まさかこいつに憑依するとは   作:Aqua@D

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本当にお久しぶりです、Aqua@D です。だいぶ更新が遅れました……理由としては、事情で時間が取れないのと、以前別サイトに投稿していた初作品をプロットを殆ど変えて投稿しようとしているのでそちらの執筆に割合を寄せている所為です。


冥界合宿のヘルキャット
When is homecoming?


「凄いな、駅の地下に冥界行きの列車がでてるとはな……」

 

今、俺たちグレモリー眷属は部長の里帰りについていく為に冥界行きの列車に乗っていた。

 

「はは、確かにね。最初は僕も驚いたよ」

 

「これに乗るのは、久しぶりです……」

 

列車内にはグレモリー眷属と車掌がいるだけだ。……いや、アザゼルもいたな。

 

部長は一番の前の車両、眷属である俺達は中央から後ろの車両に座らなければならないらしく、席順としては、一誠とアルジェントが隣に座り、対面に塔城と姫島。で、少し離れた席に俺、対面に祐斗にギャスパーだ。アザゼルは端の席で寝ている。電車に乗った理由は、確か悪魔の冥界への移動方法を見ておきたいと言っていたが寝るの早過ぎないか?

 

「というか、流石は目標がハーレム王だな……確か、姫島とも同棲したんだって?」

 

少し離れた一誠を話題に挙げる。ちなみに、ソースは姫島本人からだ。女子部員の中では一番会話してるのが彼女かもしれ無い。次いで部長、アルジェント、塔城の順だな。なんでか知らないが気が合うんだよな……。

 

「そうみたいだね」

「凄いですよね……」

 

祐斗はにこやかに、ギャスパーは尊敬の眼差しで言う。

 

「一誠の今後に期待だな……」

 

そこで話を切り、冥界でのスケジュールを手帳を見て確認する。

 

今回は部長の里帰りと、現当主に眷属悪魔の紹介に新鋭若手悪魔達の会合。その後は修業でアザゼルが主に修業に付き合うらしい。

 

しかし、今も新鋭若手悪魔達の資料を見ているが……サイラオーグとかまじチートじゃねえか。部長を含めた若手の王の中なら単体の戦力なら段違いだぞ?

 

「凄まじいな……」

 

「どうしたの、ゼノン?」

 

「ん?部長か、何でも無い。どうしたんだ?」

 

いつの間にか日本から冥界についている上、部長が近くに来ていた。すると、部長は何の地図を広げた。

 

「新しく眷属になったイッセーやアーシアや貴方にはグレモリーの所有する領土を与える事になっているのよ」

 

部長曰くグレモリー領は日本で言うと、本州ぐらいの広さがあり、渡した地図の赤い所は既に手が入っている土地だが、それ以外の所はOKで好きな土地を言えば貰えるそうだ。

 

「この夏休み中に言ってもらえばいいわ」

 

といって地図を俺に渡し、そろそろ本邸につくわ、と言って元の席に戻って行った。

 

「さて、どうしようか……」

 

 

 

 

『まもなくグレモリー本邸前。皆さま、ご乗車ありがとうございました』

 

あれから、祐斗やギャスパーの意見を参考にして考え込んでいると車掌のアナウンスが響いた。

 

そして、列車は静かに停止して部長の先導のもとに俺達は降りた。

 

「あれ、先生は降りないんですか?」

 

アザゼルが出る素振りを見せなかった為か一誠が訊く。

 

「ああ、俺はこのままグレモリー領を抜けて、魔王領の方へ行く。サーゼクス達と会談があるからな。終わったらグレモリー本邸に向かうから先に行って来い」

 

アザゼルのその言葉を受けた俺たちは、一旦アザゼルと別れ駅のホームに降り立った。

 

「「「「「「「「リアスお嬢様、おかえりなさいませ!」」」」」」」」

 

すると、花火が上がると同時に大勢の執事やメイドが出迎えをした。

 

すると、少し離れた所にある馬車?の近くにいたグレイフィア様が近づいて来た。

 

「お嬢様、おかえりなさいませ。道中、ご無事で何よりです。本邸まで馬車で移動しますので眷属の皆様もお乗り下さい」

 

あ、あれが馬車でいいのか……冥界の馬ってでかいんだなぁ。

 

 

 

馬車内では、特に変わる事無く本邸についた。

 

巨大な城門が開き、カーペットの上を歩き出そうとした時、城から紅髪の少年が飛び出して来て部長に抱きついた。

 

「リアス姉さま!おかえりなさい!」

 

紅髪……確かサーゼクス様の息子だったかな。一応この少年も、血筋的にはグレモリーの当主候補なんだよな。

 

「あの、部長。この子は?」

 

一誠が問いかけると、部長は少年が自分の甥であると簡単に説明をした。そして、甥と手を繋いで城の中に進んで行ったので続いて眷属である俺たちも城の中に入っていった。

 

そして、広大な玄関ホールに着くと、グレイフィア様を始めとしたメイド達が集合していた。

 

「お嬢様、早速皆様をお部屋へお通ししたいと思うのですが」

 

「そうね、私もお父様とお母様に帰国の挨拶をしないといけないし」

 

部長とグレイフィア様が話をしている間にふと、階段の上をみるとドレスを着た亜麻色の髪の少女がいるのを見つけた。

 

目は合わなかったが、こちらの視線に気づいたのか階段から下りてきた。

 

「あら、リアス。帰ってきたのね」

 

「はい、お母様。ただいま帰りましたわ」

 

「え!?」

 

一誠が大声で驚いたので視線で黙らせる。

 

あの少女が部長の母親か……確か、悪魔で魔力に余裕のある者は見た目の姿を自分の好みに変えられるんだったか?その所為でベストな状態を維持できるのか。悪く言えば若づ……部長の母親からプレッシャーが酷い。悪魔にこの系統はタブーなのか?

 

「リアス。その方が兵藤一誠くんね?」

 

「え?俺の事をご存じなんですか?」

 

まあ、そりゃ赤龍帝で娘の眷属なんだから知っていてもおかしくはないけどな。

 

「ええ、娘の婚約パーティに顔ぐらい覗かせますわ。母親ですもの」

 

婚約パーティ……祐斗から聞いた話によると部長と当時婚約者のライザー・フェニックスの婚約パーティだったか、一誠のお陰で婚約は解消したんだっけな。

 

一誠が冷や汗を垂らす中、部長の母親は小さく笑って一誠に自己紹介をする。

 

「初めまして。私はリアスの母、ヴェネラナ・グレモリーですわ。よろしくね、兵藤一誠くん」

 

その後は、夕食の時間までは部屋で休憩のようで各自個別に向かった。

 

 

 

 

 

 

「うむ。リアスの眷族諸君。ここを我が家と思ってくれるといい。冥界に来たばかりで勝手がわからないだろうから、欲しいものがあったら、遠慮なく言ってくれ」

 

そして、やる事もなく夕食の時間になり、食事の最中にグレモリー卿……部長の父親がそう言った。

 

部長や姫島、祐斗は優雅に食事をとっているが、アルジェントは悪戦苦闘しながら、ギャスパーは涙目で食事をしている。一誠は豪華な料理に中々、フォークやナイフがつけられないのかあまり手が動いていない。塔城はなにか思いつめているのか一口も食べていない。

 

塔城が心配だな、何で思いつめているんだ?……本人に聞くのは不味いか、あとで部長にでも話しておくか。

 

そんな事を考えながら食事をしていると、一誠と何かを会話していたグレモリー卿が手元の鈴を鳴らす。すると執事が近づいてきた。

 

「旦那さま、御用でしょうか?」

 

「うむ。兵藤一誠くんのご両親宛てに城を一つ用意しろ」

 

……どうしてそうなった?

 

「ちょっ、ちょっと待ってください! そこまでのお土産はちょっとスケールが違うと……」

 

一誠は急いで制止しようとすると、ヴェネラナ様が口を開く。

 

「あなた、日本は領土がせまいのですから、平民が城を持つなんて不可能ですわ」

 

「ふむ、そうだったな。……城が無理ならば何がいいだろうか……」

 

いや、そういう訳ではないだろ?なんというか、価値観のズレが酷い。

 

「お父さま。あまりそういう気遣いは逆にあちらへ迷惑をかけますわ。イッセーのご両親は物欲の強い方々ではありませんし」

 

すると、見兼ねた部長が一誠を助ける。それに満足したのかグレモリー卿は口を閉ざした。

 

すると、ヴェネラナ様が一誠に話しかける。

 

「一誠さんは、しばらくはこちらに滞在するのでしょう?」

 

「はい。部長……リアスさまがこちらにいる間います」

 

「そう、ちょうどいいわ。あなたには紳士的な振る舞いを身に着けてもらわないといけませんから。少しこちらでマナーのお勉強をして貰います」

 

その時、リアスがテーブルを叩いて立ち上がっていた。近くに座るギャスパーが ヒッ と軽く悲鳴を上げて縮こまった。

 

「お父様! お母様! 先程から黙って聞いていれば、私を置いて話を進めるなんてどういう事なのでしょうか!?」

 

「お黙りなさいリアス。あなたはライザーとの婚約を解消しているのよ? それを私達が許しただけでも破格の待遇だとお思いなさい。お父様とサーゼクスがどれだけ他の上級悪魔の方々へ根回ししたと思っているの? 一部の貴族には “わがまま娘が伝説のドラゴンを使って婚約を解消した” と言われているのですよ? いくら魔王の妹とはいえ、限度があります」

 

それから、少しだけ言い争いが続いたが、結果的に部長はヴェネラナ様に言いくるめられて終わった。部長は納得してないような表情をしているけどな。

 

「リアスの眷属さん達にお見苦しいところを見せてしまいましたわね。話は戻しますが一誠さんにはここに滞在中に特別な訓練をしてもらいます。少しでも上流階級、貴族の世界に触れてもらわないといけませんから」

 

口論していた時の鋭い表情から一変して微笑みながらヴェネラナ様はそう言った。

 

「あ、あの、どうして俺なのでしょうか?」

 

一誠が自分を指差して動揺しながら訊く。

 

「あなたは次期当主たる娘の最後の我がままですもの。親としては最後まで責任を持ちますわ」

 

その言葉で、部長は顔を真っ赤にした。親公認か……頑張れ部長、一誠は真意を理解してなさそうだがな。

 

その後は、他愛ない会話は有ったが特に変った事無くで夕食が終わった。

 

「……ふっ!」

 

そして、夕食前の部屋に戻る事になっているが城周辺なら外に出てもいい為、外でデュランダルとジョワユースでの二本の剣を扱い振るっていた。以前はデュランダルと破壊の聖剣(デストラクション・エクスカリバー)でパワー×パワーよりで結構ゴリ押し気味だったからな……ジョワユースと破壊の聖剣(デストラクション・エクスカリバー)とでは性質が全く違うからな。

 

「……この程度でいいか」

 

暫く剣の鍛錬をした後に剣を亜空間に戻す。そして、ある事を試してみる。

 

「……ん、成功か?」

 

メイドさんから外に出る前に貸してもらった手鏡で確認する。

 

「あら?祐斗?」

 

「いや、違う。ゼノンだ」

 

すると、部長が何故かやってきた。部長がわからないなら成功か?

 

「……え?どうやったの?」

 

「上級を含めて魔力に余裕のある悪魔は姿を変えられる、それを利用したものだ。それで、どうしたんだ?こんな外に出て」

 

姿を元に戻して問いかける。しかし、これは中々のものだな。まあ、魔力のコントロールがものをいうから一誠なんかは難しいか。逆に、姫島やアルジェントは出来そうだな。

 

「……ちょっと気分転換にね」

 

「ああ、親か……」

 

「よくわかったわね……いえ、夕食の光景をみればわかるわね」

 

と、溜息をついて俺に近づく部長。

 

「まあ、あれだけ言われてたらな……」

 

鏡を亜空間にいれながら返す俺。ふと、塔城の件を思い出して聞いてみる事にした。

 

「……そういえば、塔城の様子がおかしかったのに心当たりはあるか?」

 

「ええ、今、あの子は自身の力に悩んでいるのよ」

 

「自身の力……猫又の力か?」

 

「そういえば、貴方には小猫が妖怪なのは話していたわね」

 

部長曰く、まだ一誠やアルジェントには話していないとの事だ。

 

「そうね、少し詳しく話しましょうか」

 

部長が話し出したのは二匹の姉妹猫の話であった。

 

その姉妹の猫は親と死別してからは帰る家も頼る者もなく、二匹の猫はお互いを頼りに懸命に一日一日を生きていった。

 

「二匹はある日、とある悪魔に拾われたのよ。姉の方が眷属になる事で妹も一緒に住めるようになり、やっとまともな生活を手に入れた二匹は、幸せな時を過ごせると信じていたのよ」

 

ところが、姉猫は隠れていた才能が転生悪魔となった事で一気に溢れ出たらしく、力を得てから急速なまでに成長を遂げた。

 

「その猫は元々妖術の類に秀でた種族で、その上、魔力の才能も開花した挙げ句、仙人のみが使えると言う仙術まで習得してしまったのよ」

 

短期間で主をも超えてしまった姉猫は力に呑み込まれ、血と戦闘だけを求める邪悪な存在へと変貌していった。

 

「力の増大が止まらない姉猫は遂に主である悪魔を殺害し、はぐれと成り果てたのよ。しかも、追撃部隊を悉く壊滅する程の最大級に危険なものと化したのよ」

 

そこで、悪魔達はその姉猫の追撃を一旦取りやめ、残った妹猫に悪魔達はそこに責任を追及しようとしたらしい。

 

“この猫もいずれ暴走するかもしれない。今の内に始末した方が良い”

と……

 

「処分される予定だったその猫を助けたのはお兄様で、お兄様は妹猫にまで罪は無いと上級悪魔の面々を説得してお兄様が監視する事で事態は収拾したのよ」

 

けど、信頼していた姉に裏切られ、他の悪魔達に責め立てられた小さな妹猫の精神は崩壊寸前だったそうだ……

 

「お兄様は、笑顔と生きる意志を失った妹猫を私に預けて下さったのよ。そして、少しずつ感情を取り戻していき、それで私はその猫に小猫と名付けたのよ」

 

……似たような話をある奴から聞いたが……

 

「……もしや、そのはぐれ悪魔は、黒歌という名か?」

 

「ええ、そうよ」

 

ビンゴ……しかし、何か裏があるな、本人(黒歌)から聞いた話と違うしな。

 

「……どういう事だ?」

 

「え?どうしたの?」

 

「いや、ただの独り言だ。それより明日なんだが、帝都を見るよりダンタリオンの書架……は贅沢か、グレモリー邸の書架で本を読んでいても構わないか?」

 

何か手がかりがあればいいが……

 

「え、ええ。家のなら直ぐに許可は下りるわ。それに、ダンタリオンの書架も修行の合間には行けるように申請しとく事も出来るけど……」

 

「すまない、頼む……っと、話し込んでいたなそろそろ戻った方がいい」

 

誰かに見られたら誤解されてしまう、と言うと顔を真っ赤にする部長。……初心だなぁ、イリナがいないと弄る相手がいないからな。部員で弄り甲斐があるのは部長やアルジェントぐらいだしな。……といっても弄る機会はさほどないしな。

 

「そうね。それじゃ、お休み」

 

「ああ」

 

そして、部長が戻り視界から消えたのを確認すると、俺は口を開く。

 

「さて、グレイフィア様、聞いてましたよね?」

 

すると、視界にグレイフィア様が出てきた。一応、俺が僅かに察知できる程度に隠れていたから俺に話が有るんだろう。因みにグレイフィア様が隠れてたのは部長と話ている途中だ。

 

「ええ、書架の件はお嬢様の言うとおり大丈夫でしょう。……話は今のはぐれ悪魔についてですね?」

 

「ええ、先程の部長の話は真実で……?」

 

多分、悪魔側はそれで統一された意見なんだろうが……

 

「……ええ、それが真実だと信じられていました」

 

……って、あれ?

 

「ました?ってことは……?」

 

「グラシャラボラス家の次期当主がその件について話がある……と連絡がありました」

 

ですが……と続けるグレイフィア様。

 

「その次期当主は、話の前に不慮の事故で亡くなってしまいました」

 

何だそれ……

 

「きな臭い話ですね……」

 

「ええ、そこで遺留品などから何か手がかりを見つけようとしましたが……魔王が一悪魔に介入出来ず、特に目ぼしいものは見つかりませんでした」

 

しかし……と続けるグレイフィア様。

 

「大半は次期当主候補のゼファドールが受け取っているので、彼が持っている可能性はありますが……」

 

「可能性は低い……と」

 

「ええ、恐らくその件は主側に何か問題があったのだと思います。あくまで噂ですが、彼女の主であるアウァールス・ネビロスは裏では何か企むんでいた、との情報が有りました」

 

アウァールス・ネビロス……か、72柱ではないな、番外の悪魔(エキストラ・デーモン)か?

 

「そうですか、ありがとうございます」

 

「いえ、それでは」

 

そして頭を下げるとグレイフィア様は直ぐに去っていった。さて、俺も戻るか……。

 

そして、俺は自室に戻りベッドの上で考える。

 

翌日は一誠が本邸での上流階級、貴族についての勉強が終わってから若手悪魔の会合だから、それまでは、黒歌の王について調べられる。

 

対した情報はないだろうが調べないよりはマシか……流石に仲間の事だし放っては置けないからな。

 

さて、どうなることやら。

 

あ、鏡返すの忘れてた……。




とりあえず、次回投稿の目星はついてません……。
できれば、6月中には5巻が終われるように努力します。

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