流星のロックマン×ロックマンエグゼ ~願いが希望に変わる時~ 作:フレイムナイト
第九十二話 隠し通路
「ここが一番奥か・・・」
熱斗が目の前の黒い扉を見据え、呟いた。
扉にはネビュラのマークが禍々しく描かれている。
『準備はいいか、二人共?』
ウォーロックが今にも暴れだしたい衝動を抑え込み、ウズウズとした声でスバルと熱斗に言う。
「うん、大丈夫だよ」
「よし・・・入るぜ!」
そう言うと熱斗は扉の前に一歩踏み出した。 自動扉がそれを感知して、ゆっくりと開きだす。 扉が開くのに比例して、熱斗達の心臓の鼓動も高くなっていく。
そして、扉が完全に開いたのと同時に、熱斗は部屋の中へと走り出した。
「リーガル! ロックマン! どこだ!?」
「ガルナ! 姿を現せ!」
部屋へと入るのと同時に、熱斗とスバルは声を張り上げて叫んだ。
しかし、部屋の中には、人一人も見当たらなかった。
『野郎ぉ・・・どこに隠れやがった!』
後半、苛立ちから声を荒げながらウォーロックが吠える。
「ここがネビュラ基地の一番奥のはずなんだけど・・・」
そう言いながら熱斗は部屋を見渡す。
高性能なコンピュータが備え付けられた大きなディスプレイには、怪しげな言葉や図が表示されている。 部屋の両脇には、無機質なガラスケースが並び、中には違法な改造を施されただろういかがわしい携帯機器やダークチップが飾られていた。
「そうだ! 熱斗君、ボクがこのコンピューターの中のデータを調べてみるよ!」
スバルがディスプレイを指差して熱斗に言う。
「なるほど。 よし、スバル、ウォーロック、一旦PETに戻ってくれ」
熱斗はそう言いながらホルダーからPETを取り出す。
そして、PETにスバルとウォーロックが入るのを確認した後、ディスプレイに向かって構える。
「プラグイン!! シューティング・スターロックマン、トランスミッション!!!」
___ ネビュラ中枢コンピューターの電脳 ___
「うっ・・・」
『気味が悪いぜ・・・』
電脳に入った瞬間、スバルとウォーロックは思わず手で口を塞いだ。
それ程までにこの電脳は恐ろしい姿をしていた。
電脳はダークチップのデータに汚染され、スモッグのような黒い霧が充満している。
辺りにはサーバーのような黒い柱が、地面から生えているかの様に無数に置かれていた。
「まるで、この電脳そのものが、ダークチップに侵されているみたいだ」
「みたいじゃなくて、そうなんだよ。 完全に汚染されている」
熱斗の言葉にスバルがそう言い返した。
そして徐に、近くにある黒い柱にスバルは手を添えた。
「まずは、この柱に保存されているデータから読み取るよ」
そう言うとスバルは、柱からデータを読み取り、熱斗のPETに送る。
PETは読み取られたデータを順に表示していく。
『ダークチップ製造状況』『ダークチップ中毒者リスト』『ネットナビ・抹殺候補リスト』『ダークロイド・潜伏地マップ』『ダークチップ受け渡し予定』・・・
『ロクなデータが無いな・・・』
読み取られたデータを見て、ウォーロックが小さく呟く。
スバルと熱斗も言葉にはしなかったが、ウォーロックの言葉に心の中で大きく頷いた。
しばらくの間、スバル達は先に進む手掛かりを得るため、データの読み取りに専念した。
データの中には、思わず目を瞑りたくなるような残酷な内容の物もあり、スバル達はそれを見る度、込み上げてくるような怒りを感じていた。
「次はこの柱のデータだ」
スバルが何本目かの柱のデータを読み取る。
『Diary』
「アレ? この柱のデータはこれ一つだけみたいだ」
スバルが不思議そうに熱斗に伝える。
「Diary・・・日記? スバル、このデータの中身を表示して見てくれないか?」
「了解、熱斗君」
数秒後、PETにデータが表示される。
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200X年 S月N日 (現在から七年前)
"予想外"だ。 まさか『イキシア』がこれ程までの力を秘めていたとは・・・。
『イキシア』め、小賢しい真似をしてくれた。
これでココロサーバーの完成がさらに困難になってしまった。
200X年 D月T日 (現在から五年前)
完成だ! 遂に、私は『アレ』を造り上げる事に成功した。
そのカケラを核として造られたチップを私は『ダークチップ』と名付ける。
だが『アレ』だけでは、私の計画を成し遂げる事は出来ない。
ココロサーバーを完成させない限りは・・・
20XX年 R月B日 (小惑星衝突事件から数日後)
突然、私の前にガルナと言う男が現れた。 私に似たこの男、本当に未来から来たのか?
しかし、奴が"手土産"としてもって来たモノ、アレは本当に素晴らしい。
ガルナの真意は分からぬが、協力したいという申し出を受ける価値は確かにある。
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PETに表示された内容は日記で、三つの日にちの内容が熱斗達の目に留まった。
「まさか、リーガルの日記!?」
『アレだの手土産だの、訳分かんない言葉ばっかり書いてあるな』
熱斗とウォーロックが日記の内容に首を傾げる。
「この日記に書いてある事が本当なら、Dr,ガルナがこの時代に来たのは、そう前の事じゃないみたいだね」
スバルは日記の最後の部分を見ながら呟く。
「この日記の内容も気になるけど、今はリーガル達の居場所を見つけねぇと・・・スバル、他の柱のデータを調べてくれ」
日記の事で重苦しくなってしまった空気を振り切るかのように、熱斗はスバルにデータの探索を促す。
『それならもう見つけたぜ!』
不意に、スバルが立っていた柱とは別の柱の場所から、ウォーロックが声を張り上げた。
「ウォーロック! いつの間に?」
『ヘッ! それよりも早く先に進もうぜ。 熱斗、目の前のコンピュータの右側の壁を押して見ろ! 隠し部屋に続く階段が現れるはずだ』
ウォーロックが熱斗に指示を出す。
「壁を押す? 押すってどうゆう・・・」
熱斗はそう言いながらも、指示された通りに壁に両手を付けると、思いっきり力を込めて壁を押した。
ガゴッ!!
「ウワァ!」
熱斗は思わず後ろに飛び退いた。 壁を押した瞬間、ドアの大きさ程の壁の一部分が後ろにへこんだのだ。 へこんだ場所は、そのままスライドするように左に動き、壁が無くなった場所には、上へと続く簡易な階段が姿を見せた。
「この先に・・・」
『ああ・・・奴らが居るぜ!』
スバルの言葉をウォーロックが繋げる。
「行こう、熱斗君! ロックマンもきっと居るはずだよ」
「あぁ!」
熱斗は階段へと一歩を踏み出す。 しかしそこで一旦動きを止めると、後ろを振り向いて自分達が進んできた道を見た。
「・・・・・・みんな」
小さな声だったが、熱斗の言葉をスバルとウォーロックは聞き逃さなかった。
「大丈夫だよ、熱斗君。 みんなは必ず来るよ!」
『オラァ、シャキッとしやがれ!』
スバルとウォーロックが熱斗の不安を拭うかの様に声を張り上げる。
「・・・そうだな、オレ達はみんなを信じてここまで先に進んで来たんだ。 みんなもオレ達を信じてくれているはずだ」
そう言うと熱斗は自分が進むべき道へと振り返る。
「行くぜ!!」
【封印されたネタ】
スバル
「まずは、この柱に保存されているデータから読み取るよ」
『ダークチップ製造状況』『ダークチップ中毒者リスト』『ネットナビ・アイドル化計画』『ダークロイド・潜伏地マップ』『ダークチップ受け渡し予定』・・・
熱斗
「・・・今、変なタイトルのデータが混じってなかった?」
スバル
「目の錯覚だよ」
熱斗
「いや、でも・・・」
ウォーロック
『熱斗! スバルの言う通りに、目の錯覚って事にしてくれ・・・!!』
熱斗
「・・・了解」