流星のロックマン×ロックマンエグゼ ~願いが希望に変わる時~   作:フレイムナイト

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第百二話   融ける

パキィィン・・・!!

 

優しい光に包まれ、宙に浮かんでいるような感覚の中、熱斗達は何かが砕ける音を聞いた。

 

きっと、オラシオン・ロックとホープ・キーが砕けた音だ。

そして、イキシアの・・・

 

 

全ては前世代の人達、光 正とDr.ワイリーの思想と、彼らが残したプログラムから始まった。

それらを巡り、今と・・・未来を生きる人達もが戦った。

 

そして今、全てを始めたプログラム・オラシオン・ロック、ホープ・キー、そしてココロサーバーは・・・完全に消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

足に地面の感触が戻った時、熱斗達は元のロードオブカオスの電脳にいた。

目の前には自らの胸を押さえるロードオブカオスがいる。

 

 

 

 

 

光と闇 理想と思想 恐怖と希望 信頼と孤高 狂気と勇気

 

それら全てを賭けた戦いは次世代の者達に託された。

 

 

 

 

 

グオオォアアアァァ!!!

 

突然、ロードオブカオスが叫び、胸を押さえていた両腕を広げる。

晒されたその胴体を見ると、所々の体を構成しているノイズが、融けるように体から流れ落ち、消滅している。 その現象は胴体だけでなく、カオスの腕や顔にも見え始めた。

 

『なっ、融けてる!?』

「取り込んだオラシオン・ロックとホープ・キーが消滅したのが原因だよ」

 ウォーロックの後に、少し苦しそうな声が聞こえる。

 

スバルとウォーロックが見ると、そこには、熱斗に体を支えられたロックマン・・・人間の姿を取り戻した彩斗が立っていた。 彩斗はイキシアと同じノースリーブの白いシャツと白いズボンを着ている。

 

「ロッ・・・彩斗君! 元に戻れたんだ!」

 歓喜の声を上げるスバル。 彩斗はそんなスバルに微かな笑みを見せると、ロードオブカオスに視線を変える。

 

「ロードオブカオスは、ロックとキーとほぼ100%近くまで融合していた。 膨大なエネルギーを持つ二つのプログラムが体内で消滅した事が、ロードオブカオス自身のプログラムにさえ影響して、体が崩壊し始めているんだ」

 彩斗がそう言っている間にも、ロードオブカオスの体は融けるように体が崩壊していく。 

 

その姿は、さながら体が内側から裂け、そこから血や臓物がドロリと流れ出ているようだ。

 

「それじゃ、ここもすぐに消滅するんじゃ・・・ウッ!」

 苦痛の声を上げ、熱斗が地面に両膝をつく。 熱斗に支えられていた彩斗も倒れこむように膝をついた。

 

「どうしたの、熱斗君!?」

「ヤ、ヤベェ・・・水晶が・・・」

 熱斗はポケットから、アリエル・ウォーティーに渡された水晶を取り出す。

水晶は最初に貰った時よりも明らかに小さくなっていて、発する光も弱弱しい。

 

「水晶の守りが弱くなってる!?」

『水晶が消える前に急いで脱出するぞ、スバル!!』

スバルが熱斗を、ウォーロックが彩斗を担いてロードオブカオスに背を向ける。

 

 

グギャアアアアア!!!

 

 

「ウワッ!」

 突然、ロードオブカオスが発した絶叫に電脳世界が揺れ、スバル達はバランスを崩す。

 

「どうした!?」

 熱斗が後ろを振りかえると、カオスの溶けかかった巨大な右手が、熱斗達に向かって伸ばされていた。

 

『マズイ!』

 

グオオォォォ!!!

 

ロードオブカオスの赤黒い手が熱斗達を掴みこんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

斬ッ!!

 

 

熱斗達を掴み込んだロードオブカオスの手に、一筋の黒い線が刻まれた。

その直後、線を刻まれた場所からドロドロと、カオスの手が融け始め、融けた手は地面に落ちるとゆっくりと消えていく。

 

解放されたスバル達がゆっくりと目を開けると、そこには、カオスの手を斬ったであろう黒い剣を持った、一人の人物が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブライ!!」

 スバルが無意識の内にその名を叫ぶ。

スバル達の前に立っていたのは、ロックマン、彩斗と一緒にロードオブカオスに飲み込まれていたブライだった。

 

ブライは持っていたラプラスソードを肩に担ぐと、「やかましい」と言い放つ。

ウォーロックはそんなブライを見て、「可愛くねぇ奴」と小声で言う。

 

「ブライ、よく無事で・・・」

「フンッ、オレがこの程度のノイズに耐えられないと思ったのか? あの怪物を倒す機会を窺うために、この電脳世界で身を潜めていたんだ」

 スバルにそう言うと、ブライは背を向けた。

 

だが、ブライは嘘をついていた。

ブライが身を潜めていたのは、ロードオブカオスを倒す機会を窺っていたからでは無い。

 

ブライは、ロードオブカオスに引きずり込まれた時、ラプラスソードがカオスの手に飲み込まれ、自身もまた飲み込まれかけたのだが、全身の電波の力を放出する事によって、カオスから分離した。

 

しかし、全身の力を放出した事による疲労から、ずっと身を潜め、力を回復させていたのだ。

 

 

(思った以上に力を使ってしまったな。 まだいくらも回復しきれていない)

 ブライは自身の体力が半分も残っていない事を感じ、若干焦る。

しかしそれを決して表情には見せない。

 

『オイ、ブライ、"他の奴ら"はどうした?』

 ウォーロックの問いにその場にいた全員の顔が強張る。 "他の奴ら"というのは、ロードオブカオスに吸収されたダークロイド達やファントム・ブラックの事だ。

 

 

ブライは静かにロードオブカオスに視線を向ける。

「・・・喰われた」

 そっけないブライの返事。 それだけでみんなは彼らがどうなったのかを理解した。

彼らは、ロードオブカオスに吸収され、カオスの一部になってしまったのだ。

 

 

ガッ・・・グォォォ・・・

 

ロードオブカオスの呻き声。 見ると、カオスは失った右手を左手で押さえ、体はもう半分以上融けてしまっている。

 

次の瞬間・・・

 

 

グギャアアアァァオオオォォォ!!!

 

 

ロードオブカオスの絶叫が、空気を震わせる。

カオスを中心に、爆風が吹く。

 

 

「ウワアァァ!!!」

 

 

円形状に広がる爆風がスバル達を吹き飛ばした。

スバル達は電脳の果てまで吹き飛ばされ、やがて、見えなくなってしまった。




【NG】
「・・・喰われた」
 そっけないブライの返事。 それだけでみんなは彼らがどうなったのかを理解した。
彼らは、もう、この小説で出番が無いという事に・・・

ダークロイド
『な、なんだと~~~!!?』

ファントム・ブラック
「こんなシナリオ、私は認めないぞ~~~!!!」

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