シズ・デルタに恋をしたナザリックの機動兵器   作:t-eureca

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第24話 シズ専用強化外骨格ジャガーノート

「……異常なし」

 

シズはもう既に何十回もしたであろうジャガーノートの点検をしていた。

シズが着けているマフラーと同じ柄の迷彩色のカラーリングを施された装甲には傷どころか埃一つ無かった。

シズはそれに満足して整備道具一式をしまう。本来至高の御方が作った装備を点検とはいえ一度分解する事を躊躇したが、マシンナーから「一応念のため点検しておいてくれ」と言われたので、万全の状態まで何十回も点検した。整備道具一式を収納している箱をアイテムボックスに入れようとした時、マシンナーから<メッセージ>が入った。

 

『シズ』

 

『はい……なんでしょうか?』

 

『今からジャガーノートのテストをしようと思うんだが、大丈夫か?』

 

『大丈夫…です…すぐにそちらに向かいます』

 

『わかった、俺の部屋で待っているぞ』

 

そこでメッセージが切れ、シズは身なりを整えてマシンナーの部屋に向かった。

 

 

 

 

俺がメッセージを切って暫く経ってシズが部屋に入ってきた。

 

「よく来たな」

 

「マシンナー様の命令より優先する命令…ない」

 

まあ、今のナザリックで二番目に偉いのは確かに俺だからな。

さてジャガーノートが実戦に耐えられるものかどうか確かめないとな。

いや、実際俺の装備の次につぎ込んだからな、ジャガーノート…。

でもなんかアクシデント起きてシズが危険な目にあったら、首をつるか、確実に切腹する自信がある。

 

「うむ、ありがとうシズ。では実験場所はナザリックから離れた場所にする、一応二グレドのスキルを使って丁度いい場所があったのでな」

 

本当は第六階層の闘技場で実験する予定だったんだけど、ジャガーノートは全身武器の塊と言ってもいい装備であり、武装を一斉発射すれば俺の火力に匹敵する威力も叩き出せる。この前の模擬戦で自分の火力を見て、闘技場を使うのをやめた。

 

「念のため聞くが、マニュアルは読んだか?」

 

「5回程……読み返した」

 

(マジか、作った俺が言うのもアレだけどそれなりの枚数あったぞ?)

 

もしかして読みにくかったか? それなりに丁寧に書いたんだけど…。

 

「……もしかして読みにくかったか?」

 

俺の質問にシズは首を横に振った。

 

「……とても読みやすかった」

 

「そうか(ほっ)、いや、本格的なマニュアル作ったのはあれが初めてだったのでな、不備が無くて良かった」

 

内心ホッとしながらハハハ、と笑いながら頭を掻く俺であった。

 

 

 

 

俺とシズは実験場所に選んだ場所に行き、シズにジャガーノートを装着させる前にシズに今回のテストの流れを言う。

 

「シズ、今回のテストの流れを言うぞ」

 

「…はい」

 

「うむ、まずはジャガーノートの基本動作を一通りやり、次に兵装の試し撃ち、最後に俺のスキルで召喚した機械種との実戦だ、良いな?」

 

「…はい」

 

「良し、装着しろ」

 

「…はい」

 

そういうとシズは端末状態のジャガーノートを構える。

 

「ジャガーノート…起動…」

 

「イエス・マム…」

 

そして僅か0.1秒でシズにジャガーノートが装着された。

シズがいつも身に着けているマフラーと同じ迷彩の装甲、シズの顔を保護するバイザー兼複合センサー、無骨ながらも重厚な外骨格の腕、ミサイルポッドや固定用のアンカーが内蔵されて脚部、そしてジャガーノートの最も特徴的な武装、肩に装着されている大型キャノン砲「シヴァ」。

無骨な強化外骨格をシズのような美少女が纏う。これだけでもかなりの浪漫だが、俺の最高傑作の一つをシズが纏ってくれた事に、内心感動していた。

そして何より……。

 

「……美しい」

 

美少女のシズとメカチックな兵器のジャガーノートのアンバランスさが俺にはたまらなく素晴らしいと思った。

 

「……え?」

 

「あ!いや、な、何でもない! 気にするな…」

 

「……は、は…い」

 

何声に出してんだ俺は…、やばいどうしよう……。と、取りあえずテストを続けよう、気まずいが……。

 

「じゃ、じゃあ…基本動作のテストをしようか」

 

「…はい」

 

若干気まずい思いをしながらも、俺はシズに基本動作をするように命ずる。

強化外骨格の装甲で覆われた手足をいつもと変わらない速さで動かし、外骨格の大型アームもシズの思い通りに動いている。

 

「よし、次は武装のテストだ、今から的を作るから俺が言った武装を使え」

 

「…はい」

 

俺はスキルを使い鉄くずから案山子を複数作り出した。

 

「シズ、まずは大型アームのガトリング砲を使え」

 

「…了解」

 

俺の指令にシズはジャガーノート大型アームに7銃身のガトリング砲が装着される。

口径は30㎜、かつて実在した攻撃機A-10サンダーボルトⅡのGAU-8アヴェンジャーをモデルにしたのだ。

 

「ロック…完了…」

 

「よし、撃て」

 

「…ファイア」

 

ヴウゥゥゥウン!と轟音を上げ、砂埃が上がる。そして10秒経った後俺は「撃ち方やめ!」と言い、シズに攻撃を止めさせる。砂煙がやみ、その結果に唖然とした。

 

(……全部の案山子が粉微塵にされとる)

 

一応十体ぐらいいたと思うんだが、それを十秒で跡形も粉微塵にするとは思わなかった……。

恐るべしアヴェンジャー、恐るべしA-10神、そしてこれの開発に携わったルーデル閣下マジ破壊神…。

そして全ての案山子を粉微塵にしたシズは超カッコいい!

 

「…マシンナー様?」

 

「いや、何でもない…素晴らしかったぞ」

 

「!?……ありがとうございます」

 

「よし、この調子で行こう次はミサイルだ、弾頭の種類はジェリコ」

 

「…了解」

 

俺は再びスキルを使い、小型の空中用ドローンを大量に出現させる。

 

「ロック…完了」

 

ジャガーノートの肩と脚部のミサイルポッドが展開される。

 

「よし、やれ」

 

「…ファイア」

 

展開されたミサイルポッドから一斉にミサイルが発射される、そして発射された弾頭が割れ、中から多くの小型ミサイルが発射され、小型のドローンを次々と落としていった。

 

「よし、次はシヴァのテストだ」

 

「…了解」

 

「じゃあ、ちょっと待っててくれ、少々大型の的を出すから」

 

「…わかりました」

 

俺はアイテムボックスから、少し大きい金属の塊を出した。

それを今までの召喚と同じ要領でモンスターを生み出す。

 

「『アイアンウォール・ガードナー/鉄壁の守衛』起動!」

 

金属の塊から重装甲で覆われたコキュートスサイズの巨体、俺の体を覆えるぐらいの巨大なシールドを装備した機械種、「アイアンウォール・ガードナー」を二体呼び出す。

こいつは壁モンスターとしては優秀な防御力を持っており、ある程度の魔法ならば喰らっても逆に跳ね返すカウンタースキルも持っているのがこいつの良いところだ。

……まあジャガーノートには魔法を使った武器無いけどね。

え? 別に普通の的でいいんじゃないかって? さっきまで使っていた案山子やドローンで良いんじゃないかって?

いや俺も最初そう思ったんだが、今までのジャガーノートの武装見て、ジャガーノートの武装の中で最高クラスの威力を持っている武器の一つである『シヴァ』の威力は絶対に恐ろしい威力をたたき出すのは確実だと思って、防御力に特化したLv50のモンスター、アイアンウォール・ガードナーを呼んだのだ。

 

「結構堅いが、シヴァの威力なら造作もない、遠慮なくぶち抜いてやれ」

 

「…了解…ロック…完了」

 

ジャコン…とジャガーノートの大型キャノン砲「シヴァ」をアイアンウォール・ガードナーに向ける。

 

「良し、撃て!」

 

「……ファイア」

 

ドゴォォォン!!?

 

(え?)

 

先程より凄まじい轟音と砂煙が上がる。そして徐々に煙が晴れていき、その光景に俺は驚いた。

 

(小さいクレーターが出来ちゃってるし!?)

 

アイアンウォール・ガードナーは無残に砕け散っており、そして着弾した場所は、小さいクレーターになっていた。

 

(マジか、予想以上の破壊力だぞおい…)

 

俺は自分が作った装備の恐ろしさを改めて思い知ったのだった…。

でもいつまでも呆けるわけにもいかない、すぐに実戦テストに取り組むことにした。

 

「シズ、最後に実戦テストをする、いいか?」

 

「いつでも…大丈夫…です」

 

俺は鉄くずを多めに持ち、空中高く放り上げる。

そして複数の機械種を召喚した。

 

「『マシン・トルーパー』『ガトリング・オーガ』『アイアンウォール・ガードナー』『クラッシュ・アーム』起動!」

 

鉄くずが凄まじい速さで俺が召喚したモンスターの体を形成していく。

 

緑色の装甲で覆われ、モノアイを光らせるマシントルーパー。

青い重装甲と大型のガトリングガンを装備し、鬼のような一本角をつけたガトリング・オーガ。

先程召喚した大型のシールドを装備したアイアンウォール・ガードナー。

そして丸太の如く太い両腕を持ったクラッシュ・アームが召喚された。

 

「よし、殺れ、シズ」

 

「……了解」

 

シズがゆっくりと動き出す。それに合わせてマシントルーパーとクラッシュ・アームが動き出し、ガトリング・オーガが援護射撃を開始する。それを守るようにアイアンウォール・ガードナーがオーガの前に出た。

シズに向ってガトリングガンの弾丸が襲い掛かる。

 

「……シールド展開」

 

ブゥゥゥン、と音がなると、シズの周りに不可視のシールドが張られ、弾丸を跳ね返した。

 

「……!」

 

ガトリング・オーガは驚いたような反応をする。しかしマシントルーパーとクラッシュ・アームがシズに接近していた。マシントルーパーは左手に装備したガトリングガンを発砲するが、先程と同じようにシールドで跳ね返される。それを見たマシントルーパーは右手のヒートブレードの刀身を赤熱化させ、シズに襲い掛かった。

 

「……エナジーブレード展開」

 

大型アームに大型のブレードが展開され、マシントルーパーのヒートブレードを受け止める。

そのままシズは腕を腰に装着されている銃剣付き2連装ビームライフルをマシントルーパーに向けて発砲し撃破した。

 

「……一体撃破」

 

遅れてクラッシュ・アームがその剛腕で殴りかかってきたが、ジャガーノートの大型アームがそれを受け止める。

 

「……ふん」

 

グシャア!とそのまま握り潰した。

 

「……アームパンチ」

 

そのまま腕を思いっきり振りかぶりクラッシュ・アームの胴体に叩き込み、シリンダーのようにアームが高速で伸び、そのまま貫いた。

そのまま残りの二体にシヴァを向ける。

 

「……これで終わり」

 

そういうとシズは腰に装着されている銃剣付き2連装ビームライフル二丁を連結させ、大型アームにガトリング砲と掌部に付いているビーム砲をチャージし、更に肩と脚部のミサイルポッドを展開させる。

 

「…………レッツ・パーリィ」

 

(メタルウルフ!?)

 

某大統領の名言?を言って、シズはジャガーノートの全武装を展開、一斉発射した。

 

ズドドドォォォン!!!

 

さっきの砂煙より遥かに大きい爆風と砂煙、そして轟音が響き渡った………。

 

 

 

 

「……まさかあんな威力をたたき出すとはな」

 

砂煙が晴れると、目の前には多くの木々が薙ぎ倒され、地面も大きくえぐられており、未だにブスブスと煙を上げている。

 

「…………」

 

シズも少し驚いている表情をしている。

まああんな火力を叩き込んだからな。

 

「……うむこれでテスト終了だ、よくやったなシズ」

 

「……ありがとうございます」

 

「うん、いい結果を出してくれたし、なんか褒美をやろう、何がいい?」

 

「そ、そんな……褒美なんて…」

 

「遠慮するな、なんなら俺の銃のコレクションから一つやるぞ?」

 

銃は集めて楽しいコレクションじゃないって盟主王も言ってましたもんね、あ、アレは核弾頭か。

 

「……あ、あの」

 

「ん?」

 

「……あ、頭」

 

「……?」

 

「……頭を…また、撫でてくれませんか?」

 

「……え?」

 

意外なリクエストに俺は驚く。

え? 良いの? 本当に良いの? いや俺としては逆にこっちが頼みたいくらいのリクエストなんですけど?

 

「……い、良いのか? それで?」

 

「……はい」

 

「そ、そうか…なら…いくぞ?」

 

「…はい」

 

俺はおそるおそるシズの頭に触れる。え? この前普通にやってたじゃないかって? あ、あれは無意識だったから…、え? そっちの方が罪深い? うるせぇよ!?

 

なでなでなで……。

 

「……(なんか…なんか良い匂いが!)」

 

「……ん」

 

それから数十秒くらい俺はシズの頭を撫でた。

 

 

 

 

「……ありがとうございます」

 

「いや、良いさこれぐらい、俺にとってもうれしいリクエストだったし…」

 

「…………え!?」

 

うぉぉぉおい!! また何言ってんだ俺!

 

「さ、さぁ早く帰るか、いくぞシズ」

 

「は…はい」

 

こうして俺達はナザリックに戻っていった。


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