流星のロックマン×ロックマンエグゼ ~願いが希望に変わる時~ 作:フレイムナイト
熱斗とスバルがロードオブカオスの中に入って、数十分が経った。
現実世界に残った仲間達やDr.リーガル達は、熱斗達が帰ってくるのか、ダークネスサーバーが完成するのか、戦いの結果を見届けるため、じっと待ち続けていた。
「なんだ!?」
異変に最初に気付いたのは、ジャックだった。
ロードオブカオスの電脳に繋がる黒い穴が突如歪み始め、中からグリムゾンが出てきたのだ。
「ば、馬鹿な! ロードオブカオスが、消滅しようとしているだと!?」
そう言うDr.リーガルの声には、明らかな焦りが現れている。
Dr.ガルナも、何も言わないが、焦りと絶望感が顔に出ている。
「消滅だと!? じゃあ、スバル達は・・・」
アシッド・エースが前に一歩踏み出す。
その時、黒い穴が一瞬だけ大きく歪み、中から弾き出されるように"誰か"が出てきた。
「「「『ウワアァァァァ!!!』」」」
「ドグエッ!!?」
弾き出された"誰か"達は、アシッド・エースの上に積み重なるように落ちてきて、アシッド・エースは変な声を上げて押し潰される。
「アタタ・・・ここは? ウワッ!」
「降りろ、キサマ・・・! ウォ!」
「ワッ! 剣持って凄まないでよ! ウワァ!」
「ちょ、上の二人暴れないでくれよ! オワッ!」
『て、てめえら、降りろ~~。 グエッ!』
上から積み重なった順に彼らは言い合うと、バランスを崩して地面に落ちる。
炎山達やハープ・ノート達は、その様子を目を点にしながら見ていたが、直ぐに気を取り直して彼らに駆け寄る。
「熱斗!」
「彩斗!」
「スバル君!」
『ウォーロック様~!』
「ブライ、お前も無事だったか!」
「シドウ、生きてる!?」
ロードオブカオスの中から弾き出された熱斗達をみんなが囲む。
しかし、ブライはそこから離れてそっぽを向き、熱斗達に押し潰されたアシッド・エースは、クイーン・ヴァルゴに抱き起されていた。
「みんな、ただいま。 そして・・・!」
熱斗が視線を彩斗に向ける。 彩斗は少し戸惑った顔をするが、ゆっくりとみんなに微笑んで見せた。
「た、ただいま」
「・・・彩斗」
アリエル・ウォーティー、銀色がゆっくりと彩斗へと歩み寄る。
「銀色・・・ゴメン、君を巻き込みたくないからって、あんな事を・・・」
そう言って顔を伏せる彩斗を銀色は抱きしめる。
「いいの・・・いいの、全部」
銀色の頬から、一筋の涙が流れる。
彩斗は黙って銀色の頭に手を置いた。
「馬鹿な! チクショウ、チクショウ・・・!!」
突然、今まで黙っていたガルナが怒鳴り声を上げる。
髪をかきあげ、歯を食いしばり、崩壊してゆくロードオブカオスを凝視するその姿は、今までの余裕ある闇の支配者のような態度は微塵もなかった。
その逆に、リーガルは落ち着いていた。 ロードオブカオスの崩壊に驚いてはいるようだが、現実を受け入れていくように、ゆっくりと目を閉じる。 しかしすぐに目を開くと、熱斗達に向かいあった。
「・・・光 熱斗、彩斗。 我々の、いや私の負けのようだ」
突然のリーガルの敗北宣言に、熱斗達だけではなく、ガルナさえもを驚かせた。
「ANSAの時と同じで、随分と潔いじゃないか。 何を企んでいる?」
「別に企んではいないさ、伊集院 炎山」
そう言って顔を横に振るリーガルの表情はどこかもの悲しげに見える。
そして再び、熱斗と彩斗に向かい合う。
「全てを注ぎ込み、作り上げた闇が"光"に負けて消滅した。 結局、私も、我が父・Dr.ワイリーも、貴様らと言う"光"には勝てない。 それが分かっただけだ」
「Dr.リーガル・・・」
「ふざけるな・・・」
その瞬間、その場にいた全員の顔が強張る。
聞こえたのは、小さく呟くガルナの声だったが、その強圧的な声は、熱斗達の耳にはっきりと聞こえた。
「全てを注ぎ込んだ? まだだ! まだ、"全て"じゃない・・・!!」
そう言って、ガルナはロードオブカオスから熱斗達の方に向き直る。
ガルナの顔は、さながら"悪魔"のようだった。
乱れた髪、大きく見開かれた眼、口角は耳まで吊り上り、狂気に満ちた笑みを浮かべている。
「ガルナ! 何をする気だ!?」
往生際の悪い子孫を咎めるように、リーガルは声を荒げる。
だが、ガルナはリーガルを無視し、崩壊していくロードオブカオスの前へと進む。
「ガルナ!!」
「うるさい!!」
リーガルがガルナの前に立ち塞がり、止めようとするが、ガルナに突き飛ばされる。
突き飛ばされた先には足場が無く、下には高温度のマグマが敷き詰められている。
「リーガル!!」
彩斗の叫びがリーガルに向かって放たれる。
どんなに潔く負けを認めても、どんなに誇り高く、強い信念を持っていても、リーガルのした事は決して許されない。 いや、許せない。
だが、この時、リーガルの身の危険を感じて彩斗は叫んだ。 リーガルは耳が痛く感じた。
「ウィングブレード!!!」
アシッド・エースが、背中の翼による超加速の突進でリーガルの元へと飛ぶ。
マグマに落ちる寸前のところで、アシッド・エースがリーガルを受け止める。
「フー、さすがヒーローってところかな?」
「お、お前・・・」
「勘違いするなよ」
リーガルが何かを言う前に、暁の鋭い声がそれを遮る。
「オレはサテラポリスとして、お前達を逮捕しにきたんだ。 やらかした罪は生きて償ってもらう。 死んで逃げるなんぞ、許さん」
いつもの陽気な声でも、頼りになるエースの声でも無い、サテラポリスとしての誇りを持った威圧的な声で暁は言い放つ。
「フハハハハハ!!! 生きて償う? 死んで逃げるなんぞ許さん? 笑わせるな」
ガルナは誰にも目を向けずに、暁をあざ笑う。
「なんですって!?」
クイーン・ヴァルゴが、クインティアが杖を目の前に掲げる。
「私はどちらも選ばない!! 生も死も、正義も悪も、全てを超越した存在になる!!!」
狂っている。 今のガルナはそう表現するに相応しい。 だがそれは、ガルナの次の言葉で別の表現に変わる。
「全てを飲み込み、消し去る存在に私はなるのだ!!!!!」
壊れている。
「何をバカな事を・・・」
「何しようってんだ?」
ブライとジャック・コーヴァスが油断なく構える。
「ロードオブカオスよ!」
「私を喰らえ!!」
「なっ・・・!?」
その場にいた者全員が、ガルナの言葉に自分の耳を疑った。
『まさか、電波変換か!?』
『自分の体に取り込む事で、ロードオブカオスの消滅を止める気!?』
ウォーロックとハープの予想に、スバル達、電波人間がガルナに向かって駆け出す。
ロードオブカオスに通じる"黒い穴"から、ドロドロに融けた赤黒い腕が出で来た。
スバル、ハープ・ノート、アリエル・ウォーティー、オックス・ファイア、ジャック・コーヴァス、クイーン・ヴァルゴ、ジェミニ・スパークW、ジェミニ・スパークB、ブライが駆ける。
アシッド・エースがリーガルを熱斗達がいる足場に置くと、スバル達に続く。
ガルナの目の前に、ロードオブカオスの手が迫る。
スバル達が、ガルナと同じ場所に立つ。
ロードオブカオスのドロドロに融けた腕が、ガルナを掴む。
黒い炎が燃え上がり、スバル達を吹き飛ばし、熱斗達の目を眩ます。
「ウワアァァ!!」
「キャアァァ!!」
スバル達は後方に吹き飛ばされ、壁や地面に体を打ち付けられた。
だがすぐに態勢を整えると、熱斗達と同じ場所を見る。
ロードオブカオスが、完全な姿に戻って全員の前にいる。 先程と違うのは、その額に"ガルナの顔が浮かび上がっている"という事だ。
・・・・・・悪魔が再び、姿を現した。
【没ネタ】
「な、なんだ!?」
異変に最初に気付いたのは、デカオだった。
フレイムナイト
「なんかデカオだと、緊張感が無いんだよな~」
デカオ
「あんまりだ!!」