音」

 

 月見の右手が肩に触れる。こちらを押し返すほどの力はなく、けれどなにかを諭そうとするように、その指先が浅く肌を撫でた。

 

「……どうした?」

 

 問えば、彼は真顔で、

 

「顔。近いよ」

「……………………あ」

 

 そう言われて初めて、慧音は気づいた。こちらが月見の肩を掴んで詰め寄っている体勢は、言われてみれば確かに、彼の顔が、本当にすぐ目の前にあって――

 

「ッ――!?」

 

 いっそ跳ね上がるくらいの勢いだった。それくらいの勢いで慧音は彼のもとから離れて、数秒間呆然としたあと、ぺたりとその場に座り込んでしまった。

 

「――……」

 

 驚くあまり、脳が思考を放棄したのだろうか。随分と長い間、ボーッと月見を見つめていた気がする。

 正気に返ったのは、月見が「慧音?」と不思議そうに首を傾げてからだった。

 

「あっ――いや、今のは、その……」

 

 決して深い意図があったわけではない。慧音は普段から、寝坊して朝食を食べ損なった生徒を親の代わりに叱りつけているから、ついその延長線上で月見も叱ってしまっただけだ。完全に無意識な、言ってしまえば職業病のようなものだった。

 とは、いえ。

 子どもではない男相手に、なんてことを。

 頬がじわじわ熱くなっていくのを感じながら、慧音はなんだかわけがわからなくなって、顔の前でぶんぶんと両手を振った。

 

「ほ、ほら、私は寺子屋の教師で、生徒たちの健康管理も、仕事の一つだから! だからつい……」

「ああ……」

 

 頷いた月見は、それから少し傷ついた(てい)で、

 

「つまり私は、慧音からして見れば、寺子屋の子どもたちと同レベルの存在なんだね」

「そ、そんなことは……」

 

 ない、と断言できないのが辛い。

 とにかく話を逸らさないとと思い、慧音はすっくと立ち上がった。

 

「と、とりあえず食事の用意をするよ! 少し待っててくれ!」

「……そうだね。じゃあご馳走になるよ」

 

 彼の同意を確認したところで、慧音はすぐに回れ右をして、台所に向かって小走りで駆け出す。ともかく彼のいない場所で深呼吸をして、元気に暴れている心臓を落ち着けたかった。

 部屋を飛び出し、廊下を駆け抜け、台所に飛び込む。叩きつけるような勢いで戸を閉めると、そこに背中を預け、そのままずるずると床にへたり込んだ。

 頭を抱えて、はあああ~~、なんて長いため息を吐き出して。

 

「……なんだかなあ」

 

 お礼をしたいから、と慧音が自ら望んだこととはいえ。実際に月見を招いて、一つ屋根の下で二人っきりというこの状況は、思っていたよりもずっと心臓に悪かった。

 例えば里の男を家に呼んだところで、緊張なんてしないのに。外来人の男というだけで、こんなにも変わるのか。

 

「うー……」

 

 月見を家に招いたのは、失敗だったろうか。……だが今更になって、よその家に泊まってくれなんて言えるはずもない。少なくとも今日は、このまま夜を明かすしか。

 幸い月見は善人だ。向こうは、慧音の家で世話になることについて、感謝以外の感情は持っていないようだった。だから慧音も普段通りにしていれば、変な間違いなんて起こるはずもなく、何事もなく明日を迎えられるだろう。

 そう、精々、将来的にそういう(・・・・)相手ができた時のための予行練習をする程度の気持ちで、気楽に――

 ――慧音はすぐ傍の壁に頭突きをした。

 

「な、なななっなにをバカなことをっ」

『慧音?』

「うひゃあああああ!?」

 

 瞬間、戸を隔てた向こう側から不意に月見の声が聞こえたので、慧音はその場でひっくり返った。尻餅をついたお尻がじんじんと痛むが、そんなことはどうでもいい。慌てて立ち上がって、戸の向こうにいる彼へと叫んだ。

 

「なっ、おま、どうしてここに!?」

『いや、手伝った方がいいかなーと思ったんだが……ごめん、驚かせたか?』

「心臓が止まるかと思ったぞっ」

『わ、悪い……』

 

 一応は気を遣ってくれているのか、月見がいきなり台所の戸を開けてくるようなことはなかった。戸を両手でしっかりと押さえつつ、慧音はほっと胸を撫で下ろす。今はきっと、顔も真っ赤になってしまっているだろうから、入ってこられるとちょっと困る。

 

「りょ、料理は私だけで大丈夫だからっ。えっと、そう、おにぎりでも握ろうと思って! すぐできるし、すぐに食べられるし、冷めてても美味しいしな! だからのんびり待っててくれ!」

『やあ、悪いねえ。私みたいな余所者のために世話を掛ける』

「そんなこと……」

 

 勢いのままに否定しようとして、慧音ははたと唇を止めた。余所者、という彼の言葉を頭の中で反芻させて、それから静かに、

 

「……そんなことないさ。お前は里の子を、そして私を助けてくれた。だからもう、余所者なんかじゃない」

 

 不思議なことに、あれだけうるさくなっていた心臓が落ち着きを取り戻していた。なにか特別なことを考えたわけではない。自然に、当たり前のことを言うように、言葉が流れる。

 

「すぐに作って、持っていくよ。そして話を聞かせてくれ。これからのこととか……色々、困ってることもあるだろう?」

『……そうだね』

 

 戸の向こうで、どうやら月見は頷いたようだった。

 

『それじゃあ、大人しく待ってるとするよ』

「ああ」

 

 月見が居間へと戻る時、足音はほとんど聞こえなかった。床を撫でるような空気の動きが、次第に遠ざかっていくのを感じる。

 その気配が完全に消えてから、慧音は小さな吐息を落とした。心臓はすっかりもとの鼓動を取り戻し、体温も平常通り。あれだけ慌てていたのはなんだったのだろうか。

 なんとなくではあるが、慧音は理解していた。外来人の男と二人きりという状況に、さんざ振り回されてしまったけれど。

 結局、慧音は、彼の力になってやりたいのだ。慧音が助けを求めた時に彼がそうしてくれたように、慧音もまた、彼に手を差し伸べてやりたいのだ。

 彼の善意に慧音も善意で応えたいのだと、それだけのこと。だから慧音は彼を家に招いたし、こうして食事を作ってやろうとしている。

 なにも特別なことなんてありはしない。もしも慧音と月見の立場が逆だったとしても、月見は同じように慧音を家に招いたし、食事を作ってくれただろう。

 

「――よし」

 

 霧が払われた心地だった。慧音は羽釜を開け、中にまだご飯が残っているのを確認すると、手を軽く水で湿らせた。

 まだほのかに熱が残っているご飯に、そっと手を伸ばす。伝わる熱が、慧音の心を解きほぐすようで、頬には淡い、笑顔がこぼれた。

 

 

 

 

 

 ○

 

 

「――ごちそうさま」

 

 慧音が丹誠込めて握った三つのおにぎりを、彼はものの数分で完食した。朝以降なにも食べていなかっただけあって、実に勢いのいい食べっぷりに、やっぱり男の人なんだなあ、なんて慧音は内心微笑ましく思う。

 

「ありがとう。美味しかったよ」

「うん、お粗末様。……はい、お茶」

 

 悪いね、と湯呑みを受け取った月見は、けれどすぐには口をつけずに、一呼吸を置いて、

 

「それで、話だけど」

「ああ……そうだな」

 

 慧音は口元に指を当て、どこから話したものだろうかと考えた。やはりまずは、この幻想郷という世界について教えてやるべきだろうか。ここはお前が住んでいた世界とは違う場所なんだ、なんて言ったらどれほど驚いてくれるだろう。もしかしたら、意外と間抜けな顔が見られるかもしれない。

 と、ちょっとだけ期待したのだけれど。

 

「ここが幻想郷という世界だってことについては、説明は要らないからね」

「……はえ?」

 

 間抜けな顔になったのは、慧音の方だった。

 

「え?」

「いや、だから、ここが幻想郷だというのは知ってるから」

「ええと……誰かから聞いたのか?」

「まあ、そんなところだ」

 

 月見の頷きを受けて、慧音は改めて、目の前の男について考え直してみる。ここが幻想郷だと知っている外来人なんて、無論のこと初めてだった。

 ふと、思い出す。森から里へと戻る帰り道で、月見におぶられながら聞いた、あの言葉を。

 ――今晩、人里で宿を恵んでもらえるように計らってくれないかな。まだこっち(・・・)には来たばかりでね、家がないんだ。

 彼は、ここがどこなのかということを慧音に尋ねなかった。ここが幻想郷であると既に知っていたから、尋ねる必要がなかったのだ。

 月見は、続ける。

 

「加えて言えば、私はここが幻想郷という土地であることを、ここに来るより以前から知っていた。ここに来たのは、まあ、観光目的みたいなものかな。朝昼とかけて里の近くをぶらぶらしてて、だから今こんなにも疲れてるわけだけど」

「……」

 

 あくび交じりで話す月見に、慧音はただただ呆気に取られるばかりであった。単に大時代な風体をしているだけの外来人ではない。陰陽術を使いこなし、そして幻想郷という世界を知る彼は、本当に外来人なのかと疑ってしまうほどだった。

 だが――ありえない話でもないのだろう、と思う。

 慧音はもう、今の外の世界がどうなっているのかは、わからないけれど。ほとんどの妖怪が幻想入りし姿を消したという向こう側でも、陰陽師の血筋は途絶えていなかったのだろう。

 例えば昨年、二柱の神を奉る風祝の少女が幻想入りしたように。

 彼もまたそうやって、こちら側の世界にやってきたのかもしれない。

 

「なるほど、なんとなくわかったよ。……じゃあ、お前はこれからどうするんだ? もし家が必要だったら、私が便宜を図るけど」

「そうだね……」

 

 月見は少し考えてから、ゆっくりと首を横に振った。

 

「とりあえずはいいよ。明日は永遠亭ってところに行ってみたいし」

「永遠亭か。……でもあそこへ行くためには、迷いの竹林を越えないといけないよ。それは知っているか?」

「ああ。多分迷うとは思うけど、適当に歩いていればなんとかなるだろうさ」

「そうか、なら大丈――って待て待て待て、まさかお前、一人で行くつもりなのか!?」

 

 慧音は愕然とした。なにかの聞き間違いじゃないかと思った。けれど「そうだけど?」と不思議そうに問い返されたので、輪をかけて愕然とした。

 永遠亭――迷いの竹林を奥に建つ、月世界の住人たちが住まう屋敷の名だ。八意永琳という優秀な薬師が診療所を開いていて、里の人間たちもたびたびお世話になっている。

 なれども、そこへ辿り着くのは決して容易ではない。迷いの竹林は、その名の通り非常に迷いやすく、また血の気の多い妖怪も生息している危険地帯だ。里の人間が永遠亭を目指す際には、竹林の地理に詳しい慧音の友人が必ず同行し、護衛を行っている。そうでもしないと、普通の人間はとても生きて帰ってこられない。

 もちろん、月見が優れた陰陽師であることは既に承知している。しかしだからと言って、「気をつけて行くんだよ」と大人しく見送ることなどどうしてできよう。

 故に慧音は、テーブルを強く叩いてかぶりを振った。

 

「ダメだ、危険すぎるっ! 迷いの竹林はとても迷いやすくて、妖怪も多く歩き回ってる。そんな場所に一人で行くなんて!」

「大丈夫だよ。今日は妖怪の山や、魔法の森にも行ってきたしね」

「う、うええ!?」

 

 冗談だろうと思った。妖怪の山に魔法の森。いずれも迷いの竹林に並ぶ危険地帯ではないか。

 そんな場所に自分から足を踏み入れて、特に目立った怪我をすることもなく帰ってくるなんて、どこぞの紅白巫女じゃあるまいし。

 

「だから大丈夫だって」

「う……い、いやいや!」

 

 月見があまりに呑気に言うので、慧音は危うく頷いてしまいそうになった。ぶんぶんと頭を振って気持ちを立て直し、再び声を荒らげる。

 

「もし迷って出られなくなったらどうするんだ!? 疲れたところを妖怪に襲われたらどうする!」

「なんとかなるんじゃないかな」

「なるわけあるかあっ! ダメだぞ、絶対に行かせないからな!」

「むう……」

 

 月見が口をヘの字にした。だが慧音だって引き下がらない。そうやって子どもみたいに拗ねるというならば、寺子屋の教師として、なおさらだった。

 

「どうしてもと言うなら、私の友人に竹林の地理に詳しいやつがいるから、そいつに案内してもらうこと! 一人で行くなんて言語道断だっ!」

「私は一人でのんびり歩くのが好きなんだが……」

 

 慧音は月見を睨みつけた。

 月見はやれやれと肩を竦めた。

 

「わかったよ」

「絶対だぞ!? 明日、私の友人のところまできっちり案内してやるからな! こっそり一人で行こうなんて考えないように!」

「はいはい」

「はいは一回! 今時、子どもでもできることだぞっ!」

「……慧音。ひょっとしなくても、教師の血が騒いでる?」

「話を逸らすな! わかったのか、わかってないのか!?」

「ああもう、わかったよ。……はい。これでいいか?」

「……どことなく投げやりなのが気になるが、まあいい」

 

 慧音は半目になりながら、月見への評価を改めた。無論、下方向へだ。大人らしく分別ある性格なのだと思っていたが、とんだわがまま小僧ではないか。

 これは、好き勝手させないようにしっかりと手綱をつけておく必要がある。

 

「まったくっ……おかしなやつだな、お前は」

「ッハハハ、それは昔からよく言われるよ」

 

 月見がちっとも悪びれる様子なく笑ったので、慧音はそれ以上説教を続ける気力をなくしてしまった。肩をがっくり落として、はあ、なんて大きくため息をついて。

 

「……お風呂の準備は終わってるよ。さっさと入って、明日に備えて寝るといい」

「おや、先に入っていいのか?」

「当たり前だろう。お前は客人なんだから」

 

 まさか、「男のあとに入るなんてイヤ!」なんて思春期めいたわがままを言うような子どもだと思われているのか。白い目で睨みつけてやると、月見は受け流すように軽く片笑んで、

 

「じゃあ、お先に使わせてもらうよ」

「風呂場は、この部屋を出て廊下を右、突き当たりを左に行って一番奥だ」

「ああ、わかった」

 

 腰を上げ、しかし途中でなにかを思い出したのか、月見は中腰のままでふと動きを止めた。

 

「どうした?」

「いや……」

 

 慧音が問えば、彼は腕を組み、しばし考える素振りを見せてから、

 

「ここは様式美として、言っておくべきかと思って」

「な、なにをだ?」

 

 妙に改まった雰囲気を感じて、慧音は思わず身構えた。なにか大切なことを言われる気がして、背筋を伸ばし、じっと彼からの言葉を待った。

 そして、頷いた彼が、至極真っ当な顔で紡いだ言葉は。

 

「――覗かないでくれよ?」

「さ っ さ と 行 け え !!」

 

 言葉の意味を理解するよりも先に、脊髄反射で体が反応する。慧音は弾幕を放って、悪戯小僧を部屋から追い出した。

 弾幕は、すべて小器用に躱された。はっはっは、と呑気な笑い声が、次第に遠ざかっていくのを聞きながら。

 

「……これは、私がちゃんと教育してやらないと」

 

 一人残った座敷の上で、慧音はふつふつと、教師の魂を燃え上がらせたのだった。

 

 

 

 

 

 ○

 

 

 この日一日の汗をさっぱり洗い流した月見は、寝室として貸してもらった小部屋で、ゆっくりと体を伸ばしていた。就寝前に行う軽めのストレッチは、一日中歩き詰めだったからか、心なしかいつもより体に染みる気がする。

 明日、筋肉痛になったりはしないだろうか。久々の人間の体だから、少しばかり不安だった。

 

「……ふう」

 

 引かれた布団の上で横になる。深呼吸をすると、体の底でわだかまっていた疲労が、じんわりと表面まで浮かび上がってきた。指の先まで力が抜けて、段々と頭がぼーっとしてくる。

 これはもう、抵抗をやめればその途端に眠りに落ちそうだ。まだ慧音におやすみを言っていないのだが、彼女は月見と入れ替わりで風呂に入っているし、女性らしく長風呂になるだろう。

 だったら、先に寝てしまっても、いいだろうか。

 などと考えているうちに、ゆっくりと夢の世界に手を引かれていく。

 抗うことは、できそうもなかった。

 

 

 

 

 

 ○

 

 

 幸い入浴を覗かれるようなこともなく、慧音はごくごく普通に風呂から上がった。

 覗くなよ、なんて言われてからかわれたからだろうか。湯に浸かっている間、変にその言葉を意識してしまって、とてもゆっくりなんてできなかった。入浴の時間は、普段の半分にも満たない。

 

「もう……」

 

 袖に腕を通しながら、慧音は力なく独りごちる。……体がいつも以上に火照っている気がするのは、ただ単に風呂上がりだからなのだろう。

 

「なんだかなあ」

 

 どうにも、調子が狂う。慧音は百年以上を生きた人生の先輩として、また教師として、常日頃からそれ相応の言動を心掛けているけれど、彼の前だと心の鎧を剥がされてしまいそうになる。

 本当に、妙な男だ。

 

「……もう、寝ちゃったかな?」

 

 脱衣所を出た慧音は、何気なしに廊下を進んで、月見に貸した部屋の前までやってきた。戸を控えめに叩いて、問う。

 

「月見、起きてるか?」

 

 返事は返ってこなかった。物音一つもなく静まり返っているから、もう寝てしまったのだろう。相当疲れていたようだったし、無理もない。

 じゃあ私も早めに寝ようかな、と思った。明日はいつもよりも早起きして、二人分の朝食を作らなければならないから、寝坊するわけにはいかないだろう。

 

「……よし、寝よう」

 

 呟いて、慧音は目の前の襖にそうっと片手を掛けた。極力音を立てないように、覗き見ができる程度の隙間を、開ける。

 

「……」

 

 案の定、月見は眠っていた。中央に敷いた布団の上で、その胸が規則的に、ゆっくりと上下しているのが見える。

 慧音は、更に体を通せるくらいにまで隙間を広げて、息を殺しながら中に入り込んだ。真夜中とはいえ、差し込む月明かりが淡く部屋全体を照らしているため、足運びに迷うことはなかった。抜き足差し足で枕元まで忍び寄って、彼の寝顔を見下ろしてみる。

 すると、

 

「へえ……」

 

 ついつい、そんな声がこぼれてしまった。彼を起こしてしまうから物音を立ててはいけないとわかっているのだが、それでも、言わずにはおれなかった。

 

「こんな顔して寝るんだあ」

 

 なかなかどうして、幼さが残る寝顔ではないか。

 それこそ、生徒の寝顔を眺めているかのようで。

 

「へえー……」

 

 きっと今の自分の顔を鏡で見たら、だらしないことになってるんだろうなあと思う。普通の外来人とは明らかに違う、言ってしまえば異色の存在だった彼が、突然身近に感じられるようになっていた。

 ここで、えいえいなんて頬をつついたりするのは、さすがに大人げないだろうか。

 と、

 

「ううん……」

「!」

 

 不意に月見が寝返りを打ったので、慧音は口から心臓が飛び出そうになった。頭から血の気が引いて、それから唐突に、私はなにをやってるんだ!? と我に返る。

 おかしい。自分も寝ようと思って部屋へと戻ったはずだったのに、どうしてこんなことを。――まるで夢遊病でも患ったかのように、完全な無意識だった。

 

(こ、これじゃあまるで、夜這いしてるみたいじゃないかっ!)

 

 体は一瞬で沸騰した。慧音は畳が摩擦熱で煙を上げるくらいの擦り足を利かせ、一目散に部屋から退散した。襖を閉めるような余裕なんて、ありはしなかった。

 

 結局この無意識の行動が尾を引いて、頭が完全に覚醒してしまった慧音は、しばし布団の中で眠れない夜を過ごすこととなり。

 よって翌朝は、ものの見事に寝坊することとなったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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