シズ・デルタに恋をしたナザリックの機動兵器 作:t-eureca
「……!?」
アルティマが凄く驚いてる。無理もないか、俺の軍団とはいえそんな簡単に動かせるもんじゃないしな。
本来なら他の隊長達も呼んで相談するほうがいいんだが、「マキナ」の実質No.2であり総隊長であるアルティマに先に言ったほうがいいと思った。
「まあ…総軍を動かすと言うわけではない、今のところはな。今回はこの世界の情報収集の為、諜報部隊を組織しようと考えている」
「……」
アルティマが何だか考えている、戦力的には大丈夫な筈だけどな?
(……やっぱりあの夜のモモンガ様との会話は"本気"だったんだ。マシンナー様とモモンガ様は本気でこの世界を手中に収めようと…!)
あの夜の会話を聞いて、モモンガとマシンナーが今後何らかの大きな行動を起こすとは考えていたが、こうも早く考えを出すとは思っていなかった。しかもマシンナーの話を聞くと、いずれ『マキナ』全軍をこの世界に放つという事も視野に入れている。
(『この世界に我が軍団の名を轟かせる』…あの夜からもう貴方は考えていたのですねマシンナー様。流石は我が創造主…!)
「……アルティマ?」
「あ、申し訳ありませんマシンナー様、すぐに部隊編成を考えます」
「ん? ああいやまだ完全に決まったわけではないのだ、後でモモンガに相談をして、承諾を貰った後隊長達を招集して会議を開こうと思っている」
「は! 畏まりました…」
「うむ、後それから…ん? 『メッセージ』?モモンガか……」
『あ、マシンナーさん、今大丈夫ですか?』
『大丈夫っすよ、なんかあったんですか?』
『ええ…ちょっと相談が…』
『丁度よかった、俺もモモンガさんに相談したいことがあったんですよ』
『あ、そうですか。なら円卓の間で待ってます』
『了解、すぐ向かいます』
モモンガさんから相談か…いったいなんだろ?
アルティマへの相談はまだ途中だけど仕方ないか。
「話の途中ですまん。少しモモンガの所に行ってくる。続きは後で話す」
「いえ、お気遣いなく…」
「悪いな」
「いえ」
アルティマに謝罪した後俺は円卓の間に転移しにいった。
「さて…念のため諜報部隊の編成を考えとくかな?……確か特機兵団以外の部隊は探索スキル持ちが多かったような…」
来るべきマシンナーの目標の為にアルティマはプランを考え始めた。
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俺が呼ばれたのは円卓の間。ここで話をするって事は、だいたい俺達の話になるだろう。
わざわざ呼ぶ上での事だから、何か大事な用事の可能性もある。
「来ましたよ~モモンガさん」
「いらっしゃいマシンナーさん」
モモンガさんは既に席に腰掛けてたので、俺もユグドラシル時代に座っていた席に座る。お互いの椅子の定位置を陣取ってる辺り、少し可笑しくなる。
「それにしてもどうしたんですか? いや、この場での話だから大事な話なのはわかりますけど」
「ハイ、これからの方針で話があるんですよ」
「一体何ですか?」
「はい……それは」
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「アインズ・ウール・ゴウンの名前を世界に轟かせる…。面白そうっすねそれ!」
「でしょ!」
モモンガさんの目標はこの世界にアインズ・ウール・ゴウンの名を轟かせる事…、俺達のギルドはユグドラシル時代には色々と有名だったため、知らないプレイヤーの方が少ないだろう。
何かデカいことをこの世界でやればきっとこの世界のプレイヤーも集まってくるだろう。
「で、最初になにします?」
「実は冒険者になって旅に出ようと思うんです」
「ヴェイ!?」
モモンガさんの答えは俺の予想斜め上を超えていた。
確かに俺も外に繰り出して情報を集めようと諜報部隊を組織しようと考えたが、まさか頭であるモモンガさん自ら行くとは…。
「理由聞いていいっすか?」
「ええ…」
モモンガさんの理由は至ってシンプルだった。
ナザリックの外を自分自身の目で確かめたいとの事だ。
まあ確かに自分で見てわからないこともあるからな…。
しかし……。
「でも危険じゃないっすかね?」
「はい、ですので俺も含め外を調査する者には世界級アイテムを所持させた上で行動を起こしたいと思います」
「……マジか」
世界級アイテム…どれもこれもとち狂ったとしか思えない代物ばっかだ。
因みに我らアインズ・ウール・ゴウンは11個所持している。
そしてモモンガさんと俺も自分の世界級アイテムを持っている。
例えばモモンガさんの身体にある赤い球。
あれも世界級アイテムの一つだ。
「確かマシンナーさんもありましたよね? 確か『無限の核/アンリミテッド・コア』でしたよね?」
「ええ、そうです」
俺の身体に内蔵されている世界級アイテム、『無限の核/アンリミテッド・コア』、このアイテムはその名の通り無限とも言える莫大な量のエネルギーを生み出せる世界級アイテムで、燃費の激しい技を繰り出してもすぐに回復ができる。
更にそのエネルギーを技の威力に回すこともできるため、このアイテムから回されたエネルギーを使って大技を繰り出せばそれはそれは恐ろしい威力をたたき出す事もできる。
「あれ、本当に恐ろしいですよ。そのアイテムを使ってからのマシンナーさんの「最終兵器」をワールドエネミーにぶっ放した時、かわいそうに思えましたもん。なんですかあの洒落にならない威力?」
「あははは……」
過去のワールドエネミーと戦った時のことを思いだし思わず苦笑いする。
本当に洒落にならなかったからな。
「もちろん俺一人で行くわけではありません、誰か一人同行させようと思っています」
「う~む……」
俺は腕を組み思考を巡らせる。
何があるか分からないであろう外にモモンガさんが行く。やはり、止めたいのが本音だが……。
だがその危険に見合ったメリットも確かにある。
それに俺は人間に偽装できるスキルもある。
なら俺がやることは一つ。
「分かりました。そういう事なら、俺はモモンガさんの行動を精一杯サポートします」
「マシンナーさん…ありがとうございます!」
「でも条件があります」
「はい、なんでしょうか?」
「俺も冒険者として旅に出てもいいでしょうか?」
「え!?」
俺の出した条件にモモンガさんは驚いてる。
まあそりゃそうか。
「それはどうして?」
「理由は簡単です。二人の方が得られるメリットもあるし、それに互いに情報を持っていれば選択肢も広がります」
「マシンナーさん…」
「まあ…流石に二人一緒に出かける事はできません。守護者達も心配ですし、代わりばんこですが…」
「いえ、構いません」
「後もう一つお願いが」
「……?」
「俺の軍団から諜報部隊を組織してもいいでしょうか?」
「諜報部隊ですか……」
「はい、俺の軍団から探索に秀でたシモベを使い、それぞれの国や周辺の土地に送り込もうと考えてるんです」
「ですが…大丈夫ですかね? マシンナーさんの部隊は全員…」
「はい、全員機械種です。だから人間にそっくりなアンドロイド型や小型のドローンを使おうと思っています」
「う~ん…」
モモンガさんが考えこんでいる。無理もない、なんせこの世界には機械種がいないのだ。
俺やシズ等の存在はこの世界にとってオーバーテクノロジーである。
しかし、シズやアルティマのようなアンドロイド型や小型で機動力があるドローンならそう簡単には正体が露呈しないだろう。
「……わかりました、ですが出来るだけ少数にしてくださいね?」
「もちろんですよ、俺もそのつもりでしたし」
余り人数が多ければバレる確率も高くなるからな。
「後最後に1つ……」
「はい?」
「領域守護者の「ディアボロス」と「アンヘル」を俺の軍団の隊長を兼業させたいんですけど」
「理由は?」
「ディアボロスのスキルの眷属の生産能力を使って俺の軍団の兵力増強を。アンヘルはスレイン法国対策です」
「ああ、そういえばアイツら天使使ってましたね、そんなに強くなかったですけど……」
威光の主天使(笑)を最上位天使って呼ぶようなアホな連中だが、プレイヤーがいる可能性もある。
それに本物の最上位天使も持っている可能性もある。
「天使殺しとして生み出されたアンヘルなら仮に最上位天使を出されても大丈夫ですし、天使だったらほぼ無双状態ですしアイツ」
「わかりました、許可します」
「ありがとうございます、それじゃこれからアルティマ達を集めて軍団会議を……」
「あ、待って下さいマシンナーさん」
「ん?」
「これから一時間後に玉座の間にシモベを集めて今後の方針を発表しようと思うんです、後名前もモモンガからアインズに変えようと思うんです」
「あ~…確かにそっちの方が知れ渡りそうですもんね…」
「ええ…で、これからの流れですが……」
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「という流れです。わかりました?」
「了解です」
「それじゃあ今からアルべドに<メッセージ>飛ばしますんで」
「うす」
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モモンガさんはアルべドに<メッセージ>で玉座の間に集められるだけのシモベ達を集めた。
理由はモモンガさんが名前を変えた事と、これからの方針を皆の前で宣言する為だ。
俺とモモンガさんは豪華な玉座と椅子にふんぞり返っている。
「お前達、まず今回は私とマシンナーさんが勝手に動いた事を詫びよう」
「ちょっとフラストレーションが溜まってたのだ。心配したのなら謝罪しよう、すまなかった」
俺もモモンガさんもこれっぽっちも悪いと思っていない感じで集まった皆に謝る。
普通に謝ってしまえば俺達が皆の力を信頼していないと取られる可能性がある、あくまで今回は俺達の個人的な“わがまま”で外に出たという形にした方が皆の為に良いだろうと決めたからだ。
内心滅茶苦茶罪悪感あるけどな!
「我々に何があったのかは後でアルベドから聞くように。ただ、その中で一つだけ至急この場に居る皆、そしてナザリック地下大墳墓の者に伝えるべき事がある……」
「……私は名を変える」
「「「!?」」」
そりゃ驚くわな、いきなり最高責任者が名前を変えるって言いだすし。
でも、今後の目標に必要な事なのだ!
「これより私の名を呼ぶ時はアインズ・ウール・ゴウン……アインズと呼ぶが良い」
「「「…………!?」」」
「やはり、驚いてるな。まあ俺も最初モモンガ…いや“アインズ”のこの提案には最初は驚いた。だが別にアインズは本当の名を捨てたわけではない、これはこれからの目標に必要な事なのだ」
「お前達に訊く。私がこの名を名乗る事に異論がある者は立ってそれを示せ」
アインズさんの言葉に誰も異論を唱える者は居なかった。
内心はどう思っているのかは分からないが…。
それを代表するかのようにアルべドが声を上げる。
「御尊名伺いました。アインズ・ウール・ゴウン様、万歳! いと尊き御方、アインズ・ウール・ゴウン様、その盟友であらせられますマシンナー様、ナザリック地下大墳墓全ての者よりの絶対の忠誠を!!」
アルべドに続いて各守護者達が、モモンガさんの新たな名を称え、万歳の連呼が玉座の間に広がる。
「…良かったなアインズ」
「…ああ、ではこれからの我々の目標を伝えたいと思う。皆、聞いてほしい」
アインズさんの言葉に皆は即座に黙り、聞く姿勢に入った。
動き完璧すぎんだろ…。
「我らアインズ・ウール・ゴウンを不変の伝説とせよ!!」
「我々がこの世界で為すべき事は“全ての英雄を塗りつぶす”!」
「我等より力ある者は搦め手で!」
「数多の部下を持つ魔法使いがいればそれ以外の手段でねじ伏せろ!!」
「アインズの…いや、我等が栄光のギルド、アインズ・ウール・ゴウンをこの世界のあらゆる生命体に知らない者がいない程にまで轟かせろ!!」
「この世界の全てに! 我々の力を知らしめるのだ!!」
アインズさんの宣言に皆は首を垂れ、神様に祈りを捧げているかのような感じだった。
(さぁ忙しくなるぞ!)
久しぶりにデカいことに取り組むことに俺は大きく心臓を高鳴らせた……。
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アインズとマシンナー、二人が去った後の玉座の間は誰もが跪き、暫し無言であった。
だがその心中は自らの主達から受けた命令に対する喜びと熱気が渦巻いている。
「デミウルゴス、アルティマ、御二人とお話しした際の言葉を皆に…」
立ちあがったアルベドの声に、未だに頭を下げていた者達はようやく顔を上げた。
「畏まりました…」
「わかりました…」
マシンナーとアインズの大いなる目標に、二人の偉大さを再確認し、その目標に少しでも役に立てるという歓喜を抑えながらアルティマとデミウルゴスはアルベドの言葉に応える。
「アインズ様とマシンナー様が夜空をご覧になられた時ですが…………」
『この夜空を俺たちだけで独占するのは贅沢だな、もし他の皆が戻ってきたら、皆で分け合いたいものだな』
『なら世界征服でもしてみますか?この世界を手に入れれば、全てのこの宝石箱がナザリックや他の皆とも分け合えますよ?』
『ふふふ…それはおもしろいな。なら世界征服ついでに俺もこの世界で鋼の魂の名を世界に轟かせてやろう、アルティマ、お前はどう思う?』
『はっ、流石はマシンナー様でございます』
『今の御二人の言葉、私もアルティマもこの胸に刻み付けさせて頂きます……』
『ふふ…そうか』
この話を聞き終えた玉座に居る者達の瞳には強い決意の色が宿っていた。
主である至高の二人の目標をこの場に居る者全員が理解した事を確認し、アルベドは宣言する。
「各員、ナザリック地下大墳墓の最終目的はアインズ様とマシンナー様に宝石箱を…この世界をお渡しすることと知れ!」
「「「オオオォォォォ!!」」」
シモベたちの雄叫びは玉座の間に響き渡り、その本気の度合いを明白に示していた。
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「………ん!?」
「どうしましたマシンナーさん?」
「いや、なんかあいつら盛大な勘違いをしている気がするような…」
「は?」