流星のロックマン×ロックマンエグゼ ~願いが希望に変わる時~ 作:フレイムナイト
「彩斗君」
「銀色お姉ちゃん」
秋原公園のリスの銅像の台座、そこに座っている彩斗に銀色が後ろから声をかけた。
公園全体が見渡せる台座は、彩斗のお気に入りの場所なのだ。
銀色は彩斗の隣に座ると、彩斗をチラッと見た。
左右に撥ねた髪が丁度良く彩斗の横顔を隠す。
「彩斗君はみんなと遊ばないの?」
銀色は話の話題を掴もうと彩斗に問いかける。
「うん、ボク体弱いし、それに・・・」
彩斗はそこまで言うと公園を見る。
公園では彩斗と同い年位の子供達がドッチボールをして遊んでいる。
彩斗はその中から青いバンダナを頭に巻いた男の子を見つけると銀色に言った。
「弟を守らないと」
「弟?」
銀色も視線を公園に移し、バンダナの男の子を見る。
「そうだよ。 ボクお兄ちゃんだからね」
彩斗はそう言うと、銀色に向かって笑って見せた。
銀色はそんな彩斗に尊敬とも言える感情を抱いていた。
自分よりも年下のたった五歳の男の子が兄としての自覚を持っていることも、自分の銀色の髪を自然とすんなりと受け止めて話しかけてくれたことも。
十歳の銀色にとって、彩斗の全てが尊敬に値するものだった。
銀色がそんな事を考えていると、ドッチボールをしていた子供達の声が突然変わった。
ドッチボールをして遊んでいるというよりも、なんだか言い争いをしているかのような叫び声が聞こえてきたのだ。
「「?」」
彩斗と銀色が不思議に思って公園を見ると、周りの子供達より一回り大きい体の男の子が、バンダナの男の子を追い掛け回していたのだ。
「熱斗ーーーー!! テメェ強く投げすぎなんだよーーーー!!」
そう言う男の子の顔には、クッキリとボールの痕が付いている。
「わざとじゃないって言ってるだろーーーー!!」
追いかけられているバンダナの男の子は、必死に走りながら抗議をしている。
どうやらドッチボールをしている時に、バンダナの男の子が投げたボールが男の子の顔面に命中し、さらにボールを強く投げ過ぎてしまった為、かなり痛かったらしい。
「もう! 二人ともやめなよ~~~!」
二人の男の子の追いかけっこを赤い髪の女の子が止めようと叫ぶ。
しかし、二人とも聞く耳持たず追いかけっこを続けている。
「熱斗、デカオ君、メイルちゃん・・・」
彩斗は少し苦笑いをすると、座っていた台座からピョンと飛び降りた。
「ボク行くね。 早く熱斗とデカオ君を止めないと」
「うん、また会おうね」
彩斗はそう言うと公園の方へ駆けていった。
銀色もそれを見届けると公園を後にする。
彩斗と銀色が出会って数週間。 銀色は変わった。
学校で友達が出来たのだ。
勇気を出して、自分から話しかけた事によって・・・。
彩斗が話しかけた時のように・・・。