流星のロックマン×ロックマンエグゼ ~願いが希望に変わる時~ 作:フレイムナイト
___???___
「『・・・・・・ここはどこだーーーーーーー!!?』」
コンマ六秒の間、思考を停止させていたスバルとウォーロックの第一声が響く。
スバルとウォーロックは今、黒みかがった紫色の空間に浮いているように存在している。
「ボクらは一体、どうしてこんな所に・・・?」
スバルは目を閉じ、額に手を添えると、自分の頭の中の記憶をプレイバックさせる。
ファントム・ブラックにワイドブレードで斬りかかる。
だが不意に思った疑問から、自分はファントム・ブラックに誘い込まれていると気付き、後ろに身を引こうとした。
その時、ファントム・ブラックの不気味な笑みを見た一瞬、気が遠のいた。
『スバル・・・』
「うん、ウォーロック。 ボクも思い出したよ、ボク達はまんまとファントム・ブラックの罠にはまってしまったんだ」
スバルとウォーロックは深い溜め息を付く。
その顔は、「あ~ぁ、やっちゃった」とゆう感じの、自分に呆れている顔だった。
『しかし、ここはどこだ?』
ウォーロックが目の前の空間を切り裂くかの様に腕を振る。
「まるで宇宙の中にいるみたいだ」
スバルは、上も下も、まして右や左も分からない空間をそう表して言う。
「ンフフ・・・。 そう、ここは闇宇宙」
「『・・・!!?』」
スバルとウォーロックは声のした方を見る。
そこには、嘲笑うかの様な目でスバルを見る紳士の姿―ファントム・ブラックが立っていた。
「ファントム・ブラック・・・!」
『オイ、ここは一体どこなんだ!?』
ウォーロックがファントム・ブラックに向かって叫ぶ。
「ンフフ・・・。 今言った通りさ、ここは闇宇宙。 ネビュラの闇の力によって生み出されし空間だ」
「闇の力によって、生まれた空間・・・!?」
驚くスバルに構わず、ファントム・ブラックは持っていたステッキの先端を自分の頭上に向ける。
「終わりだ、星河 スバル・・・!!」
ファントム・ブラックがスバルに向かってステッキを振り下ろす。
すると、スバルの遥か頭上から白い光球が降り注いで来た。
「なっ・・・!?」
『避けろ! スバル!!』
ウォーロックアーマーに変形しているウォーロックが、スバルを引っ張る。
だがスバルは、ファントム・ブラックが繰り出してきた技に驚いていた。
(これは、メテオライトバレッジ!!?)
スバルは自分を襲った技が、自分がかつてノイズチェンジの時に使っていた技だと知り、驚愕する。
「逃すか!」
ファントム・ブラックがさらに、ステッキを真横に振る。
ステッキが振り終わった瞬間、今度はスバルの身長より遥かに二倍を超す、巨大な津波が出現した。
『!? この技は・・・!!?』
「ダイナミックウェーブ!!!」
津波は、スバルとウォーロックが逃げる余裕を与える間無く、二人を飲み込んだ。
「ンフフ・・・。 自分の技にやられる気分はどうだ!? クククッ、アーハッハッハ!!!!!」
闇宇宙の中、ファントム・ブラックの笑い声だけが響いた・・・。
___現実 旧秋原エリア・パストビジョン___
『スバル! しっかりしろ、スバル!!』
「どうしたんだよスバル!? 目を覚ましてくれよ!!!」
ブルースと熱斗が、仰向けに倒れている"スバル"に呼びかける。
だがその目は虚ろで、何も見ていない。 ウォーロックアーマーの目に当たる部分も同じ感じだ。 機能が停止してしまっているかのように光が無い。
「クッソ~! 一体どうなっちまってんだ!? ファントム・ブラックまで黙り告っちまうし・・・!!」
熱斗はそう言うと、ファントム・ブラックを見た。
ファントム・ブラックも、スバルの様に倒れているのではないが、スバルやウォーロックと同じく、虚ろな目でその場に突っ立っていた。
『オレの時も同じだった。 オレも奴に斬りかかり、そこで意識が途切れた。 気が付くと、オレはボロボロになってスバルに支え起こされていた・・・』
ブルースが淡々と自分とファントム・ブラックとの戦闘を語る。
「炎山達と、連絡は・・・?」
『駄目だ。 通信機能がイカレてしまって、炎山様と連絡が取れない・・・!』
ブルースはそう言うと奥歯を噛み締めた。
今現在、この電脳世界では妨害電波らしきモノが発生していて、PET同士の通信は不可能。
かろうじてネットナビとオペレーターとの通信は出来るのだが・・・。
スバルは原因不明の状態異状で意識不明、ブルースの通信機能も壊れてしまい、ブルースを通しての炎山や仲間達との通信も封じられてしまった。
「どうすれば・・・・・・」
熱斗はPETを強く握り締める。
キィィイン・・・・・・
「『『・・・!!?』』」
不意に、不思議な金属音が電脳世界に響いた。
そしてその瞬間、熱斗のPETと、ダークロックマンのナビマークから、淡い光が出始めた。
「ホープ・キー!?」
『オラシオン・ロック!』
熱斗はPETに保存していたホープ・キーを、ダークロックマンはナビマークの中に収納していたオラシオン・ロックを見る。
キーとロックはまるで互いの存在を感じ取り、呼び合っているかの様に光を発している。
『! 光が段々強くなっている!!?』
ブルースはそう言うと、手で光を遮る。
最初、淡い光を発していたキーとロックは、今は目が眩むかの様な光で輝いている。
そして、次の瞬間・・・。 周りが見えなくなる程の強い光が電脳世界を包み込んだ。
熱斗は目を覆っていた手を下ろし、ゆっくりと目を開いた。
白い光に満たされた空間。 光には微かに濃淡があり、不規則に揺らいでいる。
熱斗は気が付くと、その光の空間の中に立っていた。
『・・・またココに来るなんて・・・』
不意に、熱斗の後ろから誰かの呟く声がした。
熱斗が振り向くと、そこには熱斗とは別の方向を向いて、光の空間を見ている人物、ダークロックマンが立っていた。
「・・・ッ!?」
熱斗はダークロックマンに話しかけようとしたが、その顔を見た瞬間、恐怖で一歩ダークロックマンから後ずさった。
ダークロックマンのその表情、一見無表情に見えるが、その目は怒りに燃え、全身から殺気が漏れ出している。
「やっと会えたね」
その時だった。 落ち着いた声が熱斗とダークロックマンに語りかけてきたのは。
『ボクは会いたくなかった・・・』
ダークロックマンはそう言うと声のした方を向いた。
『・・・イキシア!!』
そこには、熱斗が今まで夢の中で会ってきた謎の少年が、悲しい微笑みで立っていた。