流星のロックマン×ロックマンエグゼ ~願いが希望に変わる時~   作:フレイムナイト

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第六十八話  ピュアル

「こっちだよ、銀色お姉ちゃん!」

「待って! 彩斗君!」

 坂になっている草原を彩斗と銀色が走って駆け上がる。

 

「わぁ・・・!」

 坂を駆け上がり、頂上に着いた銀色は目の前の光景に感嘆の声を上げる。

 

海に面した小さな丘、その丘に咲き誇る様々な種類の花が彩斗と銀色の前方に広がっていた。

 

「綺麗・・・!」

「ここ、ボクの秘密の場所なんだ。 パパやママ、熱斗にすら教えてないんだよ?」

 丘の風景に見取れる銀色の前に立った彩斗が自慢げに銀色に説明する。

 

「だから、この場所の事は、銀色お姉ちゃんとボクだけの秘密」

 彩斗は口に人差し指を当てて言う。

銀色は一瞬、キョトンとした顔になるが、すぐに笑顔でそれを返した。

 

銀色が、公園で友達と遊ぶ弟の様子を見る彩斗に会いに行く事を毎日の日課にするようになって、早数ヶ月。

二人はとても仲の良い親友同士のような関係になっていた。

 

「銀色お姉ちゃん、ちょっとこっちに来て!」

 不意に、彩斗が手招きをしながら銀色にこっちに来るように呼びかける。

 

「?」

 銀色は呼ばれるがままに彩斗の元へと歩を進める。

 

「しゃがんで! しゃがんで!」

 彩斗は無邪気に銀色にさらに指示をする。 銀色が彩斗の言う通りに彩斗の背丈までしゃがみ込むと、彩斗は銀色の髪に手を触れた。

 

「? 彩斗君、何をしているの?」

「えへへ、見てよ!」

 彩斗はそう言うと、髪から手を放した。 すると、銀色の髪には、淡い桃色の可愛らしい花が付けられていた。

 

「・・・!」

 銀色はそれに気が付くと、頬を赤らめ、思わず花に手を添えた。

 

「どう? 銀色お姉ちゃんの髪に似合うと思ったんだけど」

 彩斗も、銀色ほどではないが頬を少し赤らめ、頭を指で掻く。

 

「・・・もしかして、このためにここに連れて来てくれたの?」

 銀色が一言一言確かめるように彩斗に問いかける。

 

「うん。 銀色お姉ちゃん、ボクと出会ってから、ずーっと髪の毛の事気にしてたから、なにかしてあげられないかなって・・・」

「・・・・・・ッ!」

 彩斗の言葉に、銀色は目頭が熱くなり、思わず泣きそうになった。

 

銀色は彩斗と出会って人とのわだかまりが薄らいだ。 だがやはり、今まで気にしていたものがすぐに解消できる訳ではなかった。

銀色はまだ自分の銀色の髪をコンプレックスとして、気にしている箇所があったのだ。

彩斗はその銀色の気持ちを感じ取り、自分に出来る励ましとして、この花が咲き誇る丘に連れてきたのだ。

 

 

純粋。 今の彩斗を表すならそれだ。

彩斗はまだ五歳の小さな子供、だからこそ純粋に他人のために行動出来るやさしい心があるんだと、銀色は本能的にそう感じ取っていた。

 

 

「ピュア(純粋)・・・」

 銀色の口から自然と言葉が漏れ出す。

 

「えっ?」

「ピュア・・・ピュアル、この丘の名前にピッタリじゃないかな?」

 銀色の言葉に首を傾げる彩斗に、銀色がそう提案する。

 

「ピュアル? うわぁ! 本当だ、ピッタリだよその名前!!」

 彩斗はそう言うと丘全体を見渡して叫んだ。

 

 

「今日からこの丘の名前は、ピュアルだ!!!」

 

 

 

 

 

「今日はありがとね、彩斗君」

 夕暮れ時、秋原町に帰ってきた銀色が彩斗にお礼を言った。

 

「えへへ、どういたしまして」

 彩斗は銀色が満足してくれたと喜び、嬉しそうに返事をした。

 

「・・・彩斗」

「えっ?」

 不意に、銀色が彩斗の事を呼び捨てで呼び、彩斗は笑うのを止めた。

 

「あのね、お母さんから教えてもらったんだけど、特別仲良しのお友達とは名前で呼び合うんだって。

だから私これからは彩斗君のことを呼び捨てで呼びたいんだ。 いいかな?」

 銀色は搾り出すかのように、彩斗に伺う。 彩斗はキョトンとした顔で銀色を見て何も言わない。

図々しかったかと銀色が不安になった時、

 

 

「うん、いいよ。 ぎ、銀色・・・///」

 彩斗が恥かしそうに、銀色の名前を呼んだ。

 

「・・・!! ありがとう! 彩斗!!」

 銀色も、最高の笑顔で彩斗の名を呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時、いつまでもこんな時が続くと、誰もが信じていた。 銀色も、彩斗も・・・。

 

だけど、

 

「おじさんなにやってるの?」

 

まさか、

 

「返して!それはパパの大切なものなんだよ!!」

「だまれ・・・」

 

あんなことが起こるなんて・・・・・・

 

 

『ここは・・・どこ?』

 

 ボクは見知らぬ場所に立っていた。

 

 

 

 

 

悲劇は突然訪れた。


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