ギャスパー登場。
授業参観の翌日、俺たちオカルト研究部のメンバーは旧校舎一階の“開かずの教室”とされていている……らしい部屋の前に立っていた。
なんでも、この部屋の中にもう一人の『
新参の兵藤やアルジェントも正体を知らないみたいで、会うのは今回が始めてらしい。
何故、そいつの部屋の前に来ているのかというと……
話では、ある事情によってそいつを眷属にしたらしいが、その能力が危険視されて、以前の部長の能力では扱いきれない、と判断した上から封印をするようにいわれたが、この前に記録でみたフェニックス家との一戦と俺がやらかしたコカビエルとの一戦で高評価を得たのでその封印が解禁されたらしい。(俺を眷属にした、というのも含めた評価らしいが)
それで、扉には“KEEP OUT”のテープが何重にも張られてた上で、呪術的な刻印も刻まれていた。
「一日中ここに住んでいるのよ。一応深夜には術が解けて旧校舎内だけなら部屋から出ても良いのだけれど、中にいる子自身がそれを拒否しているの」
なんだ、ということは……
「つまり、その『
そう至った理由は、この『
「そうよ。さて、開けるわよ」
部長が扉に刻まれていた刻印を消して扉を開けると同時に……
「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!」
中から異常なほどの絶叫が発せられた。なんだ、元気だな……。
そんな事を考えていると、部長は溜め息をつき、姫島と共に部屋の中に入っていく。……何時も通りらしいな。
中に入らず、部長たちの会話を聞く。
「ごきげんよう」
「な、な、何事なんですかぁぁぁぁ!?」
ビビり過ぎだろ、興味が出て来たな……入るか?
「あらあら、封印が解けたのですよ?さあ、私達と一緒に出ましょう?」
「嫌ですぅぅ!ここが良いですぅぅ!外に行きたくない!人に会いたくないぃぃっ!」
「重症だな……行くか」
正体を確かめるべく、俺たちは部屋の中に足を踏み入れる。
部屋の中の奥には部長と姫島がいて、更にその先に例の『
そいつは、力なく床に座り込んでいた。そして、その金髪の美少女……いや、少年は赤い瞳をしていた。そして、ある事に気づく。
「……吸血鬼?」
「き、金髪の美少女!よっしゃあ!『
しかし、俺の呟きは何時の間にか隣にいた兵藤の歓喜の声によって掻き消された。というか、兵藤……
「……こいつは男だ」
「……え?」
俺の発言に兵藤が固まった。
すると、部長が説明してきた。
「ゼノンの言う通り、この子は紛れもない男の子よ」
「女装趣味があるのですわ」
その言葉に続き、姫島も解説した。ミルたんのようなミスマッチと比べるのはおこがましいが、似合っている分まし……か?いや、どちらもたちが悪いな。
「な、何だってぇぇぇぇ!?」
「ひぃぃぃいい!ゴメンなさぁぃぃい!」
兵藤の絶叫と例の彼の絶叫が合わさる。近くにいるから余計煩いな……。
兵藤は頭を抱えてその場にしゃがみ込み現実逃避を始めた……大袈裟な。まあ、まだ“もう、男の娘でもいいや……”とか言わないから良かった。というか……
「何故、女装しているんだ?引きこもっているのに見せる相手がいないだろう」
誰にも見せない趣味って……マイブームって奴か?もしかして、ネットアイドルとか?
「だ、だって、女の子の服の方が可愛いもん」
……思考が女の子だな、こいつ。
それにしても、こいつもキャラが濃いな……本当に俺以外のオカルト研究部のメンバーはキャラが濃すぎる。
「可愛いもんって言うな!俺は、アーシアとお前でダブル金髪び……ゲフォ!?」
急に立ち上がって泣き叫ぶ兵藤を物理的に黙らせて、アルジェントの方に投げ捨てる。黙せることが目的だから大したダメージは受けてないだろうし、アルジェントがいるから大丈夫だろう。
「と、ところで、こ、この方たちは誰ですか?」
すると、女装趣味の彼が恐る恐る部長に訊く。考えればわからないか?
「あなたがここにいる間に増えた眷属よ。『
回復した兵藤を含めた俺たちは挨拶をするが、俺のさっきの所為か彼は一層怖がるだけだった。
「お願いだから外に出ましょう?もうあなたは封印されなくても良いのよ?」
「嫌ですぅ!僕に外の世界なんて無理なんだぁ!どうせ僕が出てっても迷惑をかけるだけだよぉっ!」
部長の説得に頑固として拒絶する女装趣味の彼。こいつは……
「だらしないな……取り敢えずここから出すぞ?」
逆効果かもしれないが、外に出そうと女装趣味の彼に近づこうとした途端……
「へ?止めてぇぇぇぇぇぇ!?」
その絶叫と共に時間が止まった。……しかし、俺は動ける。あと、部長以外の奴は動いていない。
「成る程、
辺りを見回し感心したように頷き呟く俺。すると、ヴラディが信じられないものをみたような表情をして叫ぶ。
「ええっ!?な、何でこの人は動けるんですかぁ!?」
すると、部長が説明をしてきた。
「その子は興奮すると、視界に映した全ての物体の時間を一定の間停止する事が出来る
便利だな滅びの魔力……と感心しながら考察する。
実力差があると効果が無い
「それに、視覚に依存する時間停止の
吸血鬼のハーフ、という単語が俺から出たことに驚いた部長であるが、教えてくれた。
「この子の名前はギャスパー・ヴラディ。私の眷属『僧侶』で一応、駒王学園の一年生よ」
こいつ、塔城と同い年か……納得だな。
その後、時止めが戻った塔城に何故かジト目で見られた……解せぬ。
*
あれから、他の部員も元に戻り一旦部室に戻った後にギャスパー・ヴラディに関しての詳細を説明された。
「『
一誠の問いに、俺が続ける。
「ああ、それがあのヴラディの持っている
使いこなせれば、任意の物体の時間のみを停止させるといった使い方もできるから強いんだよな。この
「時を止めるってチートじゃないっすか!?」
お前がいうか、赤龍帝。てか、この部活のメンバーもチートじみた連中だよな……俺を含めて、まだ実践経験が足りてないが。バアル家の滅びの魔力を濃く継いだリアス・グレモリー、『
「あら、イッセーの倍増の力と白龍皇の半減の力だって反則級の力なのよ?」
長考していると、部長が代弁して下さった。それにしても……
「部長はよく奴を眷属に出来たよな?……ああ、
あんまり考えないで言葉にするのはやめないと。まだまだ、知識不足だしな……。
「ええ、そうよ。更に、彼は類希な才能の持ち主で、無意識の内に
……強大な力を持っているが扱いこなせない上に段々力が増大していく、なんて、漫画ではよくあるな。そういう奴は、大概利用されるか、なんか暗い過去とかあるよな。
というか、
「彼がこのまま
あり得ない……なんて事がないのが
「そう、危うい状態だけど、私の評価が認められた為に今ならギャスパーを制御出来るかもしれないと判断されたそうよ。私がイッセーと祐斗を
何でも、兵藤はライザー戦後のパーティーに乗り込んだ時に代償と制限付きの
「能力的には朱乃に次ぐんじゃないかしら。ハーフとはいえ、
そう考えると、凄く戦力になるんだが、あの性格ではな……。
「で、どうするんだ?あいつは?」
部長に質問する。何か考えているよな……?
「ええ。とりあえず、教育係としてイッセーと小猫にあの子を頼めるかしら?」
あの二人で大丈夫か?俺は恐がられているから、参加しないのは当たり前だが。
「はい!」
「了解です……」
その後、よく校庭で死の鬼ごっこを見るようになった……勿論、追いかけられているのはヴラディだが。というか、大丈夫なのか?あれ?
まあ、いいや