流星のロックマン×ロックマンエグゼ ~願いが希望に変わる時~ 作:フレイムナイト
「どうしてブライのバトルだけ三話構成なんだよ!?」
フレイムナイト
「だ、だってブライはみんなに比べて出番少なかったじゃん!」
ブライ
「余計なお世話だ・・・」
フレイムナイト
「あんまりだ!」
(何も見えない・・・)
漆黒の闇の中、ブライが心の中で呟く。
(何も聞こえない・・・)
スワローマンのエアダイブによって、視覚・聴覚・触覚を封じられてしまったブライには周りがどうなっているか分からない。
(オレの剣は・・・)
(ラプラスは・・・どこだ?)
『ギッ・・・ガ・・・!!』
剣の姿から元の姿に戻ったラプラスがスワローカッターを薙ぎ払った。
『な、なんだお前は!?』
スワローマンは突然現れたラプラスに驚いてたじろくが、すぐに冷静さを取り戻す。
『お前、そいつのナビか?』
スワローマンがブライを指差してラプラスに問う。
『ガッ・・・ギガギ!!』
ラプラスは何か言いたげにその奇怪な声を発するが、その言葉の意味を理解出来る者はいない。 唯一その言葉の意味が分かるブライは聴覚を封じられているのでラプラスの声そのものを聞くことが出来ない。
『まあいい。 ムーの末裔より先にお前を始末すればいいんだからな!』
スワローマンはツバメのような形態に姿を変えると、ラプラスに向かって突っ込んだ。
『ギガッ・・・グッ!!!』
ラプラスも自身の爪で、突っ込んで来たスワローマンを迎え撃った。
・・・ラ・・・・・・・
(・・・? 声が聞こえる)
・・・ラ・・・・・・イ・・・
(よく・・・聞き取れない・・・)
・・・ブ・・・ライ・・・
(オレを呼ぶのは・・・誰だ?)
『・・・ギッ・・・』
ボロボロになり、スワローマンに首を掴まれ持ち上げられたラプラスがブライを見る。
だが、ブライはラプラスを見ておらず、辺りを見渡しながらスワローマンを捜していた。
『諦めろ。 お前の主人は見ての通り何も見えず、聞こえず、感じることも出来ない。 お前のことは分からないさ』
スワローマンがラプラスに吐き捨てるように言った。
『・・・ギッ・・・が・・・』
『・・・?』
ラプラスがまた奇怪な声を発した。 だがどこか違う。
スワローマンはそれを首を傾げながら聞く。
『ちが・・・う・・・!』
確かに、ラプラスは『違う』とスワローマンに言い放った。
『!? お前、喋れたのか!?』
『ちが・・・う! ブライは、主人じゃない・・・!!』
ラプラスは、自分の首を掴んでいるスワローマンの腕を力強く握りしめる。
『主人じゃない? だったらお前は奴の何だというんだ?』
『ブライは・・・ムーの生き残り、最後の一人・・・オレ、ブライ守る。 ムーとの絆、守る』
「それが、ラプラスだ」
不意に、ラプラスではない誰かが、スワローマンに向かって言い放つ。
『なっ・・・!?』
スワローマンが声の聞こえた方を見る。 そこには、ブライが仁王立ちでスワローマンを睨みつけていた。
『バカな! お前の目は見えないはず・・・いや、聞くことも感じることさえも出来ない筈だ!!』
スワローマンがワナワナと震えながらブライを指差す。
「確かに、オレは見ることも聞くことも感じることも出来ないが、"ラプラスは見ることも聞くことも感じることも出来る"・・・!!」
『どういうことだ!?』
「今オレが見えているのは、"ラプラスが見ているものだ"!!」
『ブライ・・・!!』
ラプラスは自分を掴んでいるスワローマンの腕を自分の爪で切り裂く。
『ぐわぁ!!』
スワローマンは思わずラプラスを放す。 ブライの元に戻るラプラス。
「行くぞ、ラプラス!!」
『ギガッ・・・!!』
ラプラスはいつもの話し方に戻ると、剣の姿になった。 ブライはラプラスソードを握ると、スワローマンに向かって駆ける。
『チッ! 一体どうなっている!?』
スワローマンはスワローカッターをブライに向かって放つ。
だがブライはラプラスソードでそれを薙ぎ払う。
『クッ!』
スワローマンは上空に飛んで逃げようとする。
「逃がすか! ブライナックル!!」
ブライが拳の形をした紫の衝撃波を放つ。 ブライナックルはスワローマンの翼に命中し、スワローマンは地に落ちる。
『チ、チクショーー!!!』
「ラプラスソード!!!」
ブライのラプラスソードが、スワローマンを斬り付ける。
『グアァァーーー!!!』
スワローマンは断末魔の悲鳴を上げると、そのまま暗闇の中で消滅した。
スワローマンの消滅を見届けると、ブライはその場にしゃがみ込んだ。
ラプラスもソードから元の姿に戻る。
「・・・ラプラスは、ムーの技術の全てを注ぎ込んで造られた電波生命体。 ムーの血を引く者に様々な力を与えてくれる。 その力の一つが、ムー人の電波と共鳴することによって"五感を共有する"能力だ」
スワローマンは、ブライの五感を封じたが、ラプラスの五感を封じなかった。
だからラプラスは自分の能力を使って、自分が見ているモノ,聞こえているモノ,感じているモノをブライに伝えていたのだ。
「ラプラス・・・なぜ、最初からこの能力を使わなかったんだ?」
『ギギッ・・・ガ・・・?』
すっかりいつもの口調に戻ったラプラスにブライは問う。
「? 自分でもこんな能力があるなんて分からなかった? ただ・・・」
「オレを守らなくてはいけないと思った・・・」
ラプラスの言葉を翻訳したブライはそこまで言うと、しばらくの間沈黙した。
「キズナの力・・・という訳か? ・・・くだらん」
ブライはそこまで言うと立ち上がる。
「オレとラプラスの関係はそんな生温い言葉で表せない・・・ムーのキズナは、星河 スバルの言うキズナとは違う・・・!!」
ブライは奥へと暗闇の中を進んでいった。