シズ・デルタに恋をしたナザリックの機動兵器   作:t-eureca

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第17話 殺戮の始まり

ふむ…思ってたよりこの世界の人間は強くないな、とりあえずは安心した。

おっといけない、後ろの姉妹の姉の方は背中斬られてたな、治療しないと。

俺は後ろを振り向き、姉妹の方に歩み寄っていく。

けどさっきのあれが強烈すぎたのか、めっちゃ怖がられている…。

 

(まあ仕方ないか…)

 

いきなりこんなスーパーロボが出てくれば驚くし、あんな殺し方をすれば怖がられるのも無理はない。

だけど、とりあえず敵じゃないことは伝えなければ。

俺は身体を下ろし、姉妹達に話しかけた。

 

「大丈夫か?」

「え?」

 

言われた事が予想外だったのか驚いているようだった。

構わず俺は続ける。

 

「たまたま通りかかっているときにお前たちの姿を見てな、背中の傷は大丈夫か?」

「え、あ、は、はい!」

「そうか…その子は大丈夫か?」

「え?…は、はい大丈夫です!」

 

うん取りあえずは大丈夫そうだな、じゃあ治療を…。

そこへ、タイミング良く《転移門》からモモンガさんが現れた。

 

「「ひっ!」」

 

モモンガさんを見て、怖がる二人。

まあどっから見てもラスボスな骸骨様だしな……。

 

「怖がらないでくれ。彼は俺の友人であり、恩人なんだ」

「え? あ、すみません!」

「ご、ごめんなさい!」

「いや気にしてない。露払いご苦労だったなマシンナー」

「あの程度造作も無いよモモンガ」

「うむ、では…ん?」

 

モモンガさんが何かに気付いたのか視線をずらす。

俺もその方向に目を向けると、騎士が一人いた。

 

「な、なんだお前たちh「心臓掌握(グラスプ・ハート)!」がっ…!」

 

しかしすぐにモモンガさんの心臓握りで昇天してしまった、出落ちか!

 

(モモンガさん、人間種そんなに強くなかったです)

(そうですね、取りあえず一安心です)

(まあでもまだ油断はしない方がいいですね、あいつらだけが弱いだけってこともありますし。モモンガさん、壁アンデッド出してくれません? 勿論俺も出しますよ)

(わかりました、では死の騎士を出しますよ)

(わかりました、なら俺は『機械の戦士/マシン・トルーパー』を出しますよ)

 

「―――――中位アンデッド作成 〈死の騎士〉」

 

さっき殺した騎士の口からドス黒い物が溢れ出し、ゴボゴボと音を立てながらその身を死の騎士へと変貌させていく。

 

「ウォォォオァァァア!!」

 

凄まじい咆哮と共に、誕生した死の騎士。

よし俺もやるか。

俺は手のひらから歯車やら螺子やらの金属パーツを地面に落とす。

 

「―――――中位機械種作成<機械の戦士/マシン・トルーパー>起動!」

 

落としたパーツは空中に舞い上がり、ガチャガチャガチャン!と音を立てて集まり組み上がっていく。

 

「………」

 

緑色のカラーリングが施された装甲、ピンク色のモノアイがグポン、と輝く。

左手はガトリングが付いており、右手には大型ヒートブレードを装備された、機械のモンスターがズシン、と降り立った。

 

 

「死の騎士よ。この村に居る騎士…鎧を着ている者を駆逐せよ」

「機械の戦士よ。死の騎士を援護し、騎士たちを皆殺しにしろ」

 

その命令を受けた死の騎士は力強い咆哮を上げ、機械の戦士はモノアイを強く光らせた後

 

 

 

モモンガさんと俺を置いて村の方角へと走っていった……。

 

「「えぇぇぇぇぇぇ……」」

「何で、守るべき対象を置いていくんだよ……いや命令したの俺だけどさ!」

「どうする? いやホントマジで?」

 

すると転移門から完全武装したアルティマとアルベドが現れた。ナイスタイミング!

アルべドはガッチガチに黒い鎧とバルディッシュで武装している。

アルティマは身体を赤いアーマーで覆い、顔も同じ色のバイザーで顔を隠していた。

 

 

「モモンガ様、マシンナー様、遅れてしまい申し訳ありません。準備に時間が掛かってしまいました」

「申し訳ありません」

「いや、むしろ丁度良いタイミングだったぞ、アルベド、アルティマ」

「ああ、いいタイミングだ……ん?」

 

そこに転移門からもう一人現れた。

頭にはゴーグル付きの防弾ヘルメットを被り、胸には防弾チョッキ。両腕は鉄のガントレットを装着しており、

魔銃を持っている。スカートには金属パーツがさらに増えているが、ベースはメイド服だった。

そして俺はその顔をよく知っている。

 

「シズ?」

「……プレアデスはシズ・デルタ。マシンナー様とモモンガ様の援護をするために来ました」

 

転移門から現れたのは完全武装の姿のシズだった。

武骨な装備とメイド服が何とも言えないアンバランスな感じがしたが、俺的にはグッドである。

これがカッコ可愛いという奴だろうか?

 

「(マジかよ…)誰からの命令だ?」

「はい、アルが命令を出しました」

 

マジかよ、こんなかでレベルが一番低いのはシズだぞ。

まあ取りあえず理由を聞くしかないな。

 

「何? 理由は?」

「はい、敵は如何な武装をしているかもわかりません。ですので飛び道具による援護に特化したガンナーであるシズを呼びました」

「ローグはどうした? 奴もガンナーだぞ?」

「ローグには後詰めの部隊の指揮を任せました。他の隊長達も控えております」

「むぅ…」

 

後詰めの部隊の指揮をローグ達に任せたか…。

まあ、戦力は多いのに越したことはないが…。

 

(どうしますモモンガさん?)

(確かに飛び道具による援護は要りますね、後衛は私しかいませんし…)

 

「勝手な判断をして申し訳ありません。死罪も覚悟しております…」

 

いやいやそんなんで死刑にするほど冷酷じゃないよ。

まあでも注意はしとかないとな。

 

「確かに勝手な判断だが、お前の言うことにも一理ある。よって死刑にはせん」

 

「だが」と俺は言い、アルティマを見る。

 

「次こういう事を勝手にしたら『お仕置き』は覚悟しておけよ?」

「っ、はい!」

「それでいいか、モモンガ? アルべド?」

「え? まあ構わないが…」

「はい、承知いたしましたマシンナー様…それで」

 

アルべドが姉妹の方に視線を下ろす。

 

「その生きている下等生物の処分はどうなさいますか?」

 

おい物騒な事言ってるぞ、今回の趣旨わかってるのかアルベドよ?

ちょっとモモンガさん、しっかり説明して!

 

「ふむ、怪我をしているようだな、飲め」

 

モモンガさんが回復用のポーションを出し、姉妹に渡す…が。

 

「の、飲みます! だから妹には……」

「お姉ちゃん!」

 

うん、怖がってるね。仕方ないね。

こんなおっかない骸骨が赤い液体持ってたらそりゃ怖がられるわ…。

 

(げ、解せぬ……)

(モモンガさん! 顔! 顔! 流石に素顔は不味いですよ!)

(あ…)

(俺がやります、貸してください)

 

そう言ってモモンガさんからポーションを受け取り、姉妹に渡す。

 

「使え…」

 

ピカーン! ガシュー!

目を一際光らせ、全身から煙を吐き出しながら、重低音の声で言うマシンナー。

 

「い、い、いも、妹だけは……」

「うぁああん!」

「え…」

 

え? なんで泣くの? 泣いちゃうの?

骨よか怖くないでしょ?

 

(……)

(やっぱり見た目が怖いんですよ、どうしたものか)

(……われた)

(へ?)

 

 

 

 

 

 

(スーパーロボが子供に嫌われた……だと?は、ははは……)

(え? マシンナーさん?)

 

「チクショォオオオオオオオオオオオ!!」

 

ビカァ!!!

 

「「マシンナー様!」」

「え、ちょ…」

 

マシンナーは天に向かって凄まじい爆音の慟哭をあげる。

涙のつもりなのか、両目から極太のビームを天に向かってぶっ放していた。

しかし精神作用効果無効が発動して強制的に鎮められる。

 

(何やってるんですかマシンナーさん!!)

(…すいませんモモンガさんホントスンマセン)

 

やべえ…思わずビームぶっ放しちゃったよ…。

いくらショックがデカいからって不味い事しちまったな…。

 

「御方々の恩情を無下にするとは……!!」

「万死に値する! 懺悔をしながら死ね!!」

 

怒りに震えるアルべドとアルティマがそれぞれの得物を振り上げる。

因みに後ろに控えているシズもいつものライフルからショットガンを取り出しているではないか!

アルべドはバルディッシュを、アルティマは両手を変形させ、指の一本一本が鋭利なブレードになった両腕を振り上げる。

おいちょっとおぉぉぉぉ!!?

 

「やめろ、アルティマ、アルべド、シズ」

 

振りかぶられたバルティッシュと両腕を掴み、マシンナーは言った。

発言と同時に覇気を全身から出す。

アルティマとアルべドは即座に武器を下げた。

シズもショットガンを下ろす。

 

あっぶね~、危うく流血沙汰になるとこだった…。

いやもうなってるけどさ。

 

「急に叫んで済まなかった。そこの2人も心配するな、これは回復用の薬だ。傷もすぐに治る」

 

今度は出来るだけ優しい口調で話しかける。

これでだめなら人間態になろう。

 

「わ、解りました……」

 

姉がポーションをそれを飲み干す。

すると一瞬で背中の傷が回復した。

うん、どうやら回復用のアイテムも問題なく使えるようだ。

そしてモモンガさんはこの2人の周りに防御魔法を展開させて、小鬼将軍の角笛まであげてるよ。

なら俺もなんかあげるか。

俺はアイテムボックスから、あるアイテムを取り出した。

機械の歯車を人型にしたような手にすっぽり入る小さな像を渡す。

 

「これをやろう、『古代機械の胸像/アンティーク・ギア・スタチュー』だ…」

 

姉のほうはそれを貰い、興味深そうに見ている。

取りあえず使い方を教えないと。

 

「そいつもその笛と同じように危なくなったら使え、使い方はそれを上に掲げて「起動!」と叫ぶんだ、いいな?」

「わ、わかりました」

 

(じゃあモモンガさん、俺ちょっとゴミ掃除してきます)

(わかりました、後マシンナーさん、騎士は皆殺しは避けてくれませんか?)

(え? なんでですか?)

(俺達と同じようにユグドラシルプレイヤーがいるかもしれません、そこで宣伝してやるんですよ。

アインズ・ウール・ゴウン此処にありってね。ユグドラシルでは我がギルドは色々と有名でしたし)

(成程、でもどうやって?)

(それはですね…)

 

俺とモモンガさんでメッセージによる会話をしていると、さっきの姉妹から「あ、あの!」と声を掛けられる。

 

「あ、あの、助けてくださって……

ありがとうございます!」

 

「ありがとうございます!」

 

「気にするな……」

 

モモンガさんは姉妹の感謝に答え、俺は斬艦刀を取り出す。

アルベドとアルティマを引き連れて俺たちは村へと向かって歩きだす。

すると…。

 

「お、名前を……」

 

俺とモモンガさんはとゆっくりと振り返り、答える。

かつての栄光ある、誇りあるギルドの名を。

ナザリックを守り続けた、誇りある名を。

 

「我が名は……アインズ。

アインズ・ウール・ゴウンだ」

 

「我が名は…」

 

斬艦刀をガン、と肩に担ぎ、答える。

 

「我が名はマシンナー。

ナザリックの機動兵器であり、全てに幕引く機械神<デウス=エクス=マキナ>なり」

 

 

 

 

騎士たちは村の中央に村人達を一か所に集め、追いつめていた。

彼らは自分の国の正義の為、そして人類存続の為の任務の為に殺す。

今回も今までと同じようにするつもりだった。

そう、今回までは…。

 

一瞬の出来事だった。

村人を後ろから切りつけようとした仲間。

剣が村人の背に到達しようとしたその瞬間、何かの影が覆いかぶさった。

 

「へ?」

 

後ろを向いた瞬間、その影の主から縦一文字に真っ二つにされた。

 

――――ズン!

 

「ぎゃあああああ!」

 

その悲鳴を聞き、何が起こったのか理解できず、ロンデスは周りの仲間と共に悲鳴の発生源を探す。

そしてそれを見つけた。

 

「オオオオォォォォオオオオアアアアー!!」

 

黒い鎧を着た左手には巨大なタワーシールドを、右手にはフランベルジュを持っているアンデッドの騎士が、現れた。

 

「な、なんだあれは……」

 

仲間の一人がつぶやいた。

ロンデスもそれは同じだった。

何故こんな村にあんな怪物が?

色々と疑念を出していると、ブゥゥゥウン、の音と同時に「がぁ!」と悲鳴が上がる。

 

「何だ!」

 

ロンデスは悲鳴の方角を見ると驚愕した。

仲間の騎士がいつの間に死体になっていた。

それだけならロンデスはそこまで驚かなかっただろう。

しかしその死体は人としての原形を留めない只の肉塊と化していたのだ。

 

「な、何が………!」

 

ロンデスが向いた方向にはもう一体の「化け物」がいた。

緑色の体色をし、目は一つ目、右手には赤い剣を、左手には筒状の武器を持っており、そこから煙を出していた。

 

「な、なんだあのモンスター、あんなの見たことないぞ!」

「こんな場所にあんなのがいたなんて聞いてないぞ!」

(いや違う、あれは自然の生き物なんかじゃない…!)

 

熟練の騎士であるロンデスは思った。

その見た目と持っている武器があまりにも異質だった。

身体は金属特有の光沢を出しており、目には生き物のような生気は全く感じられない。

持っている武器も今まで見たことも無いものだった。

これは何者かが創造した魔物なのでは無いのかと…。

 

しかしその疑念は次の瞬間に消え失せた。

 

ドォン!!

 

「今度はなんだ!」

 

仲間が音の方角を見ると大きな砂埃が上がっていた。

それが徐々に晴れていき、その音の主が現れた。

 

「……フン」

 

黒い重厚な鉄の「何か」がたっていた。

 

「とっとと掃除をするか……」

 

そいつが喋った後に、血のように紅い大剣を振り上げる。

そして…。

 

――――ズン!!

 

凄まじい音と風圧を出しながら、その近くにいた仲間の何人かの身体を横一文字に切り裂き、吹き飛ばした。




アルティマのフル装備の外見はゼノギアスのヴェルトール・イドが鎧になった感じです。

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