あけおめ!
血迷った挙げ句ナーベラルしか出せない縛りでSS書き始めた馬鹿が
他の面子も書いてみたくなった系の話があるらしい( ´∀`)
そう言う訳で勢いで書き散らかした原作準拠の短編をあけおめ投稿だ!正月とは何の関係も無いけどな!SS更新が鈍る時期、正月の暇つぶしにどうぞ。
「……以上、解散とする」
ナザリック地下大墳墓の偉大なる支配者、アインズ・ウール・ゴウンが重々しく頷くと、その場に集まった守護者達の緊張が僅かに緩んだ。
なんと言うことのない定例の打ち合わせである。各員が己の現状を滞りなく報告し、軽い挨拶を交わして終了する、それだけの話であるはずだった。
「……ああ、コキュートス。少し良いか?」
「何デゴザイマショウ、御方」
解散直後にアインズがコキュートスを呼び止めるまでは。
「今晩……そうだな、夕食後適当な頃合いに私の部屋へ来てくれるか」
その時、守護者達に電流走る――!!
百年以上前の少年漫画雑誌でたまに見られたような顔芸を惜しげもなく晒したアルベドとシャルティアが完全に硬直。アウラはきょとんとした顔で今聞こえた言葉の意味を何とか咀嚼しようとし、マーレは乙女の様に赤面した顔を手で覆う。セバスが顔面蒼白となって白目をむき、デミウルゴスがずりおちた眼鏡を思わず直すと、言われた本人は数瞬の沈黙を破って答えた。
「……御心ノママニ。デハ、後程窺イマス」
二足歩行すること以外はどこからみても昆虫そのものの外観を持つ
その場に沈黙が落ちる。一見平穏めいた静けさの中に、一触即発めいた緊張がびりびりと高まっていくのが感じられる。
「え……今のって、その、どういう?」
やや支離滅裂ながら、口火を切ったのはアウラであった。どうにも偉大なる主の発言の意図が掴みかねると言った様子で、眉をハの字に寄せて困惑の様子を示す。
「ア……アインズ様あああああああああああああああああああああああああああああ!! 伽が必要なら私に一言申しつけてくださればいつでも万事準備オッケーですのにいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!」
「衆道の虫姦……流石我が君、特殊性癖のレベルもいと高すぎるでありんすえ……」
それをきっかけにアルベドが堰を切ったように惑乱して叫びだし、シャルティアは呆然とした様子で口からエクトプラズムを吐きだした。
「あの、その……それってやっぱり、そういうことなんでしょうか?」
マーレが乙女チックに顔を覆った両手の指の隙間から目を覗かせて言うと、セバスは首を振って反論を試みた。
「いや、マーレ、そう決めつけるのは早計でしょう。特に何の用事と仰ったわけではありませんし……」
そう言いながらもセバスの声は弱々しい。デミウルゴスが眼鏡の位置を直しながら口を挟んだ。反射的に反論したようにも見えるが。
「いや、そうは言うがねセバス? 夜に自分の寝室に呼び出すというのは、少なくとも呼び出された方はそういった目的である可能性を覚悟しておくべきだと思うね私は。至高の御方に求められるのであれば、それにお応えするのが我々の使命だろう」
「むう……可能性があるのならば、準備しておくに越したことはない……確かに正論ではありますな……」
デミウルゴスの言に一定の説得力を認めたか、セバスも不承不承ながら同意した。至高の御方の望みに応えることこそ自分たちの喜びである。そこに否やはない。
「フム……何ダカヨクワカラヌガ、ツマリドウスレバイイノダ?」
当事者の癖に状況をいまいち飲み込めてないらしいコキュートスの発言に、守護者達の視線が集中した。再び沈黙が落ちる。
「まあとりあえず……話を整理しましょうか。今回の話、我々の解釈が正しいと仮定して……めでたい点とそうでない点がありますね」
次に沈黙を破ったのはデミウルゴスだった。守護者随一の頭脳労働担当として、狂乱収まらぬ統括の代わりに話を纏めにかかる。マーレに耳打ちされたコキュートスが、沸騰したヤカンのように湯気を噴き出すのを横目に見ながら言葉を繋いだ。
「めでたい点は、なんといってもアインズ様が我々のことをそういう対象として認識するようになったことです。私の見るところ、これまではどうも……今はもう居られない他の方々に対する遠慮から、そういう認識を持つこと自体がとんでもないとお考えになられている節がありました」
「そうですな、アインズ様は私たちのことを、他の方々の子供のように思っておられる。そのような発言は随所でしておられました」
セバスが同意すると、デミウルゴスは頷いた。
「ええ。私たちとしては慈悲深きアインズ様のその態度は、ありがたくもあるがもどかしくもあるジレンマでしたが……どのようなお考えがあるにせよ、それが変化したのであれば喜ばしいことです」
「本当にそうね。めでたくない点は、その対象が私でないという点につきるわね」
「黙りなんしこの発情サキュバス!! アインズ様のお相手として相応しいのはこの私でありんすえ!!」
「うん二人とも黙ろうか」
アルベドとシャルティアが、本人達は大真面目に話を引っかき回しにかかるのをアウラが止める。
「ありがとうアウラ。とはいえ、二人の言うこともまあある意味で正解ではある。問題は……コキュートスが相手では、お世継ぎの誕生はおよそ期待できない、私が言いたかっためでたくない点とはつまりそういうことだからね」
「……
思わずといった感じで口を挟むセバスに、デミウルゴスは苦笑して答える。
「うん、まあそれは認めるがねセバス。ナニをどうするにしても、お相手を務めるのは女性であった方がまだ可能性があるとは言えるだろう? そこでだアルベド」
「……なにかしら?」
「君はアインズ様が普通に女性に興味を持つ可能性を追求してくれたまえ。君が色仕掛けをしてもいいし、シャルティアやアウラ、あるいはプレアデスを使ってもいい。とにかくアインズ様が女性に欲情するかどうかさりげなく探って欲しい。趣味嗜好の問題もあるんだから、自分でやることに拘泥しすぎるなよ?」
「……わかったわ、任せてちょうだい。アインズ様……お待ちください、すぐに私が正しい色恋の道に立ち戻らせて見せます……」
ちっとも分かってなさそうな顔でそう言い放ち天を仰ぐアルベドを尻目に、シャルティアがデミウルゴスに詰め寄った。
「ちょ、ちょっと、だったらわたしはどうなるでありんすか?」
「君は……コキュートスにレクチャーして貰いたい」
「えっ」
「いずれは正常なカップリングにも興味を持って頂きたいのは山々だが……それはそれ、これはこれだ。少なくとも今夜の所は、コキュートスが己の忠義にかけてアインズ様のご要望に応えることに全力を尽くすべきだろう。よって、伽に臨むにあたって心構えとか、準備とか、そういった感じのアレをよろしく頼む。正直衆道も異種姦も未知の領域ではあるが……蛇の道は蛇というしな」
君なら同性愛は経験豊富だろう? キメ顔でそう言うデミウルゴスに、シャルティアはくってかかる。
「ちょ、おま、百合と薔薇を一緒くたにするのは乱暴にも程があるだろ!?」
錯乱して慌てふためくシャルティアであったが、はたと何かを思いつくとコキュートスに向き直った。
「ところでコキュートス」
「何カ用カナ?」
「
色々と駄目だった。
◆
助言に従ってともかくも凍えるほど冷たい氷河での沐浴にて身を清め、シャルティアに分けて貰ったなんだかムーディーな香水など振りかけてもみたコキュートス(さりげなく私のことを売り込んでおいてくれると嬉しいでありんす、とは本人の言だ)。緊張した面持ちでアインズの私室のドアをノックした。
「御方、参リマシタ」
「……コキュートスか、入るが良い」
アインズの許可を受け、コキュートスは緊張の余り息を吐き出すと、「失礼シマス」とドアを開けて中に入った。
部屋は広く(中の人の感覚にしてみれば広すぎる)、作りは豪奢であった。端にある天蓋付きのベッドにいやでも目がいくコキュートス、とは言っても睡眠をとることができないアインズがこのベッドを使用することは基本的にないのだが。今夜はその例外になるのだろうか。そのように煩悶とするコキュートスを、中央の長椅子に腰掛けたアインズは不思議そうに見やる。
「どうしたコキュートス? とりあえず掛けるがいい、遠慮は要らぬ」
そう言って、テーブルを挟んだ向かいの長椅子を勧めるアインズ、つまりはちょっとした応接セットだ。
何事にもムードは大事。力説するシャルティアの声が脳裏に思い起こされる。
『もちろん、明白すぎる上下関係があるときに上位者が一方的に欲望を叩きつけることは簡単でありんす。わたしも眷属が相手で、手間掛けるのが面倒な時はそうしんす。でもまあ、普通はまず雰囲気作りから入って、お互いの気持ちを高めていくのが常道ですえ』
成る程、流石はアインズ様。まずはムード作りからという訳ですな。本人の知らないところで納得したとばかりに頷くコキュートスを首を傾げて見やると、アインズは卓上の板を指さした。
「今夜はこれを使う」
なんと。コキュートスは内心惑乱する。卓上に置かれるは桝目の引かれた木の板と、人間の掌に容易く握り込める程度の大きさで、表面に字の刻まれた小さな木片である。シャルティアは己の(というよりは創造主であるペロロンチーノの)豊富で偏った知識から数々の特殊なプレイについて時間の許す限り説明してくれたが、その中にこのような小道具を使うものは無かったと記憶している。
想像の翼をはためかせるならば、この木片が幾つ入るか試すとか(何処にだ)……などと埒もない考えを遊ばせるコキュートスに、アインズの声が届く。
「将棋というんだが、知っているか?」
「ハ? ……イエ、恥ズカシナガラ知リマセヌ。コレハドノヨウナプレイニ?」
「プレイ? そうだな、まあ遊びだな」
そう言ってアインズは将棋について簡単に説明する。二人で駒を交互に動かして対戦する勝負形式の卓上遊技だと。状況を理解して内心硬直するコキュートスに、アインズは語りかける。
「それでだな、ここがポイントなんだが。将棋というのは、高度に抽象化されては居るが、戦争を模した遊びなのだ」
「戦争……デ御座イマスカ」
「そう、戦争だ。つまり、この将棋を用いることで、楽しく遊びながら、戦闘指揮の能力に刺激を与えることができるのではないかと私は考えているのだ」
「ナント……」
「お前、以前出した欲しいものリストに、私と鍛錬したいというのを挙げていただろう? お前は鍛錬と言えば剣を振ることしか思いつかないような脳筋だが……頭の回転を鍛えることもまた鍛錬だぞ?」
その間は体は休められるし、気晴らしにもなって一石三鳥だ。そんな風に結ぶアインズを、感動した様子でコキュートスは仰ぎ見た。そのようなお考えがあったとは、流石はアインズ様、至高の方々で最も慈悲深き御方であることよ……
「ぶっちゃけ私も基本的なルールと駒の動かし方を知っている程度だしな……デミウルゴスに相手させるとすぐ終わっちゃうし、そもそもあいつ忙しいだろうし。そんな時にまあお前の希望を思い出してな、じゃあ一緒に覚えてみないかと思ったわけだ」
コキュートスは内心感涙にむせんだ。流石はアインズ様以下略、知略を競うならばデミウルゴスこそアインズ様のお相手に相応しいであろうに、わざわざ自分のレベルに合わせて一緒にやってみないかと言ってくださるとはその寛大なる御心よ。
無論、アインズ本人としては、デミウルゴスに覚えさせたが最後、五分で勝てなくなるだろうとの自信があっての発言である。
そんなわけで、アインズとコキュートスは深夜まで楽しく健全に将棋を指して遊んだのであった。通算の対戦成績は誰かの名誉のために伏せておく。
◆
翌日。相も変わらず表情の読めぬ鉄面皮(というより昆虫面)ながらも、どことなく上機嫌なコキュートスと、ゆうべはおたのしみでしたかと根掘り葉掘り聞きたい他の守護者達。寝室の様子を出歯亀したかったのは山々なれど、己の好奇心でそのような不敬をはたらくことなど守護者の風上にも置けぬ所行。断腸の思いで眠れぬ夜(※どのみち睡眠不要の装備をしているわけだが)を悶々と過ごした守護者達が血走った目で話しかけるタイミングを窺っていると、何も知らぬアインズがのほほんと現れた。
(あー、昨日は楽しかったな-。コキュートスも満足してくれたみたいだし、こういう方向性でみんなを慰労するのはアリだな。コキュートスには色々と理論武装しちゃったけど、今度はもっと気楽に、そう、トランプでも遊んでみたいな)
「アウラ、マーレ。今晩私の部屋に来てくれるか」
「「ファッ!?」」
頬を真っ赤に染めて顔を見合わせる双子の姉弟。アルベドの顔を絶望が塗りつぶし、シャルティアの口からエクトプラズムと共に「両刀近親乱交パーリィ姉妹丼ならぬ姉弟丼の禁断ロリショタサンド……アインズ様……恐ろしい御方……!!」などと呻きが漏れた。セバスは立ったまま気絶し、デミウルゴスは再びずり落ちた眼鏡を直す。コキュートスのみが一人、好々爺然とした余裕を持って頷いていた。
どっとはらい。
天然萌え骸骨アインズ様万歳( ´∀`)
※このSSは1/3再開予定の拙作「ナーベがんばる!」とは完全に設定が違います。
作者が困るので同一視しないであげてください。