シズ・デルタに恋をしたナザリックの機動兵器   作:t-eureca

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お待たせして申し訳ございません!


第50話 授与式

マシンナーとアインズが円卓の間に来る前にカジットの研究室に転移をしていた。

 

「おお、これはアインズ様にマシンナー様、一体どのような御用で?」

 

「うむカジット、見てもらいたいものがある。マシンナー」

 

「ああ、実は先刻、ある集団と戦闘になってな。その中の一人がコイツを持っていた」

 

マシンナーはアイテムボックスから回収した薬品入りの容器に入った生首を見せる。

その生首を見たカジットは驚く。

 

「こ、この首は!?」

 

「うむ、君が以前所属していた組織ズーラーノーンの隠れ家の一つがその集団に襲われ、他の構成員は全滅、この者の首のみが回収されようとしていたのだ」

 

「コイツの首について何か知っているか?」

 

「はっ、この者は私と同じズーラーノーンの高弟の一人でした、腕もそれなりに立つものでしたがまさか…」

 

「ふむ、カジット他に知っていることは?」

 

「申し訳ありません、何らかのタレント能力を持っていたらしいのですが、それが何なのかは…」

 

「ふむ、そうか…」

 

(予想はしていましたがやはりタレント所持者でしたね?)

 

(もしかしてタレントを持つもの達を集めているのか?いったい何を?)

 

「カジット、過去にズーラーノーンに敵対関係があった組織等はあったか?」

 

アインズの質問にカジットは申し訳なさそうに答える。

 

「いえ、特に目ぼしい組織は今までございませんでした」

 

その後もいくつかの質問をしたがあまり有力な情報は得られなかったので二人はカジットにお礼を言った後円卓の間に転移をした。

 

円卓の間に転移したアインズとマシンナーはイアイの言っていた金属の球体について話をしていた。

二人は考え付く限りの答えを模索する。

 

「まさかサイボーグだけでなく金属生命体までいる可能性まで出るとは正直予想してませんでした…」

 

「俺も失念してました、何が起こってもおかしくないと言うのに……」

 

「とりあえずその金属製の球体を探さなければなりませんね、もう球体じゃなくて何らかの形にはなっているでしょうけど…」

 

「それにしてもコアの大きさが小屋同じくらいの大きさですから確実に成長している可能性もありますね、果たしてなんの金属生命体のコアか…」

 

「個人的に禁ゴジュのコアだったら嫌だなぁ…」

 

「ああ…あの「硬い!・デカイ!!・強い!!!」の三拍子のあれですよね?あれもそうですけど、俺はデススティンガーですね、繁殖するわ一応機械なのにプレイヤー捕食して回復しようとするわで」

 

どちらも以前の世界では苦戦させられた機械系のボスモンスターである。

特に前者は特殊能力がない分単純に強かったため大層手を焼いた。

 

「確かに…どっちも嫌ですね」

 

「まあそうと決まったわけではないですが、まずそれを見たというトブの大森林を捜索しなきゃいけませんね」

 

「なら「マキナ」を使って大規模な捜索活動をさせますか?」

 

規模ならばナザリックで最も大きい「マキナ」だからこそできる人海戦術を活かした捜索活動を提案するマシンナー。アインズもその提案に同意した。

アインズもナザリックにいるモンスターやアンデッドを使役させて捜索しようと考えたが、流石にそれは見つかったら不味い。

 

「そうですね、この後のリザードマンの件で一段落着いたら頼みます」

 

「わかりました。あ、捜索の時土地勘があるハムスケとイアイも同行させたいんですけどよろしいでしょうか?」

 

「ええ、構いませんよ」

 

「わかりました、ありがとうございます」

 

「ああそう言えばマシンナーさん、鍛冶長から勲章が完成したのを聞きましたよ」

 

先日世界級アイテムを回収したシャルティア達の褒美の為に勲章を制作しており。

マシンナーは勲章の完成の旨をアインズに説明した。

 

「はい、鍛冶長と一緒に今回のメンバー分ばっちり作りました」

 

「そうですか、それでいつ授与しますか?」

 

「そうですね、リザードマンの集落に行くコキュートスとドランザーが出陣する前に上げるのはどうでしょうか?2人のやる気を上げるために、いや元からあの2人やる気MAXですけど」

 

「そうですね、今回の襲撃は勝利だけが目的ではないとは言え、士気を上げることは大事ですから」

 

「じゃあこの後に時間が出来たらやりますか?」

 

「ええ、やりましょう」

 

その後アインズとマシンナーはその後の簡単な打ち合わせを済ましてマシンナーはイアイを呼び、第六階層の闘技場に案内する。

 

 

 

 

「カシラ、一体どこに向かっとるんじゃ?」

 

「第六階層の闘技場だ、ちょっとお前に合わせたい者がいるんでな」

 

闘技場に着いたマシンナーとイアイ、イアイは闘技場の空を見上げ「ここは地下だったはずでは?」という疑問が湧き、マシンナーに疑問を問いかける。

 

「カシラ、ここ外か?」

 

「綺麗な空だろ?残念ながら地下なんだなこれが」

 

イアイの疑問にマシンナーは少々おどけながら答え、イアイは一瞬ポカンとした顔になるがすぐにツッコんだ。

 

「は?」

 

「俺の仲間にそういうのものがいてね、作ったのだよ」

 

「いやいや、なにその小物作るような感覚で言ってんのアンタ!?」

 

マシンナーの言葉に猛烈に突っ込むイアイだったが、マシンナーはそのツッコミを華麗にスルーをして闘技場に来た第五階層の守護者コキュートスを迎える。

 

「待たせたなコキュートス」

 

「スルー!?」

 

「ソノ魔獣ガマシンナー様ノペットデスカ?」

 

「ああ、そうだ。リザードマンの件で忙しいところ悪いんだがこいつの実力を見てもらいたいんだ、頼めるか?」

 

「勿論デゴザイマス」

 

「ありがとう。イアイ、紹介しよう。階層守護者の一人コキュートスだ。早速で悪いのだが戦ってみるか?もし死んでも蘇生するから大丈夫だ」

 

マシンナーはイアイに問いかけ、イアイは即答しコキュートスの前に立つ。

先の玉座の間で実力差は大体把握したが、実際に体験したほうが何より良い。

 

「アイアイサーや」

 

そして両腕を広げ、戦闘態勢に入った。

 

「フム……相手ヲシヨウ」

 

コキュートスは四本腕の一本に彼の創造主である武神武御雷が愛用していた斬神刀皇を構えた。

そしてコキュートスが構えた瞬間イアイは元来の獣特有の直勘と本能による危険信号が激しく告げた。

 

"コイツはヤバイ一撃で殺される"と…。

 

(ダメや、初撃で殺される…)

 

そう悟った居合は構えを解きコキュートスに平伏した。

 

「降伏や、一瞬で屠られる…」

 

内心大量の冷や汗を掻きながら、改めてこのナザリックに自分の常識なんて通用しないと改めて思い知らされたのだ。

マシンナーはコキュートスにイアイについて尋ねた。

 

「コキュートス」

 

「ハ、コノ魔獣ハマシンナー様ノ予想サレテイル通リ並デハアリマセン、鍛エレバ良キ戦力ニナルカト…」

 

コキュートスの評価にマシンナーは顎に手を添えふむ、と言い。

 

「コキュートスの評価ならば安心だな。でついでと行っちゃ悪いのだがもう一つ頼めるか?」

 

そういうとマシンナーは斬艦刀を取り出し肩に担ぐ。

 

「この世界に来てそれなりに戦ってきたが、シャルティア以外は消化不良でな、感覚も忘れたくないから相手頼めるか?」

 

マシンナーはコキュートスに尋ねるとコキュートスは四本腕に一斉に武器を構え、興奮を隠しきれぬ様子で告げる。

 

「全力デ御相手サセテ頂キマス……!」

 

「礼を言う…!」

 

コキュートスの返答を聞いたマシンナーは戦闘用のフェイスガードを下ろし両手にそれぞれ41式斬艦刀とシュバルツ・カノーネを持ち構える。イアイは再び本能からの危険信号が発するのを感じ、急いでその場から退避する。そして次の瞬間両者はぶつかった。

 

「オオオオ!!」

 

「チェストぉ!!」

 

マシンナーはコキュートスから距離を取った後、左拳を向けて高らかに叫ぶ。

 

「<ターボスマッシャーパンチ>!」

 

「ヌウゥ!?」

 

それを持っていたハルバードで押されながらもコキュートスはマシンナーの腕を弾き飛ばし切りかかる。

 

「ハァ!!」

 

「ぬ!?」

 

マシンナーは左腕を再び向け、ドリル状の小型弾頭を放つ。

 

「<ドリルミサイル>」

 

「ぬ!?」

 

<ドリルミサイル>を喰らったコキュートスは飛び道具の防御スキルがあるので全く効いていないが、一瞬だけ隙が生じマシンナーはその隙に付け込む。

 

「<ニーインパルスキック>!」

 

そして右膝からスパイクが飛び出て、コキュートスに叩き込んだ後、左足の脛あたりから刃が出現し、ローリングソバットを繰り出した。

 

「グぅ…」

 

「まだまだ!」

 

更に飛ばした左手がコキュートスに向かって飛来し、指先と掌から放つ。

マシンナーの攻撃は更に激しくなっていった。

 

 

 

 

(何やあれ?ワイどんだけ手加減されとったの?)

 

イアイは目の前の戦闘に見入っており、絶句している。

コキュートスの四本の腕から繰り出される斬撃は一つ一つがイアイからすると確実に即死するレベルの威力だ。

対してマシンナーは斬撃と砲撃で応戦している。その顔はひどく楽しそうに見えた。

 

「常識破りすぎるやろ…」

 

「当たり前だよ、マシンナー様を全てを超越する至高の御方の一人だよ?」

 

「ん?」

 

イアイが声の方向に振り返るとアルティマが居た。

 

「ジナの…じゃなかった」

 

「ジナイーダは仮の名前、本名はアルティマ・レイ・フォース。マシンナー様に最初に創造されたシモベだよ」

 

改めてよろしくと話すとイアイはこちらこそと返した後アルティマに幾つかの質問を始めた。

 

「アルティマの兄貴もあんな風に戦えるんか?」

 

「そりゃあ戦闘型の自動人形だけど単純な強さなら今マシンナー様と戦っているコキュートス殿の方が上だけどね、武器での戦闘ならば守護者随一を誇ると言われてるよ。まあそれより…」

 

「ナザリックに入った感想は?」

 

「……ぶっ飛びすぎやろ、異常すぎや」

 

イアイが一呼吸おいて溜息交じりで答えるとアルティマは僅かに笑い「そういうと思った」と言った後、満面の笑顔で言葉を続ける。

 

「これでもまだ序の口だからね?」

 

「えぇ…勘弁してくれよぉ……」

 

これで序の口かいと内心思いながら引くイアイ、そしてアルティマは何かを思い出したのかマシンナーの近くに駆け寄る。

 

「おっとそうだった、マシンナー様!」

 

「ん?」

 

アルティマに声をかけられたマシンナーはコキュートスとの模擬戦を一旦中止し、アルティマの方を向く。

 

「なんだアルティマ?」

 

「お邪魔して申し訳ありません、アインズ様がマシンナー様にお話があるので執務室に来てほしいと仰られました」

 

授与式の件だな、と考えながらマシンナーは模擬戦をしてくれたコキュートスに礼を良い、アインズの執務室に向かった。

 

「わかった、コキュートス、また頼んでもよいか?」

 

「私デ良ケレバ何時デモ…」

 

「悪いな」

 

マシンナーはアインズの執務室まで転移し、扉をノックした後アインズの「入れ」の声の後にマシンナーは執務室に入った。

 

「モモンガさん」

 

「あ、マシンナーさん」

 

「話って授与式のことですか?」

 

「はい、これから一時間後に行う予定です」

 

「わかりました、じゃあ鍛冶長に勲章の事話してきますね」

 

「よろしくお願いします」

 

 

 

 

「面を上げよ」

 

アインズの一言で、玉座の間に集合したシモベ達が顔を上げ、座っているアインズとマシンナーに目を向ける。

守護者統括のアルべドは今回の式を取り仕切るためアインズの傍らに立っている。

 

「少し時間が立ってしまったが、これから世界級アイテムを入手して来たシャルティア達に褒美を取らせようと思う」

 

「第一、第二、第三階層守護者、シャルティア。続いて<マキナ>バレット・ローグ、レッドショルダー隊、スナイプマトン隊前へ」

 

目の前に、シャルティアを始め、バレット・ローグ率いるレッドショルダー達とスナイプマトン達で構成された部隊が跪いている。

 

「此の度の世界級アイテム入手、改めて深く感謝しよう。お前達の見事な活躍を称え、褒美を取らせようと思う。マシンナー」

 

「御意」

 

マシンナーはどこからか勲章のようなものを幾つか取り出した。

その形は第二次世界大戦のドイツで作られた「黄金柏葉剣付ダイヤモンド鉄十字勲章」のような形だった。

 

「『黄金柏葉剣付ダイヤモンドナザリック勲章』、我々が今回のような功績を上げた者に授けるために制作したものだ」

 

「マシンナー、バレット・ローグ、レッドショルダー隊、スナイプマトン隊に贈ってくれるか?」

 

「ああ」

 

アインズが勲章を授与するように促しマシンナーは立ち上がり、勲章を贈呈しようと歩き出すと、レッドショルダーの一人が恐る恐る手を上げる。

 

「あ、あの…」

 

「ん?」

 

「レッドショルダーか一体どうした?」

 

「今更で申し訳ないのですが、平の隊員の我々が貰ってもよろしいのでしょうか?」

 

「え?」

 

レッドショルダーの質問にマシンナーとアインズはメッセージで会話を始める。

 

(これってあれですかね?勲章貰う他のメンバーがお偉いさんばっかりだから、逆に気まずい感じですかね?)

 

(多分そうじゃないでしょうか?)

 

しかし二人としては今回の件の報告を聞くと、シャルティアやバレット・ローグ以外の吸血鬼の花嫁やマキナの一般隊員であるレッドショルダー達やスナイプマトン達にも貰う資格は十分にあった。

 

「レッドショルダー、お前達とスナイプマトン達は今回の事に大きく貢献した、貰う資格は十分にある」

 

「マシンナーの言う通り、君たちはこの勲章を貰う十分な事をした。胸を張ってくれ」

 

「「「はっ!」」」

 

「スナイプマトン達もだ」

 

「「ありがとうございます!」」

 

「ではマシンナー」

 

「おう」

 

マシンナーはバレット・ローグの前に立ち、勲章をAMCマントにつける。

マシンナーは僅かに顔を近づけ小さく言った。

 

(よくやった)

 

(!はっ!)

 

そしてマシンナーは他のレッドショルダーやスナイプマトン達に勲章を付ける。

 

「よく似合っている、これからも期待しているぞ?」

 

「はっ!これを機に一層精進させていただきます!」

 

「次にシャルティアだがお前には別のものを渡そう」

 

そういうとアインズはペロロンチーノの装備(カラドボルグ)と同型だが血のような紅色の弓をシャルティアに贈呈する。

 

「わが友ペロロンチーノのお前用に製作していた装備、名前は『串刺し公(カズィクル・ベイ)』だ、受け取ってほしい」

 

「ペロロンチーノ様の?」

 

「お前用のアイテムとしてペロロンチーノが制作した物だが彼がナザリックにいるときは色々あって渡せなかったが、この機会に丁度良いと思ってな」

 

「ありがとうございます!この褒美に恥じぬ働きをするでありんす!」

 

「うむ、頼むぞシャルティア、では式はここでお開きとする」

 

 

 

 

「いや~無事終わりましたね」

 

「ええ、それにしてもモモンガさん、ペロさんあんな装備作ってたんですね、どんな武器なんです?」

 

「ペロロンチーノさんから聞いた話だとシャルティアのスポイトランスの弓版って感じでしたね、矢を拡散する効果もあるとか?近いうちに渡そうと思ってたんですが、今回の件で丁度いいと思って」

 

「そうですか」

 

「それで話は変わるんですけど。マシンナーさん、周辺国家に潜伏している工作隊から何か連絡は?」

 

「まだ連絡ありませんけど、そろそろだと思いますよ?」

 

 

 

 

 

どこかの地下道で数名のマキナ所属の自動人形が穴を掘削している。

そのうちの一人が持っているレーダー探知機のような物から反応が出たので他の自動人形たちに声を掛ける。

 

「よし、どうやらここが床のようだ」

 

コンコンと上を叩き、蛍光ペンで大きく目印を付ける。

 

「早く開けろ」

 

「わかってる、ちょっと待て」

 

自動人形はレーザーカッターを取り出し、起動させる。

刃の部分が発光し煙を上げながら天井の部分を大きく四角に切りとる。そして手を触れてそっと床を上げる。

 

「開けたぞ、周りには誰もいない」

 

周りを確認した自動人形の一体の言葉を聞き、下にいた別の自動人形は、ほかの自動人形たちにマシンナーに報告をする様に指示を出す。

 

「よし、マシンナー様に王国への工作第一段階完了、第二段階を開始する事を伝えろ」

 

「了解」

 

上にいる自動人形は黒いテニスボール位の大きさの黒い球を取り出し、床の外に置く。

その瞬間パカッと球が割れて、超小型の球が夥しい数で辺りに散っていく。

 

「ナノドローン散布完了」

 

「こちら管制、感度良好、問題ない」

 

「了解、これから帰還する」

 

再び床をそっと下ろし、辺りは何事もなかったかのようにシンとしていた。

 




次回からリザードマン編に突入します。

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