シズ・デルタに恋をしたナザリックの機動兵器   作:t-eureca

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第44話 改良の余地があるほど良いものは作れる

(さてと…留守にしてる間に溜まってる書類を片付けるとしようか)

 

俺は『機械の楽園』の自分の執務室にシズを伴って移動する。目的は冒険者として外に出ている間に溜まっている書類を片付ける為だ。俺は執務室に入り、椅子に座り書類を持っているであろうアルティマが来るのを待つ。

隣ではシズが控える。そして扉を叩く音が聞こえた後、アルティマの声が聞こえた。

 

「アルティマです、入ります」

 

(さーて……早く片付けますか)

 

「ああ、入っていいぞ」

 

俺の呼びかけの後、アルティマが部屋に入って来る。さーてどんだけの書類が来る事やらと身構えていると、部屋に入って来たアルティマが書類どころか何も持っていない事にキョトンとする。

 

「アルティマ、一応聞くが書類は?」

 

「はい、マシンナー様。外に出てから今日までの書類はすべてマキナ内で処理が終わっております。何通かはアルの元にも来ましたが充分処理できる範囲だったのでご心配には及びません」

 

(……マジか)

 

それを聞いて俺は驚愕する。まさか出ている間の書類を全て片付けるとは思ってもいなかった。

そりゃ確かに戦闘だけではなく事務処理も得意そうなメンツもいるだろうが正直予想外だった。

 

「……今に始まった事ではないが優秀だな我が軍団は」

 

「御褒め戴き光栄です!」

 

部下だけに仕事を任せっきりにするわけにもいかず、俺はモモンガさんに何か手伝う事はあるか?と聞いたら何も無いと返され、途方に暮れるとある事を思い出す。

 

(……そういえばナザリックに配備するアレまだ模擬戦闘させてなかったな。なら丁度良い、シズを使って模擬戦闘をさせてどれくらいの性能か見てみるか)

 

俺はアウラに闘技場を使う許可を得てシズを闘技場に誘う。

 

「シズ、これから少し実験をする。手伝ってくれるか?」

 

「……畏まりました」

 

シズからも了承を得て俺は執務室の奥にある、俺が開発した物の未完成品等が保管されている部屋に手をかける。

そして扉を開けて二足歩行型の自動人形三体と下半身が蜘蛛型の自動人形一体で計四体の自動人形を引っ張り出す。

 

「……これは」

 

「この前お前に見せた警備用の自動人形だ。名前はドイツ語から日本語に代えて「カラス」と「ツチグモ」に和風の名称に変更した(ドイツ語で言ったらモモンガさん絶叫してたしな)」

 

「これの現段階での性能を調べしたい、頼めるかシズ?」

 

「……合点」

 

「よろしいならば行くとしよう、さて起動させるか」

 

俺は四体全ての電源を入れる。電源が入ると自動人形に僅かに振動して問題なく起動した。

 

「これから闘技場で現段階での性能を確かめる。付いてこい」

 

『『『『畏まりました』』』』

 

俺はシズと自動人形達を連れて闘技場に向かった。

 

 

 

 

《シズ》

 

《はい…》

 

《今回の模擬戦ではジャガーノートは使用するな充分なデータを取る前に戦闘が終了してしまう》

 

《了解…》

 

シズはメッセージによる会話を終わらせ、闘技場にいる四体の警備用自動人形に視線を向け、愛用の魔銃を取り出し、安全装置を外し「ガチャン」と弾倉を装填する。

 

「では模擬戦を開始する、存分にやれ」

 

『『『『了解』』』』

 

「………了解」

 

俺の号令の後、四機中三機のカラスがシズに右手に付いてあるガトリング砲を発射しながら突撃をかける。

対してシズは自分に当たるであろう弾丸だけを捕捉し、魔銃を発射、弾丸同士がぶつかり、互いに跳ねる。

シズは弾を弾いたシズは弾いて空いた弾幕の隙間をすさまじい速さで突っ込み、三機のカラスの後ろを取る。

後ろを取られたカラス達はすぐに反転して胸部の機関砲を展開し、シズに向けて発射する。

 

「……」

 

シズはアイテムボックスから黒色の仕込み傘を取り出し、傘を広げ弾幕を防ぐ。弾の雨にさらされながらも仕込み傘はしっかりとシズを守っている。防御しているシズの後ろから待機していたツチグモが下半身の大口径ビーム砲のチャージに取り掛かる。チャージのエネルギーに気づいたのかシズは後ろを振り返ってツチグモがチャージするのを発見する。

 

「…危ない」

 

シズが危険を察知するのと同時にツチグモはビームを発射する。

シズは横に回転して回避するが先程シズの前にいたカラスの一機にビームが命中し戦闘不能になる。

 

「……よっしゃ」

 

思わぬ幸運に少し喜びながらも、すぐにツチグモに向き直る。ツチグモは下半身に付いている六本足で移動しながら両腕の機関銃でシズに銃撃をする。シズは再び傘を広げ、それを防ぎ傘に付いているトリガーに指を掛けて仕込み傘に付いている機関銃を発射する。

 

『銃撃、回避する』

 

六本足を折り畳み、ホバー移動で横に滑りながら回避し機関銃を連射する。

傘で弾を防ぎ、傘の機関銃で応戦している最中に二機のカラスが左手にブレードを持ちシズに切りかかる。

 

「……」

 

一体目の斬撃を回避し、接近してきた二体目を新たに取り出した散弾銃をカラスの頭部のカメラに向けて発砲し、メインカメラを破損させる。カラスはメインカメラをサブカメラに切り替えようとする。

 

『メインカメラを破損、予備のカメラに切り替え…』

 

「…させない」

 

『よっ…!』

 

ショットガンで攻撃した後シズはカラスに飛び乗り魔銃をカラスの頭部に向け連射し、カラスの頭部を破壊し戦闘不能にさせる。

 

「残り……二つ」

 

残りのツチグモとカラスを一瞥し、魔銃を持ち直す。

先にカラスが突撃し、ツチグモが援護する形で突っ込んでくる。

機関銃を発射しながら突撃してくる両機の弾幕から傘だけでは頼りないと思ったのか設置型の防壁を取り出し設置、防壁を展開し弾幕を防ぐ。

 

そこにカラスが防壁を飛び越え、飛び越え、シズの目の前に立ちはだかる。

 

「うわぁ…」

 

『…!』

 

カラスは右手のブレードを勢いよく振り下ろし、シズは横にかわす。

ブレードが深々と地面に沈んでいるのを確認したシズは猛スピードでカラスに飛び乗り、ナイフを取り出してカラスの首周辺の装甲を無理矢理こじ開け配線をを露出させる。

 

「見つけた……」

 

シズはそのまま配線にナイフを突き刺す。刺されたカラスは僅かに振動した後崩れ落ちる。

その時防壁がビームでぶち抜かれ、シズが飛び乗っていたカラスに命中し爆発、炎上する。当たる直前に降りていたシズにツチグモが豪快に衝突する。ツチグモはそのまま突進力に任せてシズを跳ね飛ばそうとする。

シズは身体の出力を上げて、踏ん張る。ツチグモは下半身の大口径ビーム砲のチャージを開始する。

 

「…投げ飛ばす」

 

シズは身体の出力を更に上げてツチグモを力任せに投げ飛ばす。

投げ飛ばしたと同時にビームを発射し、ビームを発射しながら落下した。

 

「ナザリック地下大墳墓おろし…」

 

(え?大雪山じゃないの?)

 

シズの技名に心の中で突っ込むマシンナー。シズは魔銃を持ち直し、ツチグモの六本脚の関節をロックオンして魔銃を発射する。弾丸はツチグモの六本脚の関節全てに命中したツチグモはそのまま地面に落下した。

ツチグモは必死で立ち上がろうとするが先程の銃撃のせいか全ての脚の関節部分から煙が漏れ、上手く立ち上がれなくなっていた。

シズは魔銃の残りの装弾数を確認して銃弾の再装填をし、ツチグモに近づく。

ツチグモはすぐに両腕の機関銃を発射しようとするが、シズがツチグモの両腕を狙撃した事により両腕の機関銃は破壊される。

 

『……!』

 

「……」

 

ツチグモの側にまで近づいたシズはツチグモの頭を踏みつけ、魔銃を向ける。

そして魔銃のトリガーを引きツチグモの頭部を完全に破壊するまで撃ち続けた。

頭部を完全に粉砕されたツチグモはそのまま沈黙した。

 

「……終わりました」

 

「ああ、よくやった」

 

「……御褒め戴き光栄…です」

 

マシンナーは闘技場に入り、シズの所まで行き頭をなでる。以前なら内心照れていたが、今は自然と出来るようになっていた。撫でられているシズもふ、と微笑んでいる。

 

「…でもあの警備用は戦力的には少し不安が」

 

「うん、シズがそう考えるのも仕方ない。こいつらの強さはこの前見た王国の戦士長ガゼフの強さを基準にしている、我々からすればあまり強くない存在でもこの世界の人間からすれば充分強い存在だ、この大抵の相手ならこいつらだけで充分屠れる。それに戦闘以外の用途にも使う予定だからある程度の量産も考えてるからコスパの事を考えりゃこれぐらいが丁度いい」

 

ナザリックの各シモベはそれぞれの徘徊や警備を担当していおり『マキナ』は主に拠点のあるナザリックの第六階層を主に警備している。この世界に転移してからもそれは変わらないが、やはり侵入者が来る可能性がある。階層守護者達やナザリックのシモベの中にはナザリック外に出向いている物もいる為、それを補うために当初アインズは『マキナ』の兵員から少し回したいとマシンナーに頼んだのだがマシンナーは広大なナザリックの各所に戦闘以外の仕事もあるマキナの各兵団を回す訳にもいかないと言う事でこれは却下された。そこでマシンナーは転移する前から考えていた量産を前提した機械系異形種の開発をすることにしたのだ。

 

強さ自体はガゼフを基準としている為ナザリックの中では低いがこの世界の人間からすれば厄介な相手である。少なくともこの世界の弱い部類の奴ならばこの強さで充分だった。

 

「あ、御屋形様~」

 

「…アインズ様」

 

「む、こんなところで何をしているのだマシンナー?」

 

そこにハム助を連れたアインズが闘技場に現れる。

アインズの姿を見てシズは一礼する。

 

「シズとともに警備用の自動人形の実験だ、まあまだまだ改良の余地があるが」

 

「そうかご苦労だったなシズ」

 

「……勿体無き御言葉」

 

「それにしてもアインズ、ハム助を連れて何している?」

 

「ああ、ハム助を連れてナザリックを案内している、迷子になられたら困るからな」

 

「まあナザリックは広いもんな迷って何かあったらたまらん」

 

「殿の思いやりには頭が下がるばかりでござるよ、それがしの同族まで探してくれる御約束までしてくれたのでござるよ~」

 

<え?そんな約束したんですか?>

 

<ええ、まあ…いるかわかりませんけど>

 

「御屋形様!実はそれがし御屋形様に頼みたいことがあるでござるよ!」

 

2人がメッセージで会話しているとハム助に声をかけられハム助の方を向くマシンナー。

 

「ん?なんだ?」

 

「それがし、御屋形様と手合わせしたいでござるよ!」

 

(え?)

 

目を大きく輝かせながら言ったハム助の言葉にマシンナーは呆気にとられ、アインズはハム助を諫めた。

 

「お前は急に何を言い出す……」

 

「御屋形様の実力は殿と互角と言う事を聞いたでござる!勿論それがしでは相手にもならぬのは百も承知でござるが一度でも良いので御屋形様と手合わせしたいのでござる!」

 

「急にそんな事を言い出すなハム助、いきなり言われればマシンナーも困るだろ?」

 

「ん?まあ別に構わんが…」

 

「本当でござるか!」

 

「良いのか?」

 

「友逹のペットの頼みなら無下にはできんさ」

 

「すまんな…」

 

「ありがとうでござるよ御屋形様!!」

 

「その前にちょっと実験機片づけるから待っててくれ」

 

マシンナーは牽引用の自動人形を呼び出しツチグモ達の残骸を載せて自分の部屋まで運ぶよう命令させた。

自動人形が闘技場を出たのを見た後、ハム助の前にマシンナーは立った。

 

「ハンデとして俺は丸腰で相手してやる、良いな?」

 

「承知したでござる!」

 

「なら判定は私がしよう、シズ」

 

「……はじめ」

 

「先手必勝でござる!」

 

試合開始の直後ハム助はマシンナーに蛇の様な尻尾を横薙ぎに振るう。

尻尾はマシンナーの顔面を正確に捉えるがいとも簡単に掴まれてしまう。

 

「なんとぉー!?」

 

「ぬぅん!」

 

ハム助の尻尾を掴んだままマシンナーはハム助をジャイアントスイング方式で投げ飛ばす。

ハム助は投げ飛ばされるがすぐに着地し、マシンナーに向かって<魅了(チャーム)>等の魔法を使うが対魔法対策をしっかりしているマシンナーに第3位階の魔法は通用しなかった。

 

「なんと!御屋形様は魔法が効かないでござるか!」

 

「少なくともお前の魔法は通用せんぞハム助?」

 

「ならば肉弾戦でござる!」

 

そう言ってハム助はマシンナーに突撃をかける。

それに応えるように脚からローラーを出し、ブースターを展開させてマシンナーも突撃した。

そして激しくぶつかる二体。

 

ぶつかった反動で後ろに仰け反るがマシンナーは自身の身体を変形させた。

 

「こちらも獣の姿で行かせてもらおう、<変形>!」

 

マシンナーは人型から二足歩行の肉食恐竜の姿に変形する。

その姿を見たハム助は驚愕する。

 

「な、なんでござるかその姿は!!」

 

驚愕するハム助にアインズがマシンナーの能力について説明をする。

 

「<6段変形(シックス・チェンジャー)>マシンナーの能力の一つだ、気を付けろ。ちなみにその姿を含めて後5形態あるぞ?」

 

「オオォォォオ!!」

 

「なんの!せいやぁ!!」

 

マシンナーがその顎を開いてハム助に接近する。ハム助はそれをかわし尻尾を鞭のようにしならせマシンナーに打ち付ける。マシンナーは僅かに怯むがすぐに反撃と言わんばかりにハム助を踏みつけようと脚を踏み下ろす。

 

「おっと!」

 

(あ、危なかったでござ……!)

 

脚をかわして一瞬安堵するが、次の瞬間マシンナーの尾が目の前に迫って来ていた。

 

「オオォォォオン!!」

 

「ぎょわあ!?」

 

尾の直撃で大きく吹っ飛ばされるハム助。

そして転がりながら着地をするが、すかさずマシンナーがその身体に(加減をしながら)噛み付く。

そして真上に投げ飛ばした。

 

「のわあぁぁぁあ!!」

 

大きくバウンドしながら地面に衝突するハム助、そしてマシンナーは脚を上げて脚でハム助を押さえつける。

 

「うぅ…」

 

「降参か?」

 

「こ、降参でござる、参ったでござるよ御屋形様…」

 

降参の言葉を聞き、マシンナーは脚を離す。

ハム助は起き上がって体をぶんぶんと振って汚れを落とした。

そこに離れていたアインズがハム助に近づく。

 

「今のがマシンナーの力の一端だ、尤もかなり手加減してたがな…」

 

「あたた…手加減されてもここまでとは驚きでござる…身体もまるで岩のように固いし…」

 

「マシンナーの身体は鋼鉄よりも固い金属で覆われている、生半可な攻撃ではビクともせんぞ」

 

「ひえぇ…」

 

アインズがマシンナーの説明をしていると何故かシズはハム助の方を見ていた。

それに気づいたマシンナーはシズに話しかける。

 

「……」

 

「ん?シズどうした?」

 

「いえなにも……」

 

シズは何も無いように応えるが、マシンナーはシズがハム助を気に入っていたのを思い出しシズに話しかける。

 

「シズ、乗りたいのか?ハム助に?」

 

マシンナーの言葉にシズは少し思案しながらはっきりと応える。

 

「……乗りたい」

 

その言葉を聞いてマシンナーは実験に協力のちょっとしたお礼としてアインズにシズにハム助を乗せてくれるように頼む。

 

「良いかなアインズ?俺の実験を手伝ってくれた礼に」

 

「うむ、良いだろう、良いかハム助?」

 

「それぐらいお安い御用でござる!」

 

そういうとハム助はシズの前に出、シズはハム助に跨る。

その顔はどこか嬉しそうだった。

 

(シズが乗ると絵になりますねマシンナーさん)

 

(……)

 

(マシンナーさん?)

 

「……ハムスターになりたい」

 

「え?」

 


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