シズ・デルタに恋をしたナザリックの機動兵器 作:t-eureca
ナザリック地下大墳墓第六階層にあるマシンナー率いるマキナの拠点『機械の楽園』内に存在する修理工場、そこに両手足を拘束されている例の機械系異形種が目を覚まし、辺りを見渡していた。
「ここ…は…」
「動くな!!」
「手を上げて大人しくしろ!!」
そこに、マキナの兵士が武器を構えて取り囲む。仮に戦闘が起きても全員Lv80のマキナの上級兵士の為、そう簡単にはやられはしない。機械系異業種は驚きながらも、冷静に考えて自分が囚われた事を理解した。
「お前たちは…『言う通りにしておいた方が良いよ?』…!」
機械系異形種が言い終える前に戦闘形態になったアルティマが機械系異形種に歩み寄る。
その後に他の隊長達全員が臨戦態勢に入りながら、現れる。
「また、大破寸前にまで叩きのめされたくなければね?」
「副指令…」
隊長達の登場に他のマキナの兵士は敬礼で迎える。機械系異形種は現れたアルティマ達に話しかける。
「お前は…ここは一体?」
「人に名前を聞くなら自分からでしょ?」
「ジュド……」
自身の名を話した機械系異形種…ジュドは目の前のアルティマに警戒しながら質問に答える。
「ありがとう、僕はアルティマ。この…君の周りにいる兵隊の一応ナンバー2かな?」
「何…」
「で、単刀直入に聞くんだけど……なんで僕らを襲ったの?」
「襲った…?」
「……覚えてないとは言わせないよ?今日の昼頃に君は僕たちを襲った。証拠映像もある」
「!……これは!」
アルティマはマシンナーと交戦した記録映像を見せる。それを見たジュドは驚くような反応を見せる。
アルティマはその理由を聞くために彼に問いかける。
「どういう事か説明してもらおうかな?ん?」
「その……頭のコントロールメタルが自己防衛モードに…」
「自己防衛モード?」
「無意識下で作動するモードだ、敵対反応の者や未確認の者が近づいてきた時に作動する」
「それで…『我々を襲ったと?』!、マシンナー様!!」
ジュドの説明を受け、アルティマが追及をしようとすると、後ろから己の創造主が現れた事に気付き椅子を用意するよう指示を出す。
マシンナーはアルティマが用意してくれた椅子に座りジュドに語りかける。
「あ、アンタは…」
「僕の主であり創造主であるマシンナー様だよ?」
「俺はジュド…」
「ああいい、取り合えずそのままでいい」
「……む」
「身体の方はどうだ…?まあそこまでぶっ壊したのは俺だが…」
「調子は…良い…俺に何を聞きたいんだ…?」
「全てだ、全てを話して欲しい。君の出自、何故あそこにいたのかを…そして…ナノメタルの事も」
ナノメタルという単語にジュドは反応し、マシンナーに警戒するような視線を向ける。
そしてマシンナーの目的を聞き出すことにする。
「……!何が目的だ?」
「世界征服」
質問にあっさりと答えた事と、その目的を聞いて「何言ってんだこいつ」と言わんばかりの顔をしながらこう答える。
「……正気か?」
「貴様…」
「よせアルティマ、大いに正気さ。だからこそ君の知識と情報がいる」
それを聞いたアルティマがジュドに詰め寄ろうとするがマシンナーは制止し、本気で世界を取ることを説明しその為にジュドの知識と情報を欲していることを説明する。
「……無意識とはいえお前の女に危害を加えたんだぞ?」
「ぶっ!?」
予想もしていなかった質問に思わず飲んでいたものを噴き出すが、すぐにいつもの調子に戻ってその言葉に答える。何故か周りの視線を感じたが、気にせずに。
「……それに関しては完全には許していない、後彼女はまだ俺の女じゃない」
(まだ?)
(((((まだ?(マダ?))))))
「正直に言えばお前をこの場でスクラップにしてやりたいが、取り合えずさっきお前をぶちのめしたからある程度割り切ってる。尤もお前がここで暴れるなら喜んでぶちのめすが?」
その言葉の後に全身から煙を放出し、何時でも戦闘可能というのを示す。それを見たジュドは潔く話すことを伝える。
「…わかった、まだ死ぬわけにはいかない。話すよ」
「そうか、じゃあ移動するぞ」
脚の拘束具を解除し、ジュドを立たせ玉座の間にマシンナーは案内する。
そして、マシンナーは自身の立ち位置をジュドに教える。
「何処にだ?」
「玉座の間」
「お前のか?」
「いや、俺の友達のだ」
「何?」
「ここはナザリック地下大墳墓、俺はナンバー2、ナンバー1は玉座にいる」
(…コイツより強いのかよ)
自身を大破寸前に迄追い詰めた目の前の存在よりも強大な者がいると知り、内心驚きながらもマシンナーに付いていく。
「ついて来い…変な気は起こすなよ?」
「わかっている…」
マシンナーに付いていくと、ジュドはナザリックに目を瞠る。
墓地とは思えない豪華な装飾や、宮殿と見違えるような内装に唯々圧倒されていく。
付いていく内に巨大な扉の前に着く。マシンナーはアインズに入るように促され、扉を開ける。
(本当に墓地か…)
「アインズ、連れて来たぞ」
(アンデッド…?)
玉座の間の豪華さに圧倒されるが、その玉座に座るアインズに特に目を引かれる。
その威容と只ならぬ迫力で只のアンデッドではないと感じた。
「うむ、ご苦労だった…その者の名は?」
「ジュド…」
「ふむ、ジュドか…私の名前はアインズ・ウール・ゴウン、アインズで構わない」
「それで、何が聞きたい?」
「ふむ、もう聞いていると思うが君の事を全て話してもらいたい」
「世界征服とやらの為か?本気で言ってるのか?」
「ああ、少なくとも本気だ。尤もついでだが…」
(ついでで世界征服かよ…)
内心おいおいと思いながらも周りにいる人外達を見て、今は自分の保身の為に自身が知りうる情報と知識を話すことを決め、まずは自身について話す事にした。
「わかった、まず俺の生い立ちから話そう…俺は元々捨て子で、ある人に養子として拾われた」
「ある人?」
「ドクトルと名乗ってたがそれはもう一つの名で本当の名は『忠晴』と最期に教えてくれた」
「忠晴…」
明らかに日本人のような名前を聞いてマシンナーとアインズはそのドクトルという者がプレイヤーだという事を確信する。
(間違いなくプレイヤーだな…)
「ふむ、君の身体は君の養父上に作ってもらったという事か?」
「そうだ、ある時俺がドラゴンに襲われて殺されかけたが父さんが助けてくれた…」
「その時に自身の身体に改造を?再生という手段もあったが…」
「自分で望んだ……弱ければ生き残れないって身をもって味わったからな…」
「そうか…」
「で、ちょっと聞きたいんだが、これを知っているか?」
マシンナーはアイテムボックスから手のひらサイズのナノメタルの塊を出す。
それを見たジュドは驚愕する様に目を瞠る。
「どこでそれを?」
「知ってるのか?」
「…元々父さんが持っていたものだ、どこで見つけた?」
「お前さんを下敷きにしていたバカでかい木の化け物に入ってた」
先程まで淡々と喋っていたジュドは明らかに動揺するように声を荒らげる。
「!…もう一体いなかったか!これで出来た化け物だ!」
「……いやいなかった、だがこれで構成された化け物が居るって話は聞いた。何か知っているか?」
その反応を見て、「ナノメタルで構成されたモンスター」に関して何か知っていると確信した。
それに対しての質問するが帰ってきたのは意外な答えだった。
「……父さんの研究所だ」
「何?」
「研究所?研究所が化け物になった?どういう事だ?」
「あの金属はそういう特性があるんだ!なんらかの合図を送れば『変形する』!」
「俺もあの金属については知ってる、親父さん、別の世界から来たとか言ってなかったか?」
「言っていた、その時に自分の本名を…」
ジュドの言葉通り、ナノメタルには何らかの信号を出せば変形、増殖する性質がある。
しかし何故そうなったのかを疑問に思いジュドに質問する。
「成程…だが何故研究所が?何かあったのか?」
「…父さんが死んで10年経った後、巨大な何かが襲ってきた」
「何か?何か特徴とかないのか?」
「無数のデカい触手と…推定1kmの巨体を持ったバカでかい鉄の化け物だった…」
「何だって?」
「マシンナー…」
「ああ、イアイが言ってた金属生命体の可能性が高い。それにしても1kmとは……」
予想以上の大きさだが、その情報のお陰である程度機械系異形種のモンスターを絞り込むことはできた。
さらなる情報を得る為、ジュドに質問をする。
「そいつの攻撃が研究所のコントロールルームを破壊し、研究所は暴走して化け物に変貌した…」
「そう言う事か……ん?ちょっと待て一つ腑に落ちないんだが…」
「なんだ?」
「研究所の頭脳を失ったんだろ?暴走ならともかく何故変形した?信号は出ない筈だろ?」
研究所の頭脳とも言うべき箇所を破壊されれば暴走する可能性はあるが、一つのモノに変形するのは普通では考えられない。ジュドはその問いに首を横に振って「原因はわからない」と言う。
「それは俺も気になってた…なんであの姿に変貌してたんだろうって…」
「何か心当たりは?」
「悪いが思い当たるのは……あぁでも…」
「でも?」
「研究所に俗に言う「開かずの間」ってのがあった、父さんに何度かあの部屋の事を聞いたんだが全然答えてくれなかった…」
「開かずの間か…」
義理とはいえ息子に立ち入ることを禁じたという事は余程の代物があったのは予想がつく。
シャルティアが回収してきた「傾城傾国」の事を考えるともしかしたら世界級アイテムの可能性も捨てきれないが現状ではその程度しか考え付かない。
「とりあえず研究所を見つけ出さなければ話は始まらん、追跡方法は?」
「昔は探知できたが、暴走した後は探知できないように何らかの方法を使って阻害している…」
「地道に探すしか無いというわけか…」
「他には?」
「ふむ、君の御養父上の知り合いに機械に強い者はいるかね?」
アインズの問いにジュドは心当たりがあった。そしてその人物の名を言う。
「一人いた、父さんの助手で名前はヘレ…」
「ヘレ…」
「元は帝国の宮廷魔術師だったそうだが国を追われたらしい、その後養父さんと知り合って養父さんに師事をした…だが、養父さんが死没した後突如として行方を眩ませた」
「原因は…?」
「わからない…彼奴は養父さんを尊敬していたが用心深い奴だったから…」
アインズとマシンナーはジュドの話を聞き、マシンナーに例の改造人間の事を話すように伝える。
「マシンナー、彼に例の改造人間の写真を」
「了解だ、ジュド、これをちょっと見て欲しい」
「これは…」
それはマシンナーとアインズを襲ってきた改造人間の映像だった。マシンナーはそれを一時停止させジュドに見せる。
「ある時、我々を襲ってきた者たちだ。身体の内部に機械と動力装置が組み込まれている。この世界の技術ではまずできない代物も入っていた」
「奴は呑み込みが速かったが、技術力では養父さんにはまだ敵わなかった…」
「だが、時間があれば匹敵する可能性もある」
「だが奴は人間だ、そんなに長くは…」
「お前と同じように自分を改造して生き永らえている可能性は?」
その言葉にジュドはハッ、となりその可能性を肯定する。
そしてアインズとマシンナーは彼に最も聞きたいことを問いかける。
「あり得る…ならこれを奴が作ったのも…!」
「…まあまだそいつだと決まった訳じゃない、で次に聞きたいのは」
「君が何故あの場所にいたのかだ、いや正確には埋められていたのかだが…」
何故ザイトルクワエの下敷きになっていたのかという事だ。マシンナーの推測だとジュドの戦闘力は少なくともザイトルクワエより上の可能性があり、ザイトルクワエに敗れる事はまず無いと考えていた。
「……研究所が暴走して俺は一旦脱出した。研究所は変形して襲ってきた奴と同じ位の大きさに巨大化してそいつと戦闘になった。なんとかしたかったが俺一人では入れる余地が無かったから一度逃げて…数日たった後、激しい損傷を受けていた研究所を見つけた」
「俺は原因を突き止めようと調査しようとしたが、研究所は俺を敵と判断したのか攻撃を仕掛けてきた。当然俺も抗戦してたが、ある事が起こった…」
「ある事?」
「研究所から光が発せられた後、空が割れてザイトルクワエだったか?あのバカでかい木が俺の上に落ちて下敷きになった」
「成程、それで奴の下に埋まっていたという事か…」
「そうだ…」
「色々と話してもらい感謝する」
「で、俺をどうするつもりだ?」
ジュドは再び警戒するような目をしてマシンナーとアインズを見る。しかしアインズはジュドのナザリックでの立ち位置をマシンナーの部下として付かせる事にした。当初は客分としての扱いを考えていたが、シズを傷つけた者に他のナザリックのシモベ達がどう思うかを懸念し監視を兼ねてこの処置を取ったのだ。
「心配せずとも身の安全は保障する、まあ監視は付くが…マシンナーお前の下に付ける。良いか?」
「了解だ」
「ふむ、それでは皆それぞれの職務に戻るように…」
アインズの命令に他のナザリックの面々は其々の職務に戻る。マシンナーはナザリックを案内する為ジュドに付いてくるように命ずる。そこにユリがマシンナーにシズが目覚めたことを伝える。
「来い…」
「わかった」
「あ、マシンナー様…」
「ん?なんだユリ?」
「先程シズが目を覚ましました、呼びましょうか?」
「いや、直接迎えに行く、目覚めた直後だから何かあると困る」
「わかりました」
「ジュド、お前も来い」
マシンナーの言う事にジュドは渋々ついていく事にした。
2人はシズがいるプレアデスの部屋に向かう。
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オーバーヒートから回復したシズはまたもやこの状態になった自分に呆れてしまい、マシンナーの手を煩わせてしまった事を後悔していた。
「…」
(そろそろ…行か…ない……と)
何時までもこの状態ではいけないと思い立ち上がり、部屋を出ようとするがその前に扉をノックする音が聞こえた。
「…?」
「シズ、マシンナーだ入っても良いか?」
「!!」
マシンナーの声が聞こえて、一瞬たじろいたがすぐに持ち直していつも通りの調子に戻る。
扉を開けると声の主であるマシンナーが入ってくる。
「……良い」
「調子はどうだ?大丈夫か?」
「……ん」
シズはそう答えるが自分の顔が少し赤くなっているのには気づいていない。
「どうした?……少し熱量が上がってるぞ?」
「……大丈…夫…」
少し不安に思うマシンナーだったが何かあった場合は直ぐに処置をしようと思いながら、後ろに控えているジュドの事を話す。
「無理はするなよ?あ、おいジュド」
「!」
現れたジュドに少し眉を顰めるシズ、マシンナーはそれを察したのかジュドの背を叩き、ジュドが今後自分の配下に入ることを伝え、ジュドに謝るよう促す。
「……」
「こいつは今日から俺の傘下に入った、まあその前に……おい」
「……あの時はすまなかった、本当に申し訳なかった」
「…わかっ……た」
「ありが…ぐっ!」
ジュドが頭を上げた直後シズは愛用の魔銃を出し、ジュドの顔に叩き込む。不意の攻撃で仰け反るがジュドは姿勢を正す。
「これで…チャ……ラ…」
痛そう…と思いながらマシンナーはシズに気が済んだかどうか尋ねる。
「……良いのか?」
「ん…」
「そうか、なら行くぞ?、これからの事で考えなければいかん」
「ん…」
「了解した…」
撃たれた個所を摩りながらジュドもマシンナーとシズに付いていく。
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アインズとマシンナーがこの世界に転移する数百年前、数多くのドラゴンがおりその中でも一際強力な『竜王』と呼ばれる存在もいたが、今ではもう数えるほどしか生き残っていない。
「やあ、リグリット。君が来るなんて、珍しいね?」
「久方ぶりじゃなツアー。お前も元気そうじゃの?」
ドーム状の広間で眠りについていた竜王、『ツァインドルクス=ヴァイシオン』白金の竜王と呼ばれる竜王でありアーグランド評議国の永久評議員でもある。そして、目の前に立つ者の姿は彼の旧友であるリグリットという老婆。
「……僕は元気だけど、外はそれどころじゃないと感じてね」
「あの魔樹の事か?それとも…」
ツアーの表情が曇った。リグリットの方はその理由に察しがついているようで、彼女の方から話を切り出した。
しかし、帰ってきた返事が予想外の答えであった。
「ああ、どうやら完全に復活したそうだ……だが一時間で消滅したよ」
「消滅じゃと?どういうことだい?」
「それだけじゃない、あの魔樹は例の金属に寄生されていたんだよ…形も変容していた、正直全力で挑まなきゃいけないとも覚悟したよ」
それを聞いてリグジットは険しい顔になる。ザイトルクワエが消滅したのは勿論、ザイトルクワエに寄生していたその金属とは浅からぬ因縁があるのだ。
「まさか、あれを倒したのがおるのか?」
「ああ…遠くから見てたけど、あの魔樹に匹敵する巨体で魔樹を引っこ抜いたんだよ」
ツアーはそう言いながら広間の一角に目を向ける。そこには本来ドラゴンであるツアーが外部の探索に赴く際に操っていた『白銀の鎧』があるのだが、そこに置いていないという事は外部に出ているという事だ。
「……は?」
それを聞いたリグジットは「何言ってんだお前?」と言いたげな顔でポカンとなる。ツアーはリグジットがそうなるのを予想していたのか。気にせず説明を続ける。
「……嘘だと思うだろ?本当の話さ、そのあと天高く魔樹を掴んで飛んで行ってそこから奴の反応が消えた。恐らくその巨人が倒したと思う」
リグジットは顔を抑えて天井を仰ぐ、余りにも内容が荒唐無稽すぎるからだ。
しかし彼女が顔を抑えているのはそれだけではない、その巨人の強さがツアーと同等の戦闘力がある可能性があるのだ。
「冗談じゃろ…あれを倒したって事は少なくともお前に匹敵するのは確実という事じゃろ?それにあの「金属」がまだ存在していたという事は…」
「ああ、アレはまだ存在しているという事だよ」
「厄介じゃな…一度はお前を侵食しかけた代物じゃ、それに…」
「ああ、私の全力の攻撃で致命傷は与えたが、彼奴は耐えきった。もしも奴が力を蓄えてるというならば…」
「想像したくもないね…お前さんの探知でもアレはどういう事か探知できんし…」
それを聞いたツアーは顔を曇らせる。鎧を使って100年以上の年月をかけてあの金属の怪物を探したが、見つからずおまけに自身の探知でも見つけきれない…。
「……」
そんなツアーを見て何を思ったのかリグジットは話題を変える。それは今度はツアーが驚く内容だった。
「ああ、それと…漆黒聖典が殲滅されたそうじゃ」
「なんだって?あの『世界級アイテム』を持っている漆黒聖典が?」
「ああ、全員遺体は未だ見つからず『世界級アイテム』も奪われたそうじゃ…」
それを聞いてツアーは顔を険しくする。あの『世界級アイテム』の事を知っている身としては気が気でならない。
そして法国と対立しようとしている存在がいる事を確信した。
「一体誰が…」
「わからん、それと…」
「ん?」
「もう一体の金属の化け物の痕跡を見つけたよ…」
「本当かい?」
「ああ、砂漠で奴の眷属を結構な数で見つけた。相変わらず骨が折れる連中よ…」
リグジットはうんざりとした顔でその事を話す。そして再び険しい顔をしながら話し始める。
「何かわかったのかい?」
「恐らくじゃが…復活は近い、それも完全にな」
それを聞いたツアーは近い将来自身が直接対処しなければならない事態がこの世界で起こると確信し、決意を固める表情をする。
「……不味いな、完全復活なら尚更不味い、あのナノメタルと同時に復活したら」
「……この世界の総ての生命が完全に滅びるじゃろうな」
「その時は全力で立ち向かうよ……命と引き換えにしてでも仲間たちとの約束は果たす」
・
・
・
それから一日後、ゴルドソウルがカルネ村の守備隊長として村人に訓練を付けている。
訓練を終えた後ネムが近づいてきて、姉のエンリが相談したいことがあると聞き、ネムを連れてエンリとンフィーレアの下に向かう。
「東の巨人と西の魔蛇だと?」
「うん、なんかそいつらがトブの大森林を支配するために動くんだって!」
ゴルドソウルはエンリに事の詳細を聞き始める。
「エンリ、経緯を教えてくれないか?」
「わかりました」
人物紹介
ジュド:ザイトルクワエの下に埋まっていた機械系異業種。本来はこの世界の人間だったのだが幼少時に親に捨てられ彷徨っていたところをあるプレイヤーに拾われ、養子として育てられる。養父に知識や技術などを教わりながら15を過ぎた時にドラゴンに襲われ瀕死の重傷を負うがその時に養父であるプレイヤーに自身の身体の改造を頼み改造人間として生まれ変わる。改造された身体に内蔵されている武装と自己再生するナノスキンの身体を持っている。