流星のロックマン×ロックマンエグゼ ~願いが希望に変わる時~ 作:フレイムナイト
それと同じように、心に闇がない人などいない・・・。
「ジャ、ジャンゴ君・・・?」
スバルは驚きのあまり、声が震えている。
突然ジャンゴの体から黒いオーラが溢れ出し、ジャンゴの体を包み込もうしているからだ。
「おい、ヒマワリ野郎!!? アイツどうなってやがんだ!!?』
ウォーロックはジャンゴを指差しながらオテンコサマに詰め寄る。
『・・・以前、ジャンゴはある者との戦いで、その身にダークマター・暗黒物質を体に取り込まれてしまった。 暗黒物質には、人をイモータルに、ヴァンパイアに変える力がある』
オテンコサマはジャンゴから目を離さず、スバルとウォーロックに説明する。
「じゃあ、ジャンゴ君は、伯爵と同じヴァンパイアなの!?」
『確かに、ジャンゴは半ヴァンパイアだ。 しかし、太陽仔としての力によって自我を保つことは出来た。 そして、仲間達との絆によって・・・』
ジャンゴから溢れ出していたオーラが完全にジャンゴを包み込む。
『己の中の闇を完全に制御できるようになったのだ!!!』
オテンコサマが叫んだ瞬間、ジャンゴを包み込んでいたオーラが弾け飛んだ。
そしてそこに居たのは、いつものジャンゴではなかった。
クリーム色の髪は黒ずんだ茶色に、背中からは赤い翼が生え、手には鋭い爪が、そして身に付けていたバンダナで目元を覆ったその姿は正にヴァンパイアというべき姿だった。
「ジャ、ジャンゴ君・・・」
スバルはジャンゴの変身に戸惑いを隠せない。
そして不意に、ジャンゴが後ろを向いてスバルを見た。
「スバル君、伯爵はボクの持つ太陽銃でも浄化出来ない程、強い闇の力に守られている。 だから、同じ闇の力でその守りを引き剥がす。 君はその間に熱斗君達を・・・!!」
ジャンゴは伯爵に聞こえないように、小さく、落ち着いた声でスバルに話す。
「わ、分かった」
スバルはやっとそれだけ言うと、いつでもダッシュ出来るように身構える。
「クッ、クハハハハハ!! まさか太陽少年ともあろうものが闇の力を使おうとはな・・・。 だが、そのような中途半端な闇の力で、私に対抗出来るかな?」
伯爵はそこまで言うと、剣を構え、ジャンゴに突進してきた。
ジャンゴはそれをジャンプして交わす。
「ブラッドランス!!」
伯爵が両手を天に向かって上げる。 すると、地面から赤い槍が突き出してきて、ジャンゴに襲い掛かってきた。
だがジャンゴはそれを避けようとはせず、その場にジッと立っている。
『おい、アイツなんで避けないんだ!?』
「ジャンゴくーーーん!!」
スバルとウォーロックがジャンゴに逃げるように叫ぶ。
「暗黒魔法、チェンジ・ウルフ!!」
ジャンゴは右手を高くに上げて叫んだ。 すると、ジャンゴの足元に黒い魔方陣が現れ、ジャンゴは黒い狼のような姿に変わった。
次の瞬間、ジャンゴの姿が全員の前から消えてしまった。
「な、何!? 奴はどこに!!?」
伯爵は、突然消えたジャンゴを辺りを隈なく見て探す。
「こっちだよ!」
不意に、伯爵の頭上からジャンゴの声が聞こえてきた。
伯爵が上を見上げると、ジャンゴが腕を大きく振りかぶっていた。
「ダーククロウ!!!」
ジャンゴは伯爵目掛けてその鋭い爪でその胸ぐらを切り裂いた。
「ぐああああ!!!」
「今だ! スバル君!!」
苦痛に悲鳴を上げる伯爵。 それをチャンスとジャンゴがスバルに合図を送る。
スバルはそれを待っていたとばかりにダッシュして熱斗とアリエルの傍に駆け寄ると、スバルが熱斗を、ウォーロックがアリエルを抱きかかえ、伯爵から遠ざける。
「熱斗君! 熱斗君!!」
『アリエル、しっかりしろ!!』
スバルとウォーロックが、熱斗とアリエルに呼びかける。
「う、ううん・・・」
熱斗はうめき声をあげると、ゆっくりと目を開けた。
「熱斗君!! 大丈夫!!?」
「・・・スバル? オレ、どうしてたんだっけ? 確か後ろから誰かが黒いリングを投げてきて、それから・・・あっ!」
熱斗はそこまで思い出すと、今の自分の状況をやっと理解できた。
熱斗は、伯爵の手から救出はされたが、まだ熱斗の周りを黒いリングが纏わり付き、熱斗の体の自由を奪っている。 それはアリエルも同じだった。
『・・・あ、ウォーロック様・・・?』
『アリエル、大丈夫か?』
『・・・うん、また、助けられちゃったんだ・・・』
アリエルはそういうと、ウォーロックに助けられた嬉しさと、また足手纏いになってしまった不甲斐無さに複雑な顔をする。
「ぐっ、許さんぞ!! ジャンゴ」
伯爵が胸を抑え、苦痛に堪えながらジャンゴを睨んだ。
ジャンゴはそんな伯爵を見ると、静かに構える。
「・・・えっ!? ジャンゴ!!? あれが・・・!?」
伯爵の言葉を聞いた熱斗が信じられないように黒ジャンゴを見る。
「えっ、熱斗君、ジャンゴ君を知ってるの!?」
「ああ、前にシェードマンを倒すのに協力したことがあって・・・」
『なんでもあのジャンゴっての、昔、ダークなんとかって物を・・・闇の力みたいな物を体に埋め込まれて、あの姿に変身できるようになったらしい』
ウォーロックが少し気まずそうに熱斗に説明する。
「・・・それって、ダークロックマンと同じ・・・・・・」
悲しげな瞳で黒ジャンゴを見る熱斗。 熱斗の目に、黒ジャンゴとダークロックマンが重なって見える。
『どうした、少年? ダークロックマンとは?』
そんな熱斗の様子を見ていたオテンコサマは、ダークロックマンの事について聞いてきた。
「実は・・・・・・」
熱斗に説明させるのは酷だと思い、代わりにスバルがオテンコサマに説明した。
ロックマンが悪の組織に捕らわれしまい、闇の力に支配されてダークロックマンとなってしまった事を・・・。
すると、スバルの話を聞いたオテンコサマが静かに、熱斗に静かに話しかけてきた。
『少年よ、気持ちは分かる。 確かに表の世界、太陽が照らす世界に生きている者にとって、闇とは忌み嫌われるモノだ・・・。 だが、たとえそれが暗黒の力であったとしても、力そのものには正義も悪も無い。 大切なのはそれを使う者・・・その者の心だ』
オテンコサマは諭すように、熱斗にやさしく話しかける。
『光差すところ、影は落ちる。 影なき光など、ないのだ・・・。 光が強ければ強いほど、その光が生み出す影もまた強くなる・・・。 つまり、心に深い闇を持つ者は、それと同じ位、心に強い光を持っているということだ!!』
「「『・・・!!!』」」
熱斗、スバル、ウォーロックは、オテンコサマの言葉にハッとした顔つきになる。
『確かに、今のロックマンは闇に飲み込まれているかもしれん!!
だが、その心の奥底には必ず、その闇に負けない強い心の光が宿っているはずだ!!! それを開放してやるのが、少年、君のやるべき事のはずだ!!!』
オテンコサマは熱斗を指差して言う。
熱斗の瞳には、さっきまでの悲しげな暗い光はなく、いつもの力強い光が宿っていた。
「・・・オテンコサマ、ありがとう。 そうだよな、オレ、ロックマンのオペレーターなのにロックマンを信じられてなかった。 ロックマンの中の心の光を・・・。
オレはもう迷わない。 オレは、ロックマンを、ロックマンの中の心の光を信じる!!! ロックマンの心の光をオレが取り戻すんだ!!!」
「熱斗君!!」
『ヘッ、そうこねぇとな!!』
『・・・うん!!』
スバル、ウォーロック、アリエルの順に言う。
「ダークファング!!」
ジャンゴが伯爵の後ろを取り、伯爵に噛み付く。
「ぐおおおおぉぉぉぉ・・・!!」
伯爵は痛みに耐えながら、ジャンゴを背中から引き剥がそうとするが、ジャンゴはその牙でしっかりと伯爵に噛み付き、離れない。
『いいぞ、ジャンゴ!! 伯爵の体から闇のオーラが抜けていっている!!』
「あっ!」
『リングが・・・!』
熱斗とアリエルの体を拘束していたリングが霧のように姿を変え、霧散して消えた。
伯爵の闇の力が弱まったからだ。
『少年達よ!! 伯爵の闇の力が弱まった今、通常の攻撃が効くはずだ。
ジャンゴと協力して、伯爵に止めを刺すのだ!!』
「おう!!」
「いくよ、熱斗君、ウォーロック!!」
『当ったり前だ!! クロス・マジシャンだ!!』
『がんばって!!』
熱斗、スバル、ウォーロック、アリエルの順に言う。
「ええい! 離れろ!!」
伯爵はとうとうジャンゴを背中から引き剥がすと、ジャンゴの体を放り投げた。
ジャンゴは空中で一回転すると、地面に難なく着地する。
「月光魔法、トランス!!」
ジャンゴがそういうと、黒ジャンゴの周りを太陽の光が包んだ。
光が収まると、いつもの赤いマフラーにクリーム色の髪の少年 ジャンゴが姿を現した。
「クロス・マジシャン、発動!!」
熱斗の言葉と共に、スバルが光に包まれる。
光が収まると、白い体にプラチナのマントを羽織り、両腕両足に銀色のアーマーを身に付け、白く光る聖剣を持った聖騎士のような姿をした少年 スバルが立っていた。
「クロス・マジシャン、Ver.ナイトマジシャン!!!」
ジャンゴとスバルが隣同士で立ち、伯爵と対峙する。
「伯爵、覚悟しろ!! 次はこの太陽の力で・・・」
ジャンゴは太陽銃・ガンデルソルを構え、
「この聖なる剣で・・・」
スバルは白く光る聖剣を構え、
「「お前を倒す!!!」」
伯爵に立ち向かった!!!