シズ・デルタに恋をしたナザリックの機動兵器   作:t-eureca

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第11話 マシンナーの装備実験:3

(あ、これマシンナーさん派手にやる気だ…)

 

モモンガは顎に手を添える。過去にマシンナーが単身で集団に突撃する時は、自身の火力と装備を活かして大暴れするパターンがよくあったのだ。

 

(あの人、単純な火力と耐久力だけならギルドの中でもトップクラスだったからな…)

 

アインズ・ウール・ゴウンで最強と言えば、戦士職最強のたっち・みーと魔法職最強のウルベルトである。

しかし単純な火力と耐久力の分野だけで言えば、マシンナーがギルドの中ではトップクラスであった。

特にその防御力はある理由により、ウルベルトが「お前とだけは戦いたくない」と言わしめたほどである。

 

(持っていたスキルや魔法が実際に使えるからな…。マシンナーさん、やりすぎなきゃいいけど…)

 

「モモンガ様? どうかされましたか?」

「ん?ああ、いやなんでもないぞアルべド」

 

かつて敵対ギルドに、猛威を振るったあのバ火力がこの世界だとどうなるんだろうと、モモンガは少し不安になった。

 

 

 

 

某フロムゲーのキャッチコピーを啖呵に使い、俺は集団に突撃する。

徐々に集団との距離が縮まっていく。

俺はマントで自身の身体を包む。

別に寒いって訳じゃない、そうする理由がある。

 

「<スパイラルマシンナービーム>!」

 

包んでいたマントの隙間から赤い光線が弾幕のように一斉に発射され、次々とアンデッドと悪魔達を殲滅していく。

集団との距離が目と鼻の先にまでになった時に、俺は斬艦刀を構えて切り込んでいった。

 

「うおおお!!」

 

ドワオ! ドワオ!と聞こえてきそうな音を出しながら、俺は目の前の敵を切り刻んでいく。

切る度にアンデッドは骨が吹き飛び、悪魔は赤黒い臓器と血をまき散らしている。

 

(どうせだから素手での肉弾戦もやってみよう)

 

スーパーロボットは肉弾戦が基本だからな、俺はそこら辺にいた、デビルマンのジンメン似の亀の悪魔の首を掴んで地面に叩きつけ、逃げないように対艦刀を突き刺した。

 

「ぎぇああああああ!!?」

 

うわ超うるせぇぇぇ!!、しかもよく見ると甲羅には人の顔みたいな物がついているではないか…。

どう見てもジンメンです、本当にありがとうございました…じゃねえ!

このやろう、俺のトラウマの一つを思い出させやがって…!

 

「てめえは俺の個人的な理由で撲殺する!」

「アイエエエエ!?」

 

俺は拳のスパイクを展開させてジンメンをタコ殴りにする、勿論一発一発に殺意を込めてだ…!

殴りつけるたびに甲羅の顔から悲鳴が上がり、臓物が散乱する。

十発くらい殴った後にはそこにはもうジンメンだったものがあった。

 

「スッキリしたぜ、おっと?」

 

腕についた血はらっていると、死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)が<ファイヤーボール/火球>の魔法をぶっぱなしてくる。

 

「あ、やば…」

 

マシンナーはそれを避けもせずに<ファイヤーボール/火球>を喰らう、それを好機と見たのか、他のエルダー・リッチも<ライトニング/電撃>、<マジック・アロー/魔法の矢>を連発してくる。

ある程度魔法をうったのか攻撃をやめ、様子を見るエルダー・リッチ達。

 

「効かんな…」

 

魔法の直撃で上がった煙から、対艦刀を持ったマシンナーが飛び出し、豪快にエルダー・リッチを切り付ける。

マシンナーの膂力と斬艦刀の質量による攻撃により、地面を叩き割りながら、エルダー・リッチを粉砕する。

その攻撃により周囲に衝撃波が発生し、近くにいたアンデッドも吹き飛ばされる。

生き残っていたエルダー・リッチはマシンナーに再び魔法を撃ち始め、マシンナーに命中するが…。

 

バキィン!!

 

「!?」

「ああ悪かったな、俺の装備のスキルが発動したらしい」

 

エルダー・リッチが発動した魔法が命中した部位からは、煙一つ上がっていなかった。

これはマシンナーの装備のスキル<ABCマント>が発動したからである。

このスキルの効果は自分の防御力の向上と、一定以下の魔法は完全に防げるというもの。

一見<上位魔法無効化>のスキルと似ているが、実はこの<ABCマント>のスキルはもう一つあり、超位魔法を一回だけ完全に無効化する効果があるのだ。

 

「下手な魔法は効かねえぞ?」

 

再びシュバルツ・カノーネを装備し、エルダー・リッチを撃ち殺す。

そしてアンデッドと悪魔達に何かを射出した。

 

「いけよファンネル!」

 

黒い小型のビーム砲が一斉にマシンナーから発射され、それが自動的に敵に襲いかかる。

それを見たマシンナーはスラスターを吹かし、上空に舞い上がった。

 

「そろそろ決めてやろう…」

 

胸の砲口にエネルギーを貯め、そこに膨大なエネルギーが集まっていく。

 

「<ブレスト・ファイヤー>!!」

 

溜め込んでいたエネルギーが一斉に放射され、残りのアンデッドと悪魔達に襲いかかる。

その瞬間、凄まじい轟音と爆風、光と熱量が周りに広がった。

 

僅か数秒でそれらは収まったが、着弾地点は凄まじい惨状となっていた。

その場にいたアンデッドと悪魔達は消滅しており、着弾した場所にはクレーターができていた。

穴の周辺には熱気と煙が上がっている。

 

(え?ブレスト・ファイヤーでこれ?)

 

ユグドラシル時代では、丁度いい威力と燃費も良かったため、雑魚狩りやPVPにも使っていたスキルなのだが、現実で使用してみるとまさかこんな事になるとは思ってもいなかった。

 

(ちょっとマシンナーさん! それブレスト・ファイヤーですよね!?)

(当たり前ですよ!、ファイヤーブラスターやダイナミックファイヤーはこれの倍の威力あるんですよ!)

(…本気形態でマシンナーさんの全力の火力ぶつけたらどうなるんでしょう?)

(…ナザリック消滅しちゃうんじゃないでしょうか?)

(冗談でもやめてください)

(すんません…)

 

すかさずモモンガからのメッセージに答えるマシンナー。彼だってここまでの威力を持っているとは思わなかったのだ。

この形態のブレスト・ファイヤーだけでこんな事になるのなら、本気形態で攻撃したらどうなるんだろうと不安になった。

 

「すごい…」

 

シズは感動していた。先程の剣技もさることながら、マシンナーのその圧倒的な火力とその攻撃手段の多さには感動と同時に戦慄もした。

 

「一回だけで、いなくなった……」

「あれがマシンナー様が「ナザリックの機動兵器」と言われた所以ということね…」

 

ユリもまたマシンナーの力に息を呑んだ。

 

(あ~…そろそろシャルティアの所に行ってきます)

(やりすぎないでくださいね?)

(…善処はします)

 

モモンガさんととのメッセージを切って、俺はシャルティアの所に向かう。

目の前に、輝く笑顔をこちらに向けて跪いているシャルティアがいた。

 

「マシンナー様……先ほどの御力といい、御言葉といい……このシャルティア、畏敬の念を禁じえません」

 

御言葉ってさっきの「全てを焼き尽くす暴力」発言か? そう考えながら、俺は

改めてシャルティアの方を向く。

 

「ふむ……流石は我が友ペロロンチーノ、良いシモベを創造してくれた」

「はい?」

 

その発言に首を傾げるシャルティアに俺はこう告げる。

 

「お前は俺の力をぶつけるに相応しい相手ということだよ」

 

デモべとマブラヴをよく語り合ったペロロンチーノさん。クエストを手伝ってもらったり、おすすめのエロゲを教えてもらったりしていた。

一緒にクエストに行ったときに、「アインズ・ウール・ゴウンを無礼るな!!」とか「レムリア・インパクトぉ!」ってお互い叫びながら暴れまわっていたな~。

そう考えながら俺は上半身にかけていたマントをバサっとほうり捨てる。

 

(なぜマントを?)

 

「シャルティア……全力で来い、手加減するなよ?」

 

その言葉にシャルティアはすぐに真面目な表情となり、自身の装備を装着する。

血のような紅い鎧とヘルムを纏い、手には特徴的な槍、スポイトランスを持っている。

 

「行きます!」

 

突撃してくるシャルティアにマシンナーは対艦刀を構え、迎え撃った。

 

 

 

「あの、モモンガ様、何故マシンナー様はご自身の装備の一つをお外しになったのですか?」

 

守護者最強のシャルティア相手に何故装備の一つを捨てたのかアルべドにはわからなかった。

 

「そういえばアルべド達守護者はマシンナーさんの戦いを見たこと無かったんだったな?」

「はい、お恥ずかしながら……」

「まあよく見ておくがいい、マシンナーさんの装備は少々かわっているんでな」

 

"かわっている"

至高の御方であり、総括であるモモンガからのその言葉は、アルべド達が興味を持つのには十分すぎる理由だった。

 

 

 

シャルティアが高速でスポイトランスを突いてくる。マシンナーはそれを捌きながら、反撃をする。

互いに一歩も引かない応酬を繰り返していた。

 

(そろそろ"変形"させるか…)

 

「モードチェンジ……"アスラ"!」

 

バァンと衝撃破を全身から放ち、シャルティアを怯ませる。

怯んだシャルティアはすぐにマシンナーの方を向き、マシンナーの変化に驚いた。

 

(装備が変わった?)

 

先程までのマシンナーの身体は重騎士のような姿だったが、今のマシンナーはその装甲が少なくなっており、腕の装備はガントレットのような形状の物になっている。

身体も重騎士から、格闘家のような姿となっており、足の装備もスパイクやブレードが付いていた。増加装甲は、身体の重要な箇所と両手両足の装備に付いていた。

 

「行くぞ…」

 

ヒュン、と言う音とともに大地に小さな穴が開いた。

 

(速い!)

「目の前だ」

 

シャルティアの目の前にまで接近し、全力で殴りぬく。シャルティアはすぐにスポイトランスで防ぐが、拳の衝撃により、後退する。

 

「<マシンガン・ブロー>!」

 

ドガガガ、とすかさず高速のラッシュで追い打ちをかける。一発一発の威力は低いが、多段ダメージを与えられるためこの形態ではよく使っているスキルだった。

 

「<エルボー・ロケット>!」

「<グレーター・テレポーテーション/上位転移>!」

 

そのままフィニッシュブローを放つが、シャルティアは上位の転移魔法でマシンナーの背後に回る。

 

「ぬ?」

「<ヴァーミリオンノヴァ/朱の新星>!」

 

シャルティアが魔法を唱えた瞬間、マシンナーの身体は炎に包まれた。

 

「ぐぅ…!」

「もらいました!」

「させん!<マキナ・フィンガー>!」

 

接近してくるスポイトランスを避けつつ、マシンナーは右手を赤熱化させてシャルティアの頭を掴む。掴んだ瞬間、爆発してお互いに吹っ飛ばされた。

吹っ飛ばされたマシンナーは立ち上がり、態勢を立て直す。

 

(装備変形機能も使えるな、さてシャルティアの様子は…)

 

爆発の時に起きた煙が消えてシャルティアの姿が見えた。

 

(おかしいな、そんなにダメージを受けてない。当たった時の威力はかなり高いんだがな。ということは…)

 

マシンナーの考えている通りシャルティアはスキル<時間逆光>を使用していた。

 

(自分の肉体の時間を巻き戻して致命傷も一瞬で修復するって奴だったよな…)

 

「行け、眷属よ!」

 

シャルティアは己の眷属である古種吸血蝙蝠(エルダー・ヴァンパイア・バット)吸血蝙蝠の群れ(ヴァンパイア・バット・スウォーム)吸血鬼の狼(ヴァンパイアウルフ)を多数召喚した。

召喚された眷属が群れで襲いかかってくる。

 

「モードチェンジ、"へカトンケイル"!」

 

再びマシンナーの身体が変わる。再び重装甲を装備し、頭には、大型のビーム砲。肩には大型のキャノン砲が着いている。両腕にシュバルツ・カノーネを持ち、手の装備にはガトリングが両腕とも二門装備されていた。

両足にもキャノン砲とミサイル・ランチャーが装備されている。

 

「数の暴力には、それを上回る火力で挑むべし!」

 

先程のブレスト・ファイヤーよりも強力なエネルギーが集まってくる、増加装甲も展開され、そこから小型機銃やらミサイルの弾頭が顔を覗く。そしてそれらを全てロックオンした。

 

(ちょ、マシンナーさん! その形態でその技は…)

「<バーニング・ビッグバン>!」

 

一斉に解き放たれたビームや実弾の暴風がシャルティアと眷属達を襲う。先程の爆発よりも大きな爆風と光が広がった。

直撃した場所の惨状は先程より凄まじいものだった。

眷属達は塵一つ残っておらず、クレーターは先程のそれ以上に大きいものができていた。

 

「凄まじい…」

 

シモベの誰かがそうつぶやく、それ程までの光景だった。

 

(あ~…これ最悪モモンガさんから超位魔法喰らうかもしんない…)

 

またも作ってしまった惨状にマシンナーは内心冷や汗をかいていた。

しかしすぐに戦闘に戻る、真上から白い物体が接近してきたのだ。

それはシャルティアそっくりの物体だった。

 

「エインヘリヤルか」

 

スキルは使えないが、ステータスは同等の分身を作り出すシャルティアの切り札というべきスキルである。

それをマシンナーはすぐに装備を高機動戦闘特化の形態に変形させる。

 

「モードチェンジ、"ゼファー"!」

 

背中に収納していた翼を展開する。装甲もモード・アスラの時より少なくなっており、着いている部分は肩と足の部分だけだった。

全スラスターを展開させ、接近してきたエインヘリヤルの分身の槍をかわす。

そこにシャルティアが突撃してきたので、斬艦刀を構える。

突撃して来たシャルティアを斬艦刀で受け止める。

 

「流石だな」

「マシンナー様も流石でありんす…」

 

力任せに、シャルティアを突き放し、そのまま空中でドッグファイトを展開する。

そこにエインヘリヤルの分身も加わって、更に凄まじいものになった。

 

 

 

 

「相手や状況によって形態を変え相手を追い詰める。あれがマシンナーさんの戦い方だ…」

 

貴賓席にいるモモンガは守護者達にマシンナーの戦い方を伝える。

マシンナーの戦いを見て、シャルティアを除く守護者達は驚いていた。

それぞれの形態による戦い方、そしてその力に戦慄する。

 

(ま、それでも切り札は使ってないんだよな…)

 

 

 

 

(流石は守護者最強、強いな)

 

シャルティアの分身、エインヘリヤルとの連携攻撃を受け流しながら、シャルティアの強さを知るマシンナー。

そしてこの状況をどう切り抜けようかと考えていた。

 

(アスラはタイマン用だし地上戦がメインだ。へカトンケイルは対多数用だし、機動力は低い。ゼファーはスピードはあるけど決定打にかける、どうしたものか…)

 

このままだと埒があかない。そしてマシンナーはある決断をする。

 

(切り札を使うか…)

 

再びエインヘリヤルが突撃してくる。それを回避してマシンナーは切り札を使用した。

 

「コード:<デウス=エクス=マキナ>!!」

 

その瞬間、マシンナーの身体は黒いオーラに包まれる。

 

「モモンガ様、あれは!」

「とうとう使ったか…」

 

マシンナーが発するオーラに驚くシモベ達と「絶対やばい事になるな」と予感するモモンガ。

 

「おいアルティマ、あれはまさか!」

「切り札を御使いになられるんだ…」

 

オーラによってはっきりと見えないが、マシンナーの身体の形が変わっていくのがわかる。

そしてオーラが消えた後に、マシンナーはその姿を現した。

 

身体の色は黒のままだったが所々に金色のラインが入っている。装備はそれぞれの形態の特徴を持っていた。

両腕両足にはアスラのものよりも攻撃的なデザインになっており、一回り大きくなっている。右手には斬艦刀、左手に大型のキャノン砲が装備されていた。

両足の装甲は展開されており、スラスターが増え、赤いラインが見える。背中にはへカトンケイルのキャノン砲が装備されている。

翼を展開し、そこからビーム光がでており、光の羽のようになっていた。

顔も大きく変わっており角は2本から4本になっており、中央にも大きな角が生えていた。

目には瞳が入り、目の下の血涙のようなラインもあるからか、異様な迫力を出している。

そして金色の粒子を出しながらシャルティアと対峙した。

 

「教えておこう、あれがマシンナーさんの切り札…」

「マシンナー・ザ・アンリミテッドだ…!」


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