まさかこいつに憑依するとは   作:Aqua@D

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6巻終了。
次回更新も未定。


What is a jaguar note drive?

 

 

アルジェントが消え、俺たちが警戒態勢を取ると同時にある男が現れた。そいつは……

 

「……貴様は確か旧魔王のベルゼブブ……」

 

その俺の呟きに眉を顰めてシャルバは口を開く。

 

「……転生悪魔ごときに、私たち真の血統が「旧」などと言われるのは不愉快だ、黙っていていろ」

 

すると、俺に向かって指から光が放たれる。それをデュランダルで弾く。それを見たシャルバは、舌打ちしてから部長の方に視線を動かすと話を始めた。

 

さらっと殺そうとするのは如何なものかと。

 

「……さて、私の名前はシャルバ・ベルゼブブ。偉大なる真の魔王ベルゼブブの血を引く、正統なる後継者だ。サーゼクスの妹君、貴公には死んでいただく。真の魔王は私たちだ。魔王はそれぞれ一人ずつだろう?」

 

カテレアだったか? 旧レヴィアタンは既に死んでいるけどな。

すると、それを聞いて部長が叫ぶ。

 

「直接現魔王に決闘も申し込まずに、その血族から殺すだなんて卑劣だわ!」

 

それを聞いたシャルバは、特に気にせずに言葉を返す。

 

「先ずは現魔王の家族から殺し、奴らに絶望を与えなければ意味がない。我々、偉大なる真の魔王の力を奴らに見せつけなくてはならない。しかし、ディオドラ。君には失望したよ、私が力を貸してやったのにこのざまとは……」

 

絶望ねぇ……それに偉大なる真の魔王( )とか……。旧魔王は小物しかいないのか?

 

「た、助けてくれ、シャルバ! 君の力があ……」

 

すると、ディオドラはシャルバに必死に助けを求める。しかし……シャルバの指から放たれた光が容赦なくディオドラの胸を貫く。そして、ディオドラは床に倒れ伏す間もなく霧となって消滅した。哀れな最後だったな。

 

「外道ッ! 何よりもアーシアを殺した罪! 絶対に許さないわッ!」

 

部長は激高するとともに、紅いオーラが迸る。 姫島も怒りで顔を歪め雷光を身に纏う。祐斗は聖魔剣を創り構え、各々が戦闘体制に入るが……

 

「アーシア、何処に行ったんだよ? ほら、帰るぞ? 父さんも母さんも待ってるし、家に帰るんだ。だけど、隠れていたら帰れないじゃないか。はは、アーシアはお茶目さんだなぁ……」

 

一人だけ例外で、一誠は覚束ない足取りでアーシアを探す。

……怒りよりも精神的ショックにより現実を逃避しているのか。

 

「アーシア? 帰ろう? もう誰もアーシアをいじめる奴はいないんだ。いたって、俺がぶん殴るさ!ほら、帰ろう? 体育祭で一緒に二人三脚するんだから……」

 

その一誠の言葉に塔城とギャスパーは嗚咽を漏らし、姫島も顔を背けて涙を頬に伝わせる。部長は一誠を優しく抱き、何度も頬を撫でる。

祐斗は怒りに震えながらアジュカから目を離さず聖魔剣を構えている。そんな中、俺はデュランダルを構えながら冷静にシャルバに問いかける。

 

「……本当にアルジェントを殺したのか?」

 

あの光の柱に殺傷能力はないと感じたのだが……悪魔である以上多少はダメージが入るだろうが、それも致死量ではないように見えたが……?

 

「そうだ、あの娘は死んだ。次元の狭間に送られその体は消滅した」

 

この言葉が紡がれた瞬間、第六感がある可能性を訴えている……!

 

「ドライグッ! アスカロンをッ!」

 

『……もう、無理だ。……リアス・グレモリー、今すぐこの場を離れろ。あれが発動する……彼奴(シャルバ)は選択を間違えた』

 

「部長、すまん!」

 

俺は一瞬で一誠に近づき、部長を一誠から引き離した。一瞬、部長は抵抗を見せるが、俺の鬼気迫る表情に素直にしたがった。

 

引き離した瞬間、神殿が大きく揺れ、一誠が血の様に赤いオーラを発した。そして、一誠の口から老若男女、複数入り交じった呪詛のごとき呪文が発せられる。

 

『我、目覚めるは……』

〈始まったよ〉〈始まったね〉

 

鎧が鋭角なフォルムに変わる。

 

『覇の理を奪いし二天龍なり……』

〈いつだって、そうでした〉〈そうじゃな、いつだってそうだった〉

 

背中から巨大な翼が生える。

 

『無限を嗤い、夢幻を憂う……』

〈世界が求めるのは〉〈世界が否定するのは〉

 

両手両足から爪が伸びる。

 

『我、赤き龍の覇王と成りて……』

〈いつだって、力でした〉〈いつだって、愛だった〉

 

そして、兜からは角が幾つも形作られ、ドラゴンそのものに変容していく。そして、一誠……いや、赤龍帝達は、最後の一言を紡ぐ……!

 

「「「「「「「汝を紅蓮の煉獄に沈めよう」」」」」」」

 

Juggernaut Drive(ジャガーノート・ドライブ)‼‼‼』

 

そして、赤い龍のオーラによって、周囲の地形が破壊され、龍となった一誠が四つん這いになり、叫びをあげる。

 

「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA! ASIAAAAAAAAAAAAAAAA!」

 

最早人語ではない、獣のような叫び。そして、一誠は一瞬でシャルバに接近し、肩に喰らいついた。

 

そして、シャルバが振りほどこうと一誠に攻撃する前に宝玉の一つから刃が生まれ、シャルバの右腕を切断してそのまま喰い千切った。

 

……しかし、あれは『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』なのか? 何か違和感を感じる……不完全と言っていいのかわからんが、そんな気がする。

 

だが、此方に敵意が向いていないのは幸運だな。……最悪の場合は刺し違えも止めなくてはな。

 

「巫山戯るな! 赤龍帝ッ!」

 

片腕を無くし、激高したシャルバは残った左腕で光の一撃を放つ。

 

規模はそれなりのものだが、対する一誠の翼が光り輝き、そのシャルバの一撃が襲いかかる瞬間に……

 

『DividDividDividDividDividDividDivid‼‼』

 

光の波動が複数回半減し、極小のものに変わり一誠に当たる。勿論、そんなものが今の一誠に効いているわけがない。

そして、一誠は兜の口を開くと、そこから赤いレーザーを一直線に伸ばし、シャルバの左腕を吹き飛ばす。

 

「ば、化け物め! わ、私の力はオーフィスによって前魔王クラスにまで引き上げられているのだぞ!?」

 

両腕を無くしたシャルバの顔が恐怖に包まれる。周りを見ると、部長は目を見開き、全身を震わせていた。姫島も塔城もギャスパーも祐斗も一誠を恐れるように見ていて、全身の震えが止まらない様子だ。俺は何故か震えも恐怖も感じていなかった。……化け物なら色々見てきたからな、色々(・・)とな。

 

そんな中、一誠は両翼を広げ、鎧の胸元と腹部を開くと、そこからレーザーの発射口が姿を現す。

 

そして、赤いオーラが発射口に集まり、横に広がった翼も赤い光を辺り一面に放とうとしている。

 

溜め時間と赤いオーラの質量を考えるとこの神殿を覆い尽くす……!?……退避時間は……間に合うか!?

 

「部長ッ! 撤退だ! 巻き込まれるぞッ!」

「でも、イッセーが!」

 

一誠が心配なのか、躊躇している部長。それを見て、叫び祐斗に指示を飛ばす。

 

「巫山戯るなッ! 祐斗ッ、こいつらを連れて行けッ! 俺は一番最後に出るッ!」

 

俺は叫ぶと、祐斗に指示すると同時に、他の奴らにも目で指示する。

 

「すみません!」

 

部長を祐斗が抱えて退避すると、それに続いて姫島たちも入り口を出て行った。

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost‼‼‼』

 

それを見届けると俺は大して効果は見込めないが、入り口付近に結界を貼り、デュランダルを構える。

 

「さて、全員避難出来たか……デュランダルッ! 輝きと化せッ!」

 

そして、俺はデュランダルから凝縮した聖なるオーラを解放した。

 

『Longinus Smasher!!!!!!!!』

 

一誠がシャルバに向かって放った一撃の余波と俺の一撃がぶつかり合い、俺は光に飲まれた……。

 

 

 

 

 

 

光に飲まれた俺は、目を開き破壊された辺りを見回して呟く。

 

「……デジャヴュか?」

 

……何を言っているんだ俺は、頭でもやられたか?

 

「ゼノン!」

 

部長たちの呼ぶ声がしたので、振り返るとそこには大してダメージを受けていない部長たちの姿があった。

 

「大丈夫か?」

 

「貴方、腕……!」

 

部長が心配そうに俺の腕を見つめる。そして、気付く……俺の両腕がボロボロになっている事に。

 

「……聖なるオーラを流し過ぎた所為だな。悪魔と化した俺には少し負担が大きかったようだが……治療を受ければ何とかなる。……今はそれよりも一誠だ」

 

すると、姫島が治癒魔法をかけてくれた。応急処置に過ぎないそうだが、礼を言って一誠の方を向く。因みにデュランダルは亜空間に既に戻してある。……両腕が使えないからな。

 

「イッセー……」

「Oooooooo……」

 

一誠は瓦礫と化した神殿の上に立ち、天に向かって弱々しく咆哮をしている。

 

……どうやって戻す? アザゼルと連絡を取るか? それとも……

 

「困っているようだな?」

 

俺がアザゼルと連絡を繋ごうとした時、空間に裂け目が生まれ、声が聞こえる。

 

そこから現れたのはヴァーリと美猴にアーサーだった。

 

……敵意は感じない、何のようだ?

 

「ヴァーリ」

 

部長の言葉に皆が攻撃態勢に入る。しかし、ヴァーリはその手を制す。

 

「やるつもりはない。見に来ただけだ。赤龍帝の『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』を……しかし、あの姿を見るに中途半端に『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』と化したようだ」

 

やはり中途半端か……。

そこで、ヴァーリに問いかける。

 

「……この状態、元に戻るか?」

 

「完全な『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』ではないからわからん。どちらにしてもこの状態が長く続くのは兵藤一誠の生命を危険にさらすことになるな」

 

「そうか……」

 

すると、美猴がこちらに歩み寄る。よく見ると、腕には見知った少女……アルジェントを抱きかかえていた。

 

「ほらよ、おまえらの眷族だろ、この癒しの姉ちゃん」

 

「アーシア!」

「アーシアちゃん!」

 

部長と姫島、皆がアルジェントのもとに集まる。アルジェントは、気絶しているようだが、息はしていた。

 

「わざわざ、助けてくれたのか?」

 

と、ヴァーリたちに問うとアーサーが口を開く。

 

「いえ、私たちがちょうどこの辺りの次元の狭間を探索してた時に、この少女が次元の狭間に飛んできたのですよ。ヴァーリが見覚えがあると言いまして、ここまで連れてきたのです。運が良かったですね」

 

「偶然か……それとも必然か……」

 

ともかく、アルジェントが無事で何よりだ。ヴァーリたちが居合わせなかったら、次元の狭間の「無」にあてられて消失していた所だったな。

 

「後の問題は一誠だが……」

 

見ると、此方の様子を関せず嘆きの咆哮を続けている。

 

「アーシアの無事を伝えればあの状態を解除出来るかしら」

 

「危険だ、死ぬぞ。ま、俺は止めはしないが。そうだな……何か彼の深層心理を大きく揺さぶる現象が起これば何とかなりそうだが……」

 

一誠の深層心理を揺さぶる……か。

 

「おっぱいでも見せれば良いんじゃね?」

 

すると、横で頭を掻いていた美猴が言う。それは……どうなんだ?

 

「あの状態ではどうだろうな……ドラゴンを鎮めるのはいつだって歌声だったが……」

 

「赤龍帝の歌か……そう簡単には無……」

「あるわよ!」

 

俺の言葉を遮って飛んできたのは、イリナだった。

……あるのか?

……何だ、嫌な予感しかしない。

 

イリナの話によると、サーゼクス様とアザゼルが用意した秘密兵器らしい……が、やはり嫌な予感しかしない。

 

「よく分からないけれど、お兄さまとアザゼルが用意したのなら、効果が見込めるかもしれないわね」

 

部長が映像機器を下に置いてボタンを押すと、空中に映像が映し出される。

 

その映像に映し出されたのは禁手(バランス・ブレイカー)状態の一誠だが……

 

『おっぱいドラゴン! はっじっまっるよー!』

 

謎の一言を発した一誠のもとに子供達が集まる。

 

『おっぱい!』

 

そして、子供たちの謎の返事を返し、一誠と子供達のダンスが始まり、宙にタイトルと歌詞が表示されたのだが……全員が驚愕した。

 

 

 

ーーー

 

 

「おっぱいドラゴンの歌」

 

作詞:アザ☆ゼル

作曲:サーゼクス・ルシファー

ダンス振り付け:セラフォルー・レヴィアたん

 

 

とある国の隅っこに

おっぱい大好きドラゴン住んでいる

お天気の日はおっぱい探してお散歩だ☆

ドラゴン ドラゴン おっぱいドラゴン

もみもみ ちゅーちゅー ぱふんぱふん

いろいろなおっぱいあるけれど

やっぱり おっきいのが一番大好き

おっぱいドラゴン 今日も飛ぶ

 

(後略)

 

ーーー

 

 

 

こ れ は ひ ど い

 

皆が呆然とする中、歌は進む。

 

文句を言いにアザゼルと連絡を取ろうとするも、先ほどの覇龍(ジャガーノート・ドライブ)との衝撃に通信機が役に立たなくなっていた。

 

「うぅ、おっぱい……もみもみ、ちゅーちゅー……ず、ずむずむ……いやーん……ポチッと」

 

すると、一誠が呟く。内容は歌詞の一部だが……鎮まるのかよ。

もう、あとは部長様に任せよう。

 

「部長、逝ってこい」

「え?」

 

投げやりに言う俺に此方を向く部長。すると、姫島がすかさずアシストをする。

 

「そうよ、リアス! イッセー君はあなたの胸を求めているわ!」

 

「え、ええ?」

 

この時、ヴァーリは額から汗を流しながら視線を逸らし、美猴は腹を抱えて笑いを堪えていた。

それを見て、ヴァーリに問いかける。

 

「ヴァーリ、アルビオンの精神がやばそうなのは気のせいか?」

 

『……』

 

返事はない。すると、ヴァーリが重々しく口を開く。

 

「……気のせいではない、喋れないほどに不味い」

 

「……「禍の団(カオス・ブリゲード)」にカウンセリングは無いのか?」

「ない」

 

この即答に俺は、アルビオンに同情した。……一誠は二天龍の精神を破壊したいのか?

 

「……そうか、頑張れ?」

 

 

 

「お、俺の……お、おっぱい……」

 

一誠は求めるものを発見し、震える指をいつの間にか一誠に近づいていた部長の胸へ運ぶと一誠の鎧が解除された。

 

それを見ていた美猴とヴァーリが呟く。美猴は笑いを堪え切れていないが。

 

「くく……リアス・グレモリーの胸は兵藤一誠の制御スイッチなのかぃ?」

 

「……美猴、それは酷いな。これでは、名実共に乳龍帝ではないか……」

 

「シリアス何処に行った……」

 

俺の呟きは誰にも聞こえずに、風に消えた。

 

 

 

 

 

 

「うーん、あれ? 何がどうなったんだ?」

 

一誠が目を覚まし、号泣する部長に抱きつかれる。……これ見ると男女の仲にしか見えないんだが……。

 

その後、一誠は祐斗から説明を受けたが、『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』後の事は覚えていなかったみたいだ。ドライグの方は完全に覚えているみたく、精神状態がよろしく無かった。

また、アルジェントにも抱きつかれていた。

 

そして、ヴァーリが一誠に話しかける。

 

「兵藤一誠。無事だったようだな」

 

「ああ。なんだか、世話になっちまったようだな」

 

「ま、たまには良いだろう。それよりもそろそろだ。空中を見ていろ」

 

一誠が訝しげに空を見ていると……空間に巨大な穴が開き、そこから巨大な何かが姿を現す。

 

「よく見ておけ、兵藤一誠。あれが俺が見たかったものだ」

 

空中をとてつもなく巨大な生物……真紅の龍が雄大に泳いでいる。

 

「赤い龍と呼ばれるドラゴンは二種類いる。一つは君に宿るウェールズの赤き龍(ウェルシュ・ドラゴン)。つまり、赤龍帝だ。白龍皇もその伝承に出てくる同じ出自のもの。だが、もう一体だけ赤い龍がいる。それが「黙示録」に記されし龍だ」

 

それを聞いて、俺は口を開く。

 

「……「真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)」グレートレッド。「真龍」及び「D×D(ドラゴン・オブ・ドラゴン)」と称される龍。自ら次元の狭間に住み、永遠に飛び続けている。今回のお前たちの目的はこれも兼ねていたのか?」

 

「いや、シャルバ達の作戦は俺達にとっては、どうでも良い事だったんだ。今回のオーフィスの目的はあれ(グレードレッド)を確認する事だ」

 

確認……? オーフィスがグレードレッドに敵意を持ったということか?

 

「グレートレッド、久しい」

 

すると、いつの間にか俺達のすぐ近くに黒髪黒ワンピースの少女が立っていた。……気付かなかった、だと? まさか……

 

「こいつが、オーフィスか? アザゼルから聞いた話では、前回は老人の姿だったらしいが……」

 

ヴァーリがそれを聞くと、自分も最初はそう感じたのか苦笑し、口を開く。

 

「そうだ。同時に「禍の団(カオス・ブリゲード)」のトップでもある」

 

すると、オーフィスはグレードレッドに向けて指鉄砲を構えて撃ちだす格好をした。

 

「我は、いつか必ず静寂を手にする」

 

ああ、そういう事か。ヴァーリがテロ組織に身を置いているのは、オーフィスの目的であるグレートレッドと言うドラゴンを倒す、というのが一致しているからか。

 

その直後、アザゼルとタンニーン様が降ってくる。

 

「先生、おっさん!」

 

「おー、イッセー。元に戻ったようだな。俺もどうなるか怖かったが、お前ならあの歌や女の胸で『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』から戻るかも……なんて思っていた。乳をつついて禁手(バランス・ブレイカー)に至った大馬鹿野郎だからな。あの歌の作詞をした甲斐があったぜ」

 

「アザゼル、戻ったのは良いんだが……ドライグとアルビオンの精神状態が不味いんだが?」

 

末期とはいかないがカウンリングやらの処方が必要だ、と告げると。

 

「スマン……だが、犠牲はつきものだ……」

 

と、言った。

……他の方にも相談をしなくてはな。

 

そして、アザゼルとタンニーン様は空を飛ぶグレートレッドに視線を向けると、タンニーン様が口を開く。

 

「懐かしい、グレートレッドか」

 

「タンニーン様も会った事が?」

 

それを聞いて、タンニーン様に訊ねる。

 

「ああ、見ただけだけどな。俺なんぞ歯牙にもかけてくれなかった」

 

まあ、グレードレッドは基本的に実相世界の生物や事柄には関心を示さないからな。

 

すると、ヴァーリがアザゼルに話しかける。

 

「久しぶりだな、アザゼル。クルゼレイ・アスモデウスは倒したのか?」

 

「……いや、旧アスモデウスはサーゼクスと殺り合ったが、寸での所で逃げられた。だが、シャルバを一誠が片付けた事で、首謀者を失った配下も逃げ出したさ」

 

やはり、旧アスモデウスも来ていたか。しかし、逃げられたのか。

 

「お兄さまは?」

 

すると、部長がサーゼクス様について訊ねる。

 

「結界が崩壊したから、観戦ルームに戻った」

 

アザゼルが部長たちにそういうと、今度はオーフィスに言う。

 

「オーフィス。各地で暴れ回った旧魔王派の連中は退却及び降伏した……事実上、まとめていた末裔共を失った旧魔王派は壊滅状態だ」

 

「そう。それもまたひとつの結末」

 

オーフィスは特に驚く様子も無く言った。

まあ、オーフィスもグレードレッドと同じく実相世界の生物や事柄には関心を示さないからな。……グレードレッドを倒すこと以外には特に関心は向かないのだろう。

 

「お前らの中であとヴァーリ以外に大きな勢力は人間の英雄や勇者の末裔、神器(セイクリッド・ギア)所有者で集まった英雄派だけか」

 

「英雄派か……オリヴィエがそうだろうな。知っているのは、名前だけだが、曹操にゲオルクか……」

 

それに、ジークフリードもいるんだろうな。

これなら、英雄派と名前負けしていないメンバーの名前だな。これに知らないメンバーもいると考えると、旧魔王派とは比べものにならない戦闘力じゃないか?

 

「さーて、オーフィス。やるか?」

 

アザゼルが光の槍をオーフィスに向けるが、オーフィスは踵を返し……

 

「我は帰る」

 

と言うと、一瞬で消え去った。

 

ヴァーリ達も退散しようとアーサーが作った次元の裂け目に入ろうとしていたが、ヴァーリは一誠に言葉をかける。

 

「兵藤一誠……俺を倒したいか?」

 

「……倒したいさ。けど、俺が超えたいものはお前だけじゃない。同じ眷属の木場やゼノンも超えたいし、ダチの匙も超えたい。俺には超えたいものがたくさんあるんだよ」

 

「俺もだよ。俺も君以外に倒したいものがいる。その中でも、グレードレッドは最も戦いたい相手だ。俺はいつか『真なる白龍神皇』になる。赤の最上位がいるのに、白だけ一歩前止まりでは格好がつかないだろう?

……おかしいな、現赤龍帝と現白龍皇は宿命の対決よりも大切な目的や目標が存在している。今代の赤と白は可笑しな存在なんだろうが、そういうのもたまには良い筈だ……だが、いずれは」

 

「ああ、決着つけようぜ。部長のおっぱいを半分にされるところだからな」

 

一誠が拳をヴァーリに向けて言い放った。それを見てアーサーが祐斗に言葉をかける。

 

「木場祐斗くん、私は聖王剣の所持者であり、アーサー・ペンドラゴンの末裔。アーサーと呼んでください。いつか、聖剣を巡る戦いをしましょう。それと、ゼノンくん。オリヴィエに勝ったら貴方もいずれ……。それでは」

 

それを告げると、アーサーは先頭で次元の裂け目に入る。そして、ヴァーリと美猴も次元の裂け目に入る。

 

「……強くなれよ、兵藤一誠」

 

「じゃあな! ゼノン! おっぱいドラゴン! それとスイッチ姫!」

 

が、最後に美猴が地雷を落とした。

勿論、自覚があるのか反応する部長ことスイッチ姫。

 

「なっ! 何よその呼び名は!」

 

「へへっ、良い呼び名だろ! この呼び名は今さっき大笑いしていた時に思い付いた名前だ! 赤龍帝の禁手(バランス・ブレイカー)にもそれで至ったんだしな!」

 

そして、部長(スイッチ姫)が何かを言う前に次元の裂け目は閉じた。

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

「……こ、こは……?」

 

謎の場所。赤龍帝の放った一撃に飲み込まれ、恐らくは空間の切れ目へと弾き飛ばされたのだろうとシャルバは推測した。

 

「これは無様……両腕が無くて他もボロボロ……これが真なる魔王ねぇ……」

 

すると、あざ笑うかのような女性(・・)の声が聞こえる。その顔を見た途端シャルバは怒りに顔を歪ませる。

 

「貴様……何の用だ……!」

 

「何の用って……助けに来たのよ? 同じ「禍の団(カオス・ブリゲート)」の仲間じゃない?」

 

悠々とそんなことを言い出す相手にシャルバは疑問を返す。

 

「……仲間だと……? 本気で……言っているのか?」

 

「さあ? で、どうするのかしら? 別に見なかった事にしともいいんだけど……少し手伝って欲しい事があるのよ……」

 

目の前の女性は、笑みを含んだ声色でそう言う。死にたく無ければ飲め……と言っているのはシャルバは理解している。

 

だが、シャルバには新たな目的が出来た。この場で死ぬわけにはいかないし、死ぬにしても赤龍帝に一泡吹かせてからだと、復讐の炎を瞳に宿す。

 

「……協力、しよう……」

 

そして、シャルバの意識は途切れた。

 

「……交渉成立。とりあえずは、こいつ()の治療かしらね……」

 

そして、二人は()に包まれた。

 

 




一誠の覇龍暴走は色々と派生する為、必須となりました。
次回は、7巻。ヒロイン出揃います。

ドライグとアルビオンはなぜ原作よりメンタルが弱いのか……。

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