いろはすがちゃんとマネージャーなんだということを示すための物語。
それではどうぞ!
ある日の放課後。
奉仕部の部室には俺と雪ノ下と由比ヶ浜の部員三人、それから一色がいた。
いつもと変わらない平穏な時間を、各々自由に過ごす。
由比ヶ浜と一色はお茶を飲みながらガールズトーク。
雪ノ下は読書をしながら時折二人の会話にまざる。
俺はぼっち。……いやぼっちてなんだよ。
普通に読書してるよ、一人で。
あなんだ、要するにぼっちか。
美少女三人がワイワイとする傍ら目の腐った少年一人が読書をしている様は、端から見れば異様な、もしかすると憐れみさえ覚えるような光景かもしれない。
しかしそれは、俺にはとても心地よいものだった。
紆余曲折しながらも全員で守ってきたこの空間は、少し前までの苦しくなるようなものとは違う、暖かくずっといたいと思える場所になっていた。
まあ話すと長くなるので、その話はまたの機会に。
ただここで俺が言いたいのは、今の俺達があるのは一色の力によるところが大きいということだ。
彼女がいなければ今の俺達はない。
全く、こいつには感謝してもしきれんな。
だからだろう、こうして一色がいるのを自然と受け入れているのは。
部室の椅子も、机の上のマグカップも、喋り声も、温もりも、これまで三つだったものが四つに増えた。
けれどそこに違和感はなく、それを当然のように感じている俺達がいる。
と、ここまでだらだらと喋ってきたが……
まあ、なんだ。何が言いたいかっていうとだな……
「お前マネージャ業はどうしてんの?」
「………………ふぇ?」
☆☆☆
「いや、お前ここんとこずっとうちにいるけどマネージャーの方は大丈夫なのかと思ってな。あと生徒会も」
「…………あー、サッカー部ですかー……」
「確かに言われてみればそうね。奉仕部に来るのは全然構わないのだけれど、本業の方を疎かにするのは感心しないわ」
「いやー、別にサボってるわけでは……生徒会はこの時期特にすることもないので大丈夫です」
「んじゃサッカー部は?」
「サッカー部は、その……なんといいますか。あまり行きたくないといいますか……」
「サッカー部で何かやなことでもあったの?」
「いえそうではなくて。ただそのー……外ってちょっと寒いなー、的な?」
え、なにこの子。
もしかしてそんな理由で部活サボってんの?
うわー、ちょっと引くわー。
「あー、先輩今ちょっと引きましたね!先輩のくせに生意気です! 」
ふんっとそっぽを向く一色。
何で俺がキレられてんの?
俺なんも悪くなくない?
「いつも人から引かれている比企谷君が今度は引く側になるなんて、不思議なこともあるのね」
ふふっと、可笑しそうに笑う雪ノ下。
いやだから何で俺が罵倒されてんの?
「引かれてるヒッキーが引いてる……ゆきのん、ダジャレ?」
ガハマさん、そこは触れちゃいけません。
俺もちょっと思ってたけどな。
自分でも少し思うところがあったのか、雪ノ下は軽く咳払いをして恥ずかしさを誤魔化す。
「それにしても一色さん、やはり部に所属しているからには出来る限り活動に参加するべきよ。ここにいる引き籠り谷君でさえ、こうして毎日参加しているのだから」
「お前は俺を罵倒し続けねえと生きてけないの?あと俺の場合は半ば強制だからな?」
「うぅ、そうなんですけどー……だって、こっちの方が楽しいんですもん。気を遣う必要もないですし」
拗ねたようにそう呟く一色。
こいつ、よくもそんな恥ずかしいことをさらりと。
恥ずかしさから逃げるように顔をそらすと、同じく顔を紅くした雪ノ下と目が合った。
ま、そうなるよな普通。
そんな中、由比ヶ浜だけは心底嬉しそうな顔をして一色に抱き着いた。
「いーろっはちゃあーん!」
「きゃっ!もー、結衣先輩ってばー」
「えへへ、だって嬉しいんだもん!」
目の前で繰り広げられるゆるゆり。
美少女が抱き合う光景……ふむ、悪くない。
まあこいつには生徒会という大義名分も有るわけだから、部活に行かなくても怒られる訳ではない。
そこでふと、どうでもいいことを思い付く。
「しかし、あれだな」
「なんですか?」
「お前がマネージャーとか、ちょっと想像できんな」
「むむむ?それはどーゆーことですか?」
「いやーなんかな。こうしてうちでダラダラしてるお前を見てると、どうもマネージャーをやってるところが想像できん」
「ほほーう……それは先輩、つまりわたしに喧嘩を売ってるということですね?」
「…………は?何でそうなんの?人の話聞いてた?」
「いーでしょう先輩!先輩がそんなことを仰るなら、わたしにだって考えがあります!」
ガタッと椅子を鳴らし勢いよく立ち上がると、一色はビシッと俺を指差してきた。
「わたしがどれだけマネージャーにふさわしいか、わたしのマネージャー力がどれだけすごいか、先輩にとくと教えてあげちゃいます!」
程なくして、一色のマネージャー力お披露目会が催されるのであった。
……どうしてこうなった。。。
☆☆☆
「というわけで先輩!とりあえず校庭を一周全力で走って来て下さい!」
「いや何がというわけでだよ。脈絡なさすぎだろ」
「はぁ、これだから先輩は」
やれやれと肩をすくめる一色。
なんだこいつムカつくぞ?おん?
「あの一色さん、私たちまで着替える必要はあったのかしら?」
俺達は今、一色の指示により全員ジャージに着替え校庭に来ている。
何でも今から自慢のマネージャー力、略してマネ力を見せつけるとのこと。
やだ、すごくめんどくさそうなんですけど。
「はい!雪ノ下先輩と結衣先輩には悪いですけど、二人にも先輩にマネージャーとして振る舞ってもらいます!そしていかにわたしのマネ力がすごいか、そこのお馬鹿な先輩に見せつけてやるのです!」
そう言ってぐっと拳を握り目をメラメラと燃やす。
今からスポ根でも始まるのかしらん?
「なるほど……つまり貴女は、私達を当て馬にするつもり、というわけなの?」
見ると雪ノ下の目がギラリと光っている。
あ、これはもしや……
「いいでしょう。ならばどちらのマネ力が上なのか勝負しましょう。貴女には悪いけれど、私勝負事で負けるつもりはないから」
「ええー、たとえ雪ノ下先輩でもー、マネ力で私に勝てるとは思えませんけどねー?」
バチバチと火花を散らしてにらみ合う二人。
あれ?これそういう話でした?
なんかどんどん面倒な方に話が進んでいってるような……
「うーん……なんかよくわかんないけど、とりあえずヒッキーをお世話すればいいんだね?あたしがんばる!」
にこぱっと花が咲いたように笑う由比ヶ浜。
ああ、こいつの純粋さが目に染みる。
なんならユイユイが天使に見えるまである。
「それでは改めて説明しますけど、今から先輩には校庭を一周走ってきてもらいます。そのあとわたしたちが一人ずつ順番に疲れた先輩にマネージャーとして振る舞って、誰のマネが一番良かったか決め手もらいます」
「なるほどー。タオルとかスポドリとか渡すやつだね!」
「まあそんなところです!」
「わかったわ。では早速始めましょう」
「というわけで、先輩お願いしまーす☆」
……話がどんどん進んでいってて正直ついていけてないんだが。
まあようは走ればいいというわけか。
なにこれ普通にしんどい。
「ほーら先輩!さっさと走る!今の先輩は運動部ですよー!」
「え、なにその設定。死ぬほどやなんだけど」
「つべこべ言わずに早く行きなさい」
「頑張ってーヒッキー!」
……はあ、仕方がない。
三人に見送られノロノロと走り出す。
周りの運動部連中から怪訝な目を向けられるが、それはこの際気にしない。
たまには運動しないとだしな。
そして少しずつペースを上げて行き、なんとか一周を走り終える。
運動不足のためにもう若干息が切れている。
はあ、本当これしんどいな。
しかし八幡はこのときまだ知らなかった。
これから繰り広げられるマネバトルが、さらに彼を苦しめることを……
次回!いろはすVSゆきのんVSユイユイのマネバトル三つ巴が勃発!
八幡の運命やいかに!!!
後編も出来る限り早く上げようと思いますが、もしかしたら少し期間があくかもです。その時はすみません!
そして前回に引き続きお礼を。
お気に入りや評価を付けて下さった方々、本当にありがとうございます!
私は小説を書くのも投稿するのも初めてなもので、こうして反応をいただけるととてもうれしいです!
今後ともお付き合いお願いいたします。
それでは今日はこの辺で。