シズ・デルタに恋をしたナザリックの機動兵器 作:t-eureca
「ん…」
目を開けた俺は開口一番にこう言った。
「知らない天井だ……」
エヴァで言ってみたかったセリフのひとつを言い、ベッドから身を起こす。
確か俺はユグドラシルにログインして意識を失ってしまったんだっけ?
というかよく見るとここ俺の部屋じゃないか。
壁に設置している武器や制作途中の俺の作品(兵器)……見覚えのあるものがいくつもある。あれ?なんでいつもの円卓じゃないの?、さっきのエラーのせいか?
「てか俺自分の部屋で「知らない天井だ……」って言ったのか、うわ恥ずっ!」
思わず顔を押さえる俺、しかし「ガチャリ」と開いた扉から入ってきた人物に驚愕した。
「失礼します……。ッ!マシンナー……様?」
「……え?」
間抜けな返事をしてしまったが。これは驚きのあまり、頭の中が真っ白になったとでも言おうか。だが、次の瞬間凄く平坦なものになる。その現象に凄く戸惑ってしまった。
あ、まただ。なんなのこれ?
しかし俺は部屋に来た一人の少女を確認する。
ミリタリー風味の飾り付けに赤金のストレートロング。
綺麗な翠玉の瞳ともう片目を覆うアイパッチ。
金属で覆われた箇所がある給仕服と迷彩柄のマフラー。
ポーカーフェイスに綺麗な顔立ち。
ナザリック地下大墳墓第9階層にいる戦闘メイド、プレアデスの一人であり俺が愛してやまなかった、シズ・デルタ(正式名称
その彼女が俺に話しかけてきたのだ。
(あれ? NPCってしゃべれたっけ?)
シズがしゃべった事に驚きと疑問を浮かべるが、また平坦になってしまう。
うっとうしいなこれ……。
そう思っている内にシズが俺のベッドの近くまでに来ていた。
ああヤバイ、久しぶりに見たからいつもより可愛く見える。いやいつも可愛いけど。
「体の状態はいかがでしょうか……?」
「え、あ、だ、大丈夫……えと、ここは?」
少し呂律が回らなかったが、自分が大丈夫だということを伝える。
あれ? 何か自分の声が変わってる? 元々声は低い方だったが更に低くなっていると感じた。あ、でも何か渋くてカッコイイ……。
「ここはナザリック地下大墳墓、マシンナー様の自室でございます……。
ナザリック外の草原にて、意識不明になってお倒れになっているところを、セバス様が保護致しました……」
「そうか…」
やはりここはナザリックにある自分の部屋か……。は? いやちょっとまて、意識不明になっていた? 草原? 沼地じゃなくて? てかセバスってたっち・みーさんが生み出したNPCだよな?
何がどうなってる?
そしてまた鎮静化、もう驚かねえぞ。
それよりも俺は別の事で驚いている。
やっべシズ可愛いぃぃぃぃい!こんな喋り方なのか。
静かな口調とポーカーフェイスが特徴の彼女。そんな彼女の種族は最初に自分が選択した種族、
改めて近くで見ると本当に人間のようだ。しかもギルドのNPCの中では唯一のガンナーである。腰に装備したライフルがカッコイイ。
シズがこういう風になっているという事は他のNPCもだろうか?
NPCで俺は自分が生み出した存在を思い出す。
(なら俺の軍団の隊長格と、領域守護者のあの2体はどうなってるんだろう?)
ユグドラシルで自分のNPCが作れるということを知り、俺は全部で7体のNPCを生み出したのだ。機械系モンスターだけの軍団を作りたかった俺はそのうちの5体を軍団の隊長格として設定し、
残りの2体を領域守護者にした。後で会ってみなきゃ…。
「シズ、頼みたいことがあるんだが……」
「は…何なりと…」
おお、綺麗なお辞儀。
だがやっぱり自分のいつもの声とは違う。それに口の中が冷たくて、なんだか鉄の味がする。
「鏡持ってきてくれないか? 自分の姿がどうなってるか確かめたい」
「こちらに」
「はやっ」
俺の部屋に置いてある姿見を即座に持ってきた。目の前に映った自分の姿に驚きが限界突破どころか天元突破してしまう。
俺は自分の顔をまじまじと見る。
「俺…だな、うん…」
言葉に少し間が空く。
それは現実世界のいつもの顔ではない。
ロボットアニメに出てきそうな外見をした身体、色は全体的に黒と白をベースに細かい所に赤や青の色がある。
金属特有の輝きと、堅牢そうな装甲、マッシブな体格。
胸部にはフィルターや、発射口と放熱板がある。
身体全体をよく見ると小型のスラスターもついていた。
そして顔はまさしくロボアニメのライバルメカのような風貌をしていた。顔に左右対称に鋭利な角がついており設定ではこれがアンテナとなっている。
目は黄色でその下に赤いラインがはいっており、血涙にも見える。人間の鼻と口を模したような部分があり、口元が動いているのを確認した。
たしか戦闘時のフェイスガードも展開できるはず、後で試そう。
「はい…貴方は紛れもなく至高の御方であられる、マシンナー様です……!」
さっきと同じ口調だったが喜びが混じった声色でシズは肯定してくれた。
次回でようやくモモンガ様と再会。