一章を投稿してから約1ヶ月経ちました。
色々と忙しく、執筆活動が進みません!
そんな中でも、頑張って書いていきます!
それでは、二章の始まりです。
宿舎から学園までの道は、ほぼ一直線。
左手には海が見える。
途中の一般寮と交わるところまでは人はおらず、とても静かだ。
俺は水平線を見ながらゆっくりと歩く。
いつもより早めに出たため、時間的にとても余裕がある。
そんな事もあってか、ロキ少佐との会話が頭をよぎる。
────フレイ・バナラント、“D”にどんな恨みがあるんだ?
“D”はドラゴンだとしている者は少なくない。
しかし、そんな者の中でも全ての“D”を排除しようとする者はいない。
そんな事を思うのは“D”に強い恨みを持っている人物だけだろう。
とするなら、フレイは“D”に恨みを持っている人物という事になる。
フレイという人物について思案していた────その時。
「っ!」
背後に鋭い殺気を感じた。
俺は反射的にその場から飛び退き、殺気を感じた方を見るが────誰もいない。
殺気はとても鋭かった。おそらく相当な手練れだろう。
そこで嫌な予感が脳裏をよぎる。何者かによるミッドガルへの侵入。
「……まさかな」
俺は一人言のようにつぶやく。
ミッドガルは、環状多重防衛機構──ミドガルズオルムによって守られている。
ミドガルズオルムのセキュリティは世界で最も堅牢と言われており、突破は不可能だ。
ドラゴンならば話は別だが、相手は人間。ここで殺気を感じることはあり得ない。
一瞬気のせいかと思ったが、戦場での勘がそれを排除する。
────先生に話しておくか。
一人で考えていても仕方ないと結論づけ、俺は学園へと歩を進めた。
学園に着くまで気配を探っていたが、もう殺気は感じず、張り詰めていた気を緩めて俺たちのクラス────ブリュンヒルデ教室の扉を開けた。
「あっ!ユウー!おはようなのー!」
俺の姿を見るや、ピンク髪の少女が飛び付いてきた。
「おっと、おはよう、ティア」
そう言って俺はバランスを崩さないように少女──ティアを受け止め、頭を撫でる。
ティアを見ているとどうしても目線が頭にいってしまう。
なぜならティアの頭には────角がはえているからだ。
しかし、その角は生まれた時から付いているものではなく、生まれた後にある人物──“D”によって付けられたものである。
その人物の名はキーリ・スルト・ムスペルヘイム。
キーリは、ドラゴン信奉者団体の一員であり、ティアを“赤”のバジリスクのつがいにしようとした人物である。
ティアは、キーリにあなたはドラゴンだと教えこまれ、入学してきた時は相当揉めた。
しかし、今はその誤解もとけ、バジリスクの討伐にも成功した。
ティアについての問題は解決したが、キーリについては分からないことが多い。
キーリは“D”にも到底不可能な生体変換を行うことができる。
────キーリは本当に何者なんだ?
キーリについて思案を始めた時、袖を引っ張られた。
見るとティアが頬を膨らませている。
「むー。ユウ、ティアの頭撫でてるのに、違う事考えてるの」
俺は一瞬ギクリとする。
「な、何でそう思うんだ?」
「だってユウ、おでこにシワがよってるの」
どうやら顔に出ていたらしい。
「ごめんな、ティア。次からは気を付けるよ」
謝罪の気持ちを込めて再びティアの頭を撫でる。今度はしっかりとティアを見つめて。
すると、ティアは少し頬を赤らめて微笑んだ。
その様子を見て、俺も嬉しくなった。
しかし、俺はこの後、後悔する事になる。
色々と考えていたせいで忘れていたが、ここは教室の入り口であり、ティアはいつもクラスメイトと登校する。
それは今日も例外ではない。
視線を感じて前を向くと、
「うっ!」
クラスメイトである女子4人が視線を向けていた。
「み、みんな、おはよう」
とりあえず挨拶をするが、
「ふんっ」
金髪の少女──リーザ・ハイウォーカーは顔を反らし、
「おはよう、物部くん」
本を手に持つ文学少女──フィリル・クレストは、笑顔だが目が笑っておらず、
「おはよう、物部クン」
ボーイッシュな雰囲気の少女──アリエラ・ルーは、呆れたような目で挨拶を返し、
「……ん」
赤毛の少女──レン・ミヤザワは、ジト目でいつものように挨拶をした。
俺は居心地が悪くなり、ティアを見ると、彼女もこの空気を感じ取ったらしく、困った顔で俺を見上げている。
「……席に着くか」
「うん」
二人で頷いてそれぞれの席に着く。
四人の視線は消えたが、空気はいまだ重い。
それでも、俺は少し安心していた。
────イリスがいなくて良かったな……。
俺は左隣の空席を見ながら思う。
イリス・フレイヤ。彼女は輝くような銀髪を持つ美しい少女だ。
ブリュンヒルデ教室に所属するクラスメイトであり、学園では深月と同じくらい親しい人物。
そして、俺の秘密────ユグドラシルとの取引を知っている唯一の人物でもある。
俺は、抱えきれなくなった重荷を背負わせてしまった。
よりにもよって、俺のことを好きになってくれたイリスに、記憶を失う前の俺は、深月と結婚する約束をしていたと打ち明けてしまった。
しかし、彼女はそれをしっかりと受け止め、俺の記憶を取り戻すと宣言までしてくれた。
だから、もしイリスがこの場にいたら、今もジト目を向けられていただろう。それは正直辛い。
そう考えていると、教室の扉が開き、深月と担任の篠宮先生が教室に入ってきた。いつの間にか、だいぶ時間が経っていたようだ。
しかし、イリスはまだ教室に来ていない。
キーンコーンカーンコーン。
始業のベルが鳴った時、教室の扉が勢いよく開かれた。
「遅れてすみません!」
現れたのは、髪がボサボサのイリス。
「イリス・フレイヤ……また寝坊か」
篠宮先生は、呆れ気味に溜め息を吐く。
「すみません……」
イリスはしゅんとして席に座る。
「おはよう、イリス」
俺は、寝坊してきたクラスメイトに声をかける。
「おはよう、モノノベ」
イリスは疲れた様子ながらも挨拶を返す。
俺はそんなイリスに苦笑して先生の話に耳を済ませた。
ホームルームが終わり、俺は先生に声をかける。
「篠宮先生。少しよろしいですか?」
「どうした、物部悠」
「今朝、少し気になることがありまして」
その一言で話の内容を察したのか、篠宮先生は硬い表情になった。
「今朝というのは……フレイの話に関係あるのか?」
「……確信はありませんが、おそらくは……」
証拠が無いため、表現が曖昧になってしまう。
「……話してみろ」
それでも、篠宮先生は話を聞いてくれるようだった。
「学園へ行く途中に殺気を感じたんです」
「殺気を?」
篠宮先生は驚いた表情を浮かべたが、すぐに苦笑した。
「物部悠、君の気のせいじゃないか?」
「俺もそう思ったんですが、嫌な予感がして……」
俺がそう言うと、篠宮先生は笑って言った。
「物部悠、君も分かっていると思うが、ミドガルズオルムは世界一堅牢だ。紛れ込める訳がない。今回は君の考えすぎだろう」
「でも、可能性がないわけではありません。前例もありますし……」
俺の言葉を聞いた篠宮先生は、表情を固くした。
前例とは、キーリのことである。
彼女は、生体変換を使い、容姿やDNAまで変えて、立川穂乃花という全く違う人物になり、ミッドガルに潜入していた。
それに“青”のヘカトンケイルが、ミッドガルに突然現れたこともある。
「……一応警戒はしておこう。杞憂に終わると思うがな」
そう言って、篠宮先生が端末を取り出した時、
ドォォォォォォン────!!
大きな爆発音と共に地面が揺れる。
「なんだ、何があった!」
篠宮先生は、端末に呼び掛ける。
そして、いくつか指示を出してから、通信を切った。
「どうしたんですか?」
問いかけると、篠宮先生は険しい表情で言う。
「……君の予感は正しかったようだ」
「え?……まさか!」
戸惑う俺に、篠宮先生は告げた。
「ミッドガルが、何者かに襲撃されている……」
第二章でようやく物語が動き出しました。
第三章では、バトルシーンが出るかも!?
楽しみにしていただけると嬉しいです。
そして第三章ですが、1ヶ月後に出せるか分かりません。
それというのも、執筆していて1ヶ月に一章はキツイです。
なんとか、1ヶ月後に出せるように頑張りますが、出せなかったら、すみません!
読者の皆さまには、多大なご迷惑をおかけしますが、これからも、コードネームFを宜しくお願いします!
それでは、また出会える日まで……