シズ・デルタに恋をしたナザリックの機動兵器   作:t-eureca

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第53話 蜥蜴人襲撃前日

早朝のカルネ村の一軒家にマキナの特機兵団の隊長、ゴルドソウルが押し入れに入って寝ている。

しかしセットしていた目覚まし時計が鳴り、起床した。

 

「…さてあいつら呼びに行くか」

 

家を出て兵団の構成員たちの兵舎にまで行き、胸部のライオンの顔が咆哮を上げる。

 

「おはよう野郎ども!新しい朝が来たぞ!40秒で来なければ腕立て500回だ!!!」

 

「「「「アイエエエ!!?」」」」

 

ゴルドソウルの怒号を聞き、一斉に慌ただしく特機兵団の守備隊が起き、兵舎から出て整列をした。

 

「よし39.8秒だな、よくやった、ではまずラジオ体操である!」

 

その後、ゴルドソウルは小型のラジオを置き、ラジオ体操の音楽を流す。

 

「「「「押忍!!!」」」」

 

ゴルドソウルと特機兵団は音楽の指示に合わせて体操を始めた。

 

「次は森の周辺をランニング!駆け足!!」

 

「「「はっ!」」」

 

ラジオ体操が終わり、ゴルドソウルがランニングの指示を出して、ゴルドソウルを先頭に特機兵団はランニングを始めた。

途中、カルネ村とは違うゴブリンやらオーガとも遭遇したが、彼らによって次々と討伐された。

 

 

 

 

 

 

 

ランニングを終え、再び兵舎の前に整列する特機兵団。

 

「よしランニング終わり!では朝飯だ、行くぞ!」

 

「「「はい!」」」

 

ゴルドソウルの許可の後、特機兵団はカルネ村で普段食事を取っている場所に向かう。

カルネ村では既に村人やゴブリン、古代の機械の者たちが座っていた。

村人やゴブリン達は普通の食事を取っていたが、古代の機械達は燃料を補給している。

特機兵団が続々と兵団用の席に座っていき、ゴルドソウルも席に座った。

 

「あ、ゴルドソウルさん」

 

「あ、御大将、おはようさんっす」

 

「大将じゃない隊長だ」

 

席に座ったゴルドソウルに気が付いたのか挨拶をする。

ゴルドソウルは口のフェイスガードを解除して「いただきます」と言って少し周りを見渡しながら朝食をとり始める。

 

「どうしたんですかゴルドさん?」

 

「…なんでもないぞ」

 

「ああ、ネムの事ですか…?」

 

「うん…まぁ」

 

ゴルドソウルの返答にジュゲムは笑う。

 

「ははっ、化け物染みて強い御大将もネムさんには弱ぇすね?」

 

「ジュゲム、お前後でタイキックな?」

 

「ふぁ!?」

 

「あ~あ…」

 

ジュゲムに対するお仕置きを聞いた特機兵団の面々は同情するような声を出す。

 

「可哀そうにご愁傷様だな、南無…」

 

「ゴルド隊長は他の隊長達より馬鹿力だからミンチ確定だな」

 

「安心しテ、丁重に葬って上げる」

 

「心配するな運が良ければ下半身が粉微塵になるだけだ。そうなったらナザリック脅威の科学力で改造ゴブリン:ジュゲムに生まれ変わらせてやる」

 

「いや何死ぬ前提で言ってるんですかい!?」

 

絶叫するジュゲムだったが隣でシャドーを始めるゴルドソウルに本気で命の危機を感じたジュゲムはその場で土下座をして許しを請うたという。

 

 

 

 

 

 

 

食事を終えたゴルドソウルは住まいに戻り、書類に書き込んでいると扉が叩く音がした。

それを聞いたゴルドソウルは思わずびくりとする。

 

「!…まだ時間ではない筈!?」

 

ゴルドソウルが慌ただしく言っていると、扉が開き扉から同じマキナの隊長であるドランザーが立っていた。

ゴルドソウルは安堵し、それを見た不思議そうにドランザーは首を傾げた。

 

「?何ヲ怯エテイル?」

 

「お前か…びっくりさせんなよ……」

 

「ハァ?」

 

「何でもない、どうしたんだ急に?」

 

扉を閉めたドランザーはゴルドソウルが出した椅子に座る。

そして訪問の理由を話し始めた。

 

「明日蜥蜴人ノ掃討作戦ガ開始サレル、ソノ前二会ッテオコウカト…」

 

「なるほどな、E缶で良いか?」

 

「アア、オデン味デ頼ム」

 

「そんな味はない」

 

「冗談ダ」

 

そんな他愛もない会話をしながらゴルドソウルは機械系異形種のエネルギー元の一つであるE缶を手渡す。

ドランザーは礼を言いながらタブを開け、くいっと飲み始める。

 

「で、勝算はどうなんだ?」

 

明日の蜥蜴人掃討作戦の勝算を聞くとドランザーは缶を口から離し、喋りだすがその口調はどこか暗さがあった。

 

「……正直言ッテ今ノ確率ハ五分五分ダ」

 

「何?どういう事だ?コキュートス殿に何か問題でも?」

 

同じマキナの隊長のドランザーの意外な答えにゴルドソウルは少々驚き理由を聞くとドランザーはそのまま続ける。

 

「別にコキュートス殿ガ愚カトイウ訳デハナイ、ダガ本格的ナ指揮ハ今回ガ初メテナノダ」

 

ドランザーの言葉にゴルドソウルは納得した。

戦闘では滅法強いコキュートスだが本格的な指揮は初めてだ。

加えて今回の蜥蜴人との闘いはそれなりの規模になるという。そうなると確実に指揮の経験差が出てしまうのだ。

 

「なるほど……経験値の差はどうあっても補えんからな」

 

加えて今回の戦力は全て知性の低い低位のアンデッド、更に今回の指揮は全てコキュートスの一任になっているので補佐役として任命されたドランザーは補佐することができない。

 

「反対二蜥蜴人達ハソレナリ二戦ヲ経験シテイル、戦力自体モ中々侮レナイ…」

 

「むぅ…」

 

その話を聞いたゴルドソウルは腕を組み考え込む。ドランザーの補佐があれば勝率は上がるだろうが自分達にとって至高の御方であるアインズとマシンナーがコキュートスに一任する命令を出している。その命令を破るわけにはいかない。しかし扉から再びノックする音が響く。

 

『ライオンさ~ん!』

 

少女の様な声に先程まで考え込んでいたゴルドソウルはびくりとし、ドランザーはキョトンとなる。

 

「来た!?」

 

「ン?ドウシタ?」

 

「おいドランザー、外の相手には俺が隠れてる事は言うなよ?絶対に言うなよ!?」

 

「オイオイ急二何ヲ…?」

 

ドランザーが質問する前に、ゴルドソウルは床下の地下室に逃亡していった。

呆気に取られるもドランザーは扉の前に向かう。

 

「ワカッタワカッタ、少シ待テ」

 

扉を開けるとエンリ姉妹の妹のネムが立っていた。

 

「あ、ライオ…誰?」

 

(子供…?)

 

思いがけもしない相手だったが、できる限り穏やかな口調で話しかけるドランザー。

 

「誰ダ貴様…?」

 

「あ、あのネムって言うんですけどライオンさんは…」

 

(確カコノ娘ハエンリ姉妹ノ妹ノネムダッタカ?ダガライオンサントハ誰ダ?ゴルドソウルノ事カ?ライオンガ付イテイルノハ彼奴ダケダシ…)

 

そこでドランザーはアルティマからある情報を聞いた事を思い出した。なんでもゴルドソウルはネムに気に入られていると…。

カルネ村とは友好関係を守ることを義務付けられているため、友好度を上げるのは必要不可欠なので断腸(腸無いけど)思いでドランザーはゴルドソウルをネムに差し出した。

 

「アア、アイツハアノ床二…」

 

するとゴルドソウルが床から豪快に飛び出して絶叫を上げる。

 

「おいぃぃぃぃ!なにあっさりばらしてんだテメェ!?」

 

怒り心頭で怒鳴るゴルドソウルとは反対にドランザーは涼しい?顔で反論する。

 

「イヤダッテドウ見テモタダノ子供デハナイカ…何ヲ恐レル必要ガアル?」

 

「いや、恐れているというわけでは…」

 

ゴルドソウルが話している途中にネムがゴルドソウルの腕を引っ張り外へ釣れだそうとする。

 

「ライオンさん、早く行こ!」

 

「おい引っ張るな!ドランザーお前、覚えていろよ…」

 

 

 

 

 

 

 

「わ~い♪」

 

「はぁ…」

 

「……」

 

ゴルドソウルはため息をつきながらネムを肩車しながら歩く。

その様子を見てドランザーはゴルドソウルに質問をする。

 

「…随分懐カレテルナ?」

 

「……アルティマにも言われた」

 

ゴルドソウルの脳裏に自分の兄弟機の一人であり自分達のまとめ役であるアルティマがからかいながらそう言ってきたのを思い出し。またため息を出した。

 

「マア良イデハナイカ、少ナクトモアノ姉妹ノ片割レト良好ナ関係ヲ築イテイルノハ良イコトダゾ?」

 

「それはそうだが…」

 

「ソウ言エバ、例ノタレントノ小僧ガ今日来ルト聞イタガ…」

 

今日カルネ村には薬師のバレアレの孫でありタレント持ちのンフィーレアがこの村に引っ越してくるのだ。

 

「ああ、念の為森の周辺には警備のため兵を付けてある、いざとなれば何時でも出陣できる」

 

冒険者を雇っている可能性もあるが、念の為村の周囲に特機兵団の伏兵が潜んでいる。

冒険者達が太刀打ちできない相手が現れればその伏兵たちが一斉に動く手はずだ。

 

「用意周到ナ事デ…」

 

「ライオンさん、早くー!」

 

「ゴ指名ダゾライオン=サン」

 

ネムの呼ぶ声にドランザーはクックックと笑う。

ゴルドソウルは今度横っ面ぶん殴ってやると心の中で決めながらネムの所に向かった。

 

「うるさいメカゴジラ」

 

短く捨て台詞を一言残して…。

 

 

 

 

カルネ村の付近でゲートが開きマシンナー、シズ、アルティマのメンバーが出てくる。

 

「そろそろンフィーレアが来る頃だな?」

 

「…ん」

 

「なら今からゴルドにメッセージを送ります」

 

「頼む」

 

マシンナーの質問にシズが肯定し、アルティマがゴルドにメッセージを送る。

暫く応答をするとアルティマはメッセージを切り俺に伝えた。

 

「マシンナー様、ゴルドから集合場所を聞きました」

 

「わかった、すぐに行こう」

 

「……」

 

「シズ、俺とアルティマは一旦ゴルドの所に向かう、お前はルプスレギナと合流しておいてくれ」

 

「了…解……」

 

その後シズと別れたマシンナーとアルティマはゴルドソウルとの合流場所に向かった。

 

 

 

 

俺たちが合流地点に着いたとき、すでにゴルドと何故かドランザーがおり、俺たちの方を見た瞬間敬礼をする。

 

「お待ちしておりましたマシンナー様!」

 

「ああ、急に来てすまないなゴルド」

 

「あれ?ドランザー、君も来てたのかい?」

 

「明日、蜥蜴人ノ作戦前二立チ寄ロウカト思ッテ…」

 

「ああ、なるほどね、でドランザーから見てどう思った?」

 

「率直二言ッテ荒ッポイコイツカラスレバ上手二ヤッテルト思ッタヨ」

 

「んな、お前…!」

 

ドランザーに茶化されたゴルドはドランザーの首を掴む。

喧嘩を起こさせるわけにもいかないため俺は仲裁に入った。

 

「お前ら喧嘩するな。ゴルド、早速だが案内してくれ」

 

俺に言われてドランザーの首を掴んでいたゴルドはしぶしぶ離す。

そして俺に敬礼をして案内を始めた。

 

「ハッ!喜んでご案内させて頂きます!」

 

ゴルドソウルの案内でカルネ村を回る。

村人は俺の姿を見たらすぐにお辞儀をする。

顔を見ると、コチラに対して友好的な姿勢に見えた。

そしてよく見ると畑には特機兵団の構成員と村人が一緒に畑を耕している姿がチラホラ見える。

 

「兵団は上手く共同生活を送っているようだな?」

 

「は、訓練と開拓の時間を分けてやっております」

 

「訓練は村人にも施しているのか?」

 

「ええ、ゴブリン達も手伝ってくれますが意外と指導が上手いですよ彼奴ら、正直感心しました」

 

「ほう…」

 

これには素直に驚いた。あのゴブリン達にそこまでの知能があったとは…。

後でモモンガさんに報告しておこう。

 

「そう言えば古代の機械達は?」

 

「彼奴らは村の周辺の守備に回っている。ゴブリン達より強いからな」

 

俺が渡したアイテムにより召喚された古代の機械、たしかあのアイテム一定時間たてば隠された機能が発動するんだよな。だが確認したところ古代の機械兵士と古代の機械獣、そして古代の機械巨人しかいない事を確認するとどうやらまだ発動していないらしい。多分知らないだろうから後で教えてあげよう。

 

「古代の機械巨人はどうした?」

 

最初の召喚されるモンスターの中では最も強い古代の機械巨人が何故かいない。

ちょっとした小屋よりもでかいからすぐ見つかると思ったんだけど。

 

「奴は巡回中です、獣や魔物が来れぬよう村周辺を徘徊させています」

 

その言葉を聞いて俺は納得する。

あんなデカいのが村の周囲を徘徊してりゃ、そこらの獣やモンスターでは震え上がるだろう。

 

「まあ、アレの戦闘力はデスナイトより高いからな。示威行為には丁度良い」

 

そこに特機兵団の者がゴルドに耳打ちをし、ゴルドはンフィーレアがこちらに来たことを俺に伝えた。

 

「マシンナー様、隊の者から例の少年と冒険者が村に到着したという報告が…」

 

「了解だ、一言挨拶しに行くか。着いてこい」

 

「「「は!(ハ!)」」」

 

俺達はンフィーレア達の元に向かうとンフィーレアと冒険者グループ漆黒の剣のメンバーがいた。

モモンガさんとナーベラルは居ないようだ。

 

「お、いたいた。お~…」

 

俺は声を掛けようと彼らに近づく。が…。

何故かシズの手を取り…。

 

「好きです!付き合って下さ『おい』!?」

 

「今から3秒以内にその汚ねぇ手を放せ、さもねぇとド頭ぶち抜く」

 

なんか言っているルクレットの後ろに立ちいつの間にか俺はルクレットの後頭部に専用武器のシュバルツカノーネを銃口を当てて警告をする。

 

「はいイ~チ…」

 

ズドン!!!

 

俺は2と3を数えることなくシュバルツカノーネをぶっ放す。

だが奇跡的にもルクレットはギリギリで回避していた。

 

「2と3は!!?」

 

「知るかそんな事、良いか男はな、1と0さえ覚えときゃ何とかなるって若本声のグラサンかけたおっさんが言ってたようななかったような…」

 

「いやどんなおっさんだよ!?」

 

「マシンナー…様…」

 

「ルクレット!?」

 

「ンフィーレアさん下がって!」

 

漆黒の剣が各々武器を向けるが後ろに待機している。だが後ろの3隊長も臨戦態勢に入っている。

 

「ヤル気か?」

 

「ぶっ飛ばされたいのかい?」

 

「叩キ潰スゾ?」

 

「いきなり出てきて申し訳ないんだけどよ、異種族が人様の恋愛沙汰に口出すなよ!」

 

この状況で啖呵を切るんだからルクレットって本当に根性あるよな。伊達にナーベラルに何度降られてもめげないだけはある。めげない彼に幸あれと言いたいが俺達からすればルクレットの方が異種族なんだよな・・・。

 

「貴様ぁ……!誰に対してその口を…」

 

ルクレットの発言に怒ったアルティマは腕を大型化させ指をチェーンソーに変形させ計5本の刃を持つチェーンソーと化し今にもスプラッターを始めようとする。しかし村の中でそんな事させるわけにはいかずアルティマを止めた。

 

「良いアルティマ下がれ。この状況でそんな啖呵を切れる根性は認めるが生憎だが彼女は我々の同胞なのだよ発情期のサル君、シズは俺のだ。もしまたふざけたこと抜かしたら貴様の脳みそ後ろの御仲間に食わしてヒンナヒンナ言わせるぞ?」

 

何故かアルティマ達がぎょっとしているが気にしないでおこう。

 

「仲間がすいませんでした!」

 

ペテルさんがルクレットの頭を掴み一緒に頭を下げて謝罪する。

 

「俺はマシンナー、この村で騒ぎは起こすなよ?行くぞ」

 

「「「は!(ハ!)」」」

 

「……ん」

 

 

 

 

 

少し歩いた後見晴らしのいい丘に着き俺とシズはそこにある一本の木の下に俺は寝そべり、シズは座り込む。

アルティマ達は少し離れた所でネムと遊びに付き合っている。

 

「見たところ、完全に上手くやってそうだな」

 

「う……ん…」

 

現時点での俺たちの目標は世界征服だが正直村一つ満足に統治できるか?という僅かな不安もあったが杞憂に終わったようだ。いやー一安心一安心。

 

「これなら安心してアインズに報告できる…」

 

俺がそう言っていると後ろに居たシズが俺の頭の方に座り込む。

 

「ん?どうした?」

 

「膝…貸す……」

 

「え?」

 

つまりそれ膝枕するって意味か?何そのサプライズ!?

一瞬驚愕する俺にシズは問いかけてくる。

 

「い…や…?」

 

とんでもない。

 

「お言葉に甘えさせて貰う」

 

「ん…」

 

俺はゆっくりと頭を上げて、シズの膝に降ろす。

 

「乗せといて言うのもあれだが重くないか?」

 

「頭だけなら問題…な……い…」

 

「そうか」

 

心の中で狂喜していると、指輪からトロンべが出現し内蔵しているスピーカーから曲が流れる。

 

『初めて~のチュウ~、君とチュウ~♪』

 

何故かチョイスがコロ助の曲という謎センスに一瞬と唖然としたが、もしかしてこいつ空気読んでそれに合うBGMを選んだのか?

 

「…」

 

「…」

 

「おい、音楽消せ」

 

俺が注意するとトロンべは流していた曲を止める。

これで静かになった……。

 

『響け~恋の歌~』

 

「曲変えろって意味じゃねぇよ!」

 

 

その後アルマゲドンの例のBGMとか流していたが、最終兵器「今日飯抜きにするぞ?」を使い漸く曲を止めてくれたよ全く。

 

 

 

 

一方マシンナー達から離れた場所で3隊長達がマシンナー達を見ていた。

 

(おい、今回いけるんじゃないか?)

 

(これは期待持てそうだね!)

 

(俺モ同ジ)

 

「ねぇ…」

 

「ん?」

 

「何してんの?」

 

振り向くとさっきまで昼寝をしていたネムがゴルドソウルに話しかける。

 

「なんだお前か…」

 

「見張りだよ見張り」

 

「誰モ襲ッテコナイ様ニナ」

 

「え?見張りというよりどちらかと言うと覗き…」

 

「「「見張りと言ったら見張りです(見張リダ)」」」

 

「えぇ…」

 

ネムの疑問に対する答えに若干戸惑うがそれ以上は言えないネムであった。

 

 

 

 

 

 

なんだかアルティマの方が少し騒がしい。なにかあったのだろうか?

 

「あの…」

 

「ん?」

 

考えているとシズが話しかけてきたので視線をシズに移す。

 

「さっきのやり取りで俺のって…」

 

「!?」

 

そうだった!あの時ルクレットの台詞に一瞬熱くなって思わず言ってしまっていたことを忘れていた!!!

そしてなんであいつらが一瞬驚いていたのは確実にあの台詞に反応してたんだ!とんでもないこと言ってたよおいぃ!?

 

「……す、すまん!つい咄嗟に言ってしまったんだ!不快に思ったなら謝る!」

 

流石に不味いと思い俺はすぐに起き上がりシズに頭を下げる。

どんな答えが来るかと内心ガクブルだったがシズからの答えは意外なものだった。

 

「…良い」

 

「え…?」

 

「…ちょっと……嬉し…かった」

 

「っ!!?」

 

え?もしかして、もしかすると僅かに脈ありって奴か…?

そこで俺はある決意をし、シズの顔を見つめる。

 

「あの…シズ」

 

「ん…?」

 

「その…言いたいことがある」

 

「…?」

 

今のこの場の言える!雰囲気なら言うなら今!

マシンナー大勝負の時…!!

 

「俺は…おm!」

 

「あ、マシンナー様、なにしてるんすか~?」

 

「ル、ルプスレギナ?」

 

予想だにしなかったルプスレギナの登場に若干困惑しているマシンナー。

だが、アルティマ達の方が凄い反応をしていた。

 

(ルプスレギナー!?)

 

(アノ駄犬ーーー!!)

 

(オ・ノーレェエエエエ!!!?)

 

隊長達全員が心の中で慟哭しながらorzの態勢に入っている。

ネムは思わずどうしたの?と声を掛けるが返事は全く帰ってなかった。

シズが行った後アルティマ達がルプスレギナの前に立ちはだかる。

 

「あれ?どうしたんすか?」

 

「…君には失望したよルプスレギナ!」

 

「コノ駄犬!!」

 

「腹を切れぇ!介錯してやる!!!」

 

「え?ちょ?えぇ!!?」

 

突然の罵倒に困惑するルプスレギナ、この後3人に散々追い掛け回されたというのは別の話。

一方告白に失敗したマシンナーの隣にトロンべが近づく。

 

「なんだ?」

 

『明日がある~明日がある~明日がある~さ~』

 

「…」

 

歌で励まそうとしている彼?の優しさに少し嬉しさを覚え「今日は少し良いもの食わせてやるか」と考えるマシンナーであった。

 

 

 

 

その後、シズとルプスレギナはプレアデスの定例会でナザリックに戻り俺は村人達の訓練の見学に来ている。

いつもはゴルドやゴブリン達が指導をしているのだが今回はゴルド、アルティマ、ドランザーの三つ巴の模擬戦だ。ゴルドは参考にする様にと言っていたが多分参考にならんと思う。

 

「飛び道具禁止縛り近接オンリーとはいえ、真向勝負ならゴルドの方が強いな…」

 

「あの…」

 

後ろから声を掛けられたため後ろを振り返るとンフィーレアとエンリが立っていた。

 

「エンリか元気そうだな」

 

「はい、お久しぶりですマシンナー様!」

 

俺が挨拶するとエンリは元気よく返してくれた。

その後ンフィーレアが俺に話しかけてきた。

 

「貴方がマシンナーさん…ですか?」

 

「ああ、驚いたかい?」

 

この本来の姿で彼と会うのは初めてだ。

案の定驚いた顔をしている。

 

「はい、想像以上に予想外というか…」

 

「だろうな、座れよ」

 

「すみません」という言葉の後にンフィーレアとエンリは隣に座る。

 

「あの、マシンナーさん」

 

「ん?」

 

「改めてお礼を言います。エンリを、僕の好きな人がいる村を助けてくれてありがとうございました」

 

ンフィーレアのお礼に俺は「たまたま通りがかっただけだ」と答える。

実際本当に偶々見つけて助けた。でもその縁でンフィーレアと知り合ったのだ、人の縁とは不思議なものである。

 

「え?ンフィー、好きな人がいたの?」

 

え?

 

「え?」

 

「え?」

 

まさかのエンリの発言に俺は恐る恐る聞いてみた。

 

「……話聞いてたのか?」

 

「え?はい」

 

「……なら察しが付くだろ?」

 

「え?」

 

俺の言ったことにキョトンとするエンリに「マジか」と思わず呟いてしまう。

 

(マジでわかってないだと?)

 

「…」

 

「ん?おいンフィーレア?坊主?…!?おい!しっかりしろ!傷は深いぞ!…じゃなかった浅いぞ!ンフィーレア応答しろ!ンフィーレアァぁぁ!!」

 

エンリの反応にショックを通り越して気を失ってしまったンフィーレア。

俺は素で驚き、必死で声を掛けたり体を揺すったが全く反応を示さず暫く意識不明の状態になっていた。

 

余談だがこの事件を切っ掛けに彼の恋路が成就するのを手伝おうと俺は密かに決意した。(自分の恋路も成就させてないけどな☆)

 


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