リリなの短編倉庫集   作:オウガ・Ω

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コレでオウル様の話は終わりです。長らくお付き合いしていただきありがとうございます


秋月家家令デルク・シルヴィアーニ


最終話 受け継がるモノ

画面の向こうの皆様方、お久しぶりです。改めて自己紹介をアキツキ家家令のデルクと言います

 

 

前の話からだいぶ間が空いたことを深く謝罪をさせていただきます

 

 

さあ、まずはオウル様が屋敷に戻られてからのお話になりますが……長くなるのでダイジェスト版でお送りします

 

 

 

旧暦????年

 

 

「ミゼット!他のみんなは」

 

 

「わからない……でも最後に陰がおそってきたって念話したっきり…」

 

 

 

「気をつけろ……なにかがいる!!」

 

 

 

長い争いが終わりを告げ数年、危険な兵器の有無を確かめる為に編成された部隊が訪れたのは何かの研究施設…中に入りみたのは壁一面が赤く塗りつぶされ無数の人骨が山のように積み上げられたそれはまるで祭壇に見える

 

あたりに立ち込める血肉の腐った臭いに思わず吐きそうになるのをこらえ調査部隊はあたりを伺ったが人の気配すらない…それぞれ別れ内部調査を始めた隊員たちは警戒しながら歩き出した時だ

 

調査部隊のメンバーが1人、また1人と姿を消していく…ミゼットはラルゴたちと共に調査を中止、他の隊員たちに施設からでるよう指示を出した…しかし、それをあざ笑うように調査部隊のメンバーは断末魔の叫びをあげることなく闇に喰われていく

 

 

やがてミゼット、ラルゴを含めた三人だけが残された……圧倒的な絶望的状況の中、その瞳は死んではいなかった、生きる事をあきらめない強い意志の光が瞳に満ちていた

 

背後から闇…影がスウウと忍び寄ってくることに気づいていない若く瑞々しいエサ…女性であるミゼットへ伸びようとしたとき、研究施設の分厚い壁が砕け風切り音がなる

 

 

 

「オラアアアアアアアアア!!」

 

 

裂帛の叫びをあげながらミゼットへ伸びようとしていた影めがけ手にした斧を地面に叩きつけ、えぐり取るように持ち上げた先にあるものを三人は見てしまった

 

 

 

『ビギア!マクアエクス!?(ま!魔戒騎士!?)』

 

 

 

「……やっとみつけたぞゴラァ?鬼ごっこは今日で終いだ…」

 

 

 

《まてオウル!人間がいるぞ?ここで倒したら……》

 

 

 

「あ?……………おい、アンタらこっから動くなよ……」

 

 

「え、でも」

 

 

 

「デモもへったくれもヘチマもキュウリもねえんだよ!……ココから先は未成年お断りな18禁展開だ………キリク、こいつらんまわりに結界だ」

 

 

 

《たく、人使いが荒いんでぃ………坊主、嬢ちゃんたち、絶対ココからでるなよ》

 

 

二メートルをゆうに超える長身に白銀のトゲトゲした長い髪、眼鏡?鋭い眼光に黒銀色のコートの上からわかる鍛え上げられた体躯…斧の刃に深々と身体を切り裂かれ悶える血を吐く群青色の魔物《ホラー》から目をはなさず矢継ぎ早に応える青年…第八代煌牙継承者《秋月鷹流》、ギシギシ金属を軋ませるような声にに三人はただうなづいていた

 

 

「さて……コレで心おきなく殺れるな……久し振りに朋友《ポンヨウ》の技を使わせてもらうか………」

 

 

 

《おいおい!オウル!お前は魔戒騎士だろうが!?》

 

 

 

「あぁ~るせぇなあ~このホラーには聞きたいことあるからな…タイエン、技借りるぜ………ホラー相手に効くかわからねえが試すか《北斗・解亜門天聴(かいあもんてんちょう)》…」

 

 

『アピャ?アパバババババババ!!』

 

 

斧の刃がから逃れようとするホラーの頭を素手で掴み人差し指をこめかみに根元まで突き刺す…ビクンと身体を震わし声にならない叫び声をあげ目を見開きガクガク痙攣しだした…

 

 

オウルが使った技…解亜門天聴(かいあもんてんちょう)は修業中に別世界にある上海《シャンハイ》と呼ばれる場所に召喚された。しかも燃え盛る船の中で脱出口を探しているうちに二人の拳法家の戦いに居合わせてしまった。その時の縁が元で朋友になったさい二人の使う北斗神拳、北斗曹家拳をみただけで覚えてしまった

 

 

「スゴいなお前、短期間で北斗神拳を覚えるなんてな」

 

「まったく、お前には驚かされっぱなしだぜ」

 

「いや、完全にはまだだ……拳志朗、大炎…北斗の拳はとは奥が深いな…秘孔の突き次第じゃ病気も治せるんじゃないか?…」

 

 

……しばらくして元の世界に戻る際、北斗神拳、北斗曹家拳は自分以外、誰にも伝えない事を約束してだが

 

 

 

『クヌエロ《答えろ》、アギュレイスヌフクヌフラーハフヅクニイル《アギュレイスと他のホラーはドコにいる》?』

 

 

『プピ!アバラババ………フクヌフラー……アギュレイススマ…ゲインキイシチニイデス……ビイヤアクッチニクヌガ!?《か、勝手に口が……!?》』

 

 

 

「………どうやらオヤジの言った通り現界するのは序列があるのはマジみたいだな……さてと魔戒騎士としての務めを果たさせてもらうか……」

 

頭を鷲掴みにしたまま悶えるホラーを力一杯、壁ごと押しつけるよう殴り抜く…研究施設の分厚い壁をいくつもの抜き外へと吹き飛ぶホラーがみたのは血のように赤い月三つ並びが煌々と輝く空。助かったと思い背中の羽を広げ飛翔する。あの三人を喰い損ねたのは残念だが近くには街がある、そこでたくさん食べて傷をいやそうとするも、それを打ち消された…狼のように鋭い眼光を向けるオウルの姿を見てホラーは恐怖した

 

 

「………逃がすとは言ってねえぞ…ようやく平和になって明日の希望を持つて生きようとするヤツらから未来を奪おうとする手前ぇの陰我、叩ききってやる!!」

 

 

剣斧の切っ先で素早く真円を描き吸い込まれ現れるのは、やや銀色混じりの白金色に輝く牙を向いた狼の面に西洋の意匠を持つ鎧の騎士…魔戒語がかかれた真紅の鎧旗をなびかせ変化、幅広く分厚い剣身に秋月家の家紋があしらわれた剣斧《煌牙》を大きく右手斜めに構えすり抜けざまに逆袈裟に無駄なく刃を振り抜いた

 

 

 

『アアアアアアアアーーーーーーーーー』

 

 

 

『…………』

 

 

 

群青色の身体を捉えた刃は肉を、骨を紙のように切り抜けた…傷口から生まれた白金の炎に身を焼かれ断末魔の叫びを残し爆散、地面へ降り立ち見上げながら鎧を魔界へ返還したオウル…研究施設に向き直りその真紅の瞳に僅かな悲しみの色を宿しながら暁に染まる空のしたを歩き出した

 

 

 

 

この日、ラルゴ様、ミゼット様、キール様はホラーと魔戒騎士で在らせますオウル様との戦いを目撃したのです…同時に古より続く光と闇との永きに渡る戦いを知る事になられました

 

 

 

数年して危険な遺失遺物、それを巡り生まれる事件などを取り締まり、人々が平穏にすごせる社会を目的とされた《時空管理局》を創設されました

 

ですが…真の目的はベルカ諸王時代に現れ災厄を齎した《十三の魔獣》ホラー、その主たる王を人知れず狩る為に様々な便宜を図るためホラーを封印したオウル様、聖王家に仕える家柄でしたグラシア家、ミゼットさま、ラルゴ様、キール様…後の伝説の三提督と呼ばれる方々との秋月家との盟約の名において

 

 

 

まもなくして新暦と年号が定まり管理局が打ち出した新たな社会システムも浸透して暫くして、オウル様は会社を立ち上げました

 

 

最初は元ビリヤード場を改造した事務所兼工場からのスタートでしたが、新型魔力炉、次元転移技術、さらには最新デバイス理論と構築術式を生み出したことで設立から数年で大企業へと躍進されました……これにはタカヒトさまの奥様、プレシア様が残された理論があったからといえましすが…

 

 

「か、会長!な、何故ココに!?」

 

 

「ん?気にするな……確かお前がココのチーフだったな……この前提出した粒子結合定着術式による応力強化部材開発はなかなかのモノだ……近いうちにクラナガン超高層ビル建設プロジェクトのスタッフに加える。もちろんココにいるメンバーもな」

 

 

「は、はい!オウル会長!!」

 

 

気さくに各部署をまわっては話をされ、さらには…

 

 

 

「あ、あの……」

 

 

「ん、どうした食べないのか?リナルディ直伝《らぅめん》はクラナガン1美味いぞ?」

 

 

社員食堂に現れて、コックコートに身を包んで調理に参加されては度々皆々様を驚かせてばかりでした…屋敷からでて一人旅していた頃は、ならず者と一度目を合わせただけで血の雨を降らせていたオウル様でしたが、奥様であられます異世界の女神プリム様との出逢いが変えたのだとわかります

 

 

 

 

…………ですが…その…ある時管理外世界での技術提携に向かう最中、ある一団に襲撃された際……

 

 

「ディバイダーが効かない?なんで」

 

 

 

「………おい、ナニしてやがんだ……フッケバインだがグレンデルだかしらねぇが、世界を変えるために無関係な奴らを巻き込むなゴラア?世界が変わらない文句は……管理局じゃなく、このオレに言えやあ!!」

 

 

 

…管理、管理外世界との企業提携を結ぶ為、幹部数人てま出向かれ会合しようとしたオウル様を狙って襲い掛かったフッケバイン率いるカレン様方を前に、せっかくあしらえたスーツを破り捨て上半身裸になり北斗孫家拳、北斗神拳を駆使し黙らせたオウル様はまさに悪魔にみえたといわしめるほどでした。まあプリム様と《結婚五年目記念》をほったらかしにしたことがキッカケの屋敷を全壊する夫婦喧嘩されたあとだったから仕方ありませんが……

 

 

 

「おい、ミゼット……コイツはナンなんだ?違法研究だあ?こんなのをやるために管理局作るのに協力したわけじゃねえぞ?」

 

 

 

ですが善意の基に生まれた管理局でしたが…少しずつ闇を抱えてしまいました……行われていた禁忌技術を再現を目的とした違法研究にオウル様はコレに気づき三提督に問いただしました。一部の人間が暴走した結果と知り人を守る魔戒騎士としての信念が揺らぎかけましたが…新たな命が生まれた事が立ち直らせてくれました

 

 

 

「プリム…マヤは?」

 

 

「寝てるわよ~ん~可愛い…よかったわねオウルに似なくて……」

 

 

 

「さすがに俺に似たらマズいだろ…マヤ~お父さんはお仕事頑張ってくるぞ~」

 

 

 

「ふぇ…え~~~~~ん」

 

 

 

「オウル!そんな怖い顔したらダメでしょ!!ほら泣かないで……」

 

 

 

「う、わ、わりぃ……じゃ、いってくる…デルク、留守を頼む」

 

 

 

マヤ様が生まれた事がオウル様に光を与えてくれたのです……ですがマヤ様は生まれながらお身体が弱く成人なされるまで生きられるかが危うかったのです。

 

 

そんな中、マヤ12歳になられた頃。オウル様がアキツキと管理局の力を持って見つけ単身乗り込み違法研究施設を壊滅させた時、出会ってしまれました

 

 

「……ボウズ、なぜ剣を向ける?」

 

 

 

「ボ、ボクを………殺しに来たの?死にたく…ない……死にたくない!」

 

 

 

「…む…(このボウズ……オレの間合い把握してやがんのか……太刀筋は荒いが一足一刀、必殺の刃を撃てると……死にたくない…生への渇望がなす技か……)」

 

 

 

機能しない刀剣型アームドデバイスで切りかかれた少年を軽くいなし地面に頭を叩きつけ気絶させたオウル様は屋敷へと連れ帰られました……この方こそがタカヤ様の祖父にしてメイ様のお父上《秋月オウマ》。引き取られてからはオウマ様の指導の下、次期九代目継承者といわしめるほど剣技、魔戒の術を極められマヤ様と夫婦となりました

 

 

二人の仲は周りにいる方々すらあてられるほどで、教会での式のおりはオウル様は親友であられた三提督様、リナルディ様の前で男泣きされてましたが

 

 

数年後、メイ様が生まれてマヤ様がお亡くなりになられたことが…あのような事件になろうと誰が予想しましようか?

 

 

『オウマ!お前を本当の息子だと思っていた……家族として愛していた……闇に魂を売り渡した秋月オウマの陰我!ワシが断ち切る!!』

 

 

 

『ガ!アァ………マ……ヤ……メイ……』

 

 

 

オウガ様が嘗て纏った鎧と共に闇に落ちミッドチルダに住む666人の命を捧げマヤ様を蘇らせようとしたオウマ様を止めるためとはいえ殺した事は一生の傷を残した、この事件は秋月家における忌々しき秘事としてキリク様の記憶を消されたオウル様は私に黙るよう言いつけました…

 

 

時は流れ新暦64年、すでに百を超えたオウル様は成長されたメイ様に見合いをくまれました…流れるような黒髪に鋭い目つき、容姿は伝え聞いた初代様の奥様と瓜二つ…まさに乙女でしたが

 

 

 

「……はあ!」

 

 

 

「うわ!?」

 

 

 

「………弱いわね………女に負けるなんて…」

 

 

……見合い相手を会って数秒で拳、蹴りで気絶させ立ち去るを繰り返される姿にオウル様は胸を痛めてました。幼い頃はとても素直で優しく、将来は騎士になるんだと笑顔で語られましたが。女性は騎士になる事が出来ないと知られてからは鍛錬と帝王学にのめり込まれました

 

 

まるで若き日のヤンチャをなされていたオウル様と雰囲気が似てました……見合いも二桁を超えた時でした…メイ様が新たに組まれた見合い相手を見に聖王教会に向かわれたと知り慌ててオウル様が向かわれようとした時、メイ様がお戻りになられました

 

 

またかと思われた声をあげようとなされた時でした

 

 

 

 

「……………おじい様…この見合い……受けます……」

 

 

 

「な?……ククク…負けたのか」

 

 

 

「………はい…でも私は負けません…」

 

 

「で、どうだった?」

 

 

 

 

「…暖かくて優しい風…穏やかな春のひだまりでした……ユウキは、やっと見つけた私の太陽…あの女狐なんかに絶っっっっっっ対渡さないんだから…」

 

 

 

「ククク、アハハハハ、だいぶ気に入ったみたいだなメイ、なんならお前が詠んでる大人の漫画みたいな逢い引きに誘ってみ……ガバッハア!?」

 

 

 

「……そ、それ以上いったらお祖父様でも許さないんだから!まだ成人迎えてないし、段階を踏まないと…………オ、オウルおじい様のばかっ!!」

 

 

 

照れ隠し満載な顔でオウル様の顎を全力全開な拳を打ち込み車田落ちされたオウル様に見向きせず歩き出したメイ様をみてやはり乙女だと確信し私は安心しました……本当に

 

 

それからユウキ様とデートと鍛錬を交えた逢瀬を重ね二年後、ようやく成人を迎えた頃、あの事件が起きてしまわれたのです…北西部にある新薬開発研究所に訪れていたメイ様を含めた研究員すべてを人質にしたテログループ立てこもり事件が

 

 

「へ、なあ…俺らの相手をしてくれよ~」

 

 

 

「い、いや!助けて」

 

 

 

「………ま、待ちなさい……この子たちにてをださないで!」

 

女性研究員を慰み者にしようとしたテログループから守る為、メイ様は自らを差し出したのです…服を強引に引きちぎられお労しい姿になられたのをみて劣情を抱いた犯人が至ろうと手をかけた時、天窓を勢いよく破られガラスが舞う中、二つの影、ユウキ様とオウル様が降りたったのです

 

 

「……メイさ………あ………ああ」

 

 

「………おい、テメェラ…ウチの孫娘と社員に何して………」

 

 

 

「ねえ、君たち……………僕のメイになにしてんだゴラアアアアアアアアアアっ!!」

 

 

オウル様の声を遮りユウキ様の叫びが研究所を震わせました…メイ様に手をかけようとした男の顔面を掴み床にたたきつける気絶させ、裸同然のメイ様を抱きしめバリアジャケットのコートを着せ小さく何かを呟いたとききました。それから地を蹴り、滑るように駈けながらテログループを叩きのめしていかれたのです

 

 

「………さあ、僕の《メイ》を、太陽を陰らせ傷つけた罪を身体で数えろ!!九頭龍閃!!」

 

 

 

「や、やめ………ぎあ!?」

 

 

 

「………嫁入り前のワシの孫娘に手ェ出した罪、軽くねぇぞ?北斗・懺悔拳!!(少しだけ手加減)」

 

 

 

「イダダダダダ………ヒデブ!?」

 

 

「い、いやだ!死にたくねぇ!!」

 

 

 

「………まだまだ行くよ………飛天御剣流…龍槌閃、土龍閃!!(やや手加減)」

 

 

 

「どこにいくきだ?まだ仕置きはおわんねぇぞ?北斗!剛裳波!!(手加減)」

 

 

 

「カネガナイヨオオォ!」

 

 

「オレモダアアアアアアア!?」

 

 

 

「ヤスミヲクレェェェェェェ!」

 

 

 

「ムリダアアアア!!」

 

 

 

 

……この時のオウル様、ユウキ様は猛り狂う狼に見えたと研究所職員の方々は口を揃え言われました。

 

後ほどわかったことですが、オウル様の立ち上げたアキツキインダストリアルを乗っ取りを企もうとする輩の手により依頼されたと主犯格がハーディス・ヴァアイハデンの名を北斗神拳で聞き出しすぐさま向かわれた相対した時に彼からホラーの邪氣を強く感じとられ魔戒騎士として刃を向け取り押さえ、邪氣の源であるエクリプスウィルスを魔導火で完全にこの世から消し去られました

 

 

「な、なんてことを、やめるんだ!ソレは…」

 

 

「こんな危ないもんは、この世から消し去った方がいい………あとは管理局で申し開きしてみんだな……ハーディス・ヴァイハデン」

 

 

 

 

ヴァアイハデン・コーポレーションが裏でECディバイダー、エクリプスウィルスなどの違法研究に関するすべての証拠を簀巻きにした彼と共に三提督に引き渡してから、ハーディス・ヴァイハデンは軌道拘置所に無期限懲役を言い渡され会社も解体、路頭に迷いかけた社員たち全員の再就職先すべてををオウル様は引き受け斡旋されました

 

 

 

 

……あの事件が収束したあとユウキ様は何度も屋敷へとこられましたがメイ様は塞ぎ込まれました…ですが

 

 

「こないで……私……汚れて……ワタシ汚れ…え?」

 

 

 

「違う!メイ、君は汚れてなんかいない!……落ち着いて聞いて…汚くなんかない。汚れてなんかいない!……何度でも言うよ…メイは僕の太陽なんだから」

 

 

 

「……っ、ユウキ……ユウキ……」

 

 

 

「今はたくさん泣いて良いから……」

 

 

………この時、抱きしめれながら語られたユウキ様の言葉はメイ様の傷ついた心をお救いしたのです。これから一年後にお二人は式を挙げられました

 

 

春の陽気と何処からか流れた花に祝福されるかのように皆様方から見守られるなかで。お二人の挙式が終わられてからオウル様はお身体が優れなくなり日に日に弱りはじめました……そしてタカヤ様がお生まれになられた時はだいぶ御優れになりました

 

 

ですが魔戒騎士としてタカヤ様に鍛錬をつける頃までには、この世にいないことを薄々悟られておられました

 

 

 

 

 

 

時は流れ新暦69年…

 

 

 

「オウルひいじいさ~」

 

 

 

「ん。どうしたタカヤ?ユウキとメイといたのではないのか?」

 

 

 

「ん~おとさ、おかあさ、おうちをまたこわしてるの…」

 

 

 

「くくく、またか……夫婦喧嘩は犬も喰わぬというのにな……まあ仲良きことだな」

 

 

 

 

「犬?フウフゲンカって食べれるの?」

 

 

 

「…………いや、食べ物じゃないぞ…タカヤにはまだはやいか……」

 

 

 

「食べものじゃないんだ………」

 

 

「まあ、しばらくしたら二人とも仲良しになってるだろう(意味深)……タカヤよ手にもってるソレはなわ、なんじゃ」

 

 

 

「これ?ん~さっきお墓のまえを通ったら龍みたいな鎧をつけたおばちゃんがいてね…

 

 

 

 

ーオレ様とあのバカの血を引いてる風には見えないなあ~ま、いっか。とりあえずだ。この剣をお前にやるー

 

 

 

 

って、ぼくにわたしてくれたの……ひいじいちゃ?どしたの?」

 

 

「………(ま、まさかコレは《燦然と輝く王剣《クラレント》》を?モードレッド様、こんなマズいものをタカヤにやったらだめだろうがああああああ!!)…………タカヤよ、その剣は危ないからワシがあずかろう…まだ早いからの」

 

 

 

「は~い」

 

 

ワシに笑顔でモードレッド様から授けられた朱と銀に彩られた鞘に収められた燐然と輝く王剣《クラレント》をタカヤから受け取り魔法衣に入れ溜め息をついた

 

 

ったく、ワシ等の祖先の伴侶となられた方々は自身の血を引く子や孫にはすごく過保護だ。スズカ様の《三世の太刀》、タマモ様の水天日光天照八野鎮石《すいてんにっこうあまてらすやのしずいし》…秋月の技術の根幹を構築されたプレシア様の雷撃、リイン様のラグナロク、朱鬼様の音撃…歴代継承者の危機に陥ると力を貸し勝利に導く結果になる

 

 

少しは子孫を信じて欲しいがな…と考えながらタカヤを肩車し向かうのはワシのお気に入りの場所…木々を抜けた先には暖かな光に照らされ風に揺れる蒼蒼とした草原が広がる

 

 

「うわああああ~ひいじいさ、すごく広~~い♪」

 

 

 

「気に入ったかの。ここはワシとプリムが見つけたんじゃ~~ホラーを封印してからは、よくメイもつれてきたんじゃ…よっと」

 

 

 

タカヤを草原に下ろすと元気いっぱいに駆け出す姿にワシは心が暖かくなる…呪いに打ち勝ち生まれるも身体が弱かったが、ユウキとメイからたくさんの愛情を受け今ではこんなにも元気な姿をみせてくれてる

 

 

 

しかし、あと十年以内にホラーか封印を破り目覚めてしまうと想うと辛い。魔戒騎士としての鍛錬はユウキ、メイは出来る。しかし秋月の魔戒騎士が受け継ぐ一子相伝の秘技を伝えるまでが不可能だからだ

 

せめてあと五年、命が長らえられれば秋月の魔戒騎士のすべてを伝えることが出来るというのに

 

 

なによりタカヤは優しく純粋なタカヤは魔戒騎士に向いていないかもしれん…アギュレイスを完全に討ち果たせなかったことに後悔し、座り込み大の字に寝そべり浮かぶのは奴、アギュレイスが封印の間際に残した邪悪な予言

 

 

 

ーク、クスヌノラ、アキツキヌマキイクスハ…リュウルヌチヌシイウムトウオツクヌツツクヌイイヌチウツスドルウ!!ー

 

 

 

リュウルヌチヌシイウムトウオツク……《龍の魂を身に宿す者》に秋月の魔戒騎士が命絶たれる…秋月の伝承にある《誇り高き龍の三戦士》が関係しているのかと思い調べたが《心偽ること良しとせず魂偽らず、己が身を盾にし人を守る誇り高き龍の魂と共にある三戦士。魔戒騎士である我らに通ずる根幹ありき》とある。そんなことはあるまいと身体を起こすとタカヤが駆け寄ってきた

 

 

「ひいじいさ、どうしたの?どこか悪いの?」

 

 

 

「い、いや…少しウトウトしてての……」

 

 

 

「そうだね~ここって暖かいし……」

 

 

 

そういってワシの隣に座るタカヤ…そうとう気持ちいいのかプリムから受け継いだ犬耳と尻尾がフにゃと垂れてくのがわかる…つい自然と手が伸び撫でながら口を開いた

 

 

「タカヤ、タカヤは将来は何になりたいかの?」

 

 

 

「しょうらい?ん~~~~~……ひいじいさみたいな

《まかいきし》になりたい!」

 

 

 

「な?…確かにワシは魔戒騎士じゃが…ほかには無いのかのメイのあとを継ぐとか、ユウキからお菓子作りを学んでケーキ屋さんになるとか……何で魔戒騎士になりたいのかの」

 

 

「…ん~~龍みたいな鎧をつけたおばちゃんが……

 

 

 

 

ーあと、お前は今までんなかで、歴代最強の魔戒騎士になる!!それをわすれんなよ!!ー

 

 

 

 

 

…って」

 

 

モ…モードレッド様ああああああ!?叛逆の騎士と呼ばれた方がなにまともな事を!?乳…父上に刃向かって国を滅ぼした方がなにいってんじゃ!?……ふとタカヤの目をみると初代様の伴侶様と同じ虹彩の瞳、それもくすんだ色ではなく深い紫、真紅の彩りは肖像画に描かれた伴侶様の魂が《魔戒騎士として様々な苦難に晒される子孫を守る》為の証しだと

 

 

……思えばワシも若き日に魔戒騎士になることを拒み出奔し気ままな旅を続けた…人の世を、美味い食べ物を食って、様々な武闘家と戦い続けた日々を経て戻って叔父であるロウマに師事し受け継いだ魔戒剣斧を手にした時にワシの瞳の色が変わった…あの忌々しい事件から彩りは薄れ始めていたが。まさかタカヤに顕れるとはな…ならば問うとするか

 

 

 

「…タカヤよ、ワシみたいな魔戒騎士になりたいのか?」

 

 

「うん!ひいじいさみたいに強いまかいき………」

 

 

「タカヤ…タカヤはワシみたい魔戒騎士にはなれん…」

 

 

 

「え?なれないの?ぼく、ぼく、ひいじいさまみたいなまかいきしに…なれ…ないの?」

 

 

 

「い、いや…違うんじゃ…ひいじいじがいいたいのはの…ワシみたいな魔戒騎士はワシだからこそなれるんじゃ…己が他者に成れぬように…タカヤは」

 

 

涙目になりプリム、メイ譲りのタカヤの犬耳を撫でながらあぐらをかいた膝の上に座らせゆっくりと、よく聞こえるように言葉をつむいだ

 

 

 

「……タカヤはタカヤにしか成れぬ魔戒騎士になるんじゃ……」

 

 

 

「ぼくにしか…なれない…まかいきし?」

 

 

 

「そうじゃ。約束できるかの………」

 

 

 

「……うん!ひいじいさま。ぼくはぼくにしかなれないまかいきしになる!えい!!」

 

涙目から凛とした目に変わりワシから離れると辿々しいながら落ちていた木の枝を手に振るい始めた…まだバランスは悪いと苦笑いした時、風を切り、空をも斬る成長したタカヤの姿をみたが、一瞬でもとに戻るのをみたワシはゆっくりと背を樹に預けると、全身の力が抜けていく…どうやらワシはここで死を迎えるようだ…気配を感じ目を向けると我が父オウシュウ、そして七代目継承者にして叔父オウマがタカヤをみている。ワシに気づいたのか微かな笑みを浮かべている

 

 

「えい、やあ!………はあ!」

 

 

 

叔父オウマ、我が父オウシュウが見えるということ、それは英霊として迎えに来たのだとわかる…だがもう少しだけこの世にとどめさせてくれ。目が霞んでくる

が魔導力を視ることに集中させ見守る

 

 

まだ粗いがいい太刀筋だタカヤ…腰を入れて刃先に意を。そうだいいぞ、そのまま……一気に踏み込……ふみこ…

 

 

ワシの意識はここで途絶えた…遠くに引き寄せられる感覚と同時にタカヤの泣く声が聞こえた気がした

 

 

 

「どうかな、ひいじいさま………ひいじいさま?……ひいじいさま!」

 

 

 

 

 

 

新暦69年

 

 

第八代継承者《秋月鷹流》 秋月屋敷にある《ひだまりの森》にて老衰により死亡

 

 

 

享年:168歳

 

 

 

 

 

 

やんちゃな時代から好々爺へ変わられたオウル様の物語はここまでとなります。亡くなられてからキリク様、魔戒剣斧はメイ様の手で厳重に封印されました…タカヤ様はオウル様が亡くなられた事が心に影を落とされました

 

あとは皆様のご存知の通り、ヴィヴィオ様たちと出会い、甦りしホラーとの戦いを繰り広げるなか、オウル様が言われたタカヤ様にしか成れぬ魔戒騎士へと成長された事は英霊となられたオウル様もさぞ喜ばれたはずです

 

 

………長らく私めの話に耳を傾けていただいた事、感謝いたします

 

 

次の機会あらば、また静聴をよろしくお願いします

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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