グリモア~全力で叱られるのを避けようとする物語~   作:シスコン

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はい、まあノリで書いてしまいました。続くか分かりません。
そして作者は紗妃さんのSSRを一枚も持っていません。その辺りについてはご容赦ください。


第一話

「ここが、私立グリモワール学園、か・・・」

 

世界には、魔法というものが存在する。とはいえ、誰もが使えるものではない。ごく一部の覚醒した人間だけが魔法を使えるようになり、魔法使いとなる。

で、つい先日。本当に二日前に覚醒した俺はここ、『私立グリモワール魔法学園』へと転入することになった。

できればこんな新年度始まってから一週間なんて言う微妙な時期じゃなくてほしかった。できれば朝起きて欠伸をしたらなんかつかえてたなんて状況は嫌だった。その他諸々色々と言いたいことはあったんだけど、うん。もう過ぎたことは言っても仕方ないということでこれからの生活を楽しんでいこうと思う。

 

「よお、お前が転校生か?」

 

と、校門前で広い学校を眺めてい俺はそう声をかけられて声のした方を向く。が、そこに人はいなく代わりに・・・

 

「・・・・・・ぬいぐるみ?」

「いや、そう言いたい気持ちは分かるがな・・・」

 

ぬいぐるみがしゃべった。ふわふわ浮いてるうさぎのぬいぐるみがやれやれとでも言いたげな仕草と共にしゃべった。なにこれ怖い。これも魔法によるものなのか?

 

「なんにせよ、初めましてだな。俺は進路指導員の兎ノ助だ」

「・・・・・・あ、はい」

 

深く考えても無駄なのかもしれない。なんだか難しそうなことについては、ここでの知識を身に着けてから考えるようにしよう。そうしよう。

 

「あー・・・俺は何か二日前に急に魔法使いに覚醒して、あれよあれよという間もなく転校することになった滝沢歎(たきざわなげき)、です」

「そうか、よろしくな歎」

 

フレンドリーなご様子。けどまあそれくらいの人の方が楽かもしれない。それに、さすがにうさぎのぬいぐるみにフレンドリーにされて嫌な感じはしないし。

 

「さて、こんなでも一応進路指導員だからな。色々と説明させてもらうぜ」

「あ、はい。よろしくお願いします」

 

とりあえず、進路指導員らしいし敬語で行こう。

 

「学園に入学する生徒には、全員話してることなんだがな。霧の魔物って知ってるか?」

「まあ、はい・・・あれのせいで生存権は脅かされて、どんどん追いやられてるってこと。それに、一番有効な手立てが魔法使いだってことくらいなら」

「ああ、まあそれくらいしかわかってないしな」

 

本当にそれくらいしかわかっていない。

 

「だからこそ、君のような魔法使いに覚醒したものはみな学園に転入してもらい、クラスメイトとのきずなを深め、魔法の腕を上げていってもらうんだ」

「霧の魔物に対する対抗手段として、ですよね」

「ああ。だが、それは必ずしも『戦い』になる。だからこそ、君は来年には死んでいるかもしれない」

 

死。はっきりとそれを言われて、ぞっとした。言われてみれば当然のことだ。霧の魔物に襲われても死なないのであれば、生存権の後退なんてことは起こっていない。

 

「もちろん、学園は生徒を全力で守る。霧の魔物を含むあらゆる危機から全力で、な」

 

そういってもらい、ほんの少しだけ気が楽になった。さすがに、一切の保護もなく放り出されるということはないらしい。

 

「とはいえ、霧の魔物がいつどこに現れるのかもわからないし、どんな強さを持つのかも確実なデータはない。何が起こるのかは全くわからない。だからこそ、俺はこうアドバイスする」

 

アドバイス。それは聞いておきたい。

 

「それは、なんですか?」

「学園生活を、全力で楽しめ。多くの仲間を作り、絆を深めるんだ。それが結果的に、お前の生存率を上げることになる」

 

ふむ、つまり兎ノ助さんのアドバイスというのは・・・

 

「みんなと仲良くなれ、そして卒業まで全力で楽しめ、ってことですか?」

「ああ。友達とばかやったり、行事に対して全力で取り組んだり、たまには喧嘩をするなんてのもいいかもしれないな」

 

うん、確かにそう言うのはいかにも『学園生活』って感じがする。

 

「そして、もう一個」

 

あ、なんでだろう?相手はぬいぐるみなのに、目の前の人(?)がなんともいやらしい系統のことを考えたのが分かる。

 

「これは男子だけに言ってるんだがな。男の魔法使いには、一つだけいいことがある」

「いいこと、ですか?」

「ああ。男女比が2:8だ、ってことだ」

 

なるほど、確かにそれはとても素晴らしいことだ。そして同時に、兎ノ助さんが何を言おうとしていたのかを理解する。男女間の関係。そう言った面についても全力で楽しめと、そう言うことだろう。それは何とも素晴らしい。ついついお互いにサムズアップしてしまう。

 

「一体何を教えているのですか!」

 

と、そんな感じでお互いの距離を縮めていたところ、思いっきり兎ノ助さんの後方から怒鳴り声が。ついつい反射的にそろって固まってしまい、視線を上げつつその方を見ると・・・

 

「まったく、何が男女比は2:8ですか!あなたは進路指導員でしょう!」

「げ、紗妃・・・」

 

そこにいたのは、青っぽい髪をサイドポニーにした女子だった。かなり可愛い。けど、正直怖い。思いっきり怒鳴られたこととかどう見てもイラッとしている現状とか纏う雰囲気とかからそう感じてしまう。あと、左腕につけている『風紀委員』の腕章もそれを増長しているのかもしれない。あ、スカート長いな・・・これはあれか。『どんな小さな校則違反でも許さない』系統のあれか。マズいぞ、送られてきた制服着崩してるぞ、今。

 

「一点追加ですね」

「追加されちゃった!?ってかだから、その点って何なの!?」

 

なんか口論してる。この隙に崩してる部分を整えよう。えっと、ボタンをちゃんとつけて、ネクタイ・・・って、メンドクセエって思って鞄の中だ!?もう寮に送っちゃったよ!?あああヤバイヤバイ間違いなくヤバイ・・・こんなことなら『学ランしか着たことないしブレザーにしよう!』とか考えるんじゃなかった!

 

「で、そこのあなた」

 

・・・・・・・・・挨拶も返さずに逃げたら、間違いなく後日大変な目に会うよな、うん。しかし、このまま話すのもそれはそれで怖い。どうしたものか・・・

 

「あなたです、あ・な・た!無視しないでください!」

 

はい、これはどう考えてもこのままだんまりは大変なことになるやつだ。

 

「はい、なんでしょう?」

「まず、制服のネクタイはどうされたんですか?」

「・・・・・・・・・」

 

ここは、正直に言おう。ごまかしが効く相手化を判断するには、あまりにも相手のことを知らなさ過ぎるし、関係が浅すぎる。それで致命的なことになったらマジで学園生活が詰みかねない。

 

「はい。ここまでの移動でつけているのが面倒で、寮に送る荷物の中にいれっぱなしにしてしまいました」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

怖い。正直怖い。かなり怖い。この無言の時間が怖い。

 

「・・・・・・・・・はぁ。初犯であり、同時に長い時間の移動であったという点を考慮して、今回は見逃しましょう」

「ほっ・・・」

「ですが、今後の学園生活においてそのような姿が見られた場合には反省文を書いてもらいます」

 

反省文って、マジですか。たかがネクタイ一つで。

 

「服装の乱れは心の乱れです。たかがネクタイ、などと侮らないでください」

 

心を読まれた!?

 

「ただでさえ男子が少ないのです。『周りがしているから・・・』という考えが伝染していく可能性が高く、より大きな問題に発展するかもしれないのですよ?」

「あー・・・割れ窓理論、とかそんな感じのことを聞いたことがある気がする・・・」

「よくご存じですね。なんにせよ、そう言った理由から風紀委員として見過ごすわけにはいきません。分かりましたね?」

「はい」

 

下手に逆らってはいけない。少なくとも今は。それを、しっかりと学んだ。

 

「しかし、よろしいですか?当然ながら不純異性交遊は禁止です。先ほどの兎ノ助さんとの会話・・・」

 

あ、ヤバい。これはいかんやつだ。

 

「スイマセン、ノリでした。ついつい兎ノ助さんに流されてしまいまして」

「俺のせいにするのか!?」

 

ここはぬいぐるみを売ろう。そう言う面が全くなかったわけではない。

 

「・・・・・・・・・まあ、現行犯をとらえたわけではありませんから、良しとしましょう」

 

本気でホッとしている。転校初日に始末書何枚も書かされるとか、お説教タイム3時間耐久とか、本気で覚悟した。それはそれで美少女と二人っきりかぁ・・・とか現実逃避し始めてた。

 

「よかったな、転校生・・・」

「はい、助かりました・・・」

「今のうちに言っておくと、あいつは風紀委員の中でもダントツで厳しい。わずかな違反でもアウトだからな」

「今日は転校初日だから見逃されただけ、ってことですか・・・」

「そういうことだ。今後は通用しないと考えた方がいい」

「何をこそこそと話しているのですか?」

「「いえ、なんでもありません!」」

 

こちらの様子に対して何を言ってるんだろうと首を傾げられてしまった。うん、まあ今のは謎の行動だったと自覚している。

 

「あ、そう言えばお前転校にあたって荷物送ったんだよな?」

「はい、まあさすがに全部持ってくるのは量的に無理がありますし」

「いつ届くってことになってるんだ?」

「あー・・・もう届いてるはずですよ」

「なら早く受け取るだけでもしといた方がいいんじゃないか?」

 

言われてみれば確かにそうだ。そこそこの量の荷物があったはずだし、それが届いたままにされてるってのはかなり迷惑な気がする。

 

「ちょうどいいし、これもなんかの縁だろ。紗妃が案内してやれよ」

「私が、ですか?」

「ああ。転校生だから学園のどこに何があるのかも知らないだろうし、ついでに案内してやったらどうだ?」

 

ちょっとまって兎ノ助さん。確かに転校してきて美少女に学園案内してもらえるとかかなりうれしいシチュエーションだけども、会って一日の時点でこの人と一緒に行動とかいつ地雷を踏み抜くか怖いんですけれど。

 

「・・・そうですね、ちょうどいい機会です。私がこの学園のルールを、きっちり叩き込むことにしましょう」

 

ほら!絶対あれじゃん!これ地雷原を裸で歩くレベルの危険性じゃん!

 

「ほら、行きますよ転校生さん」

 

ああしかし、うん。やっぱり可愛いんだよなぁ、この人・・・

・・・・・・はぁ、地雷原くらいでこのレベルの美少女に案内してもらえるならかなり得か。

 

「それじゃあ、案内お願いしますね。それと、俺は滝沢歎だ。苗字でも名前でもご自由にどうぞ」

「では滝沢さんと。私は氷川紗妃です」

「よろしくお願いしますね、氷川さん」

 

一瞬、紗妃ちゃんと呼ぼうかと思った。が、すぐに思い直した。どう考えてもそれは地雷だ。

 




こんな感じになりました。どうなるんだろう、これ・・・

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