まさかこいつに憑依するとは   作:Aqua@D

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連日投稿、次話は来週の土曜


Where is a faction?

俺たちグレモリー眷属のギャスパーを除いた男子たちは現在、俺の家の訓練場で鍛錬をしている。

あの後、サーゼクスさまから告げられたのは「吸血鬼との会談を駒王でする事になった」という事だった。吸血鬼は本来、悪魔以上に純血を尊ぶ徹底した格差社会を築いており、他の勢力からの干渉を極端に嫌うらしい。だけど、今回は吸血鬼側からの申し立てらしくその事に対応に当たっていたアザゼル先生は驚き、サーゼクスさまに連絡がいき、今回はその場に立ち会ったことに加えて開催地が駒王学園という訳で俺たちにそのまま知らされた。

詳しい話はサーゼクスさまが会談の準備の為に聞けなかったが、なんでも申し立てたのが吸血鬼が『ヴァレリー・ツェペリシュ』というギャスパーの知り合いであり彼女が現在の吸血鬼の当主であるという。

この事に、ギャスパーは酷く動揺して神器のコントロールすらままならなくなっているほどだ。だから今は部長に小猫……白音ちゃんと黒歌が付いている。

 

「イッセー、次はお前だ」

 

ゼノンの声で木場との模擬戦が終了したのを理解する。最近、木場は『魔剣創造(ソード・バース)』と『聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)』の同時使用による高速戦闘か『聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)』しか使わずに行うガチの戦闘を俺たちとやってる。聞いた話では『聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)』の禁手(バランス・ブレイカー)の発現と2つの神器(セイクリッド・ギア)の同時使用を目的としているらしい。アザゼル先生が言うには過去にそういう事例が僅かだけどあるみたいで、アドバイスを貰ったりしてる。

そんな木場は見るからに疲労して大の字になっている。対するゼノンは疲れを見せずにスポーツドリンクを飲み、木場に肩を貸して待機場所へと連れて行く。

俺は軽くストレッチをこなしてゼノンが戻ってくるまで待つと、戻ってきたゼノンは聖剣を構えて此方に目で合図をする。

 

ギャスパーの事は気になるけど、今は目の前に集中しないとな。いくぜ、ドライグ!

 

『応!』

『Welsh Dragon Balance breaker!!』

 

赤の鎧を身に纏うと、直様『騎士(ナイト)』へとドライグのサポートで即座に昇格(プロモーション)し、トップスピードでゼノンへと接近する。

対するゼノンは左手にエクス・デュランダル、右手にジュワユースの二剣を構えて此方の動きに目を向けている。

 

『BoostBoostBoost‼︎』

『BoostBoost‼︎』

『BoostBoostBoostBoostBoost‼︎』

『BoostBoostBoost‼︎』

 

ゼノンの隙を見極めるよう、フェイントに加えて不規則に倍加しつつ間合いを狭めていく。

ぶっちゃけるなら、この程度のフェイントとスピードはゼノンには通用はしない。これ以上のスピードで駆け回れる木場とさっきまでゼノンは斬り合っていたしな。

それでも、持てる手を尽くさないのは別なわけで。

 

ゼノンの剣の間合いに入る直前に溜めていたドラゴン・ショットを連続で散弾のように放つ。そして、すぐさま『戦車(ルーク)』へと昇格(プロモーション)。ゼノンの対処を注視しつつ、それに合わせて攻撃を当てられるようにする。

 

「疾ッ!」

 

ゼノンの対応は予想どおりに斬ってドラゴンショットを消してきたが、そのまま斬撃が残って飛んできた。消す為に横薙ぎで放ったデュランダルによる斬撃に加え、それと同時にジュワユースによって放たれた縦の斬撃にオマケとばかりに横薙ぎからの逆袈裟による斜めの斬撃。

 

それに対処するための機動力を高める為に『騎士(ナイト)』に再度昇格(プロモーション)。斜めと縦の斬撃の直線上に入らないように背中のブーストを吹かして浮いて躱し、横薙ぎで飛んできた斬撃を飛び越えるように避ける。着地と同時に辺りにアスカロンのオーラを飛ばしてゼノンの接近を防ぐ。

 

飛ばしたオーラを左のデュランダルでゼノンが切り裂いたと同時に急加速でゼノンから見て左から接近し、拳を振るう!

デュランダルを振り切った直後の攻撃! 避けられるか!?

 

この攻撃に判断が遅れたように見えたゼノンだが、俺の拳は空を切る。

どうやって? と思いつつも周囲を見渡そうと首を動かすと目の前にデュランダルが突きつけられていた。

 

「まいった、降参」

 

あそこからどう足掻いても抜け出す前に斬られるのがオチなので、ゆっくりと手を挙げながら言う。

 

こういった模擬戦は先生の宣言通り夏休み後から始まったんだけど、ロキ戦の一件からゼノンの容赦が無くなっている気がする。強くなれてるから問題はないんだけど、イリナがいうには「昔の近寄り難い彼に戻りつつある」らしく、ここ最近はゼノンと所構わず引っ付いているのをよく見る。それを見て桐生が茶化すか、松田や元浜が羨むまでがセットだが。

 

いつの間にかゼノンは持ってたスポーツドリンクとタオルを手渡してきた。それを受け取りながら質問をする。

 

「そういや、さっきのはどうやったんだ?」

「あれか……『縮地』と言われるものだ。とはいえ、技能的なものではなく、仙術の方のだがな」

 

ゼノンの言葉に首を傾げる。

縮地なら木場の師匠や木場自身が使うことがあるからわからなくもないが、仙術? 昔にゼノンは使えないとか言ってなかったか?

そういって質問すると俺にも原因は分からんが、と前置きをして答え始める。

 

「原因はおそらく、あの乳神とか言う奴の与えられた力によるものだろうが、俺になにかしらの変化があったらしい。以前扱えなかった仙術もほんの僅かだが扱えるようになった。デュランダルやジュワユースも以前より馴染むようになっている。今の所、違和感や逆に衰えたものは……なくはないが、問題はないだろう」

 

ゼノンの話を聞いて、あの異世界の神様の声を聞き、力を与えられた俺も【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】に対していい成長が見られたし、そう言うものなんだろうと納得する。違和感とかはさっきいった近寄りがたい云々のことだろう。

 

それに、結果待ちだけど冥界および天界で診断を受けているから何かあったらすぐ分かると言われて俺はその話を終わらせた。

 

すると、ゼノンは手元に展開された小型の連絡用魔法陣によって会話をし始めた。あれを見るに緊急用のものだと理解し、気を引き締める。そして、ゼノンからの内容に俺はさらに気を引き締めることになった。

 

「明晩、吸血鬼との会談をすることになった。場所は俺らの部室だ」

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

深夜の校舎、俺たちはオカルト研究部の部室に居た。

俺の他には悪魔側としてグレモリー眷属一同にソーナ・シトリー。堕天使側としてアザゼル、天界側としてイリナに加え、グリゼルダが今回この場に集まっている。

一同が言葉もなく来訪者である吸血鬼を待つ最中、外から異様な冷たさを持つ気配を感じた。その気配を全員が感じ取り、旧校舎の入り口の方に視線を向けたのを確認した俺は、静かに立ち上がると部長に一礼してから部室を出て、その気配に向けて歩き出す。

 

そう長くない部室から旧校舎の入り口までの道のりを歩く最中、気配の動かない来訪者の吸血鬼について情報を再確認する。

吸血鬼とは一般的な特徴として十字架・聖水に弱く、ニンニクを嫌い、鏡に映らない、流水を渡れない、影がない。それに加えて今、俺が吸血鬼を迎えに行っている理由である……初めて訪問した建物では招かれなければ侵入できない……という特徴がある。

なんとも弱点が多いように見えるが、それを覆せるほどのポテンシャルは高いのは戦ったことのある俺が理解している。とはいえ、聖剣であるデュランダルが効果的過ぎて苦戦は少なかったが。

 

入り口に近づくと赤を基調とした中世のドレスを着た少女が視界に映る。人間味を感じられない顔の造形に、真っ赤に輝く双眸、足下に存在しない影、正気の感じられない存在、その全てが彼女が吸血鬼であることを証明する。

少し気配を強くして一歩ずつ一人で立っている(・・・・・・・・)彼女へと近づくと、気づいたのかこちらを見ると値踏みするかのような視線がこちらに突き刺さる。

 

「ようこそ、いらっしゃいました。貴女が吸血鬼側の……」

 

「エルメ、エルヒメンデ・カルンスタインです」

 

と思いきや言葉には刺々しさは無く、言葉からは寧ろ柔らかい印象さえ思わせる。

ギャスパーのようなハーフヴァンパイアでは無く、純血の吸血鬼である彼女のそのような対応に驚くが表情には出さない。

 

吸血鬼の純血主義は悪魔のものと同等、いや、それ以上である。それを理解しているからこその疑問。

それほどまでにヴァレリー・ツェペシュが吸血鬼の当主となったのが大きいのか? 確かにヴァレリー・ツェペシュは、ギャスパーの話によればギャスパーと同じハーフヴァンパイアであるとのことで、その彼女が当主になり意識の改革を進めたならば辛うじてありえなくはないと考える。

だが、その一方でヴァレリーはギャスパーと同じ歳であることも聞かされている身としては、其処までの意識の改革を成し得ていることやその位置に成り上がれたこと。少なくともギャスパーが外に出るまではツェペシュ側はヴァレリーを含むハーフヴァンパイアを幽閉していたというのだから、情報が遮断されている中でその発想に至れることにも驚くばかりだ。

 

この点から考えられるのは、彼女の俺と同じ前世の記憶があるのではないのか? ということ。それならば、ある程度納得するものの前世がどのような修羅場を潜り抜けてきた人物なのかと興味が湧く。この俺の推測が間違っていようとも気になる吸血鬼だ。

 

「では、お連れいたします」

「ええ、どうも」

 

そんなことを考えつつも案内すべく返事を聞き、反転。そのまま、部室へと向かおうと歩みを進める。遅すぎず、早すぎずのペースで無言で道を案内していく。

 

「お客様をお連れしました」

 

部屋のドアをノックし、客人を連れてきたことを報告。ドアを開いてエルヒメンデを部室内に入れ、自分も中に入ってドアを静かに閉める。俺が部長の傍らに戻ると、エルヒメンデは口を開く。

 

「ご機嫌よう、三勢力のみなさま。この度はこちら側の急な訪問に応じてくださり、ありがとうございます。今回、当主のヴァレリー様の代わりと致しまして不肖エルヒメンデ・カルンスタインが務めさせて頂きます」

 

やはり、知識や前に出会ったような純血の吸血鬼特有の傲慢さは彼女には見られない。

部長は、困惑を隠しつつもエルヒメンデを対面の席へ促す。

 

「エルヒメンデ、といったか。どうして、カーミラ派であるお前がこの場にいる?」

「そうですね……それを語る前に皆様の誤解なさっていることを正しておきましょうか。ヴァレリー様がおっしゃらなかったのが原因でもあるのですがね」

 

アザゼルの問いに困ったように返すと、一旦間を空けて、真面目な表情で言葉を続けた。

 

「第一にカーミラ派とツェペシュ派の抗争は収束を迎えました。また、それに伴い吸血鬼の血による差別は表面上は無くなりました」

「何……だと……!?」

 

アザゼルが驚きの余り声を漏らす。

 

「とはいえ、問題がありまして。それに反発したヴァレリー様の兄、マリウスらが徒党を組み内乱が起きまして」

「え!? ヴァ、ヴァレリーは無事なんですか!?」

 

エルヒメンデから伝えられる内容に思わず叫ぶギャスパー。ギャスパーが不味い、と思って口を両手で隠すようにするが、エルヒメンデの視線がギャスパーに突き刺さる。

 

「貴方は……ギャスパー様ですね」

「え、あ、はい……」

 

「恐れる必要はありません、貴方様はヴァレリー様のご友人。少なくとも私には敵意はありませんし、血を疎むこともありませんよ」

 

だが、ギャスパーにかけられた言葉は吸血鬼らしからぬ優しいものだった。俺の想像以上にヴァレリーという女性は人心掌握に長けているようだ。もしくは……

エルヒメンデはコホンと咳払いして話を元に戻す。

 

「その結果、吸血鬼自体の総数が激減しました。しかし、マリウスらの反乱にカーミラ、ツェペシュ派側双方が手を取り合い迎撃した事で固執は薄れました。そのような経緯もあって、血の濃さを気にしてられなくなったのでこのような結果になったのですがね」

 

「成る程、新旧魔王派の争いに似たものが其方でも起きたわけか……事情は分かった、本題に入ろう。そっちの要望は何だ?」

 

「要望は一つ。これをどうぞ」

 

エルヒメンデが鞄から取り出し、アザゼルに手渡すのはそれなりに分厚い書類。それを受け取り、書面を見る。こちらからはその文面は見えないが、アザゼルの眉にしわが寄ったのを見て、いままでの吸血鬼らしからぬ要望なのだと理解した。

 

「……吸血鬼の和平協議について、か」

 

アザゼルの零した言葉に周りが驚きの余り息を呑む。

 

「つまり、これはお前さんが特使として俺たちの元に派遣されたってわけか」

 

「はい。我らがヴァレリー様は吸血鬼の未来を考え、三勢力の方々との協力体制を敷きたいと申しておりました」

 

そのように話すエルヒメンデの表情は変わらず、裏があるのかすら判断出来ない。その為か、アザゼルやグリゼルダの表情は優れない。

 

「といっても、書類上や言葉だけでは納得はいかねぇ」

「……貴方たちがヴァレリーという少女を当主としている、俄かには信じがたい話です。正直、彼女を裏で糸引き、何か企てているのでは? としか思えないですしね」

 

そのグリゼルダの言葉を聞いたエルヒメンデの纒う雰囲気が一瞬変わる。……怒り、か? これで考えていたエルヒメンデらがヴァレリーをお飾りの当主として、裏で操っている可能性は薄くなった。

そのエルヒメンデはほんの少しだけ眉を潜めて言葉を返す。

 

「……予想はしていましたが、ヴァレリー様を侮辱するのだけは止めて貰えますか? それと一つ、要望ではなくお願いが有ります」

 

お願い、だと? 何を……

 

「我らが吸血鬼の地に来て欲しいのです──特にグレモリー眷属にアザゼル堕天使総督には」

 

「私たちに……」

「俺だと?」

 

「ええ、目で見てもらえれば今の吸血鬼の現状が理解出来るかと。それに、ヴァレリー様がギャスパー様に逢いたいとも仰っていました。アザゼル堕天使総督には貴方の神器(セイクリッド・ギア)の知識をお借りしたいのです」

 

お願いの内容に驚いたが、別におかしい事は言っていない。こちらがいまだに奴ら(吸血鬼)を信用していないのを加味しなければだがな。

 

神器(セイクリッド・ギア)? 何やらキナ臭くなってきたが?」

 

「もう正直に話しましょう。ヴァレリー様は神滅具(ロンギヌス)紫炎祭主による磔台(インシネレート・アンセム)】を所持しています」

 

神滅具(ロンギヌス)……ここでその話が出てくるのか。しかし、合点はいった。神滅具【紫炎祭主による磔台(インシネレート・アンセム)】は、というか聖十字架という聖遺物は吸血鬼にとっては驚異だ。ギャスパーが出てから発現したと考えて、そこから力を昇華させていったのならば力というカリスマ性は魅せられるだろう。

 

「そうか、神滅具(ロンギヌス)とか……いや、今、何て言った? 何の神滅具(ロンギヌス)だって?」

 

「……?【紫炎祭主による磔台(インシネレート・アンセム)】ですが?」

 

「……リアス、俺は何が何でも吸血鬼の当主に会わなくてはならなくなった。理由は後で話す」

 

しかし、俺がある程度納得したのに対してアザゼルの表情は固いままだ。ハーフとはいえ、吸血鬼が聖遺物を扱えることが原因なのか、もしくは神滅具(ロンギヌス)を【紫炎祭主による磔台(インシネレート・アンセム)】自体に問題が……?

 

「……そう。ギャスパー、貴方はどうしたいの?」

「ぼ、僕ですか?」

「ええ、当主であるヴァレリー・ツェペシュは友達に会いたいと言ったのよ? その友達の貴方はどうしたいの?」

 

そんな中で部長はギャスパーに問う。今までのギャスパーならば何があるかわからないかつ、昔のトラウマであっただろう吸血鬼の領地には帰りたいとは思わないだろう。しかし、今の引きこもりじゃない彼ならば……

 

「……会いたいです、ヴァレリーに……」

「わかったわ、私とその眷属は貴方たちの招待を受け取るわ」

 

音量は小さいが、しっかりと意志のこもった言葉にギャスパーの成長を感じられる。それを聴き取った部長はエルヒメンデへと了承の意を返す。

その言葉に満足したのか、彼女はニコリと笑みを浮かべる。

 

「時間や詳細は渡した書類に記載されていますので、よろしくお願いします。ヴァレリー様一同心よりお待ちしております」

 

そういって彼女は席を立ち、見送りは必要ありませんと言って1人で去っていった。

エルヒメンデが去った後、部長がアザゼルに話しかける。

 

「何があったの?」

「襲撃されて死亡したグラシャラボラス家の元当主を覚えているか? その事件について、ディオドラ・アスタロトの件で捕まえた旧魔王派の奴からの情報を元に詳しく調査した結果、新たな事実が判明した」

 

問いに対して、神滅具(ロンギヌス)との事ではなく俺が結局顛末を掴めなかったグラシャラボラス家の事件について語られる。前振りとして必要なのだと理解して、皆は話に聞き入る。

 

「襲撃の計画や実行犯は旧魔王派の奴だったが、実際に手をかけた奴が異なっていた。そして、その人物が【紫炎祭主による磔台(インシネレート・アンセム)】を所持していたのを確認した」

「それって……」

 

部長が思わず呟くが、アザゼルの話は続く。

 

「だが、【紫炎祭主による磔台(インシネレート・アンセム)】は、四年前にアウグスタの元から離れて以来、その弟子の現在は「禍の団」に所属するはぐれ魔法使いの集団の幹部、ヴァルブルガが所持しているのを確認している。エルヒメンデがわざわざ嘘を付く必要はないだろうし、逆に神滅具が有ったからこそ吸血鬼の当主まで成り上がれたのは間違いない」

「どういうことだ?」

 

今度は俺が思わず呟いた。まるで意味がわからんぞ?

 

「それはこっちが知りたい。神滅具が単一のものではないとすれば、今までの根底は崩れる。【紫炎祭主による磔台(インシネレート・アンセム)】が再度同じ所有者に移動するのならば、新たな発見となる。どちらにせよ、ヴァレリー・ツェペシュには【紫炎祭主による磔台(インシネレート・アンセム)】について聞かなくちゃならない。この話自体が真っ赤な嘘で俺たちを襲う罠かもしれねぇのが一番厄介だ」

 

そういうアザゼルだが、神器研究家の性かこの真相に興味を示しているように見える。

すると、グリゼルダが吸血鬼が俺たちを嵌める為の罠として神滅具やらの話をしたという仮定とした時の疑問を口にした。

 

「あの態度も? プライドが高い吸血鬼ならあんな風にはできないんじゃないかしら?」

「そうなんだよな、それが全てを分からなくさせている。とにかく、3日後の金曜までに準備を整えとけ……何が起きてもいいようにな」

 

アザゼルはサーゼクスやミカエルとも話さなきゃならねぇ、と頭を掻きながらも真剣な表情で言うに俺たちは無言で頷いた。

吸血鬼の当主との邂逅、吉と出るか凶と出るか……。


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