シズ・デルタに恋をしたナザリックの機動兵器   作:t-eureca

32 / 72
2016年も今日で最後ですね、皆さん良いお年を!


第31話 事前の準備は入念に

その日、アインズは自身の執務室でマシンナーと対談をしていた。

他愛もない会話から始まり、お互いの情報整理、今後の活動方針や必要なアイテムの有無や量、戦略的拠点の確保、今後外に出る部下と<マキナ>の人員の割り振り、今ある資源や周辺国家の情報収集等。

 

そしてこれから冒険者として出るので、どのように行くのかを相談することにした。

 

「それでやっぱりマシンナーさんのお供はアルティマとシズで決定ですか?」

 

「はい、2人とも即承諾してくれました」

 

「良かったですね、私は前に話した通りナーベラルを連れていこうと思っています」

 

「わかりました、あの…ちなみに聞くんですけど」

 

「はい?」

 

「アルべドかシャルティア辺り駄目だったんですか?」

 

「あ~……」

 

モモンガさんは少し気まずそうな顔?になりながら。

 

「マシンナーさん、逆に聞きますけど、どちらか連れていったらどうなると思います?」

 

「……ちょっとやばいっすね」

 

「でしょ」

 

ナザリックの面々の多くは人間の扱いは悪い、カルネ村にいたエンリ姉妹も危うくぶった切ろうとしたし。

それにシャルティアには『血の狂乱』のスキルがあったな、あれはちょっと厄介だ。

 

「そういやモモンガさん、戦士で行くらしいですね」

 

「はい」

 

「その…大丈夫なんですか? モモンガさん戦士職のスキルとか持ってないから正直心配で…」

 

「安心してください、いざという時は本来の戦い方で行きますから」

 

「わかりました、でも無理はしないでくださいね?」

 

「もちろんです」

 

「装備はあの時見せたあの鎧ですか?」

 

「ええ」

 

大体予想してたがやはり黒い鎧で行くらしい。

あの鎧ってやっぱりたっちさんリスペクトかな?

鎧自体はシンプルでかっこいいんだけど、でもインパクトも大事だからな~…そうだ。

 

「モモンガさん、俺考えたんですよ」

 

「何をですか?」

 

「モモンガさん、有名になるのはやっぱりインパクトも大事だと思うんですよ」

 

「はあ……」

 

「だからモモンガさんの鎧の外見をちょっといじろうと思うんです」

 

「え?」

 

「まず、そうですねえ~、モモンガさん骸骨だからやっぱりドクロのマークはいると思うんすよ」

 

(なんか嫌な予感が…)

 

「あとモモンガさん声が「アイツ」に似てるんで、こいつをベースにしようと思うんですよ」

 

俺はアイテムボックスから『髑髏の魔神』の画像をモモンガさんに見せる。

見せた瞬間、モモンガさんの顎が「パカッ」と開いた。

 

「まず兜をちょっと尖らせてですね…」

 

「いやあのマシンナーさん」

 

「なんですか?」

 

「これ悪役ですよね?」

 

「立派な主役機ですよ?」

 

「え?」

 

「ちなみにパイロットはコイツらです」

 

そういって俺はパイロットの『地獄の2人組』の画像を見せる。

 

「どう見ても悪人じゃないですか!」

 

「なんて事言うんですか! こう見えても2人とも「善良」な公務員ですよ!」

 

「嘘だ!」

 

うんやっぱりそういう反応するよね。

まあ俺もコイツらが公務員だって知った時は同じ反応したけど。

 

「いやでもやっぱりその画像と同じような外見になったら絶対怪しまれます」

 

「漆黒の全身鎧も結構怪しまれると思いますけど?」

 

「某狂戦士ほど危なそうではありませんよ、とりあえずそのデザインは却下ですよ」

 

「え~……声が真上みたいだから大剣持ってナーベラルと一緒に『俺たちが地獄だ!』って言ってほしいのに」

 

まあ真上の武器は二丁拳銃だけどな、剣使うのは海道だけど。

 

「いや言いませんよ……」

 

「でもこの前は俺と一緒に言ったじゃないですか」

 

SKL知らないのに何で言えたんだろう? もしかして身内の中に中の人がいたのかな?

 

「あれは……なんか言わなきゃいけない気がして…」

 

「髑髏つけます?」

 

「いりません」

 

「ちぇっ…わかりましたよ…」

 

「わかればよろしいんです」

 

「じゃあ『マジンサーガ』の方のZの鎧を……」

 

「やりません!!」

 

その後も一悶着あったが、アインズとマシンナーとの対談は終わり、マシンナーは<マキナ>の拠点である<機械の楽園>に戻っていった。

 

「ふぅ……」

 

モモンガは椅子に背を預け息をつく。しかしそれは疲労によるものではなかった。

 

(久しぶりにああいう会話をしたなあ……)

 

ここ最近色々な出来事があったため精神的な疲労が若干あったが、マシンナーとの会話でそれはなくなっており、

心に余裕もできている。

 

(いきなりナザリックごと異世界に転移、更にギルドのみんなが作ったNPCに意思を持った……。最初は不安だったけど、マシンナーさんがこっちに転移してきたのが一番驚いたな…)

 

勤めている会社が倒産寸前にまで追い込まれたので、一時期泣く泣く離れることになったマシンナー。

最悪の場合引退するかもしれないと言って、自分の装備を託していった。

しかしユグドラシルが終了するギリギリで転移してきた(落ちてきたけど)。

マシンナーの発見、その知らせを聞いた時は思わず守護者の目の前であるにもかかわらず驚いた。

しかし意識不明と聞いて動揺したが、命に別状はないと聞いて安堵した。

 

意識が戻り、久しぶりにマシンナーと話した。尤もほとんどがユグドラシル時代の思い出話ばかりだった。

そして今後の活動と最終的な目標にマシンナーは大いに賛同し、喜んで協力すると言っていた。

 

(本当頼もしいよ、あの人は…)

 

これ以上になく頼もしい事だった。自分一人ではどうにも出来ない局面があっても共になら切り抜けられるという確信と言っても過言では無かった。

 

(でもやっぱり油断は出来ない……。周辺国家もそうだけど今のところ一番危険なのはスレイン法国だな。やっぱり『魔法封じの水晶』以上の切り札がある可能性もある。世界級アイテムも持っている事もある。マシンナーさんもスレイン法国が一番プレイヤーが存在する可能性が高いと言っていたし……)

 

モモンガはこれから活動するメンバーの事を思い冷静に思考を巡らせる。

余裕があると言っても、油断は許されない状況である事には変わりない。

 

(まあとにかく今は今後の計画を進めよう。あ、その前にカルネ村にルプスレギナと一緒に配属する事になったゴルドソウルにも一度会って置かないと…)

 

モモンガは再び今後の事について考え始めた。

 

 

 

 

 

<機械の楽園>の司令官室に戻った俺は外に出る供の一人シズに今後の事を話していた。

もう一人の供であるアルティマは今ソニック・スレイヤーの定時報告を聞きに向かっている。

 

「というわけで近いうちに俺、シズ、アルティマで冒険者として活動するつもりだ」

 

「……わかりました」

 

「それで冒険者としての名前だが、俺は「レイヴン」と呼べ。シズ、お前は「マグノリア」だ」

 

「はい…」

 

「で、アルティマは「ジナイーダ」と呼べ。良いな?」

 

この名前は某フロムゲーから取った物である。傭兵といえばこれだろ(冒険者だけど)。

まあ他にも候補としては「サーシェス」とか「アーバイン」とかもあったけど。

 

「それとすまないな、出る世界の都合上ライフルはどうしても持ってけなくてな。仕方ないとはいえボウガンに変えさせてしまって……」

 

いざとなったら本来の姿で戦っていいとは言ったが、できれば本来の戦闘スタイルで戦わせたかったという思いもあった。

 

「いえ…! お気遣いいただき…ありがとうございます…」

 

まあ一応ボウガンは銃と同じ感覚では扱えると思う。(リロードは大変だが)。

 

「まあなんだ、とりあえず一度偽名で一回呼び合おう」

 

「…え?」

 

うっかりボロがでたらまずいしな。

念のため…。

 

「まあ試しに『レイヴン』と呼んでみ?」

 

「……はい」

 

なんか間があったがまあいいや。

 

「レ……レイ……ヴ…///」

 

え? なんで顔赤くなんの?

ま、まさかこれセクハラか! セクハラなのか!?

 

「お、おいシズ! なんかよくわからんが無理するな! 嫌なら別に嫌って…」

 

「だ…大丈夫…です」

 

「そ、そうか…」

 

気を取り直してもう一度やり直してもらうことにした。

 

「レ…レイヴン…」

 

少々ぎこちなかったがなんとか呼べた。

 

「う、うむ、よく言えた。では次は俺だな」

 

「…はい」

 

「マギー」

 

「…マギー?」

 

「あ、いやこっちの方が呼びやすいから、こっちの方で呼んだんだが」

 

「駄目だったか?」と言うが、シズは「…いいえ」と言い。

 

「至高の御方の望むままに…」

 

「ならいい、次は冒険者としての服装はどうする? 俺の場合は顔は変えられるが…」

 

服装を変えるのも一つの手だが、シズはアイパッチをしている。

もし何らかの形で本来の姿で行けば、もしかしたら身元がばれるかもしれない。

 

「……大丈夫です」

 

「ん?」

 

「……少しお待ちを」

 

「……アナザーモード起動」

 

「え?」

 

シズが「アナザーモード」と言った瞬間、シズの姿が変わり始める。

アイパッチはそのままだが、赤金のストレートロングから黒髪になり、髪形もポニーテールとなる。

目の色もエメラルド色から黒色になっており、マフラーも消え、首にはユリが付けているチョーカーと似ている。

メイド服も金属プレートの黒地に金色のラインが入っており、腕部のプレートは紫の文様が刻まれている。

その姿を見てマシンナーは姫とも呼ばれるような大和撫子を連想する。

 

(え? シズにこんな機能があったのか? てかあの人も教えてくれなかったぞ!)

 

予想外の出来事に一瞬ポカンとするがすぐに意識を取り戻し、思わず見惚れてしまう。

 

(いつもの姿からこうも大きく変わったのには驚いたが、やばい……滅茶苦茶綺麗だ。昔の日本のお姫様を連想してしまう。当時の日本に今のシズのようなお姫様がいたら、絶対歴史に残るぞ。そのポニーテール…俺を惚れ直させる最終兵器ですか?……うんごめんなさい…これは…)

 

(こっちのシズも滅茶苦茶タイプです、センターです、ドンピシャです)

 

「……マシンナー様?」

 

「いや…綺麗だなって思って…」

 

「…! ……ありがとうございます」

 

「ああ…でもその姿は一体…」

 

「……博士が極秘につけました」

 

「あの人が?」

 

「……はい」

 

「(…マジか)その姿の事を知っているのは?」

 

「……プレアデス以外はいません」

 

「アインズもか?」

 

「……はい」

 

あの人もしかして教えるの忘れてたのかな?

ん? てことはプレアデス以外で知っているのって俺が最初? なんか嬉しいな。

 

「そうか、なんか嬉しいな…」

 

「……! ありがとうございます…」

 

「んじゃまあお返しに俺の秘密でも見せるか」

 

「……え?」

 

「カラーチェンジ、<ブレイヴ>」

 

一旦俺の身体の色が灰色になり、そこからまた新しい色が出てくる。

黒を基調としたカラーリングから、青、赤、白等のトリコロールカラーになっていく。

そのおかげでカラーリングだけなら勇者ロボ風の見た目になっていった。

これはかつて俺がアインズ・ウール・ゴウンに入団する前のカラーリングだ。

迫力と威圧感を出すため、身体の色を黒く染めたが、割とこの色も気に入っている。

何気にこのカラーにしたのも久しぶりだ。

 

「どうだ? まあ変わったのは色だけだが…」

 

「いえ…かっこいいです……とても」

 

「そうか?」

 

シズに褒められて少し照れる俺、このまま行けるとこまで行こうと思ったが、アルティマが扉をノックしたので、シズとの会話を終わらせる。

もう少し話したかったがまた次の機会もある。

俺も冒険者としての姿はどうしようかな?

まあボチボチ考えるか。

 

 




シズのアナザーモードはweb版のシズの姿をベースにしてあります。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。