シズ・デルタに恋をしたナザリックの機動兵器   作:t-eureca

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第15話 アルティマの怒り

アルティマを除いて、セバス達は初めて見るマシンナーの人間形態だった。

初めて見るその姿に少し目を見開くが、マシンナーの視線に気付きすぐに頭を下げる。

 

「失礼致しました…」

「ん? ああ…そういえばこの姿はアルティマ達やモモンガさん以外には初めて見せたな」

 

実際に俺がこの姿になったのはモモンガさんやギルドのメンバー、アルティマ達隊長格のみだったな。

セバスの目が少し驚いた感じだったが、まあ初めて見るしな。

アルティマは見慣れているのか、特に反応してないな。

 

「……」

 

シズは何故かこっちをじーっと見ている、可愛い…。

は! いかんいかん、去れ! マーラよ!!(だれ?)

さてじゃあ行くか…、おっといけないセバスに救助してくれた時の礼を言うのを忘れるところだった。

 

「セバス」

「は! なんでございましょうか?」

「俺がこの世界に落ちて、気を失っていた時にセバスが発見してくれたとモモンガさんから聞いた。礼を言うのが遅くなってしまったな、ありがとう」

「勿体なき御言葉…寧ろ謝罪するのは私の方でございます…」

「ん?」

 

あれ? モモンガさんからはセバスが何か失敗したって事聞いてないんだけど?

俺も思い当たるのは何もないし。

 

「実はマシンナー様がこの世界に落ちてきたあの時私は、その近くにおりました…」

(ああ、それで即座に救助されて自室のベッドに寝ていたってことか…でもなんも悪いことしてないような気が…)

「そして私は落下してくるマシンナー様を確認しながらも私は何もできませんでした…誠に申し訳ございませんでした」

「……」

 

う~んつまりは落下してくる時の俺を見つけたんだけど、受け止める事ができず申し訳ありませんでしたって事かな? いや別に気にしてないし、しかもその時俺意識不明だったし。

てか落下してくる金属の塊を受け止めるのって相当力いると思うんですが…。

とりあえず俺は気にしてないことを伝えないとな。

 

「セバス…」

「はっ…」

「俺は救助してくれたセバスに感謝している。あの時セバスがいなかったら俺はただの屑鉄になって錆びていただろう…」

「…」

「俺はセバスに助けられた。その事にとても感謝している。よってお前の罪を問う気もないし、そもそも悪いとも思っていない」

「ですが…!」

「それに俺は頑丈さが唯一の取り柄だ。あんな衝撃どうってことない、だからこの話はお終いだ。良いな?」

「…ありがとうございます」

 

うん、とりあえず気にしてないというのは伝わったようだ。

さて、本題を言わないと……。

 

「さて、それじゃこれからの流れと各々の役割を伝える。楽にしてくれ」

 

俺の言葉にセバス達は反応して立ち上がる。跪いたままなのもきついしな。

 

「今回の調査の指揮は俺が執る。次席はアルティマ、次にセバスだ。調査中に不測の事態によって俺が指揮を執れなくなった場合はアルティマの指揮に従え。アルティマも無理の場合はセバスの指揮に従え。シズは、現地で狙撃手として周囲を見張ってほしい。こちらに敵意を持っているものがいれば可能であれば狙撃してもかまわん。現地に赴くのは俺、アルティマ、セバス、シズの他にドランザーとローグに頼んで索敵能力が高いヘルスパイナーとホークアイも連れていく。そしてバックアップにはモモンガさんが着き、ローグはヘルスパイナー達の現場指揮官をやってもらう」

 

全員真剣に聞いてくれているな、さて流れを話すか。

 

「現地到着後はローグ達の部隊に目的の村を包囲させ、包囲が完了したら、ある程度の数を偵察に回す。

ローグは包囲した部隊と共に見張りとして待機。セバスは周辺の徘徊を。シズは、狙撃ポイントを見つけ、そこでいつでも狙撃できるようにしておけ。念のためシズの所にも索敵能力の高いナイトオウルと援護用ドローンのオービットをつける。

村に最初に入るのは俺とアルティマだ、俺が最初にいく理由は実際に見て、行動に移せるか判断する為だ。アルティマを選んだ理由は生き残っている村人を見つけた場合アルティマの外見ならパッと見人間の子供にしか見えないからあまり警戒されないだろうと思っての判断だ」

 

そして最後に俺は目的をアルティマ達に話す。

 

「最後にこの調査の目的はこの世界の情報を少しでも持ち帰ること。どんな些細なことでも小さな事でも構わない、この世界では俺たちには少しでも多くの情報が必要だ。その為、戦闘に入った場合に少しでも自分が不利だと思ったら即座に撤収すること。……お前たちが誰か一人でも欠けたら俺とモモンガさんは耐えられない、いいな?」

 

最後の俺の「死ぬな」の強い念押しの理由はナザリックのNPC…特にセバスとプレアデスの設定に関係する。

元々第九階層の最後の盾兼時間稼ぎとして創造したセバスとプレアデス達。その為他のNPC達よりも簡単に死にに行く可能性がある。

アルティマも死ぬことを顧みなさそうだが、直属の創造主である俺が「死ぬな」と命令している限りは多分大丈夫だろう。

 

(「セバスとプレアデス達の役割はあくまでも時間稼ぎ」の設定が働いて俺の身を守って死ぬこともあるかもしれないからな…)

 

それでシズが死んだら、俺はこの世界を跡形もなく破壊するまで暴れまわるだろうな……。

 

「俺からは以上だ、では出撃するぞ」

 

 

 

 

俺はアイテムで《転移門》を開き、アルティマと共にそれをくぐる。

くぐった先の村は事前に見ていた通りの惨状だった。

辺り一面は燃えており、人間の遺体がそこらじゅうに転がっていた。

 

「酷いな…」

「…はい」

 

俺の言葉にアルティマは頷く。そして俺は付近に敵がいないことを確認し、待機しているセバス達を呼んだ。

 

 

 

 

セバス達が所定の位置に着くのを確認し、俺とアルティマはセバスとは別の方向で歩いていく。

しかしやはり人間種の遺体ばかりだった。

子供をかばって死んだもの。

体を袈裟切りに切られて死んだもの。

まだ5歳にもいっていないだろう子供。

弓矢に射抜かれた者の遺体等が次々と見つかる。

 

最初は野盗の仕業かと思ったが、遺体を見ると野盗の仕業でないことがわかる。

おまけにセバスの情報によると馬の蹄らしきものがあったらしい

どこかの騎士団か、もしくは庸兵団の可能性が高そうだ。

 

(ただまぁ…)

 

俺は傍に転がっていた子供の遺体の顔に触れ、スッと瞼を下ろす。

 

(これは…酷いな)

 

不意に昔のことを思い出す。

自分が住んでいた家によく遊びに来てくれたお隣さんの息子を思い出す。

わんぱくものだったが元気があって、明るい子供だった。

今はもう中学生になっているが、それでも変わらず自分を慕ってくれたのを思い出す。

 

「……ちっ」

「!」

 

小さく俺は舌打ちしたが、どうやらアルティマに聞かれたらしい、明らかに顔が動揺していた。

 

「マ、マシンナー様?」

「なんでもない、昔のこと思い出しただけだ、調査を続けるぞ」

「は、はい…」

 

ああ…これなんか変な誤解させちゃったかな?

いや、アルティマの表情を見る限り本気で心配してくれたんだろう。

これ以上心配かけさせるわけにはいかないし、調査を続けるか。

 

(さっきの舌打ち、さっきの子供の顔に触れてからしたものだった……)

 

アルティマは先程のマシンナーの舌打ちの事を考えていた。

さっきの子供とはマシンナーとの面識はない。

ならばなぜあの行動をしたのだろうと考えていた。

 

(もしかしたらマシンナー様の過去に人間の子供が関係した出来事が? それを思い出されたからから舌打ちを?)

 

マシンナーの後ろを歩きながらアルティマは考えを広げる。

だが「マシンナーの過去に人間の子供が関係するなにかがあった」その考え以外に有力な答えは思いつかなかった。

 

(やはり僕程度の頭じゃこの程度か、自分の浅はかさが恨めしい。だけど……)

 

アルティマは目を少し殺気立たせる。

あともう少し怒りで満ちていれば、戦闘形態に変形するくらいの怒りも宿す。

 

(マシンナー様を一瞬でも不快にさせたクズは絶対に殺す。いやただ殺すだけじゃだめだ、じっくりとゆっくりと痛めつけてやろう……)

 

至高の御方であり、自分の直接の創造主であるマシンナーに舌打ちをさせた。その要因を必ず見つけ、この世に生まれた事を後悔させるくらいの地獄を見せてやろうと考えていた。

 

 

 

 

 

 


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