ハゲマントが鎮守府に着任しました。   作:owata31

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かなり遅れてしまい申し訳ありません。投稿は遅いし文才なんぞありませんが最後まで読んでくれたら幸いです。


第11話 大物戦艦!?

不知火とジェノスのいざこざから翌日、ヒーロー鎮守府とやけに立派な表札が立てある正門に、サイタマを含む5人のメンバーが、今から配属される新たな艦娘を今か今かと心待ちにしていた。

 

「いや〜楽しみだな!戦艦なんだから強いんだろ!?いや〜ワクワクするな!」

配属される艦娘が戦艦だと聞いてサイタマはワクワク胸を躍らせていた。駆逐艦やら魚雷やら、サイタマにとって軍事の話などチンプンカンプンであり、興味もないので全く分からない。しかし、『戦艦』という単語は、軍事に詳しい人間…俗に言うミリオタと呼ばれる者以外の一般人には『強い』『デカイ』『主砲がすごい』『宇宙戦艦』というイメージが世間一般なのである。サイタマのもつイメージもその世間一般が持つイメージとはなんら変わりのないものであった。

 

「先生、たしかに戦艦は強力な主砲や艤装の大きさが特徴的ですが、はっきり言って先生に勝てる艦娘なんていませんよ。」

サイタマの隣に立つ不知火が顔色一つ変えずにこう言った。サイタマの最大の悩みは対等に戦える敵がいないこと、それは一番弟子を名乗る不知火が良く知っていた。だからこそ、師匠であるサイタマにはがっかりしてもらいたくなかったのだ。決して今から来る艦娘が弱いわけではない。寧ろ艦娘の中でも最強レベルである。だがサイタマは強すぎるのだ。サイタマと対等に戦える相手を探すというのは砂浜に落ちたダイヤを探すより難しい、本気で不知火はそう考えていた。

 

「『そうか、わかった……… 』サイタマ先生、配属される艦娘は徒歩でこちらに向かっているそうです。なんでも自ら徒歩でこちらまで赴くと言っていたようです。」

携帯をしまい、腕時計を見るジェノス。もうすぐ約束の時間である。

 

「そうなのか。てか徒歩だと遠くないのか?」

 

「艦娘の収監かれていた『臭蓋獄』から我々の鎮守府まではかなり距離があるようですが…人間が嫌いだという可能性がありますね。」

 

「あー!!!サイタマ動かないで!!サイタマの頭にモンジャラが!!!!!」

突然鈴谷がサイタマの目の前にスマホを向けてきた。最近流行りのゲームに夢中なのである。

 

「なんだよ急に!俺の頭にはなんもついてねーぞ!」

 

「ついてるのよ髪が!!マジで!!!サイタマ今日はついてんじゃん!!髪だけに!!」

 

「マジか!ちょっと見せてくれよ!」

 

「無理無理!!サイタマに見せたら逃げられるじゃん!」

 

不知火がため息をついて話しかける。

「先生…残念ながら鈴谷のやっているゲームの中だけの話であって、現実では何も生えてません。」

 

「あっそう…」

生えてると言われると少しではあるが気にしてしまう。

まだ午前中だというのに騒がしいサイタマと愉快な仲間たち、そんな中、吹雪だけはある一点を見つめて絶句していた。

 

 

 

「あの……皆さん………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あそこの電柱にお尻をフリフリしながら私を凝視している人がいるんですが…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

身長は180cm超え、長く美しい黒髪、凛々しい顔立ち、勇ましくも透き通った声、ゴツゴツな筋肉ではなく、しなやなに鍛え上げられた美しい肉体、出ているところは出ているナイスバディ、どこからどう見ても超絶美人。

「私は長門型超弩級戦艦!ながも…ではなく長門だ。艦だったことは連合艦隊旗艦も務めていた!!よろしく頼む!!」

ただしこの戦艦、性癖も超弩級だったのだ。

 

「と、特型駆逐艦1番艦の吹雪です…よろしくお願いします…」

 

「ふふ、ふふふふふふふふふ…………………ふふっ」

 

「く、駆逐艦だぁ……それも生の…」

 

「あ、あの…何かおかしいでしょうか?」

吹雪は恐る恐る顔をにやけて不気味に笑う長門に尋ねてみた。なんだか悪い予感しかしない。

「いや…健気な子がまるで富士山の湧き水みたいな純粋な瞳で真面目に挨拶してくるとね…なんだか背筋がゾクッとしてうっとりするんだよ…それも最近まで男まみれのゴミみたいな所にいたからな…たまるものも溜まっていたんだ。アアァウゥ…、涙と鼻水も出てきた…ティッシュくれないか?なんなら君のハンカチでもいいぞ」

恐るべき戦艦である。内股になり、身体を震わせ全身で喜びを感じていた。駆逐艦に挨拶されただけで恍惚していたのである。

 

「陽炎型駆逐艦2番艦、不知火です。よろしくお願いします」

 

「な、なぁ!!ぬいぬ…じゃなくて不知火!!!私の事を養豚場の豚を見る目で罵倒ってくれないか!!????」

今度は突然奇声を発したと思えば地面を蹴り空中に舞い上がり、そのまま丸くなったと思えば、美しい着地ともに土下座していた。流石の不知火も突然の変態に困惑の表情を隠せない。

 

「あ、あの頭を上げて貰えないでしょうか…」

 

興奮しているのか鼻水もだらしながら見上げている。

「君の無愛想な瞳から放たれる殺気と躊躇なく放たれる罵倒の鞭をこの身体で受け止めたいんだ!!!ふふ…なんなら踏んでくれても構わないのだぞ!!!!そしてスパッツもいいッ!」

 

「む、無愛想…ですか…」

戦闘や家事、秘書艦もこなす不知火に足りない物は『愛想』だった。人並みの感情は持っているのだがとにかくそれが顔に出ない。本人はそれを十二分自覚しており、解決に向けて努力しているのだがまだまだ道のりは長いだろう。彼女が無理矢理つくる笑みはサイタマですら凍りつく程なのだから。

 

「ジェノス!!この人超ド変態じゃん!!!」

鈴谷が吹雪を守りながらジリジリ後退りしながら叫んでいる。

 

「だから言っただろう、こいつは特殊な性癖を持つ変態だ。」

 

「あ、あの!ハンカチならありますよ。」

吹雪が長門にハンカチを渡そうとした瞬間、鈴谷とジェノスが止めにはいる。

 

「ダメェェェェ吹雪!!早まらないで!アイツはロリコンなのよ!吹雪のハンカチをクンカクンカするに違いないわ!」

 

「え!?なんですかそれ!?」

 

「ロリコンとはロリータ・コンプレックスの略だ。思春期前または思春期早期の幼女や少女へ性的嗜好をもつ者のことであり、小児性愛という異常な性愛と定義されている。」

無表情でなんの躊躇いもなくロリコンを説明する19歳。

 

 

「フ、S級ヒーローのジェノスと重巡の鈴谷だな。だが少し違うな。私は『ショタコン』もいけるロリショタだ。意外と守備範囲が広いだろ?」

 

「知るか!超前進守備じゃん!!!吹雪、不知火、ジェノスの後ろに隠れて!!」

鈴谷が警戒の色を強めるとまたもや長門は叫びだした。

「違う!!私は幼い子は好きでも。絶対に手はださない!!ロリショタは愛でる物だ!!!そんな事をする奴はこの長門が正義の鉄拳をくだしてやる!!」

 

 

「YES ロリショタ NO タッチ!!! 」

 

 

「…………」

「…ま、まぁよろしくね…」

もはやここまで潔いが良いと呆気にとられてしまう。

 

「あぁ!!よろしく頼む!!あとは…」

 

「おぉ、俺だな」

サイタマは一歩前に出てそう言った。

 

「俺の名はサイタマ。ここの鎮守府の提督とヒーローをやってる。なんかお前変な性癖持ってるけどよろしくな。」

 

「ああ、さっきも聞いていたと思うが、長門型超弩級戦艦、長門型一番艦の長門だ。よろしく頼む。ところでヒーローと言ったが、サイタマはヒーロー登録をしているのか?」

長門が興味深そうにきいてきた。

 

「おう、A級39位のプロヒーローだぜ。」

サイタマは胸を張ってそう答えた。

A級ヒーローは下位ランクヒーロー達の指標でもあり社会的な影響力の強いランクである。あまりランクや知名度というものには興味がなかったサイタマだが、ハゲてることと同様に決して気にしていない訳ではなかった。「お前など知らん」と言われれば多少はなりと傷つくのである。すると長門が信憑な顔でサイタマを見つめてきた。

 

「…本当にA級なのか?」

 

「ああ、マジだぜ!」

無気力な目がちょっとだけキリッと吊りあがり声のトーンも少しだけキリッと変わった。自分の知名度が上がるとなればちょっとだけ嬉しい。すると長門が何やら考え込むような仕草をした。

 

「すまない…A級以上のヒーローは全員覚えているつもりだったのだが…正直サイタマの顔を見ても全く思い出せない。そうだ、カエルの被り物をしたヒーローじゃなかったか?」

すると会話にジェノスが割って入ってくる。

「あれはただの雑魚だ。サイタマ先生はA級39位ながらS級以上の実力をもっている。」

 

「ふむ、S級のジェノスが言うなら信用しよう。それなら『ヒーローネーム』も教えてくれないか?」

 

「え」

サイタマは固まった。固まらずにはいられなかった。

 

「『ヒーローネーム』だ。ヒーローならあるだろう?ヒーローはヒーローネームで呼び合うのが常識と聞いたことがあるのだが。」

そう長門が言うと、サイタマは目線をそらしながらなんとも言いづらそうにこう言った。

 

 

 

「…………………………………ハ………、ハゲマント………」

 

 

「え」

今度は長門が固まった。

 

 

「だからハゲマント…」

 

「…………」

長門とサイタマとの間に時が止まったような数秒の静寂が訪れる。一瞬長門の視線が頭からつま先を一往復し、眉間にシワをよせる。

「それは罵倒だと思うぞ。」

 

 

「好きでついた名前じゃねーんだよぉぉぉ!!」

ツルピカな頭が赤くなりながら叫び上げる。ランクは上がってもヒーローネームは変わらない。弟子の名前はかっこいいのにサイタマだけは見た目そのまんまで決められたような感じだ。

 

「そうなのか。すまない。それならハゲはファッションなのか?世紀末な世界で出てくる悪役みたいな。」

 

「んなわけあるかっ!!!好きでハゲてるわげじゃねぇ!!!」

 

「ならば何故ヒーローネームの変更願いを出さなかったのだ?たしかヒーローネームが決まった一週間以内なら変更願いの申請書をだせるはずだ。」

 

「え……やっちまったぁぁぁぁぁ!!!!!!」

そういえば大人数で鍋を食べたときに鍋が爆発(原作57撃目参照)してしまいヒーロー協会から貰った書類は、全て鍋の汁がかかってしまい捨ててしまった。するとジェノスは失念と後悔に蝕まれながら携帯を開いた。

 

「申し訳ありません先生!!!俺がついていながら…それなら俺が協会に直談判してきます。先生の髪の毛もより天然に違い毛の植毛手術もクセーノ博士に相談してきます!」

すると今度は不知火が刀を抜き出し、

「不知火が先生の名前を決めた輩に直談判してきます。」

 

 

「やめて!!お前ら物騒だし俺が恥ずかしから!!」

物騒極まりない二人の弟子を落ち着かせる。

 

「ま、ヒーローなら名前じゃなくて怪人を倒して腕で語らないとな」

仕方がないと割り切ったサイタマはそう言うと、長門はフッと微笑み、手を差し出しだした。

「そうだな。武人たるもの戦ってナンボだ。前置きが長くなったが、改めてよろしく頼むぞ。サイタマ。」

 

「おう、よろしくな。期待してるぜ長門。」

サイタマもそれに応えガッチリと握手した。なんの変哲もないただの握手である。

 

 

 

だが、長門は感じた。このたった数秒の握手で凄まじいサイタマの莫大なエネルギーを感じたのだ。

 

 

今まで強い奴は散々見てきた。まだ鉄の塊だった頃、自分より小さいが凄まじい戦果上げる駆逐艦、圧倒的な戦力を誇る大日本帝国海軍の正規空母や戦艦達。世界最強の練度や性能を誇った艦載機や乗組員。艦娘になり人間の形として生まれ変わってからも、邪悪なオーラを放ちラッシュを繰り出す者や音速で斬りかかってくる者など、たくさんの強者を見てきた。

 

しかしサイタマは違う!!

 

 

46cm砲だとか、はたまた世界の抑止力に使われる核兵器とか、そんなものが子供の遊ぶ玩具に見える。

 

 

その力は地球上の生物では到底及ぶことのできない莫大な『正義の力』。

 

 

 

 

「お、おい、どうしたんだ?急にボーっとしちまって、風邪か?」

 

「え、あぁ…すまない。」

サイタマの声でハッと我に返される。その時、道路から急ブレーキを踏んだ甲高い音が鳴り、一台の白い車がサイタマ達の目の前で停車した。ドアがせわしなく開くと、中からスーツ姿の男がオロオロした様子で現れた。

 

「おい、危ないだろ。ヒーロー協会の役員が何の用だ。」

ジェノスが役員の前に立ちはだかる。

 

「これはジェノスさん!S級ヒーローのあなたに用があってきました!緊急事態です!!!至急現場に向かっていただきたい!」

必死な様子でそう訴える役員を尻目にジェノスはため息を吐く。こういう時のヒーロー協会は無茶難題しか押し付けない。龍クラスの怪人や大規模自然災害による被害がおきる直前に招集だったり、なんの情報や作戦もなく現場に駆り出されたりめちゃくちゃである。協会の運営体制を疑いたいぐらいだ。

「…先生、今回も無茶難題を押し付けられそうです。夕食までには戻ります。」

 

「そうか、頑張れよ。」

 

「はい、頑張ります。………それで、要件はなんだ。夕食までには済ませたい。」

 

「『艦娘』と呼ばれる対深海棲艦兵器が盗難されたのです!」

 

「「「「「!!!!!!!」」」」

 

「どういうことだ!」

最初に声を荒らげたのは不知火だった。彼女は役員の胸倉を掴み、それを見た鈴谷と吹雪に制止させられていた。

 

「ひ、ひぃぃぃぃぃぃ痛い痛い!!『鎮守府狩り』の不知火!私は何もしてないぞ!!」

 

「言え!!どこのどいつに連れてかれた!!!」

 

「不知火ちゃん落ち着いて!!ここで怒っても何も変わらないよ!?」

吹雪が珍しく声を荒らげようやく不知火は胸倉から手を離した。

 

「す、すみません二人とも…」

流石に熱くなりすぎたと不知火は誤った。

 

「まぁ場所を聞いても血相変えて1人で先走らないでよ?私達だって心配なんだから。」

鈴谷は見た目こそ冷静を保っていたが、心の中でも不安な気持ちでいっぱいだった。

 

「んで、どこに連れてかれたんだ?駆逐艦って吹雪や不知火とあんま歳は変わらないだろ。やべーじゃねーか。」

サイタマも子供が誘拐されたと聞いて黙っている訳にはいかない。

 

「あ、あなたは誰ですか?まぁこの際どうでもいい、艦娘を保護していた海軍から駆逐艦が誘拐されたんです!どうやったかはわかりませんが、誘拐された時刻に怪しい黒いバンが目撃されたのです!」

 

「な、なにぃ…黒バンだと!?羨ま…じゃなくて許せん!!絶対にゆるせんぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

長門が大きな雄叫びをあげる。それを聞いたサイタマが長門向かって指を指す。

「なあ、こいつも退治したほうがいいんじゃね?」

 

「少しでも怪しい動きをしたら俺が排除します。」

 

「な!?私はロリショタnoタッチだ!!!!」

 

「遊んでいる暇はないんです!!深海棲艦に対抗できる貴重な兵器なんです!!居場所は特定できましたので大至急現場に向かってください!!!」

役員はそう言うと、乱れた服装を直しながらサイタマに地図を渡した。

「どこだここ。」

 

「EF市の山の中ですね。俺達が走れば40分で着くでしょう。」

 

「よしジェノス、俺も行くぜ。晩飯は賑やかになるな。」

 

「分かりました。直ぐに向かいましょう。」

 

「私も行きます。」

 

「この長門も同行しよう。よぉぉぉぉぉぉぉぉぉし!!!!!!待ってろよ駆逐艦!!!!」

 

 

「なんで長門さんはテンションが高いんですか…」

 

「吹雪、長門にも気をつけてね」

 

 

 

 




1週間以内に申請すればヒーローネームを変えて貰える…といのは本編のオリジナルです。ヒーローに名前ってかなり大事だと思うので申請すれば変えて貰えると思うのですよね…


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