シズ・デルタに恋をしたナザリックの機動兵器   作:t-eureca

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皆さんあけましておめでとうございます(今更)。
今年もよろしくお願い致します。


第43話 事情説明3

「以上が報告でありんす」

 

「こちらがそのディスクです、完全な状態の物は無かったので記憶は断片的ですが…」

 

「うむ、わかった。報告にあった物を鑑定した後拝見しよう」

 

「それで、シャルティアの隣にいる人間……いや吸血鬼だったな?名前は?」

 

「あ、どうも初めまして、アインズ様?と…マシンナー様?」

 

「そうだ、私がアインズで隣にいるのがマシン…」

 

アインズが自分とマシンナーの紹介をしようとしている途中に突然、ブレインに蹴りが飛んだ。ブレインの体はそのまま吹き飛び、壁に大きくぶつかって跳ね返る。人間なら確実に死ぬ威力だが吸血鬼化していた為ブレインは咳き込みながらも何とか生きている。

 

((……え?))

 

咄嗟の出来事に一瞬アインズとマシンナーの頭はフリーズしてその光景を呆然と見つめて状況を把握する。蹴りつけたシャルティアは転がっているブレインに近づき頭を鷲掴みにする。流石にこれはまずいと思ったのかバレット・ローグが立ち上がりシャルティアを止めに入る。

 

「シモベ風情が何至高なる御方達であるアインズ様とマシンナー様に対し馴れ馴れしく口を開いているでありんすか?私が許可したかおい!お前はただ聞かれたことだけしっかり答えればいいんだよ。アインズ様とマシンナー様に許可無く話せるとか思うんじゃネェよ…」

 

「す、ずびばぜん……」

 

「シャルティア殿、お気持ちはわかりますがそれ以上はいけませぬ!今ここで殺すのは…」

 

「わかっているでありんすよ、いくらなんでもそこまで愚かではないわよ」

 

(馴れ馴れしくというよりどっちがどっちでわからない様な感じで聞いたと思うんだけど……)

 

(他のNPCにも言えるがやっぱりこの辺りは少し問題だな)

 

「シャルティア」

 

「はい、アインズ様!」

 

アインズの呼びかけの時にさっきの剣幕な表情から一転して乙女の顔になるシャルティアに『切り替え早…』と思いながらアインズは話し始める。

 

「お前の忠誠は嬉しいが別に先程のブレインの事は気にしていない。そいつと私たちが顔を合わせるのが初めてなのだ、それは流石に酷だ」

 

「も、申し訳ありませんアインズ様」

 

「わかればよい、それで報告の物は?」

 

「は、はい!了解でありんす!バレット・ローグ早く!」

 

「はっ!アインズ様、マシンナー様こちらです」

 

バレット・ローグがアイテムボックスから回収した容器を取り出し、報告にあった中華服を取り出しアインズ達に献上する。

 

「これがそうか……」

 

「アインズ、俺の勘がヤバイものって告げている」

 

「マシンナーもか、私もだ。では鑑定をするとしよう<道具上位鑑定(オール・アプレーザル・マジックアイテム)>」

 

「…注目の鑑定結果はCMの後(ギ◯ンボイス)」

 

「なんだって?」

 

「気にするな」

 

気を取り直してアインズは中華服の鑑定を始める。

暫くして隣にいたマシンナーがアインズの様子が急変したことに気づく。

内心まさかと思いながらもマシンナーはアインズに声をかけた。

 

「……これは」

 

「アインズ?」

 

「あ、アインズ様?」

 

マシンナーと同じくアインズの様子に気づいたアルべドが心配そうに話しかけた後アインズはマシンナーの方へ振り向く。

 

「マシンナー……」

 

「なんだ?」

 

「当たりだ…」

 

「え?」

 

「当たりも当たり!大当たりだ!これは……『世界級アイテム(ワールドアイテム)』だぞ!」

 

「えぇ!?マジか!いや本当か!?」

 

興奮しながら喋るアインズの言葉にマシンナーも同じくらいの声で驚く。

 

「ああ!名前は傾城傾国!効果は使用した相手の洗脳で使用する回数は限られるがそれでも世界級アイテムに間違いない!」

 

「となるとその効果での世界級となれば……どんなに耐性を付けても問答無用って事になるのか!?」

 

「ああ、まだ検証はしてないから詳しい事はこれから確認しなければならないが…」

 

「それでもこの収穫はデカいぞ!夢じゃないよな?いやロボだけど……」

 

「お前達っ!よくやってくれたぁ!!大手柄だぞ!!…………あ」

 

「ん?どうした?…………あ」

 

アインズはシャルティア達に振り返り我に返る。マシンナーもそんなアインズに尋ねるが少し経ってから我に返り、振り返る。そこには階層守護者やプレアデス、マキナを始めとするナザリックの配下達が呆然としていた。

皆が完全に固まっている状態である。デミウルゴスに至っては、眼鏡越しに彼固有である宝石型の眼がよく見える位見開いている。同じくアルティマもデミウルゴスに負けないくらい目を開いており口をあんぐりと開けている。

 

(…しまった)

 

(あ、モモンガさん俺ちょっとスリープモードに入るので10分後に起こしてください)

 

(ちょっと!一人で現実逃避しないでください!)

 

一人現実逃避しようとするマシンナーを怒りつつこの場をどう切り抜けるか考え始める。

そして少し考えた後、2人はこう切り出す。

 

「ああ…そのすまん、つい驚きすぎてしまった物が物だったんで…」

 

「私達としたことが。少しばかり喜びすぎてしまったようだ。すまないな、忘れてくれ」

 

「畏まりました。アインズ様、マシンナー様」

 

「さっき俺とアインズが驚いたの理由はこの中華服……傾城傾国にある」

 

「これはかの『世界級アイテム』の一つで効果は相手の洗脳。シンプルな効果だが世界級アイテムともなればその効力は通常のアイテムとは桁違い、対策をしない限りどんな強大な存在も洗脳できる。それはお前たちは勿論、我々でもだ」

 

この言葉にシモベ達がざわつく。ナザリックの配下としてこの場にそぐわない程、部下達の反応も大きかった。

 

「シャルティア達の手柄はそれだけ大きいという事だ。最早大手柄という言葉でも物足りないくらいだがな……」

 

「そ、それほどまでにでありんすか……!」

 

その事実にシャルティアは驚愕するしかなかった。自身の分身のエインヘリヤルの攻撃で無傷と言う事実にもしやとは思っていたが本当に『世界級アイテム』だと言うことを知り驚愕する。

バレット・ローグもシャルティアと同じく驚愕していた。自分達がした事の凄まじさに機械系異形種でありながら震えている。

 

「命令をこなした者達には褒美を取らせる予定だったのだが……さて、どうしたものか」

 

「持ってきたのが『世界級アイテム』だからな……どうする?」

 

「うむ、そうだなシャルティア達には悪いが褒美は後日改めて渡そう。それで良いか?」

 

「いえ、滅相もありません!褒美を与えられるだけでも畏れ多いのに悪いなどとは思わないでありんす!」

 

「すまないな、では次にこのディスクの中身を確認するとしよう」

 

「なら早速映すとしようか」

 

マシンナーはアイテムボックスから映像投射機と大型スクリーンを取り出し、ディスクを入れ起動させ映像を出す。そこには断片的だが漆黒聖典の人間の記憶からスレイン法国の情報が含まれており、アインズ達はその映像を見てある程度の情報を入手する。

 

「神人……そして漆黒聖典の番外席次か…」

 

「この記憶からするとこの女がスレイン法国の切り札と言うわけか。シャルティア達が倒した漆黒聖典の中にいなかった事を考えると余程の戦闘力……もしくは特別な力を持っている確率が高いな」

 

「そして神人はおそらくユグドラシルプレイヤーの子孫、やはり我々以外にもユグドラシルプレイヤーがこの世界に来ている可能性がますます高くなったな」

 

「だが断片的とはいえこの情報は有難いな、お陰で法国についての貴重な情報が手に……ん?」

 

「どうしたマシンナー?」

 

「いや、ちょっと巻き戻す……よし、ここだ。見てくれアインズ」

 

「ん?」

 

マシンナーが止めた場面を見るとおそらく城の中か、報告の人間が映る。

 

「右の端辺り、こいつだ」

 

「この女は確か…」

 

「ああ、この前ひっ捕らえた奴だ」

 

マシンナーが止めた場面の右端に武技を持っていた為マシンナーが捕獲し、ナザリック送りにした女、クレマンティーヌだった。

 

「まさかスレイン法国に所属していたとは…」

 

「やれやれ、あんなサイコ起用するとは……毒を以て毒を制すって奴か?」

 

「だが、丁度良いタイミングで判明した。早速情報を聞き出すとしよう。アルべド、この女を牢から連れてこい」

 

「かしこまりました」

 

 

 

 

突如牢から連れだされたクレマンティーヌは混乱していた。わけのわからん金属のモンスターに眠らされ目覚めれば何処かもわからない場所に居た。脱出しようかと暴れようとしたが、素材が頑丈なのか全くの無傷であり仕方なく大人しくしているといきなり出ろと言われる。

 

このまま脱走してやろうかと考えたが現れた存在を見てそれは一瞬で失せた。

 

「立ちなさい、アインズ様とマシンナー様がお呼びよ。光栄に思いなさい、下等生物」

 

そのまま連れていかれ目の前に豪華な扉が現れ開かれる。

扉の中を見たクレマンティーヌは絶望した。

 

(駄目だ……絶対に勝てない)

 

一人一人が自分より遥かに強い存在。中でも中央の二つの椅子に座っている存在が桁違いの威圧感を出している。

そのうちの黒い甲冑を着込んだ人物が口を開ける。

 

「クレマンティーヌだっけか?久しぶりだな」

 

「え?」

 

何故自分の名前を知っている?自分は見たことすら無いのに?

そう疑問を抱いていると玉座に座っている死の支配者が口を開く。

 

「マシンナー、そいつには本来(・・)の姿を見せていないのだろう?仮の姿を見せたらどうだ?」

 

「そうだった、忘れていたよ。では…」

 

そういうとマシンナーはスッと立ちあがり甲冑武者の様な姿になる。それを見たクレマンティーヌは驚愕する。

 

「これなら覚えてるか?」

 

「はぁ!?」

 

「思い出したようだな、彼はお前をここに連れてきた張本人さ」

 

「は、ははは…」

 

そりゃ勝てるわけないと悟ったクレマンティーヌは力なく笑う。そして自分が意識を失う前に言っていた神と言うのも嘘じゃないかもしれない。

 

「安心しろ、別に取って食うわけじゃない聞きたい事があって呼んだのだ」

 

「お前が元スレイン法国の者と言うことは知っている、情報を提供してくれれば見返りとして解放はできないが命の保障とそれなりの待遇は約束する。ずっと牢に居るのは嫌だろう?」

 

「わ、わかりました…」

 

「まず最初に聞くが、私の部下達が倒した「漆黒聖典」は法国の中ではどのぐらいの強さだ?」

 

クレマンティーヌは最初の質問の時点で頭を抱えたくなった。

自分がかつて所属していたスレイン法国最強の特殊部隊、漆黒聖典を倒したと言うのだ。

しかも質の悪い事に倒したのが目の前の2人ではなく部下だと言うのだ。

 

「えっと…漆黒聖典はスレイン法国の中では一番強い特殊部隊です……」

 

「やはりな…」

 

なにせコイツを持っていたのだからな…、とアインズは傾城傾国を取り出す。それを見たクレマンティーヌは眼を大きく見開いた。

 

(傾城傾国!?じゃあ本当にやったってのか…!)

 

「次は番外席次だ、こいつは何者だ?」

 

「はい、あの女は強さだけなら人外領域すら超越した化け物で漆黒聖典の切り札で六大神の血を引くとされる先祖返りの化け物です」

 

「後は?」

 

「確か…六大神の内5柱の装備を守っているとか…」

 

「アインズ」

 

「ああ、確実にプレイヤーの装備だな。わざわざ最高戦力に守らせてるのだ間違いない」

 

世界級アイテムを一つ持っていたと言うことを考えると確率は低いが複数持っている可能性も否定できない。

マシンナー達はスレイン法国に対する危険度を引き上げた。

 

「とりあえず今のところ必要な情報は聞いた。約束通り牢よりましな所に映す。アルティマ、『機械の楽園』の居住区の特別舎に連れていけ」

 

「はっ!ほら案内するから立って」

 

「は、はい…」

 

アルティマに促されてクレマンティーヌは『機械の楽園』にアルティマに引っ張られていった。

 

「マシンナーこの後今後の事で話がしたい。いいか?」

 

「承知した」

 

「ではこれより解散する」

 

アインズとマシンナーは今後の事を会議するために円卓の間に転移した。

 

 

 

 

「いや~まさかと思いましたが世界級アイテム持って帰って来るとは思いもしなかった」

 

「それは俺もですよ本当にビックリしました」

 

まさか持って帰って来たものが世界級アイテムだとは思ってもいなかった。

この世界に入ってきて最も驚いた報告である。

 

「でもまだ問題はありますね」

 

「はい、ディスクの中に入っていた番外席次や破滅の竜王の事も気になりますね」

 

「こりゃ更に調べる必要ありますね」

 

「そうですね、『ワールド・エネミー』級だったら本当にヤバイですし」

 

「せめてレイドボス辺りの強さだと良いんですけど、ヤバイ奴だったらマシンナーさん、辺り一面更地にしても構いませんので思いっきりぶっ放してください」

 

「了解です」

 

ディスクの中に入っていた情報の中にあった番外席次や破滅の竜王等の情報を見て、改めて気持ちを引き締める。

 

「ところでモモンガさん、これからの予定は」

 

「はい、近いうちにリザードマンの集落を侵略しようと考えています」

 

ニグレドの報告にあったリザードマンの集落に近々攻め込もうかと考えていた。

 

「侵略した後リザードマンはどうするんです?」

 

「最初は皆殺しにしようかと考えていたんですが、もう一つの考えも浮かびました」

 

「それは?」

 

「はい、見込みのあるものがいればナザリックの傘下に入れようかと考えています、武技が使えるブレインやクレマンティーヌを指導役にして武技を覚えさせようかと考えています」

 

当初リザードマンを皆殺しにしてアンデッド化させようかと考えていたが、マシンナーも転移してきたことによりある程度の余裕が出来、他の選択肢も考えていた。

 

「なるほど、実は俺もこの世界の他種族を味方につけようかと考えていたんです」

 

「ほう」

 

「スレイン法国が人類存続を考えていて亜人種と敵対しているなら逆にこちらが亜人種に比較的友好的な勢力になれば俺たちに賛同する者達が多く現れるんじゃないかと、まあ簡単には行かないでしょうが」

 

「それもいいですね、リザードマンもその方針で行こうかな?」

 

(にしてもリザードマンって事は爬虫類だろ?ゲッターの恐竜帝国みたいだな…待てよ、もしかしたら集落の地下に帝王ゴールみたいな奴がいてメカザウルス的なのを開発している可能性も…)

 

「……ゲッター線見つけなきゃ(使命感)」

 

「は?」

 

 

 

 

 

 

 

殺風景な冷たい部屋の中、中には機械的な片眼鏡を付けた老人と笑う表情と泣いている表情の模様が半々に塗られている仮面を付けた人物が老人に向かって跪く。

 

「エ・ランテルの墓地に潜んでいたズーラーノーンが殲滅されただと?」

 

「は……カジットは強力な炎系魔法を喰らったのか死体すら残らず、協力者だったクレマンティーヌは行方不明です如何致しますか導師?」

 

「殲滅したのは誰だ?蒼の薔薇か?それともガゼフ・ストロノーフか?」

 

「いえ、それがこの間冒険者になったチーム漆黒のモモンとチーム黒鋼のレイヴンと言う輩です。2人ともこの前まで銅プレートだったらしいですが、ズーラーノーン殲滅の功績を讃えられてミスリル級になったとか」

 

「その者たちの特徴は?」

 

「はい、どちらもフルプレートで実力の高い従者を連れているとか…後はかの大魔獣『森の賢王』をモモンが倒し、これを配下にしたとか…」

 

「あの魔獣をか?近いうちに捕獲して改造を施して我が配下にしようと考えていたが…」

 

導師と呼ばれた老人は顎に手を添えて暫く考えて仮面の男に指示を出す。

 

「その者たちについての些細なことでも良い情報をかき集めろ、周辺国家に潜伏している密偵にも伝えろ」

 

「承知しました導師」

 

「それと、例の物の探索の方は?」

 

「反応が出た辺りを只今絞っておりますがまだかかるかと……」

 

「できる限り急がせろ、良いな?」

 

「はっ!」

 

仮面の男は素早く立ち上がり部屋の出入り口に向かう。

老人は杖をカン、と突いて身体を後ろに向き歩き出す。

 

「やれやれ、新型の戦闘記録をエ・ランテルにちょうど潜伏しているズーラーノーンから取ろうと画策していたが……まあいい、他の奴から採れば良いだけだ、しかし…」

 

「報告によればスレイン法国の陽光聖典が何者かによって消され、法国も被害が発生している……一体この世界で何が起こっている?もしや師が言っていた『ユグドラシルプレイヤー』なる存在がこの世界に現れたのか?ならば急いで準備をしなければならない…」

 

「我が師が授けてくれた知識を使い……作り上げた鋼鉄の軍団の完全なる完成を!」

 

老人は杖を上にあげ、高らかに叫び、部屋の奥の照明が着く。照明が着いた部屋の奥には人間、亜人、モンスター等を機械改造を施された半機械生命体(サイボーグ)がチューブに繋がれ待機をしていた。


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