シズ・デルタに恋をしたナザリックの機動兵器 作:t-eureca
あの後アインズ達が帰還した後、漆黒の剣のチームに護衛されていたンフィーレアと再会した後、ギルドからモモン、レイヴン両名のチームの成果を讃えられ両チームともクラスが銅からミスリル級にまで上がった。
アインズは「アダマンタイト級にはなれなかったか…」とぼやいていたが、マシンナーから早い時期にここまで出世できたのだから上々の成果だろうと諭され、アインズはそれもそうかと納得した。
都市エ・ランテルの中にあるリィジー・バレアレの工房の外でレイヴンの姿をしたマシンナーが先日の戦闘で開けてしまった穴の修繕工事をしていた。
「いやはや、孫を救ってもらったのに済まないね」
「いいんですよ、穴開けたのは俺なんですから気にしないでください」
リィジーとンフィーレアに開けてしまった穴の修繕工事の約束をしていたマシンナーはアルティマとシズに留守番を頼み約束通り朝一番で工房に行き、工事を始めた。レイヴンが来たことにリィジーとンフィーレアは驚き、危機を救った本人に対しそれは申し訳ないと思い最初は断るが、最終的には承諾してくれた。
「後もうちょっとで終わるので待っててください」
「ああ、終わったら中に入っておくれ。果汁水を冷やしてあるから飲んでいきな」
「そりゃありがたい、終わったら頂くよ」
リィジーの行為に感謝し、暫く時間が経ったあと、穴の修繕作業も完了し、レイヴンは果汁水が置いてあるテーブルに着き、果汁水を飲んでいる。一見すると機械系異形種が食物を食べるのは不思議な感じがするが、一部の機械系異形種のプレイヤーの中には青い猫型ロボや黄色い丸顔の侍ロボのように飲食ができるプレイヤーも存在した。
マシンナーもそんな一部のプレイヤーの一人である。(因みに時々ではあるが煙草も吸うこともある)
(さてと、これからどうしようか?)
自分がしてしまった不始末の責任も取り、これからの予定を考える。一旦ナザリックに戻り、溜まっているであろう書類を片付けようか、または未完成のナザリック警備用のロボの仕上げに取りかかろうか?とも考えていた。
「レイヴンさん」
「ん?」
レイヴンは声の主の方を振り返ると先日クレマンティーヌとカジットから守ったンフィーレアが立っていた。
「すみません、助けて頂いたのにこんなことまで…」
「気にするな。自分でやった不始末だ、なら本人が償うのが筋ってもんだ」
「レイヴンさん、ありがとうございます」
「良いよ、穴開けたの許してくれたんだ、こっちがお礼を言いたいぐらいだよ」
壁の穴を塞いでくれた礼を言うンフィーレアにマシンナーは穴を開けてしまった事を許してくれたお礼を言う。
「あの、レイヴンさん、一つ質問をしていいでしょうか?」
「ん?何だ?答えられる範囲でなら答えても良いが?」
「ありがとうございます、あのエンリから聞いたんですがレイヴンさ…いえマシンナーさんが腕を発射したり掌が高熱化してカルネ村を襲った騎士達を殺したって聞いたんですけど本当なんですか?」
「あ~……」
ンフィーレアからの質問にマシンナーは少し一考するがンフィーレアに肯定の言葉を話す。
「…事実だって言ったらどうする?」
「!?本当だったんだ……あの…その話を聞いて思ったんですけどマシンナーさん、貴方の種族は一体何の種族なんですか? 僕の知っている範囲では、マシンナーさんの種族を聞いたことがないのですが…あ、無理なら別に話してくれなくても…」
「いや良い、いずれ広く知られるようになるだろうからな、話そう。だがこれからする話はまだ他言無用にしておいてくれよ?」
「は、はい、わかりました!」
「なら話そう、まずわかりやすく言うと俺は金属の生命体だ」
「金属の生命体?」
「ああ、人間でいう四肢や骨格、皮膚や目が本物の金属で出来ていて、臓器などは無いが代わりに似たような物で構成されている生命体だ。俺のような人型も存在するが中には獣のような姿に変形するようなものや外見が完全な獣やドラゴンのような姿をしたものもいる」
「そんな種族が…でもそれなら何故今まで発見されなかったんですか?」
「簡単だ、今までバレないように身を潜めてたりさっきも言ったように獣や物等に変形して隠れてたからだよ。それに外見だけなら完全に人間と見分けがつかない奴も居たからな、そう簡単にはバレない」
半分嘘と真実を交えながらレイヴンは自分の種族について簡単に説明をする。
「じゃあレイヴンさんの今の姿も仮の姿なんですか?」
「そうだな、まあいずれ見せることになるだろうから。俺の本来の姿はまた今度ってことで」
「あっはい、わかりました」
「後はまだあるか?」
「いえ、後はもうありません。ありがとうございます」
「いいさ、これから長い付き合いになるんだ。じゃあ壁も直したしそろそろお暇するよ」
「わかりました、ではまた」
「ああ」
レイヴンはンフィーレアに別れを言い、工房を出て行った。
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宿屋に戻ったマシンナーは部屋に入り、これからの事を考えている時に不意にあることを思いつき、アルティマに話しかける。
「アルティマ、そういえばこの町全体の詳しい地図は作成してたか?」
「いえ、まだ作成しておりません」
「そうか、ならちょっとこの町の地理を散策して調べるついでに地図も作成しておくか」
まだこの町の地理をまだ詳しくは知らなかったので、依頼も入っていない今のうちにやっておこうかと考えた。
「…お供します」
「ああ、ありがとう」
「…マシンナー様、それでしたら二手に分かれたほうが丁度良いかとアルは愚考します」
「それもそうだな、じゃあメンバーはどうするか……」
「ならばマシンナー様はシズと行動というのは如何でしょうか?アルには
「ん?俺は別に構わんがシズは?」
「……マシンナー様が良ければ異存ありません」
「わかった、なにかあったら些細なことでも良いから連絡頼むぞアルティマ」
「承知しました(よし…!)」
アルティマは自分の提案に主が乗ってくれた事に内心ガッツポーズをする。マシンナーがこの辺りを散策すると聞いた瞬間、アルティマはマシンナーとシズを一緒に散策させようと考えた。共に散策させれば大きくないにしろ何らかの進展があるだろうと思ったのだ。
(たとえ大きくなくとも小さな一歩は必ず出るはず、アルは邁進願っていますマシンナー様……)
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(総隊長が作ったチャンス……無駄にはしない!)
(これは予期もしないラッキー、何とか活かしたいところだが)
(けど…)
(だけど…)
((……何を話そう?(か?)))
勿論目的である地理の散策は忘れてはいないがマシンナーとシズは互いにこのチャンスを大きく活かそうと決意するが互いに恋愛経験なんて無い、ましてこうして異性と街で歩いた事すらない。普段ナザリックで2人で歩く時はあるが、シズはメイドとしての職務としてマシンナーは嬉しさ半分とナザリックのこれからの計画の事を考えていた為、あまりそう考えていなかった(2人とも嬉しいという気持ちはあったが)だがいざこういう状況になってしまうとどうしてもそう意識してしまう。
(くっそ~、たっち・みーさんとかにデートとかでのアドバイスを聞いておけば良かった…)
(……駄目元でアルべド様にアドバイスを聞けば良かった)
前者は既婚者なのでまだ説得力があるが後者は暴走しそうな気が若干ありそうな気がするが……。
(落ち着いて考えよう。そうだ散策の途中に何気なく話しかけよう、それにはまず最初に行く所を決めて…)
(とりあえず話しかけてみないと…)
「「なあ/あの…」」
((あ…))
お互いに話しかけるタイミングが偶然にも重なってしまい2人とも少し困惑する。
「あの…お先に」
「あ、いや、シズからでいいぞ」
「いえ…マシンナー様からどうぞ」
「ああいやシズから…」
この後暫くどちらが先に話すかで2人とも譲り合うやり取りが続いてしまうのであった。
「…メイドが主人より先に言うのは失礼」
「そうか、ならまず北の方角から散策しようかと思うんだがどうだ?」
「…了解」
マシンナーの提案にシズが了承し、北の方角に進もうとするがマシンナーは一瞬足を止める。
「…どうしました?」
「いや、シズの話を聞くの忘れていたな、すまない」
「あ…」
歩こうとする前にシズが喋りかけていたことを思い出したマシンナーは一瞬だけ忘れていた事を謝罪する。
「マシンナー様が謝る事では…私がさっき言いかけた事もどちらの方角に進もうかという事で…」
「そうか、ならシズ、お前の行きたい方向を教えてくれ」
そう言うとシズはこれから向かう方角の逆側を向き指を指す。
「南…」
「よし、なら南に行こう。さっき発言を譲ってもらった御礼だ」
「っ、ありがとうございます…」
「では行くか」
「…はい」
マシンナーとシズは先程の道から逆の方向に歩きだした。
お互いセンサーを使って道順を記録していく、そして主に目立つ建造物やこれからの計画に必要な場所の位置情報を記録していく。
(やっぱりこういう事を調べるのは大事だな、大まかな事を調べ終えてアルティマとシズの情報を合わせてとりあえず簡単な地図を作成したらモモンガさんに渡そう)
頭の中の記録を使いながら、地図をどう作ろうかと考えていく。
そのままマシンナーとシズが担当する区域を進んでいく。
(流石に今は仕事以外の話は出来ないか、でもこうして二人で歩いているだけでも幸せだな)
流石に仕事をしながらシズとの距離は詰められないと思いながらもこうやってシズと歩いているだけでもマシンナーは幸せだった。
(でもなんとかしてアタックはしたい、う~んちょっと怖いがアルべドとかに聞いてみようか?)
「…マシンナー様」
「うん?どうしたシズ」
「……この辺りの区画の記録完了」
「む、そうか残りの区画は確か…」
「残りの区画は後三つ、私達から見て右から行くルートの方が時間を比較的短縮できる」
「よしならばそのルートで行こう」
「…了解」
次の最適なルートをシズが提案し、マシンナーはそのルートに沿って行くことに同意する。
2人はそのルートを進んでいく。進んだルートで経営されている店や道順を記録していく最中にマシンナーはある露店を発見する。
「ん?」
「……どうしました?」
「ちょっと待っててくれ」
「?……はい」
マシンナーの言葉にシズは「?」マークを浮かべながらマシンナーを待つ。
マシンナーはその露店に立ち寄る、露店はジェラート店だった。店の主のお婆さんに2本注文する。
「いらっしゃい、立派な甲冑だね」
「褒めてくれてありがとう。すまぬがこれを二つくれないか?」
「良いけど味はどうするんだい?」
「一本はバニラ、もう一本はイチゴで」
「はいよ、ちょっと待ってな」
お婆さんは慣れた手つきでジェラート二本を作り、マシンナーに渡す。
マシンナーはジェラート分のお代を渡すとシズの所にまで行った。
「ありがとう、お題だ」
「毎度あり」
「シズ」
「…マシンナー様?」
「イチゴとバニラどっちがいい?」
「…え?」
「気分転換にどうかと思ってな、どっちを食べる?」
シズは少し考えてイチゴを選択する。
「…イチゴ」
「わかった、ほら」
「ありがとうございます…」
マシンナーからジェラートを受け取りそれを口にするシズ。
イチゴの甘酸っぱさとジェラートの甘みが口いっぱいに広がっていった。
マシンナーもジェラートを口に含む。
「おいしい…」
「そうだな」
シズの言葉にマシンナーも同意する。
「次来たときは違う味でも頼んでみるか?」
「…マシンナー様」
「ん?」
「…食べます?」
そう言ってシズは持っているジェラートをマシンナーに差し出す。
「良いのか?」
「……どうぞ」
「悪いな…」
シズに進められてシズのジェラートに口をつけるマシンナー。
イチゴの甘酸っぱい味に一人満足しているとふとシズのほうを向くと目が合った瞬間、下の方を向いた。
「どした?」
「…いえ」
シズは一瞬誤魔化そうとしたがナザリックのモノとして至高の御方に嘘はつけないと思い、若干顔を赤らめながら呟いた。
「……私が食べてた所」
「………え?」
シズの言葉にマシンナーは先程シズが食べていた場所と
先程自分が食べた所を思い出す。それを思い出した瞬間、マシンナーは頭の中が一瞬爆発したような感覚に襲われる。すぐに鎮められたものの一瞬だけ鎧の内部から排熱した。
「あ…その…すまん、気づかなかったんだ」
「……いえ、私こそ配慮が足りなかった」
「ああいや気にするな、別に気にしてないし、寧ろ良かったというか…」
「え……!」
(ゔぁああああああ!何言ってんの俺ぇ!?)
思わぬ失言に再びプチパニックになるマシンナーだがアルティマからの
『マシンナー様』
『おっおお、アルティマか?どうした?』
『はい、僕の方は後少しで完了するので《
『いやなんでもないぞ、なんでもない』
『……わかりました、それではまた』
『ああ、御苦労』
アルティマの
(なんか変な間があったが…まあ後で聞けばいいか)
「さて早く終わらせようかシズ?」
「……了解」
マシンナーがそう思っているのとは反対にアルティマは…。
(さっきの慌てよう…もしやタイミングが悪かったのですかマシンナー様!?)
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マシンナーとシズが散策を終えてマシンナー達が宿泊していた宿でアルティマと合流し、それぞれの情報を合わせて簡単な地図を作成している。作成している最中にアルティマが誰かの
「マシンナー様、先程シャルティア殿に同行しているローグから
「そうか、内容は?」
「はい、先程スレイン法国の者達と思われる部隊と交戦、シャルティア殿のお力添えもあり、殲滅したとのこと」
「またあの国か…」
「それでその部隊の装備をできる限り回収したらしいのですが一つ不可解な物を発見したと」
「不可解な物?」
「はっ! シャルティア様のエインヘリヤルの一撃を受けても全く無傷の中華服のような装備があったと…」
「何…!?本当か?」
「はい、確かな情報です」
「今からアインズにこのことを報告する、2人はいつでもここを出られるよう荷物を…って言うほどではないが準備をしておけ」
「はっ!」
「…了解」
例の中華服登場でござるよ。