シズ・デルタに恋をしたナザリックの機動兵器 作:t-eureca
跪いている守護者達にモモンガさんが声をかける。
「面を上げよ」
凄まじく威厳に満ちた声で、守護者達に顔を上げるよう促す。守護者達は一斉に顔を上げた。
「皆、よく集まってくれた。今日は皆に集まってもらったのは他でもなく、我が友であるマシンナーさんの意識が回復された」
顔を上げてくれた守護者達は黙ったままだったが、その眼には喜色に満ちていた。
中には涙目の人もいる。モモンガさんの言うとおり、忠誠心は
「さて、何故彼が一時期ナザリックから消えたのか、気になるだろう? マシンナーさん、すまないが、皆に話してくれないか?」
「無論だ、我が友よ」
モモンガさんに促され、俺はスッと立ち上がり、皆の前に出た。
「その体勢ではきついだろう、立ち上がってくれ」
俺が立つよう促すと、彼らは一糸乱れずに立ち上がった。これも忠誠心の成せる事なのだろう。
「皆、久しいな。先ほど目覚めた至高の41人の一人、マシンナーだ。これから俺が一時期ナザリックから姿を消したその理由を話そうと思う……」
そして俺は彼らにこう語った。
「俺はナザリックとは別の場所で、ワールドアイテムを得る為の資金を調達する為にある任務についており、その日も任務を遂行していた……」
「しかし、その場所に敵が襲撃してきた為、俺はその迎撃に出た……」
「勿論、そこにシモベは配置してあった、実力も十分にある者たちだった」
「しかし、敵はそれ以上の者達で構成されていたため、俺が直接その者たちの迎撃に出たが、連日のようにそいつらは襲撃してきた為、俺は予想以上の苦戦をしてしまった」
話がその辺にまで行った時にシモベ達の顔が険しくなっている、怖……。
俺が人間だったら、これだけで死ねるってぐらい怖い。
「そして最近になって、ようやくそいつらを殲滅させることに成功し、俺はナザリックに帰還をしたのだが、蓄積されたダメージが予想以上のものだったため、意識を失い、転移したナザリックの外に落下し、そこで幸運にもセバスに保護されたのだ……」
そこで話を切り、俺は彼らの前で正座をし……。
「勝手な判断をして、皆に迷惑をかけただけでなく、余計な心配までかけてしまった。本当に……すまなかった」
俺はそのまま頭を深々と頭を下げる。その行動にシモベ達がざわついてるが気にしない。
こんな大勢に心配させてしまったたのだ、最低でもこれぐらいはしないと。
「皆が許してくれるなら、この醜態をこれからの働きで払拭させてほしい……」
そして俺はこう誓う。
「もうナザリックから消えるような真似は決してしない!! そしてモモンガさんとナザリックの皆の為に、この力を振るう事を俺はここに誓う!!」
「最後に……、こんなことを言う資格は無いかもしれないが……俺がいない間、ナザリックとモモンガさんを守ってくれて、本当にありがとう」
「俺からは以上だ……」
そして俺は立ち上がり椅子に戻る、なんかめっちゃ泣いてる人がちらほらいたが、俺なんか変な事いったかな?
「では、皆に問う。マシンナーさんの復帰に異存は無いか? 私は、再び彼を迎えいれたい。この場に異を唱える者がいるならば、理由を聞こう」
少しシン……と静まり返ったが誰も反対するものはいなかった、とりあえず安心だ……。
「無いようですよ? マシンナーさん」
「それを聞いて安心した。では皆、これからよろしく頼む!」
「では最後に守護者達よ、最後にお前たちに確認したい事がある」
それを聞いて守護者達の顔は真剣な表情になり、身構える。よしここでフォロー入れて、優しい上司アピールだ!
「そう身構えなくていい、簡単なことを聞くだけだ、そうだろう? モモンガさん」
「ええ、各階層守護者に問う、お前たちにとって我々はどういう存在だ?」
この確認は本来『忠誠の儀』で聞く予定だったのだが、俺が落っこちてきたため、結局聞けずじまいだった。
「まずシャルティア」
「モモンガ様は美の結晶。まさにこの世界で最も美しいお方です。その白きお体と比べれば、宝石さえ見劣りしてしまいます」
「マシンナー様は破壊の象徴。あらゆる物を破壊しつくす姿は、神や悪魔ですら恐怖に怯えるでしょう」
(美しいってなに? 骸骨にそんなのあるのか?)
(設定に
「――コキュートス」
「モモンガ様ハ守護者各員ヨリモ強者デアリ、マサニナザリック地下大墳墓ノ絶対ナル支配者ニ相応シイ方カト」
「マシンナー様ハ、武人トシテモ、一人ノ将トシテモ、ソノ鑑デアラレルオ方デス……」
(いやいや強者って……ロールプレイ重視のスキルビルドだから、ガチビルドのシャルティアには普通に負けると思うんだけど……)
(まあ、相性最悪ですもんね……伊達に守護者最強のスキルビルドにしてませんし)
「――アウラ」
「モモンガ様は慈悲深く、深い配慮に優れた素敵なお方です」
「マシンナー様はどんな敵が来ても怯まずに立ち向かう勇敢なお方です」
(深い配慮ってなんだ?)
(どんな敵にも怯まずってどういうこと?)
(1500人のプレイヤーが乗り込んできた際に、軍団率いて迎撃したことじゃないですか?)
「――マーレ」
「モモンガ様は、す、すごく優しい方だと思います」
「マシンナー様は、そ、その、か、カッコいいです」
(マーレが一番無難ですね)
(この身体をかっこいいと言うとはわかってるじゃないかマーレ、女装しているけどやはり男の子なんだな……!)
「――デミウルゴス」
「モモンガ様は賢明な判断力と、瞬時に実行される行動力も有された方。まさに端倪すべからざる、という言葉が相応しきお方です」
「マシンナー様はかの大軍勢を己の手足のように扱える知謀と戦略に長けたお方です」
(誰の事を言ってるんだデミウルゴス!)
(いやでもモモンガさんの判断力ってすごいと思いますよ? てかデミウルゴス、なんかダイヤモンドの瞳、潤んでない?)
「――セバス」
「モモンガ様は至高の方々の総括に就任されていた方。そして最後まで私達を見放さず残って頂けた慈悲深き方」
「マシンナー様は配下の者たちを何よりも大事にするお方。そして、私達の為に帰ってきてくださった慈悲深き方」
(この認識って他のNPCも同じなんでしょうか?)
(だとするとすごい罪悪感がありますね、早くあいつらに会わないと…)
「そして最後になったがアルベド」
「モモンガ様は至高の方々の最高責任者であり、私どもの最高の主人であります。そして私の愛しいお方です」
「マシンナー様は、モモンガ様と私どもをお守り下さるお方。まさにナザリックの守護神です」
(あぁぁぁあ!……タブラさんのNPCを穢してしまった……)
(こう考えるんですモモンガさん! 『嫁』にしてしまえばいいと…!)
(全然フォローになってませんよ!?)
「……そうか、では、私はマシンナーさんと円卓で少し話がある。後の事はアルベドに任せる,
今後とも忠義に励め!」
「失礼する」
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再び頭を下げた守護者達のもとから俺たちは円卓に転移した。
瞬時に玉座の間から、円卓に移動したのが分かる。
そして俺とモモンガさんは椅子に座って揃って肩を落とした。
「モモンガさん」
「マシンナーさん」
「「アイツら……マジだ」」
ピカーンと互いの目を物理的に光らせ、そう言った後俺は盛大にため息をつく。
「あぁぁぁぁ、緊張した。でも何とか成功しましたね、一部泣いてる人いましたけど……大丈夫かな?」
「大丈夫ですよ、にしてもあの評価ははすごかったですね」
「モモンガさん、守護者達に確認している間、終始絶望のオーラ垂れ流しだったじゃないですか、なんすかあの圧迫面接?」
守護者達に確認とっている間、モモンガさんは絶望のオーラを垂れ流しているのを俺は二度チラ見してしまった、怖すぎんよ。
「あ、圧迫面接じゃないですよ!」
「……でも本心からいってるんですよね、やべえ、あの評価落とさないようにしないと」
「そうですね、一緒に頑張りましょう」
「…でも理由が思いつかなかったとはいえ、あんな嘘をついてしまった……最低だ俺」
「そんなに落ち込まないで下さいよ? 仕方ないじゃないですか」
仕方なかったとはいえ、自分の嘘にテンションガタ落ちになっていたマシンナーを、モモンガはポンポン、と背中を叩いて励ましていた。
「俺ができるのは、戦闘と軍団率いて蹂躙する事と、道具と兵器作るぐらいですがよろしくお願いします」
「あ、やっぱこの世界でも作るんですか、兵器?」
「辺り前ですよ旦那、こちとら技術屋の端くれですぜ?」
ナザリックで俺は戦闘以外ではトラップの配置や自作のアイテム、兵器などを作るなどが主だった。
物は銃器から始まり、過去の世界にあった実際の兵器からそのコンセプトから似たようなものを作り、俺なりにアレンジしたのだ。それを敵対している人間種の拠点に、定期的にそれの実験兼嫌がらせをしてきたのを覚えている。
「でも前みたいに定期的に実験と称しての人間種への嫌がらせみたいな事しないでくださいよ? この世界の生物のLVはまだ分からないんですから……」
「流石にそこまで馬鹿じゃありませんよ? でも楽しみだな~、さて手始めにどんな物作ろうかな~フヒヒヒヒ……」
「だめだこいつ、早く何とかしないと…、それよりこれから会いに行くんでしょ?」
目を赤く光らせて指をわきわきしながら変態技術者のオーラ全開のマシンナーにモモンガは呆れていたが、思い出したように口にする。
「おっとそうだった、それじゃちょっと行ってきます、モモンガさん」
「はい、行ってらっしゃいマシンナーさん」
マシンナーはモモンガに軽く挨拶をすると、第六階層に転移していった。
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ナザリック地下大墳墓の第六階層のジャングルに転移し、周囲を見渡す。
「確かここから東だったよな……」
これから行く目的地の道を思い出しながら、俺は歩き始めた……。
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第六階層の密林に覆われたジャングルに似合わない要塞のような場所があった。
金網のフェンスで周囲を囲い、作業区や居住区に分けられており、それぞれ頑丈そうな建物が建っている。その中でもプラントの中心には一際大きい、円柱状の建物があった。所々にビーム砲台や、ミサイル砲台も。櫓には小銃やレーザー銃で武装をした、ロボット兵が見張りをしている。
フェンスだけでなく、堅牢な壁も築いており、そこから軽機関銃が顔を出しており、迂闊に近づけないように地雷原も配置してあった。
その他にも球体の形をしたドローンが飛び回り、両腕がガトリングのロボットが周囲を警戒している。
ロボットだけでなく、戦闘車両や航空兵器も動き回っており、滑走路と思われる場所には戦闘機から人型に変形するロボットでいっぱいだった。
「一か月ぶりだ……」
俺が精魂込めて作った、「フェツルム・レギオー」の拠点。早速俺は入り口から入る。
「マシンナー様……!」
門番をしていたロボットの声に反応した他のロボット達も振り返りマシンナーの姿を視界に捉え、一斉に声を上げた。
「マシンナー様ガ帰ッテコラレタ!」
「我らフェツルム・レギオーの最高司令官が帰ってこられた!」
「おお……マシンナー様、他の至高の御方と同じように、消えてしまわれたと少しでも考えてしまったこの愚かな身に罰をお与え下さい」
うおお、すごい歓声、本当に生きてるんだなと俺は彼らを見て改めて感じた。しかし、当初の目標もある為、長居はしてられない。俺は手をスッと上げた。
「静まれ」
その言葉で他の物達は一斉に静まりかえる。そして謝罪とこれからやる事を話した。
「皆、心配をかけてすまなかった、これからは決して諸君らの前から消えるような事はしない」
その言葉をきいてまたも「おおおおお!」と歓声を上げる、兵たち。俺はすぐに「静まれ」といった。
「皆が元気そうで何よりだ、だが今から各隊長達に会わねばならない……」
「そこのお前」
「ハ!」
「すぐに各隊長達に一時間後に司令室に来るように伝えろ!」
そう伝えた後、俺は拠点の司令室がある中央タワーに向けて歩いていった。
フェツルム・レギオーの拠点のイメージはは、映画ターミネーター4に出てきた、スカイネットの拠点のような感じです。