シズ・デルタに恋をしたナザリックの機動兵器 作:t-eureca
前話の最後に出てきた魔獣は敵か味方か?
※加筆しました。
ナザリックの第八階層の宝物殿にアインズとマシンナーが来ていた。目的はズーラーノーンのカジットの復活である。
「上手く成功すると良いですが…」
「今のところ使っている魔法やスキルもちゃんと使えますからちゃんと使えると思いますけど……」
僅かな不安を抱きながらアインズはカジットの復活を始めた。
「カジット・デイル・バダンテールを復活させよ」
そういうと魔法陣が閃光を発しながら現れ、人の形のようなものを徐々に形作りズーラーノーンのカジットが無事復活した。
目を覚ましたカジットは辺りを見渡して混乱する。
「こ、ここは!?」
「おい」
「え?ぶ…」
復活したカジットは何も着ていない状態だったのでマシンナーは適当な大き目の布をカジットに投げ渡す。
「裸のままじゃあれだろう、取りあえず成功したなアインズ」
「うむ、そうだな」
「(アインズ?)……な!?」
朦朧としていた意識が徐々にはっきりとしていき、布を投げつけられた方を見ると、カジットは絶句する。
目の前に
ゴーレムの方はわからなかったが死の神の方はすぐに思い出し、カジットは裸にもかかわらず目の前の存在達に平伏する。
「し、死の神スルシャーナ様!!」
(え?誰?)
思ってもいなかったカジットの行動と自分の知らない人物の名前に困惑するアインズだがマシンナーはすぐに自身が調べた情報をアインズに伝える。
(えっと…確かスレイン法国が崇拝していた神々の中の一柱だったような…死の神だからもしかしてモモンガさんと同じ種族の
(なるほど、でもどうしますか?なんか誤解しているようですけど…)
(取りあえず、名前は言っておきましょう、後々変な事にならないように)
マシンナーの言う通り後々の事を考えるとそうした方が確かに良い。アインズは自身がスルシャーナなる人物ではない事をカジットに言った。
「(わかりました)……残念だがカジット・デイル・バダンテール、私は貴様の言うスルシャーナと言う存在ではない」
「え?」
その言葉にカジットはそんなバカなと言いたげな顔をしてしまう。
カジットの中では今目の前にいるアインズこそ真の死の神と強く認識しているのだ。
「私の名はアインズ・ウール・ゴウン、この世界とは違う別の場所から来たものだ、隣に居るのは我が盟友マシンナー。この者は鋼の神だ」
「鋼の……神?」
自身の知識の中では存在しない神の名前に一瞬戸惑うが、アインズと同じくらいの存在感、そして別世界の存在という事を聞き、納得した。
「うむ、それではカジット・デイル・バダンテール、いやカジット、お前を復活させたのは他でもない……私の配下となれ」
「……は!え!?」
それはカジットにとって願ってもいない言葉だった。
自身の目的を果たすために死者の大魔法使いになろうとしたが、目の前の死の神のシモベになればその死の大魔法使いにならなくても目的を果たせるかもしれないと思った矢先、偉大なる
「勿論ただ従属しろとは言わない。命の安全は我々が保障する。実は我々は最近この世界に来た者でな、そのため此方の魔法に深く興味がありその知識を始めとした情報を欲し、探している。貴様にはその情報を提供してもらいたい。対価として私達は貴様が欲している情報を提供する事を約束する……どう…」
「は、はい!なります!わ、いえ!私めに出来ることであれば、何でも協力いたします!死の神アインズ様、鋼の神マシンナー様に絶対なる忠誠を誓いますぅ!!」
アインズが言い終わらない内にカジットは配下になる意を示し、二人に絶対なる忠誠を誓う。
「う、うむ…そうか(あれ?思いのほかあっさりとこちらに側に着きましたよ?)」
「(こりゃ、意外ですね。てっきり何らかの条件を出してくると思っていましたが…)カジット」
あっさりと承諾したカジットの言葉にマシンナーは不思議に思ったのかカジットに話しかける。
「は、何でございましょうマシンナー様?」
「…自分が何故ここにいるか不思議に思わんのか?」
マシンナーの言葉にカジットはハッと思いだす。自身が数年かけて計画した『死の螺旋』を自身の命と共に叩き潰した冒険者たちの事を。
「え?そ、それは…」
「ふむ、やはりな……アインズ」
「うむ、カジットよ君は一度死に、私が復活させたのだ」
「は?」
「そしてお前を一度殺した者たち……あれは我々だ」
「!」
それを聞き、すぐに納得はしたが、次に例えようもない恐怖がカジットを襲う。
知らなかったとはいえ自身が数々の無礼な発言をしたのを思い出し、再び彼らに平伏した
「申し訳ありませぬ!数々の無礼な発言申し訳ありませんでした……!」
「気にするな元々、貴様の存在を一度抹消させた方が色々と都合がよい」
「ところで聞くがカジットよ、何故ズーラーノーンを捨てあっさりとこちら側に着いた?てっきり何らかの条件を追加してくると踏んでいたが」
「そ、そんな畏れ多い!配下になるだけでも私にとっては願ってもない幸運な申し入れなのです!……実はズーラーノーンにはある目的を果たすために入ったのです…」
「その目的は?」
「……は、大変烏滸がましいですが
若干の間を開けながら自分がズーラーノーンに入った目的を話す。
その答えにマシンナーは単純に不思議に思い、カジットにその理由を聞いた。
「何?何故そこまで?」
「そ、それは……」
少し答えようか迷うものの、カジットは正直に話した。
「は、母を!私の母をこの世に甦らしたいのです!!」
((…嘘やん))
どう見ても悪の魔法使いのような外見似合わぬ願いに困惑するアインズとマシンナー。
しかしすぐに抑制により気を取り直す。
「……そのために
「は…新たなる蘇生魔法を開発するために不死者の身体を欲したのです」
(な、なんか意外ですね)
(意外と純粋な願いで驚きましたが…)
「ふむ、お前の目的はわかった、では早速命令をだそう、現在のズーラーノーンの情報をお前が知っている全てを話せ」
「は…」
その後、カジットはズーラーノーンの情報を自分の知っている限り話し始めた、元々ズーラーノーンに入ったのは自分の目的を果たすためだ。さらに自分がいる場所はズーラーノーンの時よりもより高確率で自分の目的を達成できるかもしれない、うまくいけば人間のままで母を生き返るかもしれない。
根拠こそなかったが不思議な確信があった。
全てを話した後アインズはカジットに必要な道具と魔導書のリストを書いて後日提出するように伝えた。
・
・
・
俺がシズたちを連れて依頼を受けようと来てみると組合に来ていた。
周りを少し見渡していると見覚えのある顔を見つける。
「「あ」」
「なんだ、モモンも来ていたのか」
「お前もな」
どうやらモモンガさんも依頼を探しに来たらしい、俺は組合の中を見渡すと、こころなしかいつもより冒険者の数が少ないような気がした。いつもならもう少し大勢の人でにぎわっている筈なのだが…。
「なんか今日冒険者少し少なくないか?」
「お前もか?私もそう感じていた所だ」
俺と同じようにモモンガさんも少ないと感じていたようだ。
そこにもう一つ顔の知っている冒険者チームを見つけた。
「モモンさん、モモンさんじゃないですか」
「お久しぶりです!」
「漆黒の剣の皆さん、お久しぶりですね」
「よおナーベちゃん!久…」
「黙りなさい蛆虫、口を引き裂きますよ」
以前、トブの大森林で出会ったチーム漆黒の剣、ルクレットさんは相変わらずナーベラルを口説こうと頑張っているが相変わらずバッサリ振られてちょっと可愛そうに思ってしまう。
するとあることに気づき、リーダーのぺテルさんに声をかける。
「ぺテルさん、そのプレート…」
「え?、はい!実は俺達『金のプレート』に昇格したんですよ!」
「本当ですか」
「おお、そりゃめでたい」
「そういえば、今日は心なしか他の冒険者が少ないような…」
「ああ、それはですね、「白い暴君」が現れたんです」
「白い暴君?」
聞きなれない言葉に首をかしげるとぺテルさんは俺達が異国の出身だと思い出し、詳しいことを話し始める。
「ああ、そういえばモモンさんやレイヴンさんたちは異国から来たんでしたね、白い暴君っていうのは俺も昔話で聞いたぐらいなんですけど、百年前までトブの大森林でモモンさんが倒した森の…じゃなかったハム助でしたね、そのハム助と何度も縄張り争いをしたと伝えられている大魔獣の事です」
「ハム助と?」
「はい、言い伝えによると白い毛皮と紅い目という特徴があって、性格はかなり残酷だったとか…」
ナザリック内ではともかく、この世界の基準だとハム助はかなり強い存在だ、そのハム助と互角ということは確かな実力を持っているのだろう。これはちょっと楽しみになってきた。
「その魔獣を見つけたと?」
「いえ、目撃者の情報だと言い伝えの特徴とかなり合致しているらしいですが、まだ完全ってわけじゃ…」
「けどかなり凶暴なのは確からしいぜ?昨日惨殺されたギガントバジリスクの遺体が数匹も見つかったらしいし…」
それだけを聞くと余程好戦的な魔獣らしい。それにハム助と何度もぶつかったというのも本当かどうか気になるな…。
「モモンさん、ハム助に白い暴君の事を聞いてはどうでしょうか?言い伝え通りならきっと知っている筈ですし…」
ニニャさんが話している途中で突然組合の受付嬢が息を切らせながら俺たちに話しかけてきた。
「あのすいません!モモンさんとレイヴンさんはいらっしゃいますか!?」
「はい、俺たちですが…」
「良かった…今組合長から緊急で来てほしいと言われてさがしてました、急いで組合まで来てください!」
(緊急だと?)
(一体何でしょうか?)
「あ、漆黒の剣のぺテルさんもお願いします!」
「え?俺もですか?」
緊急の依頼に少し驚いたが多分さっき言っていた魔獣の事だろうと考えながら俺とモモンガさんとぺテルさんは組合長がいる部屋に向かった。
・
・
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「モモン殿!レイヴン殿!よく来てくれた。さぁ、空いてる席にかけてくれ」
部屋に入ると偉い人という感じの人が俺たちを出迎えてくれた。確かこの人はプルトン・アインザックっていう人だったような気がする。部屋を見渡すとミスリル級のプレートをぶら下げている目つきの悪いガラの悪そうな男が1人座っている。
(モモンガさん、俺たち以外に居るのは漆黒の剣とミスリルのプレートを見るにミスリル級の冒険者、でも今来た奴は…)
(やはりさっき聞いた白い暴君とやらでしょうか?)
(…やべえまさか俺たちまで呼ばれるとは…)
「さて、話を始める前にまずひとつ。モモン殿、レイヴン殿、ミスリル級への昇格おめでとう!例のズーラーノーンによるアンデッド大量発生の件での君たちの活躍は、正式に認められた。このエ・ランテルに住む者の一人として、改めて礼を言わせてもらいたい」
「いえ、当然の事をした迄です」
「自分たちはやれることをやったそれだけです…」
「…ふふ」
「さて、改めて自己紹介をしよう。私はプルトン・アインザック。ここエ・ランテルの冒険者組合の長を務めている。そして、モモン殿の隣の男がエ・ランテルが誇るミスリル級冒険者チームである『クラルグラ』の代表、イグヴァルジ君」
組合長から紹介されたイグヴァルジという目つきの悪い冒険者、ミスリル級という事は冒険者としての腕は確かなんだろう、だが俺たちを見る視線は明らかに敵意むき出しだ。
「ふん…」
(モモンガさん…あいつ)
(ええ…完全に敵意を向けてますね)
(まあ大方新参者を気に入らないんでしょう)
「では、本題に入らせてもらおう。まずは例の…」
「その前に聞きたいんだが?」
組合長が話を始めようとするとイグヴァルジが立ち上がり組合長に意見する。
「そこの全身鎧と黒甲冑の奴らは何者だ?モモンとレイヴンとかいったか?俺の記憶じゃ、ミスリル級の冒険者にそんな2人は居なかったと思うんだが。何か功績でもあげたんならどんな功績を上げたのか教えてもらえないか?」
「…それを今話すところだ。それに事は一刻を争う事態なのだ。邪魔をしないでもらえるかイグヴァルジ?」
「フン!」
組合長の言葉に苛立ちを抑えながら座るイグヴァルジ。組合長からの反応を予想するとあまり好かれていないらしいな。まあこういう奴は嫌いなタイプだが…
「さて、彼らの功績の話をしよう。先日のアンデッド大量発生の件だが、これはアンデッドを使役する秘密結社、ズーラーノーンの起こしたものだということがわかった。モモン殿とレイヴン殿のチームがこれを制圧、そして……」
「たったそれだけか?」
(おいおい…)
(またか…)
組合長の言葉にまたもや横槍を入れるイグヴァルジに内心辟易する。
「その話だとアンデッドを制圧しただけじゃねえかコイツらの功績とやらはよ?その程度の事でミスリル級だと?昇格試験も無しでか?そんなの他の冒険者たちが知ったらさぞ不満に…」
「…おい」
「あ!?なんだよ?」
尚も言葉をつづけようとするイグヴァルジに俺は荒々しい口調(演技)でイグヴァルジに制止をかける。
「俺達に文句言いたかったらこの打ち合わせ終わった後にしろ、今はそれどころじゃないだろうが?」
「
「そうですよ、今はそんな事場合じゃありません!」
俺の言葉の後にぺテルさんも言葉を上げる。
「あぁ!?なんだとテメェら…」
「彼らの言う通りだ!いい加減にしろイグヴァルジ!これ以上邪魔をするなら出ていってもらうぞ!!」
「なん…!…クソッ!!」
(悪いねぺテルさん)
(いいえ、お礼を言われるほどじゃないですよ)
「はぁ…では話を再開しよう」
組合長が言うにはどうやら先日ある森林にて何らかの戦闘の痕跡を見つけたらしくそこに冒険者を送り出した事が事の始まりらしい。
(ああ…それシャルティア達だな…)
(やれやれ念のための事後処理が仇になったか…)
先日の漆黒聖典との戦闘の事後処理をしたが、遺留品等は回収したのだが戦闘の痕跡までは流石に消せなかった。
しかし、今回の問題はそれではなく森林で数名の人影を見たという報告が入ったのだ。
「この被害と報告を見るにその森林に何者かが居る可能性があると見て我々は冒険者チームを送り出したのだが、探しているうちに森林を拠点に潜伏していることが判明したのだが帰還して来た者たちによる証言によると白い大型のモンスターを遠目で見かけたという報告が入ったのだ」
この報告を聞くとどうやら幸いシャルティア達の事は知られていない事がわかり、俺とモモンガさんは安堵する。
「それが今回の騒動の最大の問題、白い暴君思われる存在の出現…何せ百年前の言い伝えなのであまり信用はできないが、すでに先日ギガントバジリスク4匹の遺体が確認された…」
「ギガントバジリスクが4匹も…!」
その後も他の冒険者を何度か調査に向かわせたのだが、全員が瀕死の重傷を負わせられるという事態に陥ってしまった。
中にはクラルグラ以外のミスリル級の冒険者チームも居たらしいが彼らも同じように叩きのめされ、今も寝たきりだという。そこで『白い暴君』と互角と言われた『森の賢王』を倒し、シモベにしたモモン達『漆黒』と高名な薬師であるリィジー・バレアレの孫であるンフィーレアを狙ったズーラーノーンの12高弟の内二人を返り討ちにしたというレイヴン達『黒鉄』に白羽の矢が立った。他にもチームを呼ぼうとしたが先述の事件により今動ける銅、銀以上の冒険者チームは漆黒の剣しかいなかったので彼らも呼び出されたのだ。
「無茶な話だということは重々承知している。現状でこの調査がやれる者達は君達しかいないのだ、どうか前向きに検討してほしい…」
「分かりました。お引き受けしましょう」
「承知…」
「俺達も行きます、何ができるかわからないですけど…」
俺とモモンガさんと漆黒の剣が依頼を引き受ける意を示したがイグヴァルジは少し考えている様子だ。
先の件により俺個人としては来てほしくないが…。
「感謝する…それで、イグヴァルジ。君はどうする?」
「お、俺は……!」
イグヴァルジが少し考えた後、イグヴァルジも依頼を引き受ける意を示した。
「お、俺も行くぞ!こんな新参者と格下どもなんぞに任せておけるか!」
(あれ声が完全にビビってますよね…?)
(ビビってますね~)
(無理して来なきゃいいのに…)
(本当ですね~)
「そうか、わかった。それでは諸君、改めて感謝する!それでは、解散!」
(マシンナーさんちょっといいですか?)
(え?どうしました?)
組合長の言葉の後にモモンガさんが話しかけてきたので俺はその話を聞くために俺はモモンガさんに付いていった。
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・
「来たかレイヴン」
「すまない、待たせたな」
「いや、我々も今来たところだ」
俺がシズたちを連れて集合場所に来るとモモンガさんとナーベラル、そしてハム助が来ていた。
それから少し経ってから漆黒の剣の面々も来た。
「遅くなってすいません」
「いえ、我々も今来たところです」
「こちらもだ」
「またモモンさん達と共同で依頼ができて嬉しいです」
「モモン氏とレイヴン氏の強さの一端を見れる機会がまたできて光栄なのである」
「よおナーベちゃん半刻ぶり~、寂しかった?」
「その舌引きちぎって焼いて食わせますよ?」
「……ナーベ、汚い言葉、ダメ」
「舌がなければ上手く食べれませんよ?」
(違うアルティマ、そうじゃない…)
このやりとりも段々風物詩になりつつあるな…。
「そう言えばモモンさん、ハム助さんに『白い暴君』の事は聞きましたか?」
「ええ、ニニャさん。先ほどハム助から聞きました。どうやら言い伝えは事実だったようです、ハム助」
ニニャの言葉にモモンはハム助の方を向き、『白い暴君』の事を話すように促す。
ハム助もモモンの意図を察し、黒鉄と漆黒の剣に『白い暴君』の事を話し始めた。
「殿の言う通り皆様方呼んでいる『白い暴君』と某は何度も牙を交えたでござる」
(お前のは牙じゃなくて歯だろ…)
「あやつの性格は普段はそこまで凶暴ではないのでござるが、狩りになると獲物をいたぶるように殺す趣味の悪いの所があったでござる」
「想像してたけどやっぱり恐ろしい奴だな…」
「ますます気を引き締めていかないといけないであるな…」
その後俺たちは談笑しながらあのイグヴァルジ率いるクラルグラを待つことにしたのだが、30分位経っても一向に現れない。まあその間に出立の準備は整えたからただ無駄な時間を過ごした訳ではないが…。
(遅いな…)
(なんかあったんすかね?)
「何かトラブルでもあったのか?」
「ん?おい、馬に乗ってこっちに向かって来てるのってクラルグラじゃないか?」
ルクレットが指を指すと歩行者の事等眼中にないと言わんばかりに疾走してくるイグヴァルジを先頭に馬に乗った一団がこちらに向かってきた。
「やっと来たであるか…」
ダインがやれやれと言いたげな口調でつぶやいていると、到着したイグヴァルジが馬に乗りながら荒々しく口を開いた。
「遅せぇぞてめぇら!!なにチンタラやってんだとっとと行くぞ!!」
てっきり下手な言い訳でもするのかと考えたがこの暴論には流石にモモンとレイヴンは甲冑の中で眉を顰める。
(はぁ?)
(何を言ってるんだこいつ?)
「お、おい!リーダー!?」
「な!待ってください遅れたのは貴方達でしょう!?」
「うるせぇ!弱小の金プレートの分際で口答えするな!!やる気がねぇなら帰りやがれ腰抜けどもが!!」
「もうやめろリーダー!」
「うるせえ!お前はすっこんでろ!」
思わずニニャがイグヴァルジに反論するもイグヴァルジは更に暴論を吐き捨てる。
イグヴァルジの暴論に思わずクラルグラのメンバーの一人はイグヴァルジを諫めようとしたが、そんなの知るかと言わんばかりにレイヴン達に喚き散らす。
「臆病どもが!そんなに行きたくないなら荷物運びでもしてろ腰抜けどもが!!ふん!行くぞ!」
「あ!リーダー!」
「すまねえアンタら…」
謂れのない文句を言いたい放題にいって最後に荒々しく鼻を鳴らし、馬を走らせる。
他のメンバーはレイヴン達にイグヴァルジの代わりに謝罪しイグヴァルジの後を追った。
「な、なんだよあの人…!自分が遅れたのに棚に上げて!」
「なんであんなのがミスリル級なんだよ?ワーカーの間違いじゃないのか?」
「やれやれ、先が思いやられるのである」
「ちゃんと我々と共にする気があるのでしょうか……!?」
(やれやれ、依頼中にあそこまで露骨に嫌悪感丸出しにするとは…)
(感情が抑圧されてなかったら今頃顔面に一発かましてましたよ全く…)
先ほどのイグヴァルジの態度に漆黒の剣のメンバーは大きな嫌悪感を抱き悪態を着く。
モモンとレイヴンも<伝言>で愚痴をこぼす。
「はぁ…皆さん気を取り直して行きましょうか」
「ああ、早く行こう」
モモンは「ハア…」と息を着きながら他のメンバーに出発を促し、レイヴンも賛成する。
二人の言葉にニニャとルクレットはその意見に噛みつく。
「モモンさん?でも…!」
「良いんですか?あんな理不尽なこと言われて?」
二人の意見を聞き、モモンとレイヴンの二人の方を振り向き言った。
「勘違いしないでくれ、今言いだしたら無茶苦茶言ってしまいそうなんだ」
「皆さんの気持ちはわかります、正直不快にも思っていますよ、ですが今はそれより依頼があります、依頼が終わって彼の事を組合に相談しましょう」
「俺も同じだ。正直野郎の顔を馬のケツの穴の中にぶち込んでやりたい位だよ」
「二人ともモモン氏の言う通りである」
「この依頼が終わったら気晴らしにここにいる全員で酒でも飲んでパァーっやろうぜ?」
「そうだな…モモンさんの言う通りだな」
「そうですね」
仲間の言葉もあってかルクレットとニニャも気を取り直す。
そこにナーベがレイヴンに近づき…。
「レイヴンさ……ん、そのあの身の程知らずのナメクジの顔を馬の中に入れる役目私が…」
「え?」
「いえ、僕にお任せを」
「二人とも駄目……馬が可哀想」
ナーベの後にジナも手を上げるが、マギーが二人を諫めた。
うん、そうだね。馬が可哀想だからやめてあげよう。いや、言いだしたの俺だけどさ。
そんなこんなで改めて俺たちは出発したのだった。
(まあ何も言わないけど悪戯はしないとは言ってない)
(マシンナーさんやっちゃってください!)
(アイアイサ~)
(
俺は自分の所持するスキルの一つ《
これは一日に使える回数に限りはあるが時間を停止させることができる。
時間停止だけでなくこのスキルが発動している間に敵を倒した場合、その相手は低位の蘇生魔法では復活できない。
(まあ今は殺さないけどな)
俺は馬で疾走しているイグヴァルジの所まで転移し、イグヴァルジに近づき、油性ペンを取り出す。
「赤白帽を笑うもの赤白帽に泣くってな?」
そして俺はイグヴァルジの顔と頬に「肉」の字を書き込んだ。
「肉と書かれて気づいた仲間に笑われやがれ」
そして俺はまた転移し、モモンガさんの元にまで行き《
「リスタートだ…」
時間停止が解除され他のメンバーや町の住民も動き出す。
(マシンナーさん、やったんですね?)
(額と頬の肉の字を書いてやりました(笑))
(ブフォwww)
この後イグヴァルジは笑うのをこらえる仲間の指摘に顔の落書きに気付き、急いで落そうとしたが、中々取れず追いついたレイヴン達にもそれを見られてしまうのであった。
残念だが自業自得である。
スキル解説:
マシンナーが使うスキルの一つ。一日に使える回数に限りはあるが時間を停止させることができる。また時間停止だけでなくこのスキルが発動している間に敵を倒した場合、その相手は低位の蘇生魔法では復活できない。
元ネタは仮面ライダークロノスの能力であるポーズからとりました。